自治体の予算は、原則として、知事や市町村長が案を作って提出し、議会が審議して議決します。成立した予算を執行するのは首長側です。
「市長が政策を発表した」だけで予算が成立するわけではありません。住民が関われるのも選挙だけではありません。「誰が提案し、決め、実行するか」を分けて見ていきましょう。
自治体の予算は、首長が案を作り、議会が議決する
予算は、一会計年度の収入と支出の見込みなどを定める計画です。知事や市町村長をまとめて「首長」と呼びます。
| 主体 | 主な役割 | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| 首長と行政組織 | 予算案の作成・提出、成立後の執行 | 首長の発表だけで予算が成立するわけではない |
| 議会 | 予算案の審議・修正・議決、決算の認定 | 議員が行政の担当部署に代わって事業を執行するわけではない |
| 住民 | 選挙、意見・要望の提出、公開資料を使った検証 | 意見の提出だけで予算への計上が決まるわけではない |
地方自治法は、首長の予算作成・執行を第149条、議会の予算議決を第96条で定めています。第211条は、毎年度の予算について年度開始前の議決を求めています。
住民は首長と議会議員をそれぞれ直接選びます。首長の当選で議会の判断まで決まるわけではありません。両者が異なる役割で意思決定を担うのが「二元代表制」の基本です。
根拠:地方自治法第96条・第149条・第211条、日本国憲法第93条
予算案はどう作られる?各部署の要求から首長の判断へ
首長一人ですべての事業を積み上げるわけではありません。年度の初めに備えて組む「当初予算」では、各部署が費用などを整理し、おおむね次の順で作業します。
- 編成方針を決める――収入の見通しや、重点的に取り組む政策を示す。
- 各部署が予算を要求する――必要な事業費と財源の見込みを提出する。
- 財政担当などが査定する――必要性、金額の積算、財源を点検・調整する。
- 首長側が予算案をまとめる――事業の優先順位や規模を判断する。
- 議会に提出する――議会が審議し、議決する。
「査定」とは、要求された事業内容や金額を点検することです。要求額がそのまま予算案に載るとは限りません。
大津市は、10月に編成方針、11月に要求、12月に査定、翌年2月に議会提出、3月に議決という流れを公表しています。時期や査定の段階は自治体によって異なります。大津市「予算編成の流れ」
財源を見ると「やりたい」だけでは決まらない理由が分かる
架空の例として、ある市が図書館の開館時間を延ばすとします。利用者が増えるかだけでなく、人件費や光熱費、職員配置、翌年度以降も続ける費用を見積もります。補助金を使うなら、対象経費や期間、市の負担額も確認します。
使い道が決まった補助金と、自治体が比較的自由に使える一般財源は、同じようには扱えません。「自治体全体にお金があるか」だけでなく、「この事業に使える財源が、継続してあるか」が問われます。
財源の種類と制約は、自治体の財源を詳しく解説した記事で整理しています。施設整備などに借入れを使う場合は、地方債と将来負担の解説もあわせて確認してください。
議会は予算をどこまで変えられる?増額修正もできる
議会は賛成・反対を示すだけでなく、予算案を修正して議決できます。地方自治法第97条第2項は増額も認めており、「議会は予算を減らせるが、増やせない」という説明は正確ではありません。
ただし、首長の予算提出権を侵すことはできません。増額や組み替えは無制限ではなく、元の予算案との関係や修正内容を具体的に確認する必要があります。
予算案を提出することと、修正することは別
議員には条例案などを提出する権限がありますが、第112条は予算をその対象から除いています。議員が当初予算案や補正予算案を提出することと、首長の提出した予算案の修正を求めることは、別の話です。
議員が「この事業の予算を実現した」と発信した場合も、要望や質疑、修正案への関与と、法律上の予算案の提出・議決を分けて読めます。予算案、修正案、会議録、採決結果を照らし合わせれば、どの段階で何が変わったかを追えます。
審議では、対象者、費用の根拠、財源、他の方法との比較、効果の確かめ方が説明されたかにも注目してください。
議会での審査の順序は、地方議会の委員会付託とは?本会議・審査・採決の流れを解説で確認できます。委員会の審査結果と本会議の最終議決を分けて読むための解説です。
予算が成立した後は、首長側が執行し、決算で結果を確かめる
予算の成立は、支払いの完了ではありません。予算に沿って契約や補助金の交付などを進め、実際の事業を行う段階を「執行」といいます。
予算額を必ず全額使うわけでもありません。契約額が見込みを下回れば、使わずに残る額が生じます。一方、議決された目的や金額の区分を無視して、別の事業へ自由に回すことはできません。予算の流用にもルールがあります。
年度途中の変更には補正予算がある
災害、国の制度変更、事業費の変動などで予算を変更する必要が生じた場合、首長は「補正予算」を作成して議会に提出できます。増額だけでなく、減額などの変更も含みます。
