2026年9月5日時点
議員がYouTubeで広告収入を得たり、本を書いて印税を受け取ったりする。それだけで不正とはいえません。ただし、制作費に公費を使っていた場合や、支払う企業が議員の職務と関係する場合には、別の検討が必要です。見るべきなのは、誰の収入か、経費を誰が負担したか、何に対する支払いかです。
議員報酬、政務活動費、政治資金を分けて考える
議員に関わるお金は、すべて同じ性質ではありません。個人の口座か団体の口座かという確認に加え、お金の目的を確かめる必要があります。
| お金の種類 | 基本的な性質 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 議員報酬・歳費 | 議員として支給される報酬 | 活動経費の実費精算とは区別する |
| 政務活動費など | 定められた活動の経費に充てる公費 | 使途基準、領収書、精算 |
| 政治団体の資金 | 団体の政治活動に関わる収入・支出 | 寄附の規制、収支報告 |
| 個人・法人の事業収入 | 動画配信、出版、講演などの収入 | 契約主体、経費、税務、公費との接点 |
政治団体のお金は、そのまま議員個人の所得になるわけではありません。また、政治資金のすべてが税金でもありません。逆に、個人名義の契約だから、公費との関係を調べなくてよいともいえません。
例えば、議員報酬を受け取った人が私費でカメラを買う場合と、用途の定められた政務活動費で買う場合では、確認するルールが違います。地方議員の報酬は地方自治法203条、政務活動費は同100条14~16項を基礎とし、後者は条例で対象経費などを定めます。国会議員の活動経費には別の制度があり、地方議会のルールをそのまま当てはめることはできません。地方自治法
図:収入の種類だけで結論を出さず、お金と活動の関係を確認します。各制度の資料を基に編集部作成。2026年9月5日。個別の適法性を判定する図ではありません。
YouTubeだけでなく、印税・講演料・有料記事にも接点がある
媒体が変わっても、公費を使った活動が個人の収益につながることはあります。次の表は、特定の議員について確認した疑惑ではなく、収入の形ごとに調べる点を整理したものです。
| 収入の形 | 確認したい接点 |
|---|---|
| YouTube・ブログの広告収入 | 撮影・編集・取材費の負担、収益を受け取る主体 |
| メンバーシップ・有料note・有料メルマガ | 提供する内容、公費で作った資料や映像の利用 |
| 原稿料・印税 | 執筆契約、調査や制作の費用、団体による購入の有無 |
| 講演料・出演料 | 依頼者、出演の実態、旅費などの負担 |
| 企業案件・広告契約・アフィリエイト | 対価の内容、広告表示、企業と職務との関係 |
| 会社役員報酬・不動産収入・配当など | 兼業等の制限、資産等の報告、職務上の利害関係 |
以下は仮の例です。私費で撮影した解説動画に広告が付く場合と、公費で開いた報告会の映像を個人チャンネルで収益化する場合では、経費との結び付きが違います。公費で作った冊子を有料記事に再編集する場合にも、成果物の利用条件を確認する必要があります。
一方、公務を通じて知識が増えたというだけで、後の著書の印税をすべて公費へ戻すべきだとするのも飛躍です。具体的な映像や資料の再利用と、経験・知名度を通じた間接的な利益は、分けて検討したいと考えます。これは本稿の制度評価です。
東京都議会の説明も「他の媒体」を含む
東京都議会は、政務活動費を使った活動を個人事業に利用して収益を得た場合、会派へ還元して政務活動費から控除すべきだと説明しています。その扱いはYouTubeに限らず、他の媒体も含め、全会派・議員に共通して求めるとしています。これは東京都議会側の見解であり、全国の議員の副収入を一律に禁止する法律や判決ではありません。東京都議会の説明
併せて、8月25日付の協議会意見は、今回の審査ではこの見解の対象となる支出を確認せず、全会派が適正に処理したとしています。問題提起と、不適切な支出が確定したという話は区別しなければなりません。協議会の意見
費用の按分は「経費のどこまでを公費で負担するか」、収益の控除は「得られた収益を精算にどう反映するか」という別の問いです。両方を使うなら、同じ事情を重ねて調整していないか、私費の制作費をどう扱うかまで説明が必要でしょう。全国共通の控除率や、収益を何年間追跡するかという統一基準は、今回の調査では確認できていません。
「副業だから自由」で終わらない、三つの確認
収入を得る行為そのものの制限、公費の使途、政治活動への支払いは、それぞれ別に確認します。
兼業や自治体との取引に制限はないか
地方議員には、地方自治法92条の2による、自分が所属する自治体への請負などの制限があります。議員個人の請負は、各会計年度に支払いを受ける対価の総額300万円以下なら同条の禁止対象から除かれますが、これは副収入全般の上限が300万円という意味ではありません。法人の役員等の扱いや、自治体独自の政治倫理条例なども分けて確認します。箕面市の制度説明
