記事タイプ:現行解説・運休と2パイロット制
兵庫県内のドクターヘリ2機で、整備士不足による断続的な運休が続いています。
7月の全面運休は回避されました。しかし、「安定運航に戻った」という意味ではありません。7月22日時点で、公立豊岡病院を基地とする3府県ドクターヘリは7月24日まで停止中です。兵庫県ドクターヘリも7月23日から26日、7月30日から8月3日まで停止する予定です。
兵庫県は、整備士に代えて別の操縦士が機体に同乗する「2パイロット制」を、8月以降に順次導入する方針を示しました。運休日を減らすための臨時措置ですが、訓練の進み方や8月の具体的な運航日程はまだ確定していません。
この記事では、前回の動画と記事から何が変わったのか、2パイロット制で誰が何を担当するのか、ヘリが飛ばない日はどう救急搬送を補うのかを、公表資料から整理します。
先に結論|全面運休は回避したが、安定運航はまだ確認できない
7月22日時点で確認できる結論は、次の四つです。
- 3府県ドクターヘリと兵庫県ドクターヘリは、7月にそれぞれおおむね2週間程度の運航を確保した。
- 運航できない日は、別のドクターヘリ、消防防災ヘリ、ドクターカー、救急車で補う。
- 県は8月以降、2027年3月までの臨時措置として2パイロット制を順次導入する方針を決めた。
- 8月の開始日と運航日数、代替搬送が通常時と比べてどこまで機能したかは、今後の公表を待つ必要がある。
「全面運休を避けたこと」と「必要な日に確実に飛べる体制を取り戻したこと」は、分けて読みます。
7月はいつ運休するのか
関西広域連合が7月2日に公表した停止日程は、次のとおりです。
| ヘリ | 基地病院 | 7月から8月初めの停止期間 |
|---|---|---|
| 3府県ドクターヘリ | 公立豊岡病院 | 7月15日11時~24日13時、7月27日11時~30日13時 |
| 兵庫県ドクターヘリ | 県立加古川医療センター | 7月9日12時~13日13時、7月16日12時~19日13時、7月23日12時~26日13時、7月30日12時~8月3日13時 |
3府県ドクターヘリは兵庫県北部、京都府北部、鳥取県をまたいで運航しています。兵庫県ドクターヘリは、県立はりま姫路総合医療センターを準基地病院として県内の救急医療を支えています。
停止期間が細かく分かれているため、「7月は飛ぶ」「7月は飛ばない」という二択ではありません。救急要請があった日時に、どの機体が運航中で、代替機が使えるかが問題になります。
8月以降の「2パイロット制」とは
従来のドクターヘリでは、操縦士に加えて整備士が機体に同乗します。整備士は基地で機体を点検するだけでなく、飛行中のナビゲーションや無線通信、機長の補佐なども担います。
厚生労働省は2026年3月31日、都道府県が必要と判断した場合、安全を確保したうえで、臨時的に整備士に代えて操縦士を同乗させても差し支えないと通知しました。兵庫県はこの通知を使い、県内2機に2パイロット制を導入します。
| 項目 | 従来 | 2パイロット制 |
|---|---|---|
| 機体への同乗 | 操縦士+整備士 | 操縦士+操縦士 |
| 飛行中の機長補佐 | 整備士 | 2人目の操縦士 |
| ナビゲーション・無線通信 | 整備士が支援 | 2人目の操縦士が支援 |
| 飛行前・飛行後の点検 | 基地病院の整備士 | 引き続き基地病院の整備士 |
| 飛行先での飛行間点検 | 資格を持つ機長など | 必要な教育と試験を終えた機長が実施し、同乗操縦士が補助 |
ここで注意したいのは、2パイロット制が「整備士なしで運航する制度」ではないことです。飛行前と飛行後の点検は、引き続き基地病院に配置された整備士が行います。整備士は同乗せず、基地で整備業務に集中する設計です。
