2026年4月、兵庫県の大卒程度・総合事務職では、採用試験の最終合格者209人のうち123人が入庁を辞退しました。実際に入庁したのは86人で、辞退率は58.9%です。前年の46.0%から12.9ポイント上昇しました。
政経プラスチャンネルの動画では、この高い辞退率と県庁への信頼をめぐる問題を取り上げました。その後、次年度向けの早期SPI枠では、総合事務職の申込者が991人から1099人へ増えています。県も試験制度の見直しや再採用制度を始めました。
ただし、応募者が増えたことと、合格者が最終的に兵庫県庁を選ぶことは別の話です。2026年7月17日時点で確認できるのは採用活動の「入口」の改善であり、辞退率の問題が解消したとはまだ判断できません。
4月の動画から進んだ更新
| 確認項目 | 4月時点の結果 | 7月17日時点の更新 |
|---|---|---|
| 2026年4月入庁 | 合格209人、入庁86人 | 辞退123人、辞退率58.9% |
| 早期SPI枠の申込者 | 2025年度は総合事務職991人 | 2026年度は1099人、108人増 |
| 採用制度 | 早期SPI枠と通常枠を実施 | 防災コースや再採用制度を新設 |
| 現時点で不明な点 | 次年度の合格者数 | 2027年4月の実際の入庁者数と辞退率 |
最も重要な更新は、応募の勢いが落ちていないことです。2026年度の早期SPI枠では、総合事務職の採用予定45人程度に対し1099人が申し込み、申込倍率は24.4倍となりました。
しかし、この1099人は「兵庫県庁への入庁を決めた人」ではありません。受験前の申込者です。前年も991人の申込者がいた一方、早期SPI枠の最終合格者123人のうち81人が辞退しました。採用広報の成果と、最終的に選ばれる職場かどうかは、別々に検証する必要があります。
58.9%の内訳
2026年4月入庁者を対象とする総合事務職の数字は、次のとおりです。
| 区分 | 最終合格者 | 辞退者 |
|---|---|---|
| 早期SPI枠 | 123人 | 81人 |
| 通常枠 | 86人 | 42人 |
| 合計 | 209人 | 123人 |
辞退率は「辞退者123人÷最終合格者209人」で、58.9%です。最終的に入庁したのは86人でした。
ここで注意したいのは、123人分の欠員がそのまま発生したという意味ではないことです。県は辞退を見込み、採用予定数より多くの最終合格者を出しています。問題は「合格者を多めに出したこと」ではなく、合格後に兵庫県庁が選ばれなかった割合と、その理由を継続的に分析できているかです。
大阪・京都との比較
4月9日の知事記者会見で関西テレビの記者が示した近隣府県の数字は、大阪府30.3%、京都府45.5%でした。兵庫県の58.9%は、いずれも上回ります。
| 自治体 | 最終合格者 | 辞退者 | 辞退率 |
|---|---|---|---|
| 兵庫県 | 209人 | 123人 | 58.9% |
| 大阪府 | 175人 | 53人 | 30.3% |
| 京都府 | 156人 | 71人 | 45.5% |
一方、採用区分、試験方式、併願の可否、合格者を出す時期は自治体ごとに異なります。数字だけで職場環境の優劣を決めることはできません。それでも、前年より12.9ポイント上がり、近隣府県より高かった事実は、県が理由を詳しく検証すべき警告材料です。
原因を一つに決められない理由
高い辞退率を、告発文書問題や知事への評価だけで説明することはできません。現在確認できる資料だけでは、個々の辞退理由と県政の混乱との因果関係は立証されていないためです。
考えられる要因は複数あります。
- SPI方式で民間企業や他自治体と併願しやすい
- 兵庫県では早期SPI枠と通常枠を併願できる
- 売り手市場の中で就職先の選択肢が増えている
- 広い県域での異動、勤務地、仕事の内容を比較している
- 給与や働き方、組織風土、将来性への評価が影響する
- 県政をめぐる報道や組織への印象が判断材料になる可能性がある
斎藤知事は会見で、SPIにより複数の試験を受けやすくなったことや、辞退を見込んで多めに合格者を出したことの影響を挙げました。これは制度上の説明として成り立ちます。ただし、早期SPI枠だけで81人、通常枠でも42人が辞退しているため、制度だけで全体を説明できるかは追加検証が必要です。
「親にやめておけ」の情報源
同じ会見では、県内の大学生協への取材として、兵庫県への入庁に不安を訴える学生や、親から「やめておけ」「他のところにしておけ」と説得された例が紹介されました。
この証言は無視できませんが、県全体の学生や保護者を対象にした統計調査ではありません。大学生協の担当者が取材で紹介した事例です。「多くの親が反対している」と一般化するのではなく、採用現場で懸念の声が報告された、と位置付けるのが正確です。
一方で、就職先は本人だけでなく家族も情報を集めて判断します。県庁への評価が採用にどう影響しているかを確かめるには、辞退者への匿名アンケートを行い、他自治体への就職、民間就職、勤務地、待遇、組織風土などの理由を分けて公表する必要があります。
1099人の応募が示すもの
