最終確認:2026年8月29日
6月20日に副知事が国へ要望した経緯と、その後の県の運航体制の説明を検証します。7月の運航確保と、8月以降の見込み、県議会の要望は、時点と性質が違います。
整備士不足でドクターヘリの運休が懸念される中、兵庫県の副知事らが2026年6月20日、上野賢一郎厚生労働大臣へ運航体制の確保を要望しました。6月24日の知事会見でも、守本副知事が要望したと説明されています。
筆者が問うのは、但馬地域の救急医療をどう維持するかと、知事がこの要望をどう優先したかです。副知事らが動いたことを評価したうえで、知事本人の対応と県民への説明を考えます。
- 6月20日の国への要望は、守本副知事らが対応した
- 動画で紹介した当初の報道は、7月の運航に不安を示していた
- 国に求めた、運航体制・ルール・専門人材・財政支援
- 県は、運休前に何を把握し、代替策を準備したのか
- 出動件数と救急医療への影響
- なぜ斎藤知事本人が要望に行かないのか
- 救急医療の対応を、知事はSNSでも優先して伝えたか
- 動画で紹介した応援コメントと、運航の評価は別に考える
- 映画『偏向報道』をめぐる投稿で、筆者が感じた疑問
- 「偏向報道」という言葉の使われ方
- 6月は7月の約2週間を確保、7月末に8月以降の見込みを説明
- ドクターヘリは、医師を救急現場へ早く届けるための体制
- 知事に求める、救急医療への対応と優先順位の説明
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6月20日の国への要望は、守本副知事らが対応した
動画では、副知事が要望に対応し、知事が別の行事に出ていたことについて、「ドクターヘリ厚労大臣要請、副知事丸投げ」と批判しました。
動画では、副知事や関係市長らが、豊岡市を訪れた上野厚生労働大臣に要望書を出したと紹介しました。公式資料の氏名表記に合わせ、本文では守本副知事、上野賢一郎厚生労働大臣と記載しています。
整備士不足によって、兵庫県内を運航するドクターヘリの長期的な運航停止が懸念されています。兵庫県北部にとって、公立豊岡病院は重要な医療拠点です。その地域に厚生労働大臣が来たタイミングで、県側が要望書を出したという流れです。
私が疑問に感じたのは、県民の命に関わる要望に、知事本人が出向かなかった理由です。
副知事が対応することは、県としての要望活動です。そのうえで筆者は、県政のトップである知事が前面に立つべき局面ではなかったかと考えます。
動画で紹介した当初の報道は、7月の運航に不安を示していた
以下は、動画がNHK報道として紹介した内容です。この記事では、当時の紹介と、その後の県の公式説明を区別します。
兵庫県内では、整備士不足からドクターヘリの運休が相次いでおり、救急医療の現場に影響が出る恐れがある。そのため、兵庫県の副知事が20日、上野厚生労働大臣と面会し、整備士の確保など、安定的な運航体制の構築を要望した、という内容です。
また、動画内では、兵庫県内を運航するドクターヘリについて、2025年夏以降、整備士不足による運休が相次いでいると説明されています。来月7月については、2週間程度は運航できる体制を確保しているものの、その後の見通しは立っていない、という趣旨の内容も紹介しました。
当初の懸念は、夏の救急搬送にどう備えるかでした。
夏は熱中症、水辺の事故、山でのけがなどへの備えが必要です。実際の搬送件数は気象や事故状況で変わりますが、筆者は、運航の空白を楽観すべきではないと考えます。
ヘリが飛べない日は、医師を乗せるドクターカーなどの代替手段が必要です。人員、車両、費用を確保し、陸路でどこまで対応できるかを県が示す必要があります。
国に求めた、運航体制・ルール・専門人材・財政支援
動画内では、兵庫県側が提出した要望書の内容として、主に以下の点が紹介されています。
