NISA1800万円枠は当年復活?2027年度税制改正要望を解説

NISA1,800万円枠は売却した年に再利用できるのかを示すサムネイル 経済・暮らし

金融庁は2026年8月31日、2027年度税制改正要望を公表しました。注目点の一つが、NISAで商品を売却したとき、非課税保有限度額を翌年ではなく当年中に再利用できるよう求めたことです。

ただし、1,800万円の総枠や年間360万円の投資枠を増やす要望ではありません。しかも、2026年9月1日時点では金融庁の要望段階です。「NISAが改正された」「今年から売却枠が戻る」と受け取るのは早すぎます。

※この記事は制度の解説であり、特定の金融商品や売買を勧めるものではありません。

結論――売却枠の「当年復活」は要望であり、まだ決定ではない

今回の要望を読むうえで、先に押さえたい点は3つです。

  • 現行制度では、売却した商品の取得額分を再利用できるのは翌年以降
  • 金融庁は、その再利用を売却した年から可能にするよう要望
  • 年間投資枠は最大360万円のままで、1,800万円の総枠が増えるわけではない

現在のNISAには、1年間に投資できる「年間投資枠」と、生涯にわたって保有できる「非課税保有限度額」があります。この二つは別の上限です。

金融庁の要望が実現しても、商品を売れば年間投資枠が無制限に復活するわけではありません。当年中に再利用できるのは、あくまで年間投資枠の範囲内です。

NISAは金融商品そのものではなく、対象商品の利益を非課税にする制度です。制度と商品の違いは、関連記事「新NISAでオルカン・S&P500を買えば円安対策になる?」でも整理しています。

現行NISAは年間360万円、総枠1800万円

2024年から始まったNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できます。金融庁の現行制度の説明は次のとおりです。

区分 上限
つみたて投資枠 年間120万円
成長投資枠 年間240万円
年間投資枠の合計 最大360万円
非課税保有限度額 総枠1,800万円
成長投資枠の保有限度額 総枠のうち1,200万円

非課税保有限度額は、時価ではなく買ったときの金額である「簿価」で管理されます。

売却して戻るのは、利益を含む売却額ではなく取得額

例えば、NISAで100万円の商品を買い、値上がり後に150万円で売却したとします。非課税保有限度額として再利用できるのは150万円ではなく、取得額の100万円分です。

現行制度では、この100万円分が使えるようになるのは翌年以降です。売却した年に、同じ100万円分の総枠が直ちに戻る仕組みではありません。

なお、NISAは投資による利益を非課税にする制度です。元本保証ではなく、損失を国や金融機関が補填する制度でもありません。制度の枠と、投資商品の値動きは分けて考える必要があります。

金融庁の要望は「売却した年から再利用」を可能にするもの

金融庁の2027年度税制改正要望は、非課税保有限度額を当年中に復活させる仕組みを求めています。

比較 現行制度 金融庁の要望
売却した取得額分の再利用 翌年以降 売却した年から
年間投資枠 最大360万円 最大360万円のまま
非課税保有限度額 総枠1,800万円 総枠1,800万円のまま
2026年9月1日時点の状態 実施中 要望段階

仮に総枠1,800万円をすべて使っている人が、取得額600万円分の商品を売却したとします。現行制度では、その600万円分を再利用できるのは翌年以降です。要望が実現すれば、売却した年にも再投資できる余地が生まれます。

ただし、その年に投資できる金額は年間投資枠の範囲内です。年間投資枠をまだ使っていない場合でも最大360万円であり、600万円全額を同じ年に入れ直せるわけではありません。

ここが今回の要望で最も誤解されやすい点です。「1,800万円枠が増える」「売買するたびに360万円枠が戻る」という制度ではありません。

本格的に影響するのは2029年以降と金融庁は説明

この要望は、直ちに多くの利用者の投資可能額を増やすものではありません。

新しいNISAは2024年に始まりました。年間上限の360万円を毎年使った場合、5年間で総枠1,800万円に達します。2024年から計算すると、最短で使い切るのは2028年です。

