最終確認:2026年8月29日
この記事は、兵庫県第三者調査委員会の報告書、消費者庁の制度説明、知事会見を照合し、委員会が認定した事実・斎藤元彦知事の見解・本記事の評価を分けて整理しています。
筆者が求めるのは、知事が第三者委員会と異なる判断をした根拠を、具体的に示すことです。
元西播磨県民局長が作成・配布した告発文書をめぐり、斎藤知事は、通報者を特定するための「探索行為」について、法律上禁止されているとは考えていないと説明しました。
知事は、告発文書に、真実だと信じるだけの根拠が確認できなかったとして、公益通報者保護法で保護される「3号通報ではない」と説明しました。この根拠の有無を「真実相当性」と呼びます。3号通報は、報道機関や議員など、勤務先や権限を持つ行政機関以外への通報です。
第三者調査委員会は、文書の外部配布を3号通報と認定しました。通報者を特定する探索と、文書の作成・配布を理由とする懲戒処分を違法と判断しています。文書のすべての記述を真実と認めた、という判断ではありません。
斎藤知事の答弁を受け、一度は給与減額条例案への賛成に傾いていた県議会自民党も方針を転換。条例案は、再び継続審議となる方向へ進みました。
今回の動画では、斎藤知事の答弁内容、第三者委員会の判断との食い違い、自民党が態度を変えた背景、そして県議会で続く知事の説明責任の問題について取り上げました。
- 第三者委員会は外部通報と認定、知事は保護対象を否定
- 斎藤知事の給与減額案に自民党が反発
- 「探索行為は法律上禁止されていない」
- 当時の法律と法定指針に照らし、探索の必要性を検討する
- 「保護される3号通報ではない」と断言
- 知事らが関わった内部調査と、外部委員会の判断を照合する
- 知事は、報告書のどこに異論があるかを示す必要がある
- 自民党県議団の不満が噴出
- 給与減額で何の責任を取るのか
- 関係団体や県民との信頼関係をめぐる質問
- 支持者による攻撃的な言動への対応
- 批判する県民にも、根拠を示して説明する責任
- 第三者委員会と異なるなら具体的な反論を
- 補足:条例案は4度目の継続審議に
- 問われているのは県政への信頼
- 重要ポイント
- 関連解説|改正法と全体時系列
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第三者委員会は外部通報と認定、知事は保護対象を否定
委員会は、外部への文書配布を3号通報と整理し、探索と、文書の作成・配布を処分理由にした部分を違法と判断しました。これに対し、3月27日の退職留保や県民局長の職を解く人事は、裁量の範囲内で、違法とまでは認定していません。報告書は、対応ごとに評価を分けています。
知事は、県議会や会見で、文書に真実相当性が確認できないとして、県の対応は適切だったという見解を維持しています。委員会の評価と、知事の説明は食い違っています。
筆者は、知事がどの認定を受け入れ、どこに異論があり、その根拠は何かを具体的に説明する必要があると考えます。
確認した一次資料
第三者調査委員会報告書(第9〜12章・公益通報への対応の評価)
斎藤知事の給与減額案に自民党が反発
動画の冒頭では、斎藤知事が提出している給与減額条例改正案をめぐり、県議会自民党が賛成方針を撤回したという報道を紹介しました。
この条例案は、元西播磨県民局長の公用パソコンに保存されていた私的情報が外部に漏えいした問題について、斎藤知事が組織管理上の責任を取るとして提出したものです。
内容は、知事の給与を3カ月間、50%減額するというものです。
条例案は2025年6月に提出されましたが、県議会は、情報漏えいの経緯や知事の関与について十分な事実解明が行われていないとして、これまで採決を見送ってきました。
その後、神戸地方検察庁が、情報漏えいを指示した疑いで刑事告発されていた斎藤知事を不起訴としたことなどから、自民党は条例案に賛成する方向へ傾いていました。
少なくとも、情報管理に関する知事の管理責任に限定して減給を認め、長期化する問題に一定の区切りをつけようとしていたと考えられます。
ところが、2026年6月8日の県議会一般質問で、斎藤知事が告発文書問題について従来の見解を改めて強調したことで、状況は一変しました。
「探索行為は法律上禁止されていない」
県議会で問題となった一つ目の答弁は、通報者の探索行為についてです。
元県民局長が告発文書を外部へ配布した後、県は文書を作成した人物の特定を進めました。