「公務員だから副業はすべて禁止」とするのも正確ではありません。地方議員は特別職であり、一般職の職員に関する兼業規制をそのまま適用する立場ではありません。国会議員、地方議員、首長、閣僚等をひとまとめにせず、当人の地位に適用される規定を確認する必要があります。地方公務員法3・4条
商品・サービスの代金か、政治活動への寄附か
本や有料記事の購入代金と、政治活動を支援する寄附は同じではありません。政治資金規正法4条は、寄附を、党費・会費その他の債務の履行としてされるもの以外の財産上の利益の供与等と定義しています。名称だけでなく、何を提供する約束だったのかが確認点になります。政治資金規正法
特に投げ銭は、一括りの説明を避けるべきです。YouTubeはSuper Chatなどについて、メッセージを目立たせる等の機能を説明し、寄付用のツールではないとしています。同時に、適用法や活動によって受け取るお金の扱いが異なり得るとも明記しています。サービス側の呼び名だけで、日本の政治資金規制上の結論は出せません。YouTube公式ポリシー(英語)
政治家個人への政治活動に関する金銭寄附は原則禁止などの制限があり、企業等による政治活動に関する寄附にも受取先の制限があります。したがって「応援金」「会費」「広告料」と記載すれば処理が決まるわけではありません。募集の説明、契約、提供内容、受取主体を照合する必要があります。東京都選挙管理委員会の寄附Q&A
支払う企業と、議員の職務に関係はないか
公費を使っていない場合でも、利益相反は検討対象です。例えば、ある事業者から継続的な広告料や顧問料を受け取り、その事業者に関わる施策を議会で扱う場面では、住民が判断の独立性を確かめられる説明が求められると考えます。
これは、企業との契約があれば直ちに違法という意味ではありません。業務の実態、報酬の根拠、審議等との関係、関与を避ける必要の有無を、適用規定と照らして確認するということです。通常の配信広告と、特定企業が直接依頼する案件も、契約や関与の仕方が異なります。
何を公開すれば、収入と公費の関係を確かめられるか
確定申告、資産等の公開、政治資金収支報告、政務活動費の精算は、それぞれ目的が違います。税金を納めたことだけで、公費の使途や寄附規制の問題まで解消するわけではありません。
国税庁は、動画配信などの収入について原則として事業所得または雑所得(業務)として申告が必要と案内しています。収入と、必要経費を差し引いた所得も区別が必要です。国税庁の申告案内
参議院や東京都議会には、所得等報告書・関連会社等報告書などの閲覧制度があります。ただし、これらは動画一本ごとの売上や制作費を公開する専用制度ではありません。制度ごとの記載対象、対象期間、公開方法を確認する必要があります。参議院の閲覧案内、東京都議会の資産公開
私は、公費と接点のある発信について、次の情報を説明する仕組みが有効だと考えます。以下は全国共通の法定義務を列挙したものではなく、本稿の提案です。
- 運営者・契約主体と、収益が帰属する個人や団体
- 公費で負担した活動・経費と、私費の負担部分
- 対象となる動画・記事等と、収益を確認した期間
- 精算に反映した金額、計算方法、判断の根拠
- 直接のスポンサー等と職務との関係、利害関係への対応
一般向けに全取引や第三者の個人情報まで出す必要があるかは、別の問いです。審査機関が原資料を確認し、住民には対象と計算根拠が分かる形で示す方法も考えられます。議会側も、対象範囲や適用時期を事前に示し、媒体や会派によって扱いが変わらないようにするべきでしょう。
よくある質問
議員の動画に広告が出たら、本人の収益になっていますか?
広告表示だけでは分かりません。YouTubeは、投稿者が収益化を有効にしていない動画にも広告が付く場合があると説明しています。再生回数と推定単価だけで本人の実収入を断定することもできません。YouTube公式ヘルプ
個人チャンネルなら、公費の審査とは無関係ですか?
そうとは限りません。公費を使った活動や成果物を利用していれば、経費負担との関係が検討対象になります。ただし、具体的な精算方法は制度や事実関係によって異なります。
収益を寄附すれば、問題はなくなりますか?
寄附をしても、元の公費支出が適正だったかという問題は残ります。さらに、政治家が選挙区内の人や団体へ寄附する行為には原則禁止の規定があります。「寄附すれば解決」とは言えません。東京都選挙管理委員会の寄附Q&A
議員の発信が収入を生むことと、公費や職務上の立場を適切に扱うことは、両立させるべき課題です。収益化の有無だけで評価せず、費用、契約、支払いの目的をたどれるかを見る。その基準を、YouTubeにも、出版や講演にも共通して持つことが、公平な検証につながると考えます。
政治・行政の仕組みを動画でも読み解く:政経プラスチャンネル
さとうさおり都議をめぐる双方の説明と、公費の精算に関する個別の論点は、note記事「議員のYouTube収益は誰のものか」で詳しく扱っています。
執筆・編集:カネさん/調査・構成補助:ChatGPT
※本稿は公開資料による制度解説です。仮の事例や編集部の提案を含み、特定の議員の収益額や違法性を認定するものではありません。

