兵庫県庁の仮移転が始動|160億円と長期分散の課題

地方自治・兵庫県政

耐震性が不足する兵庫県庁1・2号館から、職員の仮移転が実際に始まりました。

政経プラスチャンネルでは2026年4月、5月以降の暫定移転と、新庁舎の概算事業費約650億円とは別に約160億円の関連経費が見込まれている問題を取り上げました。その時点では多くが「予定」でしたが、7月に入り、財政課、県政改革課、新庁舎企画課などの移転先と執務開始日が公式に公表されています。

一方、約160億円は単なる「引っ越し代」ではありません。民間オフィスへの移転、3号館の改修、新庁舎完成時の備品整備などを含む関連経費の概算です。また、650億円も確定した契約額ではなく、今後の設計や物価変動で見直される可能性があります。

この記事では、4月の動画から何が進み、何がまだ決まっていないのかを、2026年7月17日時点の兵庫県資料で更新します。

▼元動画で見たい方はこちら
https://youtu.be/Q6eqgyCfdHk

4月の動画から進んだ五つの更新

論点4月の動画時点2026年7月17日時点
仮移転5月以降に順次開始する予定7月6日・13日の執務開始部署を県が公表
移転期間段階的な分散移転を計画2027年度まで週末などを使って順次実施
新庁舎基本構想を具体化する段階2026年秋に中間報告、年度末に基本計画を策定予定
事業費新庁舎約650億円、関連経費約160億円いずれも現時点の概算で、最終額は未確定
業務継続分散勤務による防災対応が課題県がBCPと情報セキュリティの見直し必要性を認める

最大の更新は、計画が書類上の予定から実際の移転段階に入ったことです。ただし、民間オフィスを含む本格的な分散配置はこれからも続きます。

7月に始まった具体的な移転

兵庫県が7月13日までに更新した移転スケジュールでは、次の部署が県庁第3号館で執務を始めています。

執務開始日主な課室移転先
2026年7月6日管財課、総務部・財務部総務課、新庁舎企画課兵庫県第3号館
2026年7月13日人事課、法務文書課、財政課、県政改革課兵庫県第3号館

これ以前にも、教育委員会事務局や県民情報センター、職員課などの移転が行われています。県は2027年度まで、原則として週末や閉庁日を利用し、順次移転作業を進める方針です。

移転先は第3号館だけではありません。危機管理部との連携が必要な土木部は生田庁舎、ほかの部局は三宮国際ビル、NTTドコモビジネス神戸大開ビル、六甲アイランドビル、神戸ファッションマートなどへ分散する計画です。

すべての部局が同時に移るわけではないため、県庁を訪れる人は、以前の案内図だけを頼りにすると窓口を間違える可能性があります。県の最新スケジュールで、課室名、執務開始日、移転先を確認する必要があります。

新庁舎650億円と関連経費160億円

兵庫県が2025年12月に策定した基本構想では、新庁舎と県民交流機能などの概算事業費を約650億円としています。有利な地方債などを活用し、県の実質負担は約560億円になるとの試算です。

これとは別に、約160億円の関連経費が想定されています。県の資料で例示されているのは、主に次の費用です。

  • 職員の安全確保を目的とする民間オフィスなどへの暫定移転
  • 県議会フロアを行政フロアに変えるための第3号館改修
  • 新庁舎整備に伴う備品整備
  • 移転期間中の執務環境・通信環境の整備など

したがって、「160億円すべてが引っ越し業者に支払われる」「160億円すべてが民間ビルの家賃」という説明は正確ではありません。

650億円と160億円を単純に合計すれば、現時点の関連事業は約810億円規模になります。ただし、県は650億円を新庁舎等の概算事業費、160億円を別の関連事業費として示しています。設計、移転先との契約、工期、建設物価によって変わるため、「総額810億円で確定」と書くこともできません。

大切なのは、どちらか一方だけを示して安い・高いと結論づけるのではなく、県民負担を見る際には両方の費用区分と財源を確認することです。

旧計画の凍結で高くなったのか

過去動画では、斎藤元彦知事が前県政の再整備計画を凍結したことと、その後の建設費上昇や仮移転費を関連づけ、「当初計画を進めた方が安かったのではないか」という問題提起をしました。

この疑問は検証に値しますが、現時点で「凍結したため○億円高くなった」と確定する資料はありません。

旧計画と現在の計画では、整備する床面積、県民交流機能、外郭団体の入居、働き方、財源、工期が異なります。さらに、建設資材や人件費も変動しています。単純に当時の見積額と現在の見積額を比べても、凍結による増加分だけを取り出すことはできません。

検証に必要なのは、次の資料です。

  1. 旧計画を継続した場合の時点修正後事業費
  2. 凍結・再検討に要した調査費と維持管理費
  3. 仮移転の賃料、改修費、引っ越し費の契約額
  4. 新旧計画の延床面積と機能の差
  5. 国庫支出金、地方債、基金を含む実質的な県負担

現在確認できるのは、「前計画は凍結された」「新計画では650億円と別枠160億円が見込まれる」という事実までです。どちらが最終的に安かったかは、同じ条件に補正した比較がなければ断定できません。

