選挙運動のSNS規制は何が変わる?2027年3月施行予定の改正案を解説

選挙運動で拡散する偽情報や、生成AIを使ったもっともらしい画像・映像への対策を盛り込んだ法案が、2026年7月13日に参議院で可決されました。改正案は、発信者への表示義務と大規模プラットフォーム事業者への対策義務を組み合わせる内容です。ただし、対策の具体像は今後の指針や事業者の運用に委ねられる部分もあり、実効性は施行後の運用を見極める必要があります。

※本記事は、2026年7月14日時点で両院を通過した法案を対象に解説しています。衆議院の議案審議経過では、同日時点で公布年月日・法律番号は未記載です。

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選挙運動のSNS規制で何が変わる?改正案は「発信者」と「事業者」の両方が対象です

今回の改正案は、選挙に関するインターネット上の情報について、利用者だけでなく大規模なSNS・動画サービスの提供事業者にも対応を求める仕組みです。対象となる法案名は「公職選挙法及び特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律の一部を改正する法律案」です。

公職選挙法では、選挙に関してインターネット等を利用する者に対し、候補者について虚偽の事項を公にしたり、事実をゆがめたりして、選挙の公正を害さないよう求める規定を置きます。これは、選挙の情報環境を整えるための責務規定です。

一方、情報流通プラットフォーム対処法(以下、情プラ法)は、大規模なプラットフォーム事業者を対象に、法令違反情報、虚偽情報、事実をゆがめた情報などが選挙の公正に及ぼす悪影響を軽減するため、サービスの特性に応じた必要な措置を講じるよう定めます。ここでいうプラットフォームとは、投稿や動画を多くの利用者に流通させるサービス基盤を指します。

生成AIの画像・映像には表示が求められる予定です

改正案では、実写と誤認されるおそれのある生成AI画像・映像を選挙に使う場合、AIで作成または改変されたものである旨の表示が必要になります。根拠となるのは、公職選挙法の新第142条の5です。

対象となるのは、選挙運動のための文書図画と、告示・公示日から投票日までの間に頒布される「当選を得させないための活動」の文書図画です。画像や映像の改変が社会通念上軽微な場合や、実際に撮影したものと誤認されるおそれがない場合は、法案上の対象から除かれます。

表示のポイントは、投稿者が単に説明欄に記すだけではなく、受信する人の端末画面に正しく表示されるようにする点です。選挙中に見かける候補者の動画や画像を判断する際、受け手が「実写か、AIを使ったものか」を見分けやすくすることが狙いです。生活者にとっても、投票先を考える場面で誤認に基づく判断を避けるための基盤になります。

大規模SNS事業者には偽情報対策と年1回の公表が求められます

大規模SNS事業者は、選挙の公正への悪影響を軽減するための措置を講じ、その実施状況を毎年1回公表することになります。改正案では情プラ法に新第27条の2を設け、事業者の役割を明記しています。

ただし、法律案は個別の投稿をどの基準で削除するのか、収益化を停止するのか、信頼できる情報をどう優先表示するのかまでを直接列挙していません。総務大臣が事業者の措置に関する指針を定め、各事業者がサービスの特性に応じて対応する設計です。

このため、利用者がすぐに期待できるのは「すべての偽情報が自動的に消える」ことではありません。どの情報を問題と判断するか、申告窓口をどう使うか、対応の速度や透明性をどう確保するかは、指針と各社の実務に左右されます。動画サイトやSNSの収益化が注目を集める仕組みと結び付く場合、対策がどこまで機能するかは特に重要です。

選挙SNS規制法案の実効性は、罰則ではなく運用の透明性が鍵になります

今回の法案は、選挙に関する情報の適正化を目指す一方、表現の自由との関係から、幅広い投稿に一律の罰則を設ける構成にはしていません。虚偽情報や事実のゆがめを防ぐ必要性と、政治的な意見表明を過度に萎縮させない必要性を、どのように両立させるかが課題です。

法案の附則では、インターネットを利用した在外投票の導入や、候補者等の街頭演説を妨げる行為への対応についても、今後検討するとしています。SNS上の問題だけでなく、選挙運動をめぐる情報環境全体をどう整えるかという論点は、引き続き残されています。

実効性を判断するには、施行後に公表される指針、事業者が実際に講じた措置、年1回の公表内容を確認することが欠かせません。選挙情報に接するときは、投稿の拡散数だけで信頼性を判断せず、候補者・選挙管理委員会・自治体などの一次情報と照合する姿勢が重要です。

施行は2027年3月1日予定|いつの選挙から適用される?

法案では、原則として2027年3月1日(令和9年3月1日)から施行し、その日以後に公示・告示される選挙に改正後の公職選挙法を適用するとしています。したがって、2027年春に予定される統一地方選挙は、日程によっては改正後の制度の対象となる見込みです。

もっとも、記事公開時点では法案が両院を通過した段階であり、公布後に正式な法律番号などが確定します。制度の適用時期を確認するときは、報道の見出しだけでなく、公布された法令と総務省等が示す情報を確認してください。

出典: 衆議院「法案要綱」衆議院「議案審議経過情報」

よくある質問

選挙中に生成AIの動画を投稿することは禁止されますか?

いいえ、法案は生成AI動画を一律に禁止するものではなく、実写と誤認されるおそれのある画像・映像にはAI利用の表示を求める内容です。選挙運動用の文書図画や、告示・公示日から投票日までの落選運動用文書図画が対象となります。軽微な改変や実写と誤認されるおそれがないものは、法案上の対象から除かれます。

SNSにある選挙の偽情報はすぐに削除されますか?

いいえ、改正案だけで全ての偽情報が即時に削除される仕組みではありません。大規模事業者に悪影響を軽減する措置を求めますが、具体的な内容は総務大臣の指針と各事業者の対応に委ねられます。削除・表示・収益化停止などの運用がどう設計されるかが重要です。

選挙SNS規制はいつから始まりますか?

法案どおりであれば、改正の中心部分は2027年3月1日から施行される予定です。改正後の公職選挙法は、原則として施行日以後に公示・告示される選挙から適用されます。公布状況と選挙日程は、必ず公式発表で確認してください。

まとめ

  • 改正案は、選挙に関する偽情報対策を発信者と大規模事業者の双方に求める内容です。
  • 実写と誤認されるおそれのある生成AI画像・映像には、AI利用の表示が求められます。
  • 大規模事業者には対策の実施と、年1回の実施状況の公表が求められます。
  • 施行予定日は2027年3月1日で、具体的な実効性は今後の指針と運用が左右します。
  • 投票に関わる情報は、拡散数だけで判断せず、一次情報との照合が大切です。

選挙の情報環境は、制度改正だけで完結しません。私たち一人ひとりが情報の出所を確認することも、公正な選挙を支える重要な行動です。

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