選挙に使うAI画像・映像の表示と、大規模なSNS事業者の偽情報対策を定めた改正法が、2027年3月1日に施行されます。改正後の公職選挙法は、その日以後に公示・告示される選挙から適用されます。
発信する人には、実写と誤認されるおそれのあるAI画像・映像だと分かる表示が求められます。大規模事業者には、選挙の公正を害する情報への対策と、年1回の実施状況の公表が求められます。
※改正法は2026年7月13日に参議院で可決・成立し、7月17日に令和8年法律第58号として公布されました。本文は7月27日時点の法案要綱と審議経過を基に説明しています。
最終更新: 2026年7月27日
投稿者はAI利用を表示、大規模SNS事業者は偽情報対策を実施
今回の改正は、公職選挙法と、SNSなどの情報流通を扱う法律を改めるものです。正式名称は「公職選挙法及び特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律の一部を改正する法律」です。
公職選挙法は、選挙に関してインターネットを使う人に、候補者について虚偽の情報や、ゆがめた事実を広めて選挙の公正を害さないよう求めます。この役割を法律に示す「責務規定」を設けます。
SNSや動画サービスは、投稿を多くの利用者へ届けます。このようなサービスを提供する大規模事業者の対応を定めるのが、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)の改正です。
事業者は、法令違反、虚偽、ゆがめた事実など、選挙の公正を害するおそれのある情報について、サービスの特性に応じて悪影響を減らす措置を講じます。
実写と誤認されるAI画像・映像には、画面上にAI利用の表示
投稿者は、AIで作成・改変した画像や映像が実写と誤認されるおそれがある場合、AIを使ったと分かる表示をします。根拠は、公職選挙法の新第142条の5です。
対象は、選挙運動に使う文章・画像などと、公示・告示日から投票日までに配る落選運動用の文章・画像などです。法律では、こうしたものを「文書図画」と呼びます。
改変が社会通念上軽微なものや、実際に撮影したものと誤認されるおそれのない画像・映像は、表示義務の対象から除かれます。
表示は、受信した人のスマートフォンなどの画面に、正しく出るようにする必要があります。投票先を考える人が、実写かAIで作られたものかを見分けられるようにするためです。
大規模SNS事業者は、対策の実施状況を年1回公表
大規模事業者は、選挙の公正への悪影響を減らす措置を講じ、毎年1回、その実施状況を公表します。改正法は情プラ法に新第27条の2を設け、この義務を定めます。
総務大臣が措置に関する指針を定め、事業者は各サービスの特性に応じて対応します。どの投稿を削除し、収益化を止め、信頼できる情報を優先表示するかという具体策は、改正法自体が一律に列挙したものではありません。
利用者が確かめるべきなのは、問題情報の判断基準、申告窓口、対応にかかる時間、公表される結果です。動画や投稿への注目が収益につながるサービスでは、対策が拡散の仕組みにどう働くかも焦点になります。
偽情報対策の基準と結果を、政治的な意見の自由と併せて検証
法改正は偽情報への対応を進めるものです。同時に、政治的な意見表明を萎縮させないことも必要です。幅広い投稿に一律の新たな罰則を設ける構成ではないため、対策の基準と実際の措置がどう示されるかを検証する必要があります。
附則は、海外に住む有権者のインターネット投票の導入と、候補者の街頭演説などを妨げる行為への対応も、検討事項にしています。演説への対応は、政治活動の自由に配慮しながら引き続き検討する内容です。
事業者がどの措置を講じ、どんな結果を公表したかが、対策の働きを判断する材料です。選挙情報を読む人も、候補者、選挙管理委員会、自治体の元の資料と照らし合わせれば、拡散数に依存せず内容を確かめられます。
2027年3月1日以後に公示・告示される選挙から適用
改正後の公職選挙法は、2027年3月1日以後に公示・告示される選挙に適用されます。基準は投票日だけでなく、公示・告示日です。
法の中心部分は同日施行です。一部の経過措置や検討規定は公布日から施行されます。個別の選挙については、選挙管理委員会などの公示・告示日と公式案内を確認してください。
出典: 衆議院「法案要綱」 / 衆議院「議案審議経過情報」
よくある質問
選挙中に生成AIの動画を投稿することは禁止されますか?
AI動画の投稿自体を一律に禁止する改正ではありません。対象は、選挙運動用と、公示・告示日から投票日までの落選運動用の文章・画像などです。実写と誤認されるAI画像・映像は表示が必要で、軽微な改変や実写と誤認されるおそれのないものは除かれます。
SNSにある選挙の偽情報はすぐに削除されますか?
大規模事業者が必要な措置を講じる仕組みです。削除などの判断基準や対応速度は、総務大臣の指針と各社の運用によります。すべての偽情報の即時削除を定めたものではありません。
選挙SNS規制はいつから始まりますか?
中心部分は2027年3月1日に施行されます。改正後の公職選挙法が適用されるのは、その日以後に公示・告示される選挙です。
AI利用の表示と、SNS事業者の対策・公表が変わる
- 改正法は、選挙に関する偽情報対策を発信者と大規模事業者の双方に求める内容です。
- 実写と誤認されるおそれのある生成AI画像・映像には、AI利用の表示が求められます。
- 大規模事業者には対策の実施と、年1回の実施状況の公表が求められます。
- 施行日は2027年3月1日で、具体的な実効性は今後の指針と運用が左右します。
- 投票に関わる情報は、拡散数だけで判断せず、一次情報との照合が大切です。
利用者が元の情報を確かめることと、事業者が対策の基準・実施状況を示すこと。両方が、公正な選挙を支えるために必要です。
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