記事タイプ:個別事例・私的情報漏えいの認定と刑事手続の時系列
元西播磨県民局長の私的情報漏えい問題では、第三者委員会が井ノ本知明元総務部長による県議3人への漏えいを認定しました。井ノ本氏は停職3カ月の懲戒処分を受け、2026年2月に書類送検されています。
同年3月、神戸地検は井ノ本氏を起訴猶予、斎藤元彦知事と片山安孝元副知事を嫌疑不十分で不起訴にしました。4月14日には、不起訴処分を不服とする検察審査会への申立てが行われたとサンテレビが報じています。
委員会は、知事と元副知事の指示で漏えいが行われた可能性が高いと判断しました。知事は指示を否定し、片山氏も適切な根回しで違法ではないとの立場を示しています。
委員会の事実認定、県の懲戒処分、刑事手続は、判断する主体と基準が異なります。以下は2026年7月18日時点の記録です。
この記事では、第三者委員会の認定、懲戒処分、書類送検、不起訴、その後の検察審査会申立てまでを時系列で整理します。
※2026年7月18日時点の公表情報に基づいています。
漏えい認定から不起訴・検察審査会申立てまで
- 元総務部長による県議3人への情報漏えいを第三者委員会が認定
- 委員会は知事・元副知事の指示による可能性が高いと判断
- 斎藤知事は漏えいの指示を否定
- 元総務部長には停職3カ月の懲戒処分
- 2026年2月に地方公務員法違反の疑いで書類送検
- 2026年3月、元総務部長は起訴猶予、知事と元副知事は嫌疑不十分で不起訴
- 2026年4月、不起訴処分を不服として検察審査会への申立て
- 第三者委員会の認定と刑事処分は、目的と判断基準が異なる
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動画時間:13分37秒
井ノ本元総務部長の書類送検、第三者委員会の認定、斎藤知事の「指示していない」という発言を並べ、行政上の認定と刑事手続の違いを確認しています。
県議への紙資料の提示と、ネット上の流出は別調査
兵庫県では、元県民局長の私的情報をめぐって二つの情報漏えい問題が調査されました。
一つは、元総務部長が県議に情報を伝えたとされる問題です。この記事で扱うのはこちらです。
もう一つは、県が保有していた情報と同一とみられる内容がインターネット上に流出した問題です。こちらについては別の第三者委員会が調査し、漏えい者は特定できなかったものの、現職の県職員が漏らした可能性が高いと判断しました。
今回の秘密漏えい調査が依頼された範囲は、紙資料による漏えいの有無と漏えい者の特定です。ほかの態様による流出や、再発防止策の提言は、この委員会への依頼に含まれていません。
兵庫県が設置した第三者委員会の全体像は、県の第三者委員会に関する公式ページで確認できます。
県議3人への私的情報の漏えい
第三者委員会は、当時総務部長だった井ノ本知明氏が、2024年4月19日と22日、別の1人には同月中旬までに、二つの会派に所属する県議3人へ元県民局長の私的情報を伝えたと認定しました。
委員会は、私的情報を紙に印刷した資料の一部を見せ、口頭でも一部を説明したと認定しています。
紙を県議に渡したとは認めておらず、県議側が消極的に対応したため、具体的内容を実際に認識したかには留意が必要とも述べています。
元県民局長の私的情報は、県が回収した公用パソコンなどから把握したものです。本来、職務上知り得た個人情報は、目的外で利用したり、関係のない第三者に伝えたりすることが厳しく制限されます。
第三者委員会は、この行為について正当な職務行為とは認められないと判断しました。
詳しい認定内容は、兵庫県が公開した秘密漏えい疑いに関する第三者調査委員会の調査報告書に記載されています。
第三者委員会が認定した内容
元総務部長による漏えい行為
第三者委員会は関係者約20人から聞き取りを行い、井ノ本元総務部長が県議3人に私的情報を伝えた事実を認定しました。
井ノ本氏は当初、漏えいを否定していましたが、2025年2月の聞き取りで説明を変更。県議に情報を伝えたことを認めたうえで、知事や元副知事から指示を受けた正当な業務だったという趣旨の説明をしています。
委員会は、知事らの指示を受けたという説明を踏まえても、漏えいを正当な職務行為とは認めませんでした。
知事・元副知事による指示の可能性