予算外の支出などに備えた予備費から充てる方法もあります。ただし、予備費は議会が否決した使途に充てることはできません。何の手続きで対応したかを確認します。
国の予算について、政府案・補正予算・予備費の違いを知りたい方は、予算案・補正予算・予備費は何が違う?ニュースの「○兆円」を使えるお金まで追うをご覧ください。自治体とは議決する機関や根拠法令が異なります。
年度終了後は、実際の収入と支出を決算にまとめます。会計管理者が作成し、首長が監査委員の審査に付して、その意見を付けて議会の認定を求めます。
根拠:地方自治法第149条・第217条・第218条・第220条・第233条
住民はいつ関われる?議決前の意見提出と、執行後の検証
住民は意見提出や資料の検証を通じて関われます。ただし、意見を伝える仕組みと、予算を成立させる手続きは別です。
予算案が固まる前に、編成方針と募集情報を見る
自治体によっては、編成過程を公表し、意見を募集しています。多治見市も令和7年度当初予算の編成初期の状況と重点施策について募集しました。これは実施済みの例で、現在受付中ではありません。多治見市「令和7年度当初予算編成の状況」
すべての自治体が同じ方法で募集するわけではありません。公式サイトで「予算編成方針」「予算編成過程」「意見募集」を探し、対象と締切を確認します。担当課に要望の提出先を問い合わせる方法もあります。
議会に請願・陳情を出す
議会に要望を届ける方法として、請願や陳情があります。地方自治法第124条に基づく議会への請願には、議員の紹介が必要です。陳情は紹介議員を必要としないのが一般的ですが、審査や配布などの扱いは議会ごとに異なります。
加古川市議会でも、請願と陳情で審議・審査の時期や扱いが異なります。提出先の議会事務局の案内を早めに確認してください。加古川市議会「請願・陳情」
請願の採択だけで、予算化や事業の実施が保証されるわけではありません。採択後の対応も追ってみてください。第125条には、議会が採択した請願を関係する執行機関へ送り、処理の経過や結果の報告を求める仕組みがあります。地方自治法第124条・第125条
決まった後は「予算額」だけでなく実績を見る
先ほどの図書館の例なら、延長にいくら使い、利用者がどの程度増え、職員の配置に問題がなかったかを確かめます。「お金を使ったか」と「狙った効果があったか」は、別の問いです。
確認する資料は、予算書・事業説明資料、議会の会議録、決算書、主要施策の成果を説明する書類、監査委員の意見などです。自治体全体の財政も含めて調べたい方は、決算カード・財政状況資料集の読み方へ進んでください。
よくある質問
市長の公約なら、議会が反対しても実施できますか?
公約であることだけを理由に、必要な予算の議決や条例の手続きを省くことはできません。一方、既存の予算や権限の範囲で対応できる事項もあるため、政策の内容と必要な手続きを分けて確認します。
議会が反対したら、首長は予算を専決処分できますか?
単に反対されたことを理由に、自由に専決処分できるわけではありません。地方自治法第179条の専決処分は、特に緊急で議会を招集する時間的余裕がないことが明らかな場合など、法律の要件を満たす必要があります。処分後は次の会議に報告し、承認を求めます。また、議決に異議がある場合には、同法第176条の再議という、議会に審議のやり直しを求める制度があります。地方自治法第176条・第179条
年度が始まるまでに予算が成立しなかったら、どうなりますか?
一定期間に必要な予算を組む「暫定予算」という仕組みがあります。首長が作成して議会に提出するもので、前年度の予算がそのまま自動延長されるわけではありません。本予算が成立すると暫定予算は効力を失い、それに基づく支出などは本予算に基づくものと扱われます。地方自治法第218条第2項・第3項
まとめ――「発表・議決・執行・決算」を分けて読む
- 首長が予算案を作成・提出し、議会が審議して議決するのが基本です。
- 議会は増額修正もできますが、首長の予算提出権を侵すことはできません。
- 予算成立、実際の支出、事業の成果は、それぞれ別の段階です。
- 住民は編成時の意見提出、請願・陳情、執行後の資料確認などを通じて関われます。
「誰が実現したのか」という発信に接したら、まず元の予算案と議決結果を比べてみてください。決算と事業の成果まで追うと、約束から実施までの道筋を確認できます。
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確認日:2026年9月4日。都道府県・市町村の予算を中心とする一般的な制度解説です。個別の予算修正や専決処分の適法性を判断するものではありません。
執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT(gpt-5.6-sol/xhigh)
AIは構成、論点整理、一次資料確認を補助し、最終的な編集・公開判断はカネさんが行います。

