3号通報とは|外部告発が保護される要件をわかりやすく解説

この記事の要点

  • 3号通報とは、勤め先の不正を報道機関など「外部」に告発することで、公益通報者保護法の3つの通報先のうち最もハードルが高い類型です
  • 保護されるには「真実相当性」に加えて、内部通報では不利益を受けるおそれがあるなどの「特定事由」を満たす必要があります(二重の関門)
  • この要件をどう判断するかが、兵庫県の告発文書を「保護される公益通報」と見るか「単なる怪文書」と見るかの分かれ目になりました

最終更新: 2026年7月5日

3号通報とは何か — 通報先の「3階建て」の最上階

公益通報者保護法は、通報先を3段階に分けています。制度全体の概要は「公益通報者保護法とは」で解説しています。

  • 1号通報: 勤務先の内部窓口へ
  • 2号通報: 監督権限を持つ行政機関へ
  • 3号通報: 報道機関など、被害拡大の防止に必要と認められる外部へ

このうち3号通報は、外部に情報が出る分だけ事業者への影響が大きいため、保護のハードルが最も高く設定されています。逆に言えば、内部通報(1号)は「不正があると思っただけ」でも保護され得るのに対し、3号通報はいくつもの条件をくぐり抜けて初めて保護されるのです。

3号通報が保護される「二重の関門」

3号通報が公益通報者保護法で保護されるには、大きく2つの条件を両方満たす必要があります。

関門1:真実相当性

「通報対象となる事実が生じている、またはまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由があること」が求められます。

これは、単なる憶測や伝聞では足りず、通報内容を裏づける内部資料があるとか、信用性の高い関係者の証言があるといった、客観的な根拠が必要という意味です。消費者庁も、後で紛争になった場合には通報者側がこの相当の理由を立証しなければならないとしています。「事実そのものが真実だと証明する」ところまでは要りませんが、「そう信じるだけの合理的な裏づけ」は要る、という中間的な基準です。

関門2:特定事由(法3条3号イ〜ホ)

真実相当性があっても、それだけでは足りません。加えて、次のような事情のいずれかが必要です。

  • 内部や行政機関に通報すれば、解雇など不利益な取扱いを受けるおそれがあると信じる相当の理由がある
  • 内部に通報すれば、証拠が隠滅・偽造されるおそれがある
  • 内部に通報すれば、通報者の情報が漏らされるおそれがある
  • 通報しないよう正当な理由なく求められた
  • 書面で内部通報してから20日たっても調査の通知がない
  • 生命・身体への危害や、回復困難な財産的損害の急迫した危険がある

つまり3号通報は、「中身が確からしい(真実相当性)」だけでなく「なぜ内部ではなく外部に出す必要があったのか(特定事由)」まで説明できて、はじめて保護される仕組みです。この二段構えが、外部告発のハードルの高さの正体です。

なぜここまでハードルが高いのか

外部通報は、いったん報道されれば事業者の評判に回復しがたい影響を与えます。もし事実無根の告発が自由に外部へ流れれば、無関係な事業者や従業員が深刻な損害を受けかねません。

そのため法律は、「内部で解決を試み、それが期待できない事情があるときに限って外部へ」という順序を、要件という形で組み込んでいます。3号通報のハードルの高さは、通報者の保護と、告発される側の正当な利益との、緊張関係の産物なのです。

兵庫県の告発文書は「3号通報」だったのか

この3号通報の要件が、全国的な議論の的になったのが兵庫県の告発文書問題です。

2024年3月、県の元幹部職員が知事らに関する7つの疑惑を記した文書を、一部の報道機関などに送付しました。県側はこの文書を「事実無根」「誹謗中傷性の高い文書」と位置づけ、作成者を特定したうえで懲戒処分としました。ここで正面から問われたのが、「この文書の配布は、保護される3号通報にあたるのか、それとも保護に値しない怪文書なのか」でした。

論点を上の「二重の関門」に当てはめると、争いは次の2つに整理できます。

真実相当性はあったか。 県側は当初、内容の信ぴょう性を否定しました。これに対し、県が設置した第三者調査委員会は2025年3月19日に公表した報告書で、文書には真実相当性のある事項が含まれると評価し、物品の贈答が収賄罪にあたる可能性など、通報対象事実の要件を満たすと指摘しました。

特定事由はあったか。 そもそも告発の対象が知事や幹部自身である以上、内部に通報しても是正が期待しにくく、通報者が不利益を受けるおそれがあった——こうした構図は、上に挙げた特定事由(内部通報では不利益を受けるおそれ等)に重なります。第三者委員会は、文書の配布は公益通報(3号通報)に該当すると認定し、通報者を探索した県の行為を公益通報者保護法に照らして違法と結論づけました。

一方、県側は手続きの適法性についての主張を維持し、評価をめぐる議論は現在も続いています。制度の要件に照らしてどちらの見方が説得力を持つのか——その判断材料として、3号通報の「二重の関門」を知っておくことには意味があります。

当チャンネルでは、この論点を一次資料に基づいて継続的に検証しています。

2026年12月改正で3号通報はどう変わるか

2026年12月1日施行の改正法では、3号通報の要件も一部緩和されます。通報者を特定させる情報が漏れる可能性が高い場合や、通報対象事実を直接の原因とする個人の財産への回復困難な損害が発生した場合などが、特定事由として整理・追加されます。加えて、通報者を探索する行為そのものが原則禁止され、違反には罰則も設けられます。

兵庫県問題で「通報者探索は違法」と第三者委員会が判断した論点は、施行後は法律の明文でより明確に禁止されることになります。制度が現実の事件を追いかけて進化していく典型例と言えるでしょう。

よくある質問

Q. 内部通報をせずにいきなり外部へ告発したら、保護されないのですか?

通報の順序は法律上決められておらず、いきなり3号通報をしても公益通報になり得ます。ただし保護されるには、内部通報では不利益や証拠隠滅のおそれがあるといった特定事由を満たす必要があります。

Q. 告発した内容が一部間違っていたら、保護されませんか?

求められるのは「真実であること」ではなく「真実と信じる相当の理由」です。客観的な裏づけがあれば、結果として一部が事実と異なっても直ちに保護を失うわけではありません。

Q. SNSへの投稿は3号通報になりますか?

3号通報の通報先は「被害の発生や拡大の防止に必要と認められる者」です。不特定多数に向けた単なるSNS投稿がこれにあたるかは、目的や態様によって慎重に判断されます。

参考(一次資料)


さらに深く知りたい方へ

兵庫県問題を条文レベルで読み解く有料シリーズ「私とFable5で読み解く」をnoteで連載しています。

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