4人の操縦士は、どのような訓練を受けるのか
県の資料では、2人目として同乗する操縦士は4人です。全員が事業用操縦士免許と航空無線通信士の資格を持ち、ドクターヘリに同乗する整備士と同じ内容の座学と実務訓練を受けます。
訓練内容には、医療機器の取り扱い、燃料管理、機長の補佐、消防との連携、ストレッチャーの取り扱い、感染予防などが含まれます。実働訓練は8回以上で、基準に届かなければ9回、10回と続け、現場で対応できると確認されてから配置されます。
県は、訓練を終えた人から8月以降に順次搭乗させ、9月中に4人全員の研修を終える予定です。7月下旬の運航対策検討会で、訓練の進捗と8月の運航見込みを報告するとしています。
したがって、現時点で「8月から運休がなくなる」とは断定できません。県の見通しは、訓練が予定どおり進み、機体不具合などが起きないことを前提にしたものです。
飛行先で不具合が見つかったらどうするのか
7月9日の対応協議では、飛行先で整備が必要な不具合が見つかった場合、患者を救急車などの陸路搬送に切り替え、機体を基地病院に戻して整備する方針が説明されました。
県によると、これは2パイロット制だけの対応ではありません。ヘリに積める工具や交換部品には限りがあるため、整備士が同乗していても、その場で直せない不具合なら同じ対応になります。
県の資料では、2025年度の出動回数と機体不具合は、3府県ドクターヘリが1,160件中3件、兵庫県ドクターヘリが411件中4件でした。このうち飛行間点検で対処できたものは3府県ドクターヘリの1件とされています。
この数字だけで安全性を断定することはできません。導入後は、運休が何日減ったかだけでなく、不具合、陸路への切り替え、出動中止などの継続公表が欠かせません。
ヘリが飛ばない日は、何が代わりになるのか
兵庫県は、運休時のバックアップとして次の体制を示しています。
| 地域・機関 | 主な代替手段 |
|---|---|
| 兵庫県北部 | 鳥取県ドクターヘリ、兵庫県消防防災ヘリ、必要に応じて鳥取県消防防災ヘリ |
| 淡路地域 | 徳島県ドクターヘリ |
| 公立豊岡病院 | ドクターカー1台に加えてDMATカー1台 |
| 県立加古川医療センター | ドクターカー1台 |
| 県立はりま姫路総合医療センター | ドクターカー1台 |
消防防災ヘリは、救急車より搬送時間を短縮できる場合や、現場に医師・医療資機材を運ぶ必要がある場合に、消防本部が出動を要請します。
ただし、代替手段が用意されていることと、ドクターヘリと同じ時間で医療を始められることは同じではありません。別のヘリがほかの事案に出動している場合、天候で飛べない場合、ドクターカーでは道路移動に時間がかかる場合があります。
対策が機能したかは、代替出動件数だけでは判断できません。要請から医師の接触までの時間、医療機関への到着時間、陸路に切り替えた件数も確認対象です。
2027年4月以降は通常体制に戻れるのか
兵庫県は、2パイロット制を2027年3月までの臨時措置と位置づけています。現在の運航事業者からは、4月以降は運休なく運航できる整備士体制を確保できると聞いていると説明しています。
しかし、県自身も「状況は常に変わっている」として、あらゆる可能性を排除せずに体制を確保すると述べています。つまり、4月以降の通常運航は、現時点で確認済みの結果ではなく、運航事業者の見通しです。
厚生労働大臣は6月26日、財政支援、操縦士・整備士の人材確保などを議論する検討会を7月中に立ち上げると表明しました。兵庫県だけの応急対応で終わらせず、国が人材育成、運航ルール、費用負担をどう設計するかも確認点になります。
今後、確認すべき五つの数字