斎藤知事は、この対応について、法律上禁止されているとは考えていないという趣旨の説明をしました。
動画内では、この発言について、
「第三者委員会が違法と認定した探索行為を、今も問題ないと考えているのか」
という疑問を示しています。
当時の対応を検討する際は、法律の条文と、法律に基づく指針を合わせて読む必要があります。
公益通報者保護法に基づく指針では、必要性のない通報者の探索を防ぐための措置を取ることが、事業者に求められています。
県の第三者調査委員会も、この指針などを踏まえ、元県民局長を特定するための県の対応を違法と判断しました。
斎藤知事は第三者委員会の報告書を「重く受け止める」と繰り返しています。
それにもかかわらず、報告書の中心的な判断については、現在も認めていない状態です。
当時の法律と法定指針に照らし、探索の必要性を検討する
動画では、斎藤知事の説明について、法律の条文に明確な禁止規定がなければ何をしてもよい、という考え方になっていないかと疑問を呈しています。
行政機関には、法律の条文だけでなく、その法律に基づく指針や制度の趣旨を踏まえた対応が求められます。
公益通報者保護制度は、組織の不正を知らせた人を、通報を理由とする解雇や減給などの報復から守るための制度です。
通報者が特定され、聴取や懲戒処分の対象になるのであれば、ほかの職員は通報することをためらうようになります。
その結果、制度そのものが機能しなくなる可能性があります。
斎藤知事が「法律上禁止されているとは考えていない」と説明するのであれば、第三者委員会が示した法的評価のどこに誤りがあると考えているのかを、具体的に説明する必要があります。
「保護される3号通報ではない」と断言
もう一つ問題になったのが、告発文書の外部配布が「3号通報」に当たるかどうかです。
公益通報者保護法では、通報先によって公益通報を大きく三つに分けています。
- 勤務先など、事業者内部への通報
- 権限を持つ行政機関への通報
- 報道機関や議員など、その他の外部への通報
このうち、報道機関や議員などへの外部通報が、一般に「3号通報」と呼ばれています。
斎藤知事は6月8日の答弁で、告発文書について、真実相当性が確認できなかったため、公益通報者保護法上保護される3号通報ではないと考えているという趣旨の見解を示しました。
ただし、兵庫県が設置した第三者調査委員会は、告発文書の外部配布を3号通報に該当すると判断しています。
そのうえで、通報者を特定する探索と、文書の作成・配布を理由にした処分部分を違法と認定しました。
知事らが関わった内部調査と、外部委員会の判断を照合する
斎藤知事は、告発文書に真実相当性が確認できなかったことを、保護される3号通報ではないとする理由に挙げています。
検証に必要なのは、誰が、どの資料と調査から、真実だと信じる根拠がなかったと判断したかです。
告発文書には、斎藤知事本人や副知事、県幹部の行為に関する内容が記載されていました。
つまり、知事自身が告発の対象となっていました。
その知事の指示を受けた県の内部調査によって、「真実相当性はなかった」と判断し、その結果を根拠に通報者を処分したのであれば、調査の独立性や公平性が問われます。
動画では、
「告発された当事者が、自分たちで調査し、告発には根拠がないと判断したのではないか」
という問題意識を示しています。
第三者委員会は、関係者への聞き取りや資料を確認しました。文書の一部に真実相当性を認め、他の部分では認めていません。例えば、贈答品の一例とパレードの補助金をめぐる記述については、実際の犯罪の認定とは別に、通報者が疑う根拠を認めています。
特に、斎藤知事の言動について、複数のパワーハラスメント行為を認定しています。
県の内部調査だけを根拠に「真実相当性がなかった」と結論づけ続けることには、慎重な検証が必要です。
知事は、報告書のどこに異論があるかを示す必要がある
動画では、第三者調査委員会の調査費用についても疑問を投げかけています。
県は、公費を使って外部の弁護士らによる第三者調査委員会を設置しました。
委員会は、文書の外部配布を3号通報とし、探索と、文書の作成・配布を理由にした処分部分を違法と結論づけています。
しかし、斎藤知事は報告書について「重く受け止める」と述べながら、重要な法的判断は受け入れていません。
動画内で紹介されたSNS上の意見には、
