元西播磨県民局長の私的情報が県議へ伝えられた問題で、兵庫県の第三者調査委員会は、当時の総務部長だった井ノ本知明氏による漏えいを認定しました。県は井ノ本氏を停職3か月の懲戒処分としましたが、処分期間の終了後、井ノ本氏は兵庫県競馬組合の副管理者へ異動しています。
元動画では、この人事を「懲戒処分を受けても、トップの弱みを握れば出世できる」と強く問題提起しました。しかし、2026年7月時点の資料を確認すると、「出世」と断定できる人事かどうかは慎重に分ける必要があります。
確認できるのは、競馬組合副管理者が部長級であり、県が降格として扱わなかったことです。一方、井ノ本氏は2026年3月に不起訴となりましたが、処分理由は「嫌疑不十分」ではなく「起訴猶予」でした。
重要なのは、刺激的な呼び方ではありません。情報管理を担っていた県幹部への懲戒処分と、その後の人事配置にどのような整合性があるのか。県が県民に説明できているかが論点です。
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【魔境】親に「辞めておけ」と言われる、知事への信頼が最低、懲戒処分を受けてもトップの弱みを握れば出世できる兵庫県庁…集英社オンラインの渾身の記事が突きつける、兵庫県庁と斎藤知事の異常性
※今回扱う部分は、動画の6分00秒から9分20秒付近です。
動画後に確認できた更新
| 確認項目 | 元動画で扱った状況 | 2026年7月17日時点の更新 |
|---|---|---|
| 井ノ本氏の刑事手続 | 検察が漏えい行為を認定したとの報道 | 2026年3月27日、神戸地検が不起訴処分。理由は起訴猶予 |
| 知事・元副知事 | 漏えい指示の疑い | 神戸地検は指示を認定する証拠が足りないとして嫌疑不十分 |
| 検察審査会 | 動画公開時点では結論なし | 告発者が2026年4月14日に審査を申し立て。議決は確認できず |
| 競馬組合への人事 | 副管理者として在職 | 2026年5月13日の公式会見で知事が異動先を認め、「適材適所」と説明 |
| 「出世」という評価 | 動画内で問題提起 | 副管理者は部長級だが、昇進だったとする公式資料は確認できず |
動画公開後の大きな更新は、神戸地検の不起訴処分と、検察審査会への申し立てです。
ただし、不起訴になったことだけを見て「漏えいはなかった」と結論付けることも、起訴猶予だったことだけを見て「有罪が確定した」と書くこともできません。刑事裁判が開かれておらず、有罪判決も出ていないからです。
私的情報漏えい問題の経緯
問題となったのは、元西播磨県民局長の公用パソコンに保存されていた私的情報です。
兵庫県が設置した第三者調査委員会は2025年5月、井ノ本氏が2024年4月に県議3人へ情報を伝えたと認定しました。報告書は、その行為が正当な議会対応の範囲を超える漏えいだったと判断しています。
また、報告書は、斎藤元彦知事と片山安孝元副知事の指示の下で、議会への「根回し」の趣旨で行われた可能性が高いと指摘しました。
一方、斎藤知事は漏えいを指示していないと一貫して否定しています。第三者委員会の認定と知事側の説明が一致していない状態です。
ここで分けるべきなのは、次の二点です。
- 井ノ本氏が県議へ情報を伝えた行為
- その行為を誰が指示したのか
前者については、第三者委員会、兵庫県の懲戒処分、神戸地検の起訴猶予という複数の判断があります。後者については、第三者委員会が「指示の可能性が高い」とした一方、神戸地検は知事と元副知事について指示を認定するに足りる証拠が得られなかったと判断しました。
停職3か月の懲戒処分
兵庫県は2025年5月27日、井ノ本氏を停職3か月の懲戒処分としました。県は、県が保有する情報を外部へ提供した行為が懲戒処分の対象になると判断しています。
地方公務員法34条は、職員に対して職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと定めています。同法上の守秘義務違反が刑事事件として成立するかは捜査機関と裁判所の領域ですが、自治体は刑事裁判とは別に、職員の服務規律に基づいて懲戒処分を行えます。
県は井ノ本氏を刑事告発しませんでした。斎藤知事は当時、停職処分によって社会的・経済的な制裁を受けたことなどを理由として説明しています。
県議会の複数会派は県に刑事告発を申し入れましたが、県が告発を見送った後、大学教授や県議による告発が行われました。
処分後の競馬組合人事
停職期間の終了後、兵庫県は井ノ本氏を2025年9月1日付で、県参事兼兵庫県競馬組合副管理者へ異動させました。