まず1点目は、ドクターヘリの公共性の高さを踏まえ、国が主導して、ドクターヘリ運航停止地域における運航体制の確保を図ることです。あわせて、中長期的な視点に立ち、持続可能で広域的なドクターヘリ運航体制の再構築に取り組むことも求めています。
要するに、目先の運航体制を何とかするだけでなく、将来的にも継続できる仕組みを作ってほしいという要望です。
2点目は、整備士同乗ルールなど、ドクターヘリ独自のルールについて、明確な基準を示した上で、関係機関の理解を得た新たなルールを策定することです。新たなルールの策定前であっても、都道府県などからの運航体制に関する相談や協議には、迅速かつ柔軟に対応するよう求めています。
3点目は、ドクターヘリの操縦士や整備士など、専門人材の確保・養成に積極的に取り組むことです。
4点目は、2025年度補正予算に関わる「ドクターヘリ運航体制緊急支援事業」についてです。緊急的な運航体制の確保に生じる追加経費、ドクターカーなど運航停止をカバーする体制の構築に必要な人件費や必要経費などを、幅広く補助対象とするよう求めています。
要望の中心は、人材と財政支援、運航を続けるためのルールです。
整備士や操縦士のような専門人材は、一朝一夕で育つものではありません。財政支援も、現場の医療体制を維持する上では避けて通れない問題です。
動画内では、要望書を受け取った上野厚生労働大臣が、「できるだけ要望に沿った形で実現できるよう取り組んでいきたい」という趣旨の発言をしたと紹介しています。
県は、運休前に何を把握し、代替策を準備したのか
このドクターヘリ問題では、ヒラタ学園の役割も大きかったと動画内では触れています。
一方で、鳥取県など、他の自治体では別の対策も進めていたとされ、兵庫県の対応は後手後手だったのではないか、という見方も示しました。
整備士不足には、全国の航空人材の確保、運航事業者の体制、国の制度が関わります。
同時に、県がいつ危機を把握し、どこまで代替策を準備したかは検証が必要です。国の課題と、県の事前対応を合わせて問います。
出動件数と救急医療への影響
動画内では、菅野完さんの投稿内容として、兵庫県のドクターヘリ出動回数は全国一であり、公立豊岡病院但馬救命救急センターだけでも年間1812回を超える、という趣旨の内容を紹介しています。
また、動画内では、公立豊岡病院の出動回数として、令和4年にドクターヘリが1812件、ドクターカーが2695件という数字も紹介しました。
1812件と2695件は、動画で紹介した過去の数字です。動画では、令和5年や令和6年の資料が確認しにくく、更新が止まっているのではないかという疑問も示しました。今回の確認で最新統計として確定した数字ではありません。
もし直近の正確な出動件数を見るのであれば、公立豊岡病院や兵庫県、関係機関の最新資料を改めて確認する必要があります。
動画の数字からも、筆者は但馬地域の救急医療におけるヘリとドクターカーの役割は大きいと考えます。最新の出動件数と、運休中の対応結果も県民に示してほしいところです。
なぜ斎藤知事本人が要望に行かないのか
今回、私が特に問題だと感じたのは、斎藤元彦兵庫県知事本人が、なぜ厚生労働大臣への要望に行かなかったのかという点です。
動画内では、6月20日の知事日程として「各種団体行事・神戸市」と紹介されています。つまり、知事本人は神戸市内で別の行事に出ていたという説明になります。
6月24日の会見で知事は、薬剤師会の定時総会が先に予定されており、毎年出席しているため今回も出席したと説明しました。また、大臣が地元議員の政経セミナーへ来る機会に、副知事が要望したとも説明しています。
しかし、ドクターヘリは県民の命に関わる問題です。しかも、兵庫県北部の救急医療を支える重要な仕組みです。厚生労働大臣が豊岡市に来ており、県として要望書を出すのであれば、知事本人が前面に出るべき場面ではなかったのか、という疑問は残ります。
副知事や関係自治体の市長らが動いたことは、必要な対応です。筆者は、その対応を評価します。
