外貨預金は、円安になると円換算額が増え、円高になると減ります。利息が付いても、円高の幅や手数料によっては元本割れすることがあります。預金保険の対象外です。
記事タイプ:制度解説・外貨預金の為替手数料と元本割れ
「円の価値が下がるのが心配なら、ドル預金を持っておけばいいのではないか」
円安が進むと、外貨預金の広告が目に入りやすくなります。円預金より高い金利が示されていると、預金という名前もあって、株式より安全な円安対策に見えるかもしれません。
外貨預金は、将来の留学や旅行など、外貨で使う予定がある人の準備に役立ちます。資産の一部を円以外の通貨で持つ方法にもなります。円預金とは違うリスクと費用を踏まえて判断する必要があります。
私は、生活防衛資金を円で確保し、長期の資産形成は分散投資を基本にする考えです。外貨預金を使う場合は、使う目的・預入期間・往復の手数料を決め、少額から検討するのが現実的だと考えます。
これまでの記事では、円預金の元本保証と購買力の違いと、新NISAでオルカン・S&P500を持つことが円安対策になるのかを整理しました。今回は、もう一つの選択肢である外貨預金を考えます。
外貨預金の元本を円に換算すると、円高で減る
外貨預金は、円を米ドルやユーロなどに交換して銀行へ預ける商品です。外貨ベースでは、原則として預けた元本と利息を受け取ります。
日本で生活費として使うなら、円に戻す必要があります。元本部分を同じ外貨額で比べると、預入時より円高になれば、円に換算した額は減ります。利息や手数料を含めた受取額は、後の例で比べます。
例えば、手数料を考えずに1ドル150円で100万円を米ドルへ交換すると、約6,667ドルです。
| 円へ戻すときのレート | 円換算額 | 100万円との差 |
|---|---|---|
| 1ドル160円 | 約106万7,000円 | 約+6万7,000円 |
| 1ドル150円 | 約100万円 | ほぼ同じ |
| 1ドル140円 | 約93万3,000円 | 約-6万7,000円 |
利息を考えなければ、円安になれば増え、円高になれば減る関係です。
J-FLECは、外貨建て金融商品について、換金時の為替レートによって円での手取額が預入額を上回る場合も下回る場合もあると説明しています。金融庁も、外貨預金は為替差損によって結果的に元本割れすることがあるとしています。
円預金と違い、外貨預金には円に戻す時の為替変動リスクがあります。
金利を比べる前に、円と外貨を交換する往復費用を確認する
外貨預金では、円を外貨へ交換するときと、外貨を円へ戻すときに異なる為替レートが使われることがあります。
- 円から外貨を買うレート:TTS
- 外貨を円へ戻すレート:TTB
- その間にある差:実質的な為替コスト
銀行によっては「為替手数料○銭」と表示します。インターネット取引、窓口、通貨、預入額によって手数料が違うこともあります。
説明用として、為替の仲値が1ドル150円、円からドルへ替えるレートが151円、ドルから円へ戻すレートが149円だとします。
100万円を預けると、受け取るドルは約6,623ドルです。それをすぐ円に戻すと約98万7,000円になります。為替相場が動いていなくても、往復のレート差だけで約1万3,000円減る計算です。
| 取引 | 適用レート | 金額 |
|---|---|---|
| 100万円をドルへ交換 | 1ドル151円 | 約6,623ドル |
| すぐ円へ戻す | 1ドル149円 | 約98万7,000円 |
| 往復による差 | ― | 約-1万3,000円 |
実際の手数料は金融機関と商品で異なります。この表は仕組みを示す試算です。
全国銀行協会は、外貨預金のように円建て元本が欠けるおそれのある商品について、為替手数料や中途解約時の費用を重要な説明事項に挙げています。
預ける人は、金利を比べる前に、往復の費用と、損益がゼロになる為替レートを確かめてください。
年利10%を1カ月だけ適用する場合の利息
外貨定期預金では、短期間だけ高い金利を適用するキャンペーンがあります。
例えば、年利10%と表示されていても、適用期間が1カ月なら、100万円相当の元本に付く税引前利息の単純計算は約8,333円です。
100万円 × 10% × 1カ月 ÷ 12カ月 = 約8,333円
この例の利息は、1年間の10万円ではなく、1カ月分の約8,333円です。ここから税金が引かれ、円と外貨の往復費用もかかります。1円、2円の為替変動で、短期の利息を上回る損失が出る可能性もあります。
金融庁も、優遇金利が適用される期間には制限がある場合が多いため、実際に受け取る利息を把握するよう注意を促しています。
預ける人は、広告の金利と併せて次の条件を確認してください。
- 高金利が適用される期間
- 通常期間へ戻った後の金利
- 預入時と払出時の為替手数料
- 中途解約できるか、解約時の金利と費用
- 円へ戻す必要がある時期
利息が付いても、円高の影響で円換算額が減ることがある
外貨預金の円換算額は、金利と為替の両方で決まります。
先ほどと同じく100万円を1ドル151円でドルへ替え、年4%の税引前利息が1年間付いたと仮定します。元利合計は約6,887ドルです。
満期時の円への交換レートが1ドル140円なら、円換算額は約96万4,000円です。4%の利息が付いても、円高の影響が上回ります。
円安が進めば、利息に加えて為替差益が出る可能性があります。この場合の利益には、金利と、円安による円換算額の増加の両方が含まれます。
預けた人は、預入時の円の金額と、利息・税金・手数料を含めた現在の円換算額を比べて、損益を確認してください。