神戸新聞の報道によると、この役職は部長級です。県人事課は「適材適所の判断」と説明しました。2025年9月3日の知事会見では、記者から「なぜ降格ではなかったのか」と問われ、斎藤知事は、処分を受けた上で人事当局が適材適所で判断したという趣旨の説明をしています。
したがって、確認できる事実は次の通りです。
- 停職処分後に職務へ復帰した
- 異動先は兵庫県競馬組合の副管理者だった
- 役職は部長級と報じられている
- 県は降格として扱っていない
- 県は人事理由を「適材適所」と説明している
一方で、給与、権限、部下の人数、政策決定への影響力を前職と比較した公開資料は十分ではありません。そのため、「昇進」「栄転」「左遷」のいずれかを外部から確定するのは困難です。
元動画の「出世できる」という表現は、処分後も部長級の役職に配置されたことへの批判的な評価です。人事上の事実として「昇進した」と断定する表現とは分ける必要があります。
2026年の書類送検と不起訴
兵庫県警は2026年2月13日、井ノ本氏を地方公務員法違反の疑いで書類送検しました。
神戸地検は同年3月27日、井ノ本氏を不起訴処分としました。処分理由は起訴猶予です。報道によると、地検は、プライバシー性の高い情報を公判で明らかにした場合の影響や、本人が受けた社会的制裁などを考慮したと説明しました。
同じ日に、斎藤知事と片山元副知事も不起訴となりました。ただし、こちらは嫌疑不十分です。地検は、井ノ本氏へ漏えいを指示したなどと認定するに足りる証拠が得られなかったとしています。
| 対象 | 不起訴理由 | 意味 |
|---|---|---|
| 井ノ本知明氏 | 起訴猶予 | 起訴できる場合でも、諸事情を考慮して裁判にかけない判断 |
| 斎藤元彦知事 | 嫌疑不十分 | 犯罪の成立を認定する証拠が不十分 |
| 片山安孝元副知事 | 嫌疑不十分 | 犯罪の成立を認定する証拠が不十分 |
三人とも「不起訴」ですが、その理由は同じではありません。
起訴猶予と有罪判決の違い
検察庁は、被疑者が罪を犯したことが証拠上明白であっても、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況などから訴追を必要としないと判断した場合、起訴を猶予して不起訴にすることがあると説明しています。
一方、刑事裁判で有罪を確定するのは裁判所です。起訴猶予では裁判が開かれないため、有罪判決はありません。
このため、動画や報道で使われた「検察の黒認定」という言い方は、起訴猶予と嫌疑不十分の違いを強調する表現ではありますが、法律上の正式な処分名ではありません。
記事では、次のように表現するのが正確です。
- 「井ノ本氏は起訴猶予となった」
- 「地検は公判でのプライバシーへの影響や社会的制裁などを考慮した」
- 「有罪判決や前科があるわけではない」
「犯罪者」「前科がある」と書くのは不正確です。
この点は強く留意する必要があります。
懲戒・刑事・人事の三つの判断
今回の問題が分かりにくい理由は、三種類の判断が重なっているためです。
| 判断 | 決める主体 | 今回の結果 |
|---|---|---|
| 懲戒処分 | 兵庫県 | 停職3か月 |
| 刑事処分 | 神戸地検 | 起訴猶予による不起訴 |
| 人事配置 | 兵庫県など | 競馬組合副管理者へ異動 |
懲戒処分を受けたから必ず刑事裁判になるわけではありません。不起訴になったから懲戒処分が自動的に取り消されるわけでもありません。また、懲戒処分が終われば、法律上は職務へ復帰することもあり得ます。
問題は、それぞれの判断が存在すること自体ではなく、県が判断相互の整合性をどこまで説明しているかです。
情報漏えいで停職処分を受けた幹部を、情報管理と公正性が重要な競馬組合の副管理者へ配置するのであれば、なぜその人物が適任なのか、再発防止策は何か、どのような権限を担当するのかを具体的に説明する必要があります。
「適材適所」で残る説明不足
2026年5月13日の知事会見でも、この人事が改めて問われました。
記者は、競馬組合で通信機器の持ち込みを理由に騎手が処分された事案と比較し、情報漏えいで停職処分を受けた人物を副管理者へ配置することが適材適所なのかと質問しました。
斎藤知事は、井ノ本氏が競馬組合へ異動したことを認めた上で、県の人事行政は適材適所で行っていると回答しました。
ただし、騎手への処分と県職員への懲戒処分は、適用される規則、処分主体、職務、期間の数え方が異なります。二つを単純に並べて「騎手より処分が軽い」と断定することはできません。
それでも、人事判断への疑問は残ります。「適材適所」は結論であって、理由の説明ではないからです。
少なくとも、次の点は説明可能なはずです。
- 競馬組合副管理者として期待した経験と能力
- 情報漏えいの再発を防ぐ権限分担
- 前職から役割と処遇がどう変わったか
