兵庫県が職員を対象に実施したエンゲージメント調査で、「首長に対する信頼」が全64項目の中で最も低かったと報じられました。2025年11月の調査には、対象職員の87.7%に当たる6352人が回答しています。
この結果だけを見ると、県庁全体が機能していないようにも読めます。しかし、県の公式資料では全庁のエンゲージメントスコアが49.7と示され、2024年11月の47.2より上昇しています。
「全庁スコアは上がったのに、首長への信頼は最低」という二つの情報は矛盾するのでしょうか。結論から言えば、測っている対象が違います。さらに、64項目の詳しい点数が公表されていないため、県民が改善状況を検証しにくいことも大きな課題です。
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https://www.youtube.com/watch?v=XVWXtDlioS0
動画後に確認できた更新
| 確認項目 | 動画で扱った状況 | 2026年7月17日時点の更新 |
|---|---|---|
| 首長への信頼 | 64項目中、満足度が最低と報道 | 具体的な点数は公開資料で確認できず |
| 全庁スコア | 2025年11月は49.7 | 2026年度目標は50.5 |
| 県の対応 | 知事がコミュニケーション重視を説明 | 組織別アクションプランの策定を県政改革方針に明記 |
| 調査の公開 | 詳細結果は非公表 | 県は内部マネジメント調査との位置付けを継続 |
| 次回結果 | 半年ごとに実施 | 2026年分の詳細な一次資料は県公式サイトで確認できず |
動画公開後に県が示した最も具体的な更新は、2026年度の県政改革方針です。県は全庁スコアの目標を50.5とし、調査結果のフィードバック、組織別アクションプラン、好事例の共有などを進めるとしています。
ただし、「首長への信頼」を何点まで上げるのかという個別目標は、公開資料には示されていません。
エンゲージメント調査の仕組み
エンゲージメントとは、職員が仕事や組織にどの程度前向きに関わろうとしているかを表す考え方です。単なる職場の人気投票ではありません。
神戸新聞の報道によると、兵庫県の調査は2024年11月から半年ごとに行われています。職員のモチベーションに関わる64項目について、「どれほど期待しているか」と「現状にどれほど満足しているか」を5段階で尋ね、その差などから組織の強みと弱みを抽出します。
2025年11月の第3回調査では、県立学校の教員や県立病院の医師・看護師などを除く職員が対象となり、6352人が回答しました。回答率は87.7%です。
回答率の高さから、県庁内の意識を考える上で重要な資料といえます。一方、対象外となった職種もあるため、「兵庫県に勤める全職員の意見」と広げて表現するのは正確ではありません。
全庁49.7と信頼最低の違い
兵庫県の2026年度県政改革方針には、全庁のエンゲージメントスコアが掲載されています。
| 調査時期 | 全庁スコア |
|---|---|
| 2024年11月 | 47.2 |
| 2025年5月 | 50.3 |
| 2025年11月 | 49.7 |
| 2026年度目標 | 50.5 |
2024年11月から2025年11月までを見ると、47.2から49.7へ2.5ポイント上昇しました。ただし、直前の2025年5月と比べると50.3から49.7へ0.6ポイント低下しています。
この49.7は、県庁全体のエンゲージメントをまとめたスコアです。「首長に対する信頼」の点数ではありません。
一方、「首長に対する信頼が最低」という情報は、64の質問項目を比較した順位です。神戸新聞は、2025年5月と11月の調査で、いずれも同項目の満足度が最も低かったと報じています。
つまり、全庁の総合的な状態が前年より改善していても、特定項目である首長への信頼が弱点として残ることはあり得ます。総合スコアだけを見て「信頼は回復した」と結論付けることも、最下位という順位だけを見て「県庁全体が崩壊している」と断定することもできません。
最低点ではなく最下位
表現上、もう一つ注意が必要です。