2026年度の早期SPI枠では、総合事務職の申込者が前年の991人から1099人へ108人増えました。警察事務、教育事務、小中学校事務を含めた全体では、採用予定70人程度に対して1325人が申し込んでいます。
これは、兵庫県の仕事への関心が失われたわけではないことを示します。応募を増やすという採用活動の入口では、一定の成果が見えます。
ただし、その後には受験、最終合格、内定承諾、実際の入庁という段階があります。前年の総合事務職では991人が申し込み、782人が受験し、123人が早期SPI枠の最終合格者となりました。申込者数だけを見て採用問題が解決したと判断するのは早計です。
県が始めた採用改革
兵庫県は2026年度の採用試験で、複数の見直しを進めています。
防災コースの新設
大卒程度の通常枠に「総合事務職(防災コース)」を新設しました。2027年4月の採用予定は3人程度です。防災部門を軸にしたジョブローテーションで、災害対応を担う人材を計画的に育てる狙いがあります。
経験者・技術職の受験拡大
経験者向けのSPI3を、会場に集まるペーパーテスト方式からテストセンター方式へ変更しました。総合土木職と建築職では、大学3年生の受験や、大学院進学後の採用を可能にする見直しも行っています。
Rejoin Hyogoの新設
転職、育児、介護などで兵庫県を退職した職員が再び県で働ける「Rejoin Hyogo採用制度」も新設しました。経験者を呼び戻す仕組みは、採用の入口を広げるだけでなく、すでに県の仕事を理解している人材を確保する点で意味があります。
こうした改革は必要です。しかし、受験しやすさだけを改善すると応募者と合格者は増えても、辞退率が上がる場合があります。採用後の働き方や組織への信頼まで改善できるかが次の課題です。
採用から定着へ
県庁の人材確保を測るには、応募者数と辞退率だけでは足りません。入庁した職員が力を発揮し、長く働けるかまで追う必要があります。
県が今後公表すべきなのは、辞退理由の内訳、若手職員の離職状況、配属後の支援、超過勤務、職員のエンゲージメント、管理職への信頼などです。特に、公益通報やハラスメント相談を安心して利用できる環境は、採用広報とは別に実効性を検証しなければなりません。
これは知事への賛否だけの問題ではありません。採用難や早期離職が続けば、防災、福祉、土木、税務、許認可など、県民生活を支える行政機能に影響する可能性があります。現時点で県民サービスが低下したと断定する資料はありませんが、人材確保は県政運営の基盤です。
今後見るべき五つの指標
兵庫県職員の採用が改善したかを判断するには、次の数字を同じ年度ごとに追う必要があります。
- 申込者数:県庁の仕事に関心を持った人の数
- 受験者数:申し込みから実際の受験に進んだ人の数
- 最終合格者数:県が採用候補として選んだ人の数
- 実入庁者数:最終的に兵庫県庁を選んだ人の数
- 定着率:入庁後1年、3年、5年で働き続けている人の割合
2026年度の早期SPI枠では、最初の指標である申込者数は増えました。今後の焦点は、受験、合格、2027年4月の入庁、そして定着へつながるかです。
よくある質問
辞退率58.9%は高い数字なのか
前年の兵庫県46.0%、会見で示された大阪府30.3%、京都府45.5%を上回っています。ただし、採用区分や試験制度が異なるため、数字だけで原因や職場環境を断定することはできません。
123人分の欠員が出たのか
そうとは限りません。県は辞退を見込んで採用予定数より多くの合格者を出しています。確認すべきなのは、採用予定数を確保できたか、必要な職種に配置できたか、入庁後に定着しているかです。
告発文書問題が辞退増の原因なのか
現在の公表資料だけでは因果関係を確認できません。学生や保護者の不安が取材で報告された一方、SPIによる併願のしやすさや民間企業との競争など、複数の要因があります。
申込者が1099人に増えたなら改善したのか
採用活動の入口では改善が見られます。しかし、1099人は申込者数であり、入庁者数ではありません。2027年4月の実入庁者数と辞退率が判明するまで、問題が解決したとは判断できません。
Rejoin Hyogoとは何か
転職、育児、介護などを理由に県を退職した元職員が、再び兵庫県で働くための採用制度です。2026年度に新設されました。
まとめ
- 2026年4月入庁の大卒程度・総合事務職では、最終合格209人のうち123人が辞退した
- 辞退率は58.9%で、前年より12.9ポイント上昇した
- 会見で示された大阪府30.3%、京都府45.5%より高かった
- 次年度向け早期SPI枠の総合事務職は、申込者が991人から1099人へ増えた
- 申込者増は採用の入口の成果だが、実際の入庁と定着はまだ確認できない
- 県は防災コース、試験方式の見直し、Rejoin Hyogoなどを始めた
- 原因を断定するには、匿名の辞退理由調査や若手職員の定着データが必要になる
兵庫県職員の採用問題は、「若者が県庁に興味を持っているか」だけでは測れません。応募した人が受験し、合格後に県庁を選び、入庁後も働き続けられるか。その一連の数字を公開して初めて、採用改革と組織改革の成果を判断できます。
政経プラスチャンネルでは、過去の兵庫県関連動画についても、新しい資料が公表されるたびに現在地を整理していきます。