金融庁の要望資料も、新NISAで年間投資可能額が360万円を下回り得るのは2029年以降だと注記しています。それでも2027年度の改正を求める理由として、投資家に制度の見通しを早めに示すことと、金融機関がシステム対応する期間を確保することを挙げています。

したがって、現時点で総枠に余裕がある人にとっては、差し迫った変更ではありません。一方、毎年上限まで投資し、将来は保有商品を入れ替えたい人にとっては、数年後の使い勝手を左右する要望です。

当年復活で便利になる一方、短期売買を促さない説明も必要

政経プラスの評価として、当年復活には利便性を高める面があります。

総枠を使い切った後でも、家族構成、年齢、収入、リスク許容度の変化に合わせて商品を入れ替えやすくなります。老後に一部を現金化し、その後の状況に応じて再投資する場合にも選択肢が広がります。

一方で、NISAは長期・積立・分散による資産形成を後押しする制度です。当年中に枠が戻ることだけを強調すると、値動きを追って頻繁に売買すれば得になるとの誤解を招くおそれがあります。売却後に枠が戻っても、売買のタイミングによる損失や商品の価格変動リスクは消えません。

制度の利便性と、投資判断の安全性は別です。金融庁や金融機関には、枠の計算方法だけでなく、再利用できる金額、年間投資枠との関係、反映時期を分かりやすく表示することが求められます。

投資をしない選択を含めて家計資産を考える場合は、「円預金は本当に安全なのか?」と「外貨預金は円安対策になる?」もあわせて確認できます。

税制改正要望から実施までには国会審議がある

2026年8月31日に公表されたのは、金融庁の「要望」です。法改正の成立ではありません。

財務省の説明によると、毎年度の税制改正は、各方面からの要望を踏まえて与党税制調査会などで審議されます。その後、税制改正の大綱が閣議決定され、大綱に沿って政府が改正法案を作成します。法案は国会に提出され、衆議院と参議院で可決されて初めて成立します。

今回のNISA要望も、今後の審議で内容が変わる、採用されない、施行時期が別に定められる可能性があります。確認すべきなのは、次の4段階です。

  1. 金融庁の税制改正要望
  2. 税制改正大綱への記載
  3. 改正法案の国会提出と成立
  4. 法律・政省令で定められた施行日

見出しで「NISA改正へ」と報じられても、どの段階にあるのかを確認しなければ、決定済みかどうかは判断できません。

金融庁は同じ要望資料で、つみたて投資枠における対象商品の要件整備も求めています。この点も要望段階であり、対象商品がすでに増えたわけではありません。

よくある質問

NISAで商品を売ったら、非課税枠は現在も再利用できますか?

はい。現行制度でも、売却した商品の取得額分は翌年以降に再利用できます。今回の要望は、再利用できる時期を売却した年まで早めるものです。

当年復活が実現すれば、年間360万円を超えて投資できますか?

いいえ。金融庁の要望資料では、年間投資枠は最大360万円のままです。当年中に非課税保有限度額が戻っても、年間投資枠を超えて買い付けることはできません。

NISAの当年復活はいつから始まりますか?

2026年9月1日時点では決まっていません。金融庁が2027年度税制改正で要望した段階です。税制改正大綱、国会での法案審議、成立後の施行日を確認する必要があります。

まとめ

  • 金融庁は、売却したNISA商品の取得額分を当年中に再利用できるよう要望した
  • 現行制度では、再利用できるのは翌年以降
  • 年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は総枠1,800万円のまま
  • 最大額を最短で積み立てた場合、本格的に影響するのは2029年以降
  • 2026年9月1日時点では要望段階であり、改正決定ではない

NISAの数字を見るときは、「年間投資枠」と「非課税保有限度額」、そして「要望」と「成立」を分けて確認することが大切です。政経プラスでは、今後の税制改正大綱と国会審議も追っていきます。


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