「第三者委員会の結論を受け入れないのであれば、何のために公費を使って調査したのか」
という批判がありました。
第三者委員会の判断は、調査報告書に示された評価です。裁判所の確定判決とは、位置づけが違います。
知事が別の法的見解を持つこと自体は可能です。
ただし、県が自ら設置した第三者委員会の結論を採用しないのであれば、どの事実認定や法律解釈が間違っているのかを説明する責任があります。
「一つの見解」「一つの参考意見」として片づけるだけでは、第三者委員会を設置した意味が分からなくなります。
自民党県議団の不満が噴出
斎藤知事の答弁を受け、県議会自民党議員団は、給与減額条例案への賛成方針を撤回しました。
動画で紹介した報道では、自民党が賛成を検討した対象は、組織の情報管理に関する知事の責任でした。知事が漏えいを指示したかという問題とは、区別されます。
筆者は、知事の答弁によって、条例案を成立させる前提が揺らいだと受け止めています。
動画では、
「知事が何も余計なことを言わなければ、条例案は成立していた可能性が高い」
と指摘しています。
給与減額案を成立させ、問題に一定の区切りをつけようとしていた自民党にとっても、斎藤知事の答弁は受け入れにくいものだったのでしょう。
知事自身の発言によって、成立直前だった条例案が再び継続審議へ戻るという、異例の展開になりました。
給与減額で何の責任を取るのか
今回の条例案をめぐっては、斎藤知事が何について責任を取ろうとしているのかも曖昧です。
斎藤知事が認めているのは、主として組織の情報管理上の責任です。
一方で、知事自身が情報漏えいを指示した可能性や、元県民局長に対する県の対応が違法だったという第三者委員会の認定については、受け入れていません。
そのため、給与を減額したとしても、
- どの行為について責任を認めたのか
- 第三者委員会の違法認定を受け入れたのか
- 元県民局長への処分を見直すのか
- 情報漏えいの真相解明を今後も続けるのか
といった根本的な問題は残ります。
知事は、50%という減額率に加えて、どの行為への責任を認め、何を見直すかを示す必要があります。
関係団体や県民との信頼関係をめぐる質問
動画では、同日の県議会で行われた、県内の関係団体や県民との信頼関係をめぐる質疑も紹介しました。
ひょうご県民連合の小西ひろのり県議は、物価高騰や資材価格の上昇、人材不足などによって厳しい状況にある事業者や働く人々の声に、知事が十分向き合っているのかと質問しました。
短時間であっても、知事と直接話をし、業界や現場の厳しい状況を伝えたいと考えている県民がいる。
その一方で、知事が本当に県民に寄り添っているのか、不安を感じる声もあるという趣旨の指摘です。
小西県議は、関係団体との信頼関係を構築するために、知事が何を意識し、実際にどのような取り組みを行ってきたのか、具体的な説明を求めました。
斎藤知事は、さまざまな指摘を真摯に受け止め、丁寧な発信に努めるという趣旨の答弁をしました。
しかし動画では、質問に対する具体的な実績や行動が十分に示されていないのではないかと指摘しています。
支持者による攻撃的な言動への対応
動画では、斎藤知事を支持する一部の人々による、県議や批判者への攻撃的な発言についても取り上げています。
県議会では、政治家や県民に対する威圧的、差別的、侮辱的な言動について、知事がどのように考え、どのようなメッセージを発するのかが問われました。
斎藤知事は、個別の事案についてのコメントを控えるとしながら、人の心を傷つけるような表現は控えるべきだという趣旨の説明をしました。
筆者は、政治活動でも相手の人格を尊重し、威圧や差別を避けることを求めます。
特に、知事を支持することを掲げる人々が県議や記者、県民を攻撃しているのであれば、知事自身が明確に自制を求めることには意味があります。
動画では、一般論にとどまらず、支持者に向けてより明確なメッセージを発する必要があるのではないかと問題提起しています。
批判する県民にも、根拠を示して説明する責任
斎藤知事をめぐる問題では、知事を支持する側と批判する側が強く対立しています。
しかし、知事に批判的な県議、記者、県民も、兵庫県政の当事者です。
批判的な意見をすべて「反対勢力」「敵」として扱うようになれば、県政の分断はさらに深まります。
知事には、支持する声と批判する声の両方に向き合う責任があります。
自分にとって厳しい意見や不都合な質問にも向き合い、具体的な根拠を示して説明することです。
