「介護保険の2割負担になる人が増えるのではないか」という不安が広がっています。
政府の「骨太方針2026」には、介護保険の2割負担を判定する基準について、2026年度中に結論を出すと明記されました。
ただし、2026年8月時点で、新しい所得基準や実施時期が決まったわけではありません。まずは現在の制度と、審議会で検討されている案を分けて確認します。
現在は原則1割、所得によって2割・3割
65歳以上の介護保険利用者は、所得に応じてサービス費の1割、2割または3割を負担します。
現在の基準は次のとおりです。
| 負担割合 | 主な所得基準 |
|---|---|
| 1割 | 2割・3割の条件に該当しない人。住民税非課税者や生活保護受給者など |
| 2割 | 本人の合計所得金額が160万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額が単身280万円以上。同一世帯に65歳以上の人が2人以上いる場合は合計346万円以上 |
| 3割 | 本人の合計所得金額が220万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額が単身340万円以上。同一世帯に65歳以上の人が2人以上いる場合は合計463万円以上 |
3割の条件に該当する人は3割負担となり、3割には該当しないものの2割の条件を満たす人が2割負担となります。
ここでいう「合計所得金額」は、単純な年金の受取額や給与の額面とは異なります。実際の負担割合は、市区町村から交付される「介護保険負担割合証」で確認してください。
2割負担になると、いくら増えるのか
保険対象となる介護サービスを月5万円利用した場合、単純計算では次のようになります。
- 1割負担:5,000円
- 2割負担:1万円
- 3割負担:1万5,000円
1割から2割になると、この例では月5,000円、年間では6万円の増加です。
ただし、実際の負担額は利用するサービスや加算、高額介護サービス費などによって変わります。ケアマネジャーや市区町村の介護保険窓口に、現在のケアプランを前提とした試算を依頼するのが確実です。
食費や居住費まで「2割」になるわけではない
1割・2割・3割という負担割合は、原則として介護保険の対象となるサービス費に適用されます。
施設を利用する場合の食費、居住費、理美容代などの日常生活費は、サービス費とは別に負担します。また、在宅サービスで支給限度額を超えて利用した部分は全額自己負担です。
低所得の施設利用者には、食費や居住費を軽減する「補足給付」があります。月々の介護サービス負担が一定額を超えた場合には、「高額介護サービス費」の対象になる可能性もあります。
骨太方針2026で決まったこと
政府が決めたのは、介護保険の2割負担の判断基準について、2026年度中に結論を出すことです。
現時点では、次の内容は決まっていません。
- 新しい所得基準
- 2割負担になる人の具体的な範囲
- 制度変更の実施日
- 負担増を抑える措置の内容
「介護保険が一律2割になる」「2027年度から必ず負担が上がる」と断定できる段階ではありません。
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審議会では230万~260万円という案も提示
厚生労働省の審議会資料では、現在の単身280万円以上という基準を広げる「機械的な選択肢」として、単身230万~260万円、65歳以上が2人以上いる世帯では296万~326万円という水準が示されました。
しかし、これは影響を比較するための選択肢です。政府がこの金額への変更を決定したわけではありません。
検討資料では、負担が増える人への配慮策として、次の案も示されています。
- 新たに2割となる人の負担増を、当面は月7,000円までに抑える
- 預貯金が一定額以下なら、申請によって1割負担に戻す
これらも審議会で示された検討案であり、実施が決まった制度ではありません。
なぜ2割負担の対象拡大が議論されているのか
対象拡大を求める側は、介護給付費と保険料が増えるなか、所得に応じた負担を広げ、現役世代を含む保険料の上昇を抑える必要があると主張しています。
一方、慎重な側からは、介護サービスは医療よりも長期間利用する場合が多く、毎月の負担増が利用控えや要介護状態の悪化につながるおそれがあるとの意見が出ています。
預貯金を基準に加える案についても、金融資産を正確に把握できるのか、市区町村の確認事務が重くならないかという課題があります。
今から確認しておきたいこと
介護サービスを利用している本人や家族は、次の点を確認しておくと安心です。
- 介護保険負担割合証に書かれた現在の負担割合
- 毎月利用している保険対象サービスの総額
- 1割から2割になった場合の負担増
- 高額介護サービス費の対象になる可能性
- 施設利用者は食費・居住費の補足給付を受けられるか
負担割合の判定は、市区町村の介護保険担当窓口に確認できます。サービス利用額の試算は、担当のケアマネジャーにも相談できます。
政経プラスの視点
2割負担の基準を見直すなら、政府は「負担能力に応じて」という説明だけでなく、世帯ごとの年間負担額を示す必要があります。
判断材料として必要なのは、少なくとも次の4点です。
- 所得水準ごとの年間負担増
- サービスの利用控えが起きる可能性
- 預貯金確認にかかる行政コスト
- 見直しによって保険料が実際にどの程度抑えられるのか
対象者を増やす一方で、複雑な申請をしなければ軽減を受けられない制度にすると、情報を得にくい人ほど負担が重くなります。基準だけでなく、申請方法と周知の仕組みまで含めて検証すべきです。
今後は、社会保障審議会の議論、年末の改革工程、2027年度から始まる第10期介護保険事業計画に向けた制度設計が焦点になります。
情報基準日:2026年8月10日