この先約という説明を踏まえても、筆者は、救急医療の重大な要望をどう優先したかを問いたいところです。
県民の命に関わる重大案件に対して、知事本人がどういう姿勢を示すのか。ここが問われているのだと思います。
救急医療の対応を、知事はSNSでも優先して伝えたか
動画内では、斎藤知事のXやショート動画の発信についても取り上げました。
知事は週末に向けた投稿として、雨模様の週末、ワールドカップ観戦、スポーツ、グルメなどに触れ、「和やかな週末をお過ごしください」という趣旨の発信をしていたと紹介しています。
また、動画内では、知事が飲食を楽しむような発信をしていることに対して、ドクターヘリ問題との温度差を感じる、という私の見方を述べています。
私が求めるのは、救急医療の対応を優先して県民へ伝えることです。日常の投稿の内容よりも、危機への取り組みがどれだけ見えるかを評価しています。
問題は、県民の命に関わるドクターヘリの運航問題がある中で、知事の発信がどのように見えるかという点です。
政治家や首長の発信は、内容そのものだけでなく、タイミングや文脈によって受け止められ方が変わります。危機対応が問われている時に、楽しそうな食事や週末の話題ばかりが前に出ると、「本当にこの問題を重く見ているのか」と疑問を持つ人が出るのは自然だと思います。
動画で紹介した応援コメントと、運航の評価は別に考える
動画内では、斎藤知事のショート動画のコメント欄についても触れています。
そこには、「斎藤知事ありがとうございます」「兵庫県民でよかった」「県外からも応援しています」「公務が忙しい中、街ぶら動画を上げてくださりありがとうございます」といった趣旨のコメントが並んでいると紹介しました。
また、「カツサンド」「トンカツ」「アンチに勝つ」といった言葉遊びのような反応も見られると述べています。
一方で、ドクターヘリの問題については、「すんなりと解決するのは難しいことがよく分かった」といった受け止め方も紹介しました。
私としては、ここにも違和感があります。
知事への支持や評価は、人によって違います。ここで紹介したコメントを、支持者全体の意見を示す調査としては扱いません。
しかし、救急医療のインフラに関わる問題まで、応援ムードや雰囲気で流してよいのか。ここは、支持・不支持を超えて考える必要があると思います。
ドクターヘリが飛べるかどうかは、政治的な好き嫌いとは別の次元の話です。県民の命、観光客の命、山や海で事故に遭った人の命に関わる問題です。
映画『偏向報道』をめぐる投稿で、筆者が感じた疑問
動画の後半では、映画『偏向報道』についても取り上げました。
動画内では、この映画が兵庫県知事騒動をモチーフにしたものとして紹介されていること、またおぎのきんしろう監督や新田哲史さん、浜田聡氏らに関連する投稿が取り上げられていることに触れています。
映画を見た人たちの感想として、「テレビ局の実態を考えさせられた」「報道のあり方を考えるきっかけになった」といった趣旨の投稿がある一方で、上映状況や観客数について揶揄するような投稿も紹介しました。
また、よろず〜ニュースで映画『偏向報道』が取り上げられていたことにも触れました。動画内では、神戸新聞やデイリーとの関係についても疑問を呈しています。
ここで私が問題にしているのは、映画そのものを見たかどうかというより、兵庫県知事問題をめぐって「報道が偏向していた」という物語が、どのように広がっているのかという点です。
兵庫県政をめぐる問題は、パワハラ疑惑、公益通報、百条委員会、メディア報道、SNS世論など、複数の要素が絡み合っています。そこに「偏向報道」という言葉が強く持ち込まれると、事実関係の検証よりも、陣営ごとの物語が先に立ってしまう危険があります。
「偏向報道」という言葉の使われ方
動画内では、荻野監督が報道現場出身であることや、報道現場で「忘れる」ことを教え込まれるという趣旨の説明を紹介しました。
