兵庫県は2025年度決算で実質公債費比率の3か年平均が19.2%となり、起債許可団体へ移行しました。基準となる18%を超えたため、新たな地方債を発行する際に国の許可が必要になります。
財政悪化の原因について、兵庫県の公債費負担適正化計画は4つの要因を示しています。一方、斎藤元彦・兵庫県知事は、用先債の不適切な処理も「主な要因」と説明しています。用先債は4要因に明記されていませんが、知事は県債管理基金の積立不足に含まれると説明しています。
この記事では、県の公式資料と2026年8月19日の知事会見を基に、確認できた事実と動画内の評価を分けて整理します。
▼動画で見たい方はこちら

起債許可団体とは、地方債発行に国の許可が必要な自治体です
起債許可団体とは、自治体が新たに地方債を発行するとき、総務大臣または都道府県知事の許可が必要になる団体です。
判定に使われる主な指標が「実質公債費比率」です。これは、標準的な収入に対し、借金返済に相当する負担がどれほどあるかを表します。3か年平均が18%以上になると起債許可団体となり、公債費負担適正化計画の策定などが必要です。25%以上になると早期健全化基準に達します。
兵庫県の公式発表によると、2025年度決算の実質公債費比率は3か年平均で19.2%でした。県は2026年8月27日に公債費負担適正化計画を総務省へ提出しています。
起債許可団体になったからといって、直ちに財政破綻するわけではありません。ただし、借金返済の負担が重く、地方債発行に国の関与が必要な水準になったことを意味します。今後は投資事業の抑制や県債管理基金の積み立てなど、具体的な改善策が問われます。
兵庫県が示した財政悪化の原因は4つあります
兵庫県の計画案について、2026年8月19日の知事会見では、実質公債費比率が18%以上になった要因として次の4点が確認されています。
- 震災復旧・復興に伴って生じた財政負担
- 過去の高い投資水準に伴う公債費負担の増加
- 長期金利上昇による公債費の増加
- 臨時財政対策債の償還差の縮小
第1の要因は、阪神・淡路大震災後の復旧・復興事業です。長期にわたる県債返済が、現在の財政にも影響しています。
第2は公共投資です。斎藤知事は会見で、平成20年度から令和4年度までの平均では、兵庫県の投資水準が類似団体の1.21倍だったと説明しました。一方、県財政課は、令和8年度当初予算ではすでに類似団体並みに抑えており、そこからさらに10%削減する計画だと述べています。
第3は金利上昇です。地方債の発行利率が上がれば、多額の県債残高を抱える県ほど将来の利払い負担が増えます。
第4の臨時財政対策債は、国の地方交付税不足を補うため自治体が発行する地方債です。償還時の財源措置と実際の返済負担の差が縮小したことも、指標悪化の要因に挙げられています。
この4項目を見る限り、財政悪化は一つの政策や一人の知事だけで生じたものではありません。過去から続く負担に、近年の金利や制度上の変化が重なっています。
用先債は県債管理基金の積立不足に含まれると説明されています
用先債は「公共用地先行取得等事業債」の略称です。将来の公共事業で必要になる土地を、先に取得するために発行する地方債を指します。
2026年8月19日の会見で、関西テレビの記者は、斎藤知事が財政悪化の「主な要因」としてきた用先債が、県の計画案に独立した項目として書かれていないと質問しました。
斎藤知事は、用先債の処理は県債管理基金の残高不足に含まれると回答しました。さらに、用先債の不適切な記載によって残高が膨らんだことは、県債管理基金の積立不足を構成する「大きな要因、主な要因」だとの認識を示しています。
したがって、県の説明は「用先債は無関係」というものではありません。ただし、公式計画の4要因のうち、用先債がどの程度を占めるのかは、会見の説明だけでは数値で把握できません。
用先債の処理に問題があったことと、兵庫県全体の財政悪化に占める比重は別の論点です。責任を検証するには、県債管理基金への具体的な影響額と、震災負担・公共投資・金利上昇など他の要因との比較が必要です。
斎藤県政には今後の数値目標と具体策の説明が必要です
前知事時代から続く負担があることは、現職知事の責任を自動的に否定しません。斎藤知事は2021年に就任し、財政指標の悪化を早い段階から認識していたと会見でも説明しています。
問われるのは、就任後にどの対策を実施し、どこまで改善できたかです。県は投資事業の抑制、県債管理基金の積み立て、税収や税外収入の確保、遊休県有地の売却などを挙げています。しかし、実質公債費比率をいつ18%未満へ戻すのか、県民サービスや職員給与への影響をどう抑えるのかは、今後の具体化が必要です。
動画では、松本創氏のJBpress記事を取り上げ、カラーコピーの原則廃止やペーパーレス化といった節約策だけで、構造的な財政問題に対応できるのかを論じています。これは記事と動画内の評価であり、県の公式認定ではありません。
財政議論では、「前知事の負の遺産」か「現知事の失敗」かという二者択一にすると、改善策が見えにくくなります。過去の処理は検証しつつ、現在の県政が持つ説明責任と将来計画も同時に確認する必要があります。
よくある質問
Q1. 起債許可団体になると、兵庫県は財政破綻したことになりますか?
いいえ。起債許可団体は、地方債発行に国の許可が必要になる状態です。直ちに財政破綻を意味しませんが、借金返済の負担が重いことを示します。実質公債費比率が25%以上になると、早期健全化基準に達します。
Q2. 用先債とは何ですか?
用先債は「公共用地先行取得等事業債」の略称です。将来の公共事業に必要な用地を先に取得する目的で発行する地方債です。兵庫県では、その会計処理と県債管理基金への影響が問題になりました。
Q3. 兵庫県の財政悪化は前知事だけの責任ですか?
県の公式計画は、震災復興、過去の投資水準、金利上昇、臨時財政対策債の4要因を挙げています。前知事時代から続く問題だけでなく、現県政がどのような改善策を取り、何が間に合わなかったかも検証対象です。
まとめ
- 兵庫県の実質公債費比率は3か年平均19.2%となり、起債許可団体へ移行しました。
- 県の公式計画は、震災復興、過去の投資水準、金利上昇、臨時財政対策債の4要因を示しています。
- 斎藤知事は、用先債を県債管理基金の積立不足に含まれる主要な一因と説明しています。
- 用先債が財政悪化全体に占める比重は、他の要因と比較して確認する必要があります。
- 過去の責任だけでなく、現在の改善策、期限、県民生活への影響の説明が重要です。
兵庫県財政は、誰か一人の責任に集約して終わる問題ではありません。県が今後示す具体策と数値を追い、説明と実行が一致しているかを確認していきます。
参照資料・出典
- 兵庫県「公債費負担適正化計画の概要」:https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk20/tekiseikakeikaku.html
- 兵庫県「知事記者会見(2026年8月19日)」:https://web.pref.hyogo.lg.jp/governor/g_kaiken20260819.html
- 兵庫県議会「総務常任委員会」:https://web.pref.hyogo.lg.jp/gikai/iinkai/index/joniniinkai/somu/index.html
- 松本創「“財政のプロ”斎藤元彦知事の兵庫県はなぜ『起債許可団体』に転落したのか」JBpress、2026年9月2日:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/96812
関連記事
noteでも詳しく整理しています
会見での鈴木記者とのやり取りや、斎藤県政5年間の説明責任については、政経プラスのnoteで詳しく整理しています。


