執筆・編集:カネさん(政経プラスチャンネル運営)
公開日:2026年8月30日 最終更新:2026年8月30日
確認方針:公的資料・会見記録・原資料を優先し、事実、当事者の主張、編集上の評価を分けて記載します。編集・検証方針
佐藤楓・福岡県議は、公式サイトで「第一子の保育料も0才から無償に」と掲げています。子育て世帯には分かりやすい公約です。しかし、北九州市の2026年度予算と保育料表を読むと、これは一議員の提案だけで完結する小規模な施策ではありません。
結論から言えば、現時点の公表資料だけでは、公約の正確な年間費用は算出できません。ただし、北九州市が2026年度予算で見込む「民間保育所入所負担金」だけで5億7,203万3,000円あります。第1子を無償にするなら、この歳入への影響に加え、認定こども園や地域型保育などへの補填も検討しなければなりません。
問われるのは、賛成か反対かより先に、誰を対象にし、県と市がいくらずつ負担するのかです。
佐藤楓県議の公約は「国の無償化」より広い
国の幼児教育・保育無償化は、原則として3~5歳児が対象です。0~2歳児は住民税非課税世帯が中心で、課税世帯の第1子は保育料を負担します。
北九州市は2023年12月から、保育の必要性がある第2子以降の保育料を無償化しました。2026年度には対象施設等を広げ、幼稚園の2歳児保育や認可外保育施設なども含めた「第2子以降の完全無償化」を進めています。2026年8月6日の市長会見では、対象が約4,000人から約5,000人へ増える見込みだと説明されています。
これに対し、佐藤氏の公約は「第1子も0歳から」です。既存制度の延長線上にはありますが、最後に残る自己負担層まで無償化するため、必要額の計算は別になります。

北九州市の第1子保育料は月0円から6万3,300円
北九州市の2026年度保育料表では、3歳未満児の第1子保育料は、世帯の市民税額と保育時間によって決まります。
- 生活保護世帯、住民税非課税世帯:0円
- 市民税均等割のみ課税:月1万2,000円(標準時間)
- 市民税所得割4万8,600円未満:月1万4,100円
- 市民税所得割9万7,000円未満:月2万8,400円
- 市民税所得割23万円未満:月4万9,800円
- 最上位区分:月6万3,300円
つまり、「第1子を無償化する」といっても、すでに0円の世帯まで新たに支出が発生するわけではありません。必要なのは、現在保育料を負担している第1子について、所得階層ごとの人数と月額を掛け合わせる作業です。
予算書で確認できる歳入は5億7,203万3,000円
北九州市の2026年度一般会計予算説明書には、子ども家庭費負担金として6億1,282万円が計上されています。このうち「民間保育所入所負担金」は5億7,203万3,000円です。
この金額が、そのまま第1子無償化の必要額になるわけではありません。認定こども園や地域型保育では、保育料の徴収先や給付の流れが異なります。また、途中入退所、保育短時間、所得変更などもあります。
それでも、少なくとも民間保育所の入所負担金だけで5億円台の歳入があることは、公約の規模を考える出発点になります。第1子の負担をゼロにするなら、失われる保育料収入を何らかの公費で埋めなければ、施設運営や市の財政にしわ寄せが出ます。
既存の第2子無償化予算と単純比較してはいけない
2026年度予算には、「第2子以降の保育料完全無償化事業経費」として1億6,861万4,000円が計上されています。市の子ども家庭局資料でも、対象施設等の拡充事業として1億6,900万円と説明されています。
ただし、この数字を使って「第1子も同程度でできる」とは言えません。第2子は、国の多子軽減で従来から半額または無料だった世帯を含みます。これに対して第1子は、課税世帯では原則として全額負担です。さらに、既存の第2子無償化は、歳出予算だけでなく保育料収入の減少として表れている部分があります。
年度や対象範囲の異なる数字を足したり、人数で単純に割ったりすると、実際の制度費用から離れます。
0~2歳の保育需要は8,696人。ただし第1子人数ではない
北九州市の子ども・子育て支援事業計画は、2026年度の3号認定に関する「量の見込み」を、2歳児2,692人、1歳児3,494人、0歳児2,510人としています。合計は8,696人です。