外貨預金は預金保険の対象外
円の普通預金や定期預金などは、一定の条件のもと、1金融機関につき預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が預金保険制度で保護されます。
金融庁の資料は、外貨預金を「預金保険制度の対象とならないもの」と明記しています。銀行が破綻した場合は、その銀行の財産状況に応じて支払われ、一部がカットされることがあります。
| 項目 | 円の一般預金等 | 外貨預金 |
|---|---|---|
| 為替変動 | なし | あり |
| 円換算での元本割れ | 通常はない | あり得る |
| 預金保険 | 一定範囲を保護 | 対象外 |
| 主な費用 | 商品による | 為替手数料など |
外貨預金とFXは、取引できる金額が違う
外貨預金とFXは、どちらも円と外貨の値動きの影響を受けます。大きな違いは、預けた資金の何倍かを取引する仕組みの有無です。
FXは、証拠金を預けて、その何倍かの金額を取引できる仕組みです。レバレッジを使えば利益が大きくなる一方、損失も大きくなります。相場が急変すると、追加の証拠金や強制決済が生じる場合があります。
一般的な外貨預金は、預けた金額の範囲で取引するため、その点では仕組みが単純です。円高による元本割れの可能性、為替手数料、銀行の破綻などのリスクはあります。利用する人は、商品ごとのリスクの種類と大きさを確認する必要があります。
外貨預金が向くのは、外貨で使う目的がある人
外貨預金が分かりやすく役立つのは、将来の外貨支出が決まっている場合です。
- 海外留学の学費や生活費
- 海外旅行の費用
- 海外にいる家族への送金
- 外貨で支払う予定のある仕事や事業の資金
外貨で受け取り、そのまま外貨で使えるなら、円へ戻す必要がありません。円安で必要な円が増えるリスクを、事前に外貨を持つことで一部抑えられます。
使う時期までに円高になる可能性もあります。外貨を用意する人は、一度に全額を交換する方法と、時期を分ける方法を比べて検討できます。
「円安になれば儲かりそう」という目的なら、為替相場を予想する取引になります。私は、その予想だけで家計防衛資金を大きく移すことには慎重であるべきだと考えます。
長期の資産形成なら、外貨を持つことと投資を分けて考える
外貨預金では、利息によって外貨の残高が増え、円換算額は為替の影響も受けます。収益源は、外貨の金利と為替差損益です。
一方、全世界株式やS&P500などの投資信託は、企業の利益成長や配当に投資しながら、海外資産部分では為替の影響も受けます。元本保証はなく、株価下落のリスクがありますが、長期の資産形成を目的とする商品です。
| 比較 | 外貨預金 | 海外株式型の投資信託 |
|---|---|---|
| 主な収益源 | 預金金利・為替差益 | 企業成長・配当・為替差益 |
| 主なリスク | 円高・銀行の信用・手数料 | 株価下落・為替・手数料 |
| 預金保険 | 対象外 | 預金ではない |
| 向きやすい目的 | 将来の外貨支出、通貨分散 | 長期の資産形成 |
外貨預金は将来の外貨支出、海外株式型の投資信託は長期の資産形成など、目的に応じて比べる商品です。
円安への不安だけで商品を選ぶと、必要なときに円高や株安が重なる可能性があります。近く使うお金と、10年、20年先に使うお金を先に分けることが大切です。
私が外貨預金を使っていない理由
私は外貨預金もFXも利用していません。
現在は、生活に必要なお金を円で確保し、長期の資産形成については少額のオルカンとS&P500で海外資産を持つ考え方を選んでいます。
将来の外貨支出の予定がなく、為替手数料を負担して外貨預金を持つ必要性を感じていないためです。利用経験のない商品を、円安という理由だけで勧めるつもりもありません。
今後、海外で使う予定ができれば、外貨預金が候補になるかもしれません。その場合も、高金利という表示だけで決めず、往復の手数料と預入期間、円へ戻す必要があるかを確認します。
外貨で使う目的と時期を決めて、外貨預金を検討する
外貨預金は、資産の一部を円以外の通貨で持つ方法です。円安になれば円換算額が増えますが、円高の幅や手数料によっては、利息を含めても元本割れすることがあります。
私は、家計を守るために次の順番で考えます。
- 生活防衛資金と近く使うお金を円で確保する
- 当面使わないお金は、長期・積立・分散投資を基本にする
- 外貨で使う予定や明確な目的がある場合、外貨預金を小さく検討する
外貨預金を検討する人は、何に・いつ・どの通貨で使うお金かを先に決めてください。外貨で使う予定があれば、預入期間と往復費用も比べて判断できます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融機関、通貨、預金商品、投資方法を推奨するものではありません。外貨預金には為替変動、為替手数料、金融機関の信用などのリスクがあります。税務上の取扱いは取引内容や個人の状況で異なる場合があります。契約締結前交付書面、商品説明書、手数料、適用レートを確認し、必要に応じて金融機関、税務署、税理士などへご相談ください。
参考にした一次資料
- 預金保険制度(金融庁)
- 預金保険制度の対象となる預金等の範囲(金融庁)
- 外貨定期預金に関する相談事例と注意点(金融庁)
- 為替変動リスク(J-FLEC)
- 金融商品の特徴(J-FLEC)
- 消費者との契約のあり方に関する留意事項(全国銀行協会)
- 外貨預金の元本と預金保険(全国銀行協会)
- 外貨建預貯金の預入・払出に係る為替差損益(国税庁)