動画では、斎藤知事が「丁寧に説明する」「真摯に受け止める」と繰り返す一方、実際には従来の見解を反復しているだけではないかと指摘しています。
第三者委員会と異なるなら具体的な反論を
知事が委員会と異なる見解を持つなら、その根拠を示す必要があります。
筆者は、報告書と照合できる説明を求めます。
例えば、次の点を明らかにする必要があります。
- なぜ告発文書は保護される3号通報ではないのか
- 真実相当性がないと判断した根拠は何か
- 告発対象となった県幹部が関与した内部調査に問題はなかったのか
- 第三者委員会のどの事実認定が誤っているのか
- 通報者を特定した行為が、なぜ正当化されるのか
- 元県民局長への懲戒処分を見直さない理由は何か
こうした点に答えず、「県の対応は適切だった」と結論だけを繰り返しても、県民や議会の納得を得ることは難しいでしょう。
補足:条例案は4度目の継続審議に
動画収録後の2026年6月9日、兵庫県議会の総務常任委員会では、給与減額条例改正案を継続審議とすることが決まりました。
継続審議を求めたのは、自民党と公明党の委員です。
日本維新の会と躍動の会の委員は条例案への賛成を主張し、ひょうご県民連合の委員は条例案そのものへの反対を主張しました。
継続審議をめぐる表決は5対5となり、最終的に風早寿郎委員長が継続審議と判断しました。
その後、6月11日の県議会本会議でも、4度目の継続審議が正式に決まりました。
問われているのは県政への信頼
問われているのは、減額率と、責任を認める範囲、制度をどう改善するかです。
県が設置した第三者調査委員会の判断を、知事がどのように受け止めているのか。
公益通報者保護制度を、県として本当に機能させる意思があるのか。
議会や県民からの批判に、具体的な根拠を示して答えることができるのか。
そうした県政運営の根本が問われています。
筆者は、条例案が再び継続審議となった経緯を、知事の答弁も含めて検証したいと考えます。
一度は賛成に傾いていた自民党が方針を撤回した背景には、斎藤知事自身の答弁があります。
知事が自分の見解を主張することは自由です。
しかし、その主張によって議会との溝がさらに深まり、県政への信頼が損なわれているのであれば、説明の方法と内容を改めて考える必要があります。
知事には、第三者委員会の個々の認定に向き合い、受け入れる点と異論のある点を具体的に答えてほしいところです。
重要ポイント
- 斎藤元彦知事は、元県民局長を特定した探索行為について「法律上禁止されているとは考えていない」という趣旨の見解を示しました。
- 告発文書についても、真実相当性が確認できなかったため、公益通報者保護法上保護される3号通報ではないとの考えを示しました。
- 兵庫県の第三者委員会は、文書の外部配布を3号通報と認定し、探索と、文書の作成・配布を理由にした処分部分を違法と判断しました。
- 斎藤知事の答弁を受け、給与減額条例案に賛成する方向だった県議会自民党が方針を撤回しました。
- 給与減額案は、2026年6月11日の県議会本会議で4度目の継続審議となりました。
- 減給額に加えて、知事が委員会の認定にどう答え、どの範囲の責任を認めるかが問われています。
関連解説|改正法と全体時系列
2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法では、通報者を特定するための探索行為の禁止や、通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰などが盛り込まれました。改正内容と本件への意味は「公益通報者保護法とは|わかりやすく解説【2026年12月改正施行】」で整理しています。3号通報の要件は「3号通報とは|外部告発が保護される要件」で整理しています。
ただし、改正法が本件当時へさかのぼって適用されるわけではありません。本件の法的評価は、当時の法律、法定指針、事実関係に基づいて判断されます。告発文書問題全体の経緯は「兵庫県告発文書問題とは|全経緯を時系列でわかりやすく整理【2024〜2026】」をご覧ください。
論点別の解説は「公益通報者保護制度をめぐる兵庫県の対応」「通報者探索と不利益取扱いをどう見るか」「第三者委員会報告書の重要点」もあわせてご覧ください。
動画では触れきれなかった資料の細部や、法制度の背景はnoteの「政経プラス」で継続的に整理しています。