長期分散で問われる行政機能

新庁舎の完成は2030年代前半が想定されています。仮移転が終わっても、新庁舎が完成するまで県庁機能の分散が長期間続く可能性があります。

分散勤務で問われるのは、家賃だけではありません。

  • 災害発生時の対策本部と各部局の連絡
  • 通信障害やサイバー攻撃が起きた場合の代替手段
  • 機密性の高い文書や個人情報の運搬・保管
  • 部局間の会議や決裁に要する時間
  • 県民が複数の窓口を回る場合の案内
  • 職員の通勤経路と交通機関への影響

2026年2月18日の記者会見で、斎藤知事は、分散勤務によってオンライン協議が増え、ウイルスやサイバー攻撃のリスクが一定程度高まるとの認識を示しました。BCPについては総務部を中心に検討を進めていると説明しています。

既存の「兵庫県庁業務継続計画」があることと、分散勤務に対応した計画が完成していることは同じではありません。移転先ごとの非常用電源、通信回線、指揮命令系統、文書持ち出し、来庁者誘導まで具体化されているかが確認点になります。

県民生活への直接的な影響

県庁舎再整備は建物の問題に見えますが、県民への影響は日常の窓口から災害時まで広がります。

まず、訪問先の変更です。担当課が同じ名称でも、移転日を境に所在地が変わる場合があります。郵便物や申請書類を送る際も、県の案内を確認する必要があります。

次に、交通への影響です。2027年5月以降、主要部局が六甲アイランドへ移る計画があり、通勤者の増加による六甲ライナーの混雑が懸念されています。移転先の選定では、賃料だけでなく、公共交通の輸送力と来庁者の移動負担も検証対象です。

そして最も重要なのが災害対応です。耐震性が不足する庁舎から早く移ること自体には、職員と来庁者の安全を確保する意味があります。一方、県政機能が分散することで新しい弱点が生まれないかを、移転と同じ速度で検証しなければなりません。

今後の確認点

県は2026年秋ごろに新庁舎等整備プロジェクト基本計画の中間報告をまとめ、2026年度末に基本計画を策定する予定です。

今後、確認すべきなのは次の六点です。

  1. 約160億円の費目別内訳と契約額
  2. 民間オフィスの賃料、共益費、原状回復費
  3. 物価上昇を反映した約650億円の再試算
  4. 県財政悪化による規模・工程・財源への影響
  5. 分散勤務版BCPと情報セキュリティ対策の公表
  6. 新庁舎完成までの県民窓口と交通対策

兵庫県は県債管理基金の不適切処理を受け、財政健全化と投資抑制も検討しています。しかし、7月17日時点で、新庁舎計画を再び凍結する、または650億円の規模を変更するといった公式決定は確認できません。

財政状況が厳しいから安全対策を止めるという二者択一ではなく、必要な耐震性と業務継続を確保しながら、費用と機能をどこまで公開して合意をつくるかが問われます。

よくある質問

兵庫県庁はすべて移転したのか

まだです。2027年度まで順次移転する計画で、7月17日時点では一部の課室が第3号館などで執務を開始した段階です。

160億円は引っ越し代なのか

引っ越し代だけではありません。民間オフィスへの暫定移転、第3号館の改修、新庁舎完成時の備品整備などを含む関連経費の概算です。

新庁舎の総事業費は810億円で確定したのか

確定していません。約650億円と別枠約160億円を単純合算した規模は約810億円ですが、いずれも現段階の概算で、今後の設計、契約、物価などで変動します。

県庁を訪れる前に何を確認すべきか

担当課の最新所在地と執務開始日です。兵庫県の「暫定的な本庁舎の再編」ページは7月にも更新されているため、古い案内図ではなく最新情報を確認してください。

財政悪化で新庁舎は中止になるのか

7月17日時点で中止の公式決定は確認できません。県は2026年度末の基本計画策定に向けて検討を続けています。今後、財政健全化との調整で規模、工程、財源が見直されるかを確認する必要があります。

まとめ

  • 兵庫県庁1・2号館からの仮移転は、予定段階から実施段階へ移りました
  • 7月6日と13日には、財政課や県政改革課などが第3号館で執務を開始しました
  • 新庁舎の概算事業費は約650億円、別枠の関連経費は約160億円です
  • 160億円は引っ越し代だけでなく、改修や備品整備などを含みます
  • 単純合算は約810億円ですが、最終的な総額は確定していません
  • 旧計画の凍結でどれだけ高くなったかは、同じ条件に補正した比較資料がなければ断定できません
  • 長期分散中のBCP、情報セキュリティ、窓口案内、交通対策が今後の焦点です

4月の動画で示した疑問は、移転が始まったことで、より具体的な検証段階に入りました。次に見るべきなのは「移転したか」だけではなく、実際にいくら契約し、県民サービスと災害対応をどう維持するかです。

政経プラスチャンネルでは、過去動画で扱った兵庫県政の論点についても、公式資料が更新されるたびに現在地を整理していきます。

出典・確認資料

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