その上で、映画『偏向報道』を支持する人たちの間では、「マスコミは何でもありになっている」「テレビ局の実態を多くの人が知るべきだ」といった受け止め方があると紹介しています。
報道機関への批判は必要です。誤りや偏りがあるなら、元の記事や事実に照らして検証すべきです。
ただし、「偏向報道」という言葉は非常に強い言葉です。
その言葉を使うなら、どの記事のどの部分が、どの事実に照らして、どのように偏っていたのかを具体的に示す必要があります。そうでなければ、単に自分に都合の悪い報道を「偏向」と呼ぶだけになってしまいます。
兵庫県知事問題でも、本当に大事なのは、誰が好きか嫌いかではなく、何が事実で、行政として何が適切だったのかです。
6月は7月の約2週間を確保、7月末に8月以降の見込みを説明
兵庫県の公表ページでは、県内のドクターヘリについて運航主体、基地病院、要請方法などが案内されています。個別の運休・再開情報は更新されるため、利用可否を断定せず、県の最新案内で確認する必要があります。
6月24日の会見では、知事は7月に各機おおむね2週間の運航体制を確保したと説明しました。7月29日には、整備士に代えて操縦士を同乗させる2パイロット制の導入により、8月以降はほぼ通常どおりの体制を確保したと説明しています。
これは当時の県の説明と見込みです。実際の運休日数や代替搬送の結果とは区別が必要です。整備士不足そのものの解消も、引き続き課題として説明されています。
県議会の6月11日の意見書は、人材の確保や財政措置などを国に求めたものです。要望の提出と、運航の確保、実際の搬送結果は、それぞれ確認する必要があります。
対応の成果を評価する資料は、運休日数、代替搬送、操縦士・整備士の確保状況です。県には、要望した内容に加えて、これらの結果を県民へ公表することが求められます。
確認した一次資料
関連解説:兵庫県の救急医療体制を一次資料で確認する
ドクターヘリは、医師を救急現場へ早く届けるための体制
改めて、今回の中心はドクターヘリです。
兵庫県北部の救急現場に医師を早く届けるため、ドクターヘリは重要な役割を担います。
整備士不足、操縦士不足、運航事業者の限界、財政支援の不足。これらは、どれも一つの自治体だけで簡単に解決できる問題ではありません。
だからこそ、国に要望すること自体は必要です。
しかし同時に、県としてどの時点で危機を把握し、どのような対応を取り、どこまで代替策を準備していたのかは、検証されるべきです。
6月の動画は、7月の約2週間の確保では、残りの期間をどう補うかが課題だと批判しました。その後の改善の見込みは、上記の7月29日会見の説明です。時点を分けて評価する必要があります。
その後の見通しが立っていないのであれば、県民に対して丁寧に説明し、国への要望だけでなく、県としての具体策も示す必要があります。
知事に求める、救急医療への対応と優先順位の説明
私が求めるのは、実際に救急医療を維持できたかを、資料と結果から評価することです。
斎藤知事を支持する人も、批判する人もいるでしょう。それは当然です。
しかし、ドクターヘリが飛べるかどうかは、支持・不支持とは別の問題です。命の問題です。
厚生労働大臣への要望に副知事らが対応したこと自体は、必要な動きです。ただ、県政トップである知事本人がどのような優先順位で動いていたのか、県民にどう説明するのかは、しっかり問われるべきです。
そして、SNSでの発信やグルメ動画、支持コメントの盛り上がりとは別に、兵庫県の救急医療体制が本当に守られているのかを見ていく必要があります。
運航が止まる前に代替策を準備し、止まった日はどの手段で命を守ったかを検証する必要があります。
今回の問題は、兵庫県政の危機管理、医療体制、国との連携、そして知事の説明責任を考える上で、非常に重要なテーマだと思います。
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