- 懲戒処分を人事評価へどう反映したか
- 県民の信頼を回復するための検証方法
個人のプライバシーや人事評価の詳細をすべて公開する必要はありません。しかし、公表済みの不祥事と部長級人事の関係について、一般的な基準と判断理由を示す余地はあります。
検察審査会の現在地
神戸地検の不起訴処分を不服として、告発者は2026年4月14日、検察審査会への申し立て手続きを始めたと報じられました。
検察審査会は、国民から選ばれた11人の審査員が、検察官の不起訴処分が妥当だったかを審査する制度です。議決には「不起訴相当」「不起訴不当」「起訴相当」があります。
2026年7月17日時点で、この情報漏えい事件について検察審査会の議決が公表されたことは確認できませんでした。
したがって、現段階で「刑事手続が完全に終了した」と断定するのは早計です。ただし、申し立てが行われたこと自体は、不起訴が覆ったことや再捜査が決まったことを意味しません。今後の公表を待つ必要があります。
今後見るべき五つの指標
- 検察審査会の議決:不起訴相当、不起訴不当、起訴相当のどれになるか
- 井ノ本氏の役職:2026年度中に人事上の変更があるか
- 県の説明:「適材適所」以外の具体的な理由が示されるか
- 情報管理改革:漏えい防止策が実施され、検証結果が公表されるか
- 懲戒基準の透明性:幹部を含め、一貫した処分基準が示されるか
人事の評価は、人物への好き嫌いで決めるものではありません。確認可能な職位、処分、権限、説明の内容を時系列で追う必要があります。
よくある質問
井ノ本氏は有罪になったのか
有罪判決は出ていません。神戸地検は起訴猶予として不起訴にしており、刑事裁判は開かれていません。
起訴猶予は無実という意味か
嫌疑不十分とは異なります。検察庁は、証拠上犯罪が明白な場合でも、情状や犯罪後の状況などを考慮して起訴を猶予することがあると説明しています。ただし、有罪を確定するのは裁判所であり、起訴猶予を有罪判決と同じように扱うこともできません。
競馬組合副管理者への異動は昇進か
役職は部長級と報じられ、県は降格ではないと説明しています。ただし、前職より権限や処遇が上がったことを示す公開資料は確認できず、「昇進」とは断定できません。
斎藤知事が漏えいを指示したのか
第三者調査委員会は、知事と元副知事の指示の下で行われた可能性が高いと指摘しました。一方、斎藤知事は指示を否定し、神戸地検は指示を認定するに足りる証拠が得られなかったとして嫌疑不十分にしました。判断が分かれています。
井ノ本氏は現在も競馬組合副管理者なのか
2026年5月13日の兵庫県公式会見録では、斎藤知事が競馬組合への異動を認めています。2026年7月17日までに、その後の人事変更を示す公式発表は確認できませんでした。ただし、競馬組合の最新役員名簿を直接確認できる公開資料が見当たらないため、記事では5月13日を最後の公式確認時点としています。
まとめ
- 第三者調査委員会は、井ノ本知明元総務部長が県議3人へ私的情報を漏えいしたと認定した
- 報告書は、斎藤知事と片山元副知事の指示の下で行われた可能性が高いと指摘した
- 斎藤知事は指示を否定している
- 兵庫県は井ノ本氏を停職3か月とした
- 処分後、井ノ本氏は部長級とされる兵庫県競馬組合副管理者へ異動した
- 県は人事を「適材適所」と説明している
- 神戸地検は井ノ本氏を起訴猶予、知事と元副知事を嫌疑不十分とした
- 起訴猶予は有罪判決ではなく、「犯罪者」「前科」と呼ぶのは不正確
- 「出世」と断定できる資料はないが、降格されず部長級へ配置された理由の説明は問われる
- 検察審査会への申し立てが行われ、議決は確認できていない
この問題の核心は、誰かを「黒」か「白」かの二択で決めることではありません。
懲戒処分、刑事処分、人事配置という三つの判断を分けた上で、情報管理を担った幹部をなぜその役職へ配置したのか、県が具体的に説明できるかを見る必要があります。
「適材適所」という言葉だけで終わらせず、判断基準と再発防止策を確認することが、行政組織への信頼を取り戻す第一歩です。
出典・確認資料
- 対象YouTube動画(2026年4月11日公開)
- 集英社オンライン「兵庫県職員採用で辞退率58.9%」
- 兵庫県「秘密漏えい疑いに関する第三者調査委員会の調査報告書」
- 兵庫県「知事記者会見(2025年5月28日)」
- 兵庫県「知事記者会見(2025年9月3日)」
- 兵庫県「知事記者会見(2026年5月13日)」
- 神戸新聞「前総務部長、競馬組合副管理者に」
- テレビ朝日「斎藤知事らを不起訴処分」
- 神戸新聞「不起訴不服、検察審査会へ申し立て」
- e-Gov法令検索「地方公務員法」
- 検察庁「捜査について」
- 裁判所「検察審査会」