現時点で確認できるのは、「首長に対する信頼」が64項目の中で最も低かったという順位です。0点に近い、過去最低を更新した、他県より最低だったという意味ではありません。
県は64項目それぞれの詳しい点数を公開していません。そのため、次のことは外部から確認できません。
- 首長への信頼の具体的な点数
- 2024年11月からの増減幅
- 年代、役職、部局ごとの差
- 他自治体と比べて高いか低いか
- 調査会社が用いた計算方法の詳細
「知事への信頼度が最低」と書く場合は、「全64項目の中で満足度が最も低い」と補う必要があります。調査対象外の県民世論や選挙での支持率と混同してはいけません。
報道と県公表資料の区別
この調査を扱う上では、情報源の区別も欠かせません。
全庁スコア47.2、50.3、49.7と2026年度目標50.5は、兵庫県が公表した県政改革方針で確認できます。
一方、64項目のうち「首長に対する信頼」が最低だったこと、回答者6352人、回答率87.7%という内訳は、神戸新聞の取材で報じられ、2026年3月24日の知事記者会見でも記者が示した内容です。斎藤元彦知事はその場で調査結果を受け止める考えを述べ、情報の前提自体を否定しませんでした。
ただし、県が64項目の詳細表を公表したわけではありません。したがって、「公式資料に首長への信頼が最低と明記されている」と書くのは不正確です。現状は、報道と公式会見記録で確認できる情報として扱うのが適切です。
強みと弱みの内訳
神戸新聞は、調査から抽出された強みと弱みを次のように報じています。
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 強み | 直属上司のオープンでフランクな姿勢 |
| 強み | 部下の意見を聴く姿勢 |
| 強み | 部下への支援行動 |
| 弱み | 首長に対する信頼 |
| 弱み | 財政状態の健全性 |
| 弱み | 業務環境の充実度 |
| 弱み | 適切な採用・配置 |
ここから分かるのは、直属の上司と部下の関係が強みと評価される一方、組織全体のトップ、財政、人員配置など、職員個人では動かしにくい全庁的な項目が弱みとして現れたことです。
現場レベルのコミュニケーションが機能していても、組織全体の方向性や経営への信頼に課題が残ることはあります。改善策も、一般的なコミュニケーション研修だけではなく、財政や人事の判断過程を職員に説明する仕組みまで含める必要があります。
知事の受け止め
2026年3月24日の記者会見で、斎藤元彦知事は調査結果を「しっかり受け止める」と述べ、感謝の気持ちと謙虚な姿勢を持ち、職員とのコミュニケーションを重ねる考えを示しました。
記者から具体策を問われると、政策立案や政策協議を職員と一緒に進めること、幹部職員との政策会議、多様なコミュニケーションの機会、日々の仕事の積み重ねを挙げています。
これは知事側が示した改善の方向性です。一方、首長への信頼を測る個別スコア、改善期限、具体的な検証方法までは示されませんでした。
信頼は「努力する」という説明だけでは測れません。次回調査で同じ項目がどう変化したか、施策を実施した部局で改善したかを確認して初めて、対策の効果を評価できます。
詳細結果を非公表とする理由
同会見では、調査結果をなぜ公表しないのかも問われました。記者は、調査が年2回行われ、約5600万円の予算がかけられていると説明しています。神戸新聞も年間の委託料を約5600万円と報じました。
斎藤知事は、調査は「あくまで内部マネジメント」のためのものだと説明し、詳細結果を非公表とする扱いを示しました。また、外部委託は2027年6月で一度終了する予定で、3年間の結果を踏まえて今後の在り方を検討するとしています。
内部調査をそのまま公表すると、少人数の部局や役職が推測され、率直な回答を妨げる可能性があります。自由記述に個人情報が含まれる場合もあり、すべてを公開すべきとは限りません。
しかし、全額が公費で賄われ、県政改革の目標にも使われる調査です。個人や小規模部局を特定できない形で、全庁の項目別スコア、前年差、調査方法、改善計画を公表する余地はあります。
百条委員会アンケートとの違い