運休問題が解決に向かっているかは、「協議した」「要請した」という発表だけでは判断できません。少なくとも、次の数字が必要です。
- 8月以降の運航日と運休日
- 2パイロット制で運航した日数と出動件数
- 代替ヘリ、ドクターカー、救急車が対応した件数
- 要請から医師接触までの時間と、通常時との差
- 機体不具合、出動中止、陸路への切り替え件数
救命効果や安全性を個別事例だけで評価することはできません。それでも、運航日数と搬送時間を継続して公表すれば、臨時措置が救急医療の空白をどこまで埋めたかを検証できます。
よくある疑問
7月の全面運休は回避できたのですか
はい。県の資料では、2機とも7月におおむね2週間程度の運航が可能になったとされています。ただし、複数の停止期間が残っており、安定運航に戻ったわけではありません。
2パイロット制では整備士がいなくなるのですか
いいえ。整備士は基地病院に残り、飛行前と飛行後の点検、機体整備を行います。機体に同乗していた整備士の補佐業務を、訓練を受けた2人目の操縦士が担います。
ドクターヘリが止まると救急搬送も止まりますか
救急搬送そのものが止まるわけではありません。別のドクターヘリ、消防防災ヘリ、ドクターカー、救急車で対応します。ただし、距離、天候、ほかの出動状況によって所要時間や利用可能性は変わります。
8月から運休はなくなりますか
まだ確定していません。県は、訓練を終えた操縦士から順次2パイロット制に入り、段階的に運休を減らす見通しを示しています。具体的な8月の運航日程は、7月下旬の報告を確認する必要があります。
まとめ|問われるのは「飛んだ日数」だけではない
兵庫県内のドクターヘリは、7月の全面運休を回避しました。一方で、3府県ドクターヘリと兵庫県ドクターヘリには、7月末から8月初めまで停止日が残っています。
県が進める2パイロット制は、整備士不足のなかで運休日を減らすための臨時措置です。基地病院での整備士による点検は続き、訓練を受けた操縦士が機内での補佐業務を担います。
この対応を評価するには、運航日数だけでは足りません。運休日に別の手段で医師をどれだけ早く現場へ届けられたか、不具合や陸路への切り替えがどの程度あったか、2027年4月以降に通常体制へ戻れるかまで追います。
「全面運休を避けた」で検証を終わらせず、救急医療の空白が実際に埋まったのかを数字で確かめる。それが、今回の更新記事で最も伝えたい点です。
参考資料
- 兵庫県「県内ドクターヘリ」
- 兵庫県「県内ドクターヘリの運航体制に関する対応協議」資料
- 兵庫県「県内ドクターヘリの運航体制に関する対応協議」議事概要
- 兵庫県「第1回兵庫県内ドクターヘリ運航対策検討会」資料
- 関西広域連合「3府県ドクターヘリ及び兵庫県ドクターヘリの運航停止について」
- 厚生労働省「ドクターヘリの運航事業者の確保等について」
- 厚生労働省「上野大臣会見概要・令和8年6月26日」
- 政経プラスチャンネル動画
- 関連記事「兵庫県ドクターヘリ問題、厚労大臣への要望に副知事が対応した意味」
関連記事
動画では触れきれなかった資料の細部や、法制度の背景はnoteの「政経プラス」で継続的に整理しています。
関連動画|兵庫県ドクターヘリの運休地域と救急搬送
動画タイトルでは、兵庫県のドクターヘリ運休地域を現地から扱っています。運休の事実、地理的条件、代替搬送、報道や発言者の評価を分けて確認する補助線になります。
【兵庫県政】ドクターヘリ運休地域の現状を現地視察。過酷な地理的条件と進む「変化」報道特集や斎藤知事を応援する連中の裏の声も
動画側の公開情報:2026年06月07日/22:58
※動画タイトル・公開日・動画時間はYouTube公開情報です。動画内の主張や評価は、一次資料・公式発表との照合が必要です。本記事の確認済み事実として追加していません。