第三者委員会は、知事と元副知事の指示によって漏えいが行われた可能性が高いと判断しました。口頭説明にとどめるか、どの資料をどの程度見せるかという具体的な方法は、井ノ本氏の判断によったとしています。
第三者委員会が「知事や元副知事の指示で行われた可能性が高い」と判断した点は、動画の該当チャプターから確認できます。1分51秒から見る
委員会は、情報提供の目的について、元県民局長や告発文書の信用性を低下させる狙いがあったと評価しています。
斎藤知事は一貫して、漏えいの指示を否定しています。片山氏も、適切な根回しで違法性はないと否定していたと神戸新聞が報じています。
2025年5月28日の記者会見でも、斎藤知事は「漏えいを指示した事実はない」という立場を示しました。
委員会の判断と当事者の否認は、両方を記録する必要があります。
委員会の認定は行政上の重要な事実認定で、刑事責任は別の手続で判断されます。
元総務部長への懲戒処分
兵庫県は第三者委員会の報告書を公表した2025年5月27日、井ノ本元総務部長を停職3カ月の懲戒処分としました。
斎藤知事は、懲戒権者として処分を了承したと説明しています。
県はこの時点で、井ノ本氏を刑事告発しない方針を示しました。すでに氏名が公表され、懲戒処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けていることなどが理由とされました。
しかし、その後、県議や大学教授らによる刑事告発が別のルートで行われ、警察や検察の捜査へ進みました。
時系列で見る情報漏えい問題
2024年4月
第三者委員会は、井ノ本総務部長による県議3人への紙資料の提示と口頭説明を認定。1人には4月19日、1人には22日、もう1人には同月中旬までに行ったとしています。
2024年10月
兵庫県が「秘密漏えい疑いに関する第三者調査委員会」を設置。
2025年3月31日
第三者委員会が兵庫県に調査報告書を提出。
2025年5月27日
兵庫県が第三者委員会の報告書を公表。同日、井ノ本元総務部長を停職3カ月の懲戒処分としました。
2025年6月10日
上脇博之・神戸学院大学教授が、井ノ本元総務部長、斎藤知事、片山元副知事を地方公務員法違反の疑いで刑事告発。
2025年8月
上脇教授の告発が神戸地検に受理されました。これとは別に、長瀬猛県議が井ノ本元総務部長を告発し、兵庫県警が受理しています。
2026年2月13日
兵庫県警が井ノ本元総務部長を地方公務員法の守秘義務違反の疑いで書類送検。警察は、容疑を認めているかどうかや、起訴を求める意見を付けたかどうかを明らかにしませんでした。
2026年3月27日
神戸地検が関係者3人を不起訴処分としました。
- 井ノ本元総務部長:起訴猶予
- 斎藤知事:嫌疑不十分
- 片山元副知事:嫌疑不十分
井ノ本氏については、検察も正当な根回しの範囲を超えた違法な漏えい行為と判断したと報じられていますが、諸事情を考慮して起訴を見送る起訴猶予となりました。
斎藤知事と片山元副知事については、漏えいを指示したことを刑事事件として立証する証拠が不十分だったと判断されています。
2026年4月14日
上脇教授が不起訴処分を不服として、神戸検察審査会へ申立てを行ったとサンテレビが報道。
2026年7月18日時点で確認できる公表資料の範囲では、検察審査会の最終的な議決は公表されていません。
書類送検と不起訴の意味
書類送検とは、警察が捜査した事件の書類や証拠を検察に送る手続です。
送検後、検察が起訴するかどうかを判断します。起訴された事件の有罪・無罪を決めるのは裁判所です。
井ノ本氏の起訴猶予は、検察が諸事情を考慮して起訴を見送った結果です。裁判所が有罪を認定した判決とは異なります。
斎藤知事と片山元副知事については、嫌疑不十分とされています。これは、犯罪への関与を刑事裁判で立証するだけの証拠が十分ではないと検察が判断したことを意味します。
不起訴は、検察が刑事責任を問うための手続で下した判断です。委員会の認定すべての取り消しや、有罪確定を意味するものではありません。
委員会は漏えいの事実、捜査機関は刑事責任を調べる
第三者委員会と捜査機関では、調査の目的と判断基準が異なります。