これは0~2歳の教育・保育需要を示す計画値であり、全員が第1子ではありません。一方、市が説明する第2子以降無償化の約5,000人には、2026年度に広がった幼稚園2歳児保育や認可外保育施設の利用者も含まれます。両者は対象範囲が同じではないため、8,696人から5,000人を引いて第1子人数とする計算はできません。
正確な費用を出すには、少なくとも次のデータが必要です。
- 0~2歳の施設利用者のうち、第1子は何人か
- 第1子のうち、すでに無償の非課税世帯は何人か
- 市民税階層別、標準時間・短時間別の人数
- 保育所、認定こども園、地域型保育、認可外施設ごとの人数
- 県、市、国の負担割合と恒久財源
この内訳がなければ、「数億円でできる」「十数億円かかる」と断定することはできません。
県議にできるのは、市の保育料を直接ゼロにすることではない
北九州市の保育料を決め、徴収する主体は市です。福岡県議一人が北九州市の保育料を直接変更する権限はありません。
一方、県議には、県独自の補助制度や予算措置を議会質問・予算審査で求め、市町村の負担を県費で支える道があります。福岡県はすでに、第3子以降の保育料無償化に取り組む市町村への補助を行っています。第1子まで広げるなら、佐藤氏は県の補助率、対象市町村、年間費用、財源、開始年度を示す必要があります。
公約が県全域を対象とするのか、小倉南区を含む北九州市での先行実施を想定するのかも明らかではありません。ここを曖昧にしたままでは、費用の検証も進みません。
佐藤楓県議に示してほしい5つの数字
公約を実現可能な政策として評価するため、少なくとも次の5点が必要です。
- 対象となる第1子の人数
- 初年度と平年度の事業費
- 所得制限を設けるか
- 県と市町村の負担割合
- 予算要望、議会質問、委員会質疑を行う時期
「子育て支援を進める」という方向性だけでは、予算は組めません。すでに北九州市が第2子以降まで進めた今、佐藤氏の公約を評価する焦点は、第1子へ進むための具体案を出したかどうかです。
よくある質問
第1子の0歳からの保育料無償化には、年間いくら必要ですか?
北九州市は公式の総額試算を公表していません。確認できる数字では、2026年度の民間保育所入所負担金が5億7,203万3,000円です。実際には他の施設類型への補填も検討するため、対象人数と所得階層別の内訳がなければ総額は確定できません。
現在の第2子無償化に1億6,861万4,000円なら、第1子も同額ですか?
同額とは言えません。第2子には既存の多子軽減があり、第1子は課税世帯で全額負担です。また、1億6,861万4,000円は2026年度の対象拡充に関する事業経費で、既存制度全体の費用と同一とは限りません。
佐藤楓県議が実現できる公約ですか?
県議一人が市の保育料を直接変更することはできません。ただし、議会質問、予算審査、会派や他議員との政策提案を通じて、市町村を県費で支える仕組みを求めることは可能です。実現には知事、市町村、県議会内の合意が必要です。
まとめ――「無料にする」だけでは、政策の半分しか見えない
- 佐藤楓県議は「第一子の保育料も0才から無償に」と掲げている
- 北九州市の第1子保育料は月0円から6万3,300円
- 2026年度の民間保育所入所負担金は5億7,203万3,000円
- 0~2歳の保育需要見込みは8,696人だが、第1子人数ではない
- 正確な費用には、第1子人数と所得階層別の内訳が必要
- 県議には、市の保育料を直接変える権限ではなく、県補助と予算を動かす役割がある
第1子無償化は、理念として否定される公約ではありません。だからこそ、必要額を示さないまま期待だけを集めるのではなく、誰がいくら負担するのかを有権者へ提示する必要があります。
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主な一次資料
- 佐藤かえで公式WEBサイト
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」
- 北九州市「子ども・子育て支援新制度における保育料について」
- 北九州市「令和8年4月以降保育料」
- 北九州市「令和8年度一般会計予算に関する説明書」
- 北九州市子ども家庭局「令和8年度当初予算概要」
- 北九州市「第4章 子ども・子育て支援事業計画」
- 北九州市長定例記者会見(2026年8月6日)
- 福岡県「第3子以降保育料無償化事業に関するお知らせ」
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