今回の秘密漏えい委員会は、紙資料による漏えいの事実と漏えい者を調べました。調査自体は懲戒手続の一部ではなく、県は処分を別に判断します。再発防止の提言も、委託の対象外でした。
一方、警察と検察は、特定の人物を刑事責任に問えるだけの証拠があるかを判断します。起訴した場合には、刑事裁判で犯罪を立証しなければなりません。
そのため、第三者委員会が「指示があった可能性が高い」と判断しても、検察が「刑事裁判で立証できる証拠は不十分」と判断することはあり得ます。
行政上の責任、政治上の責任、刑事上の責任は、それぞれ分けて検討する必要があります。
告発者の私的情報を、誰が何のために使ったか
私は、県が得た私的情報の使い道と、通報者を守る仕組みを検証すべきだと考えています。本人の私生活の是非を面白半分に取り上げるべきではありません。
検証すべきなのは、県が職務上把握した個人情報が、誰の判断によって、誰に、どのような目的で伝えられたのかです。
告発を行った人物の私的情報が、その人物や告発内容の信用性を低下させる目的で利用されれば、将来、不正を知った職員が声を上げることをためらう原因になります。
「告発すれば私生活まで調べられ、外部に広められるかもしれない」という恐怖が生まれれば、公益通報制度は実質的に機能しません。
県には、情報が扱われた経緯と組織の責任を説明することが求められます。
県に残る指示経路・情報管理・再発防止の説明責任
今回の問題には、現在も複数の論点が残されています。
- 漏えいを誰が発案し、どのような経路で指示したのか
- 県内部の調査と懲戒処分は十分だったのか
- 個人情報を扱える職員の範囲は適切だったのか
- 告発者を特定し、私的情報を調査した一連の対応は妥当だったのか
- 県議に伝えられた情報が、その後どこまで共有されたのか
- 検察審査会が不起訴処分をどのように判断するのか
- 同様の漏えいを防ぐため、県がどのような再発防止策を実施するのか
検察の不起訴判断が出た後も、県には指示の経路、情報管理の点検、再発防止策を説明する責任が残ります。
よくある質問
斎藤知事が漏えいを指示したと確定したのか
委員会は指示による可能性が高いと判断し、知事は否定しています。刑事手続では、知事と片山氏は嫌疑不十分で不起訴となりました。
有罪を確定する裁判所の判断が出たという意味ではありません。
井ノ本元総務部長は有罪になったのか
井ノ本氏に対する検察の判断は、起訴猶予です。
地方公務員法違反の疑いで書類送検された後、起訴されていません。刑事裁判の有罪判決はありません。
県議への漏えいとネット上への漏えいは同じ事件か
別の問題として調査されています。
県議への情報提供は井ノ本元総務部長によるものと認定されました。インターネット上への漏えいは、別の第三者委員会が調査しましたが、漏えい者は特定されていません。
不起訴処分は確定しているのか
検察は不起訴処分を出しました。その判断を不服として、上脇教授が4月14日に検察審査会へ申立てを行ったと報じられています。
検察審査会は、くじで選ばれた11人の市民が不起訴処分の妥当性を審査する制度です。申立ては審査を求める手続で、処分を直ちに覆すものではありません。
一次資料・参考資料
- 秘密漏えい疑いに関する第三者調査委員会の調査報告書|兵庫県
- 兵庫県が設置した第三者委員会の概要|兵庫県
- 斎藤知事記者会見・2025年5月28日|兵庫県
- 元総務部長の漏えいと第三者委員会の認定|神戸新聞
- 井ノ本元総務部長を書類送検|神戸新聞
- 関係者3人を不起訴処分|神戸新聞
- 不起訴処分を検察審査会へ申立て|サンテレビ
- 検察審査会制度について|裁判所
内部リンク
- 兵庫県告発文書問題とは|全経緯を時系列で整理
- 井ノ本元総務部長はなぜ競馬組合へ?停職後の人事を検証
- 公益通報者の情報はなぜ守られるのか
- 兵庫県の第三者委員会報告はなぜ争点に?
- 公益通報者保護法とは|わかりやすく解説
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兵庫県告発文書問題|公益通報・第三者委員会を動画で整理
公益通報への初動、第三者委員会の認定、私的情報漏えい、県側の説明を動画で順に確認できます。
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