兵庫県職員を対象にした調査として、2024年に県議会の文書問題調査特別委員会、いわゆる百条委員会が行ったアンケートもあります。しかし、今回のエンゲージメント調査とは別物です。
| 比較項目 | エンゲージメント調査 | 百条委員会アンケート |
|---|---|---|
| 実施主体 | 兵庫県 | 兵庫県議会の特別委員会 |
| 主な目的 | 仕事や組織への期待・満足度の把握 | 告発文書に記載された事実関係の調査 |
| 主な内容 | モチベーションに関する64項目 | パワハラの見聞きや個別事案など |
| 実施時期 | 2024年11月から半年ごと | 2024年7~8月 |
二つの調査は目的、質問、対象範囲、集計方法が異なります。回答数を足したり、一方の結果を使って他方の調査結果を説明したりすることはできません。
県の改善計画
兵庫県は2026年度の県政改革方針で、次の対応を掲げています。
- 全職員を対象とするエンゲージメント調査の定期実施
- 調査結果の職員へのフィードバック
- 組織別アクションプランの策定
- 各組織による実践と報告
- 好事例の表彰と共有
- 所属別の取組状況の可視化
- 若手職員提言部会などを通じた意見反映
方向性としては、調査して終わるのではなく、組織ごとの行動へつなげる内容です。
今後の焦点は、実施したかどうかだけではありません。低かった項目が改善したか、改善しなかった場合に原因を再分析したか、首長や幹部に関する課題もアクションプランの対象になるかが問われます。
採用辞退58.9%との関係
前回の記事では、2026年4月入庁の大卒程度・総合事務職で、最終合格者209人のうち123人が辞退し、辞退率が58.9%になった問題を整理しました。
職員調査の「適切な採用・配置」が弱みとされたことと、採用辞退率の上昇は、どちらも人材確保を考える上で重要です。ただし、二つの数字の間に直接の因果関係が確認されたわけではありません。
採用は県庁の外から見た評価、エンゲージメントは現在働く職員の内側から見た評価です。両方を継続的に追うことで、「応募が集まる職場」だけでなく「選ばれ、働き続けられる職場」になっているかを判断できます。
今後見るべき五つの指標
- 全庁スコア:2026年度目標50.5を達成したか
- 首長への信頼:64項目中の順位と具体的な点数が改善したか
- 回答率:職員が継続して調査に参加しているか
- 改善計画:組織別アクションプランが実施されたか
- 人材の結果:採用辞退率、若手離職、定着率に変化があるか
このうち、県民が現在確認できるのは主に全庁スコアです。調査の信頼性を高めるには、匿名性を守りながら他の指標も公開する必要があります。
よくある質問
エンゲージメントスコア49.7は低いのか
県の目標50.5は下回っていますが、同じ尺度を用いた他自治体や全国平均が公開資料に示されていないため、49.7だけで一般的に高い・低いとは断定できません。県内の時系列では、2024年11月の47.2より上昇しています。
知事への信頼が49.7という意味なのか
違います。49.7は全庁のエンゲージメントスコアです。「首長に対する信頼」の具体的な点数は公開されていません。
「最低」は過去最低という意味なのか
確認できるのは、64項目の中で満足度が最も低かったという順位です。過去最低、全国最低、0点に近いという意味ではありません。
調査結果は県が公表したのか
全庁スコアは県政改革方針で公表されています。首長への信頼が最下位だったことや回答者の詳しい内訳は神戸新聞が報じ、知事記者会見でも取り上げられましたが、64項目の詳細表は公表されていません。
結果をすべて公開すべきなのか
個人や少人数の部局を特定できる情報、自由記述は保護する必要があります。一方、全庁の項目別スコア、推移、調査方法、改善策は、匿名性を保った概要公開が可能と考えられます。
まとめ
- 2025年11月の調査では6352人、対象職員の87.7%が回答したと報じられた
- 「首長に対する信頼」は64項目中、満足度が最も低かった
- 同じ傾向は2025年5月の調査でも報じられている
- 全庁スコアは47.2、50.3、49.7と推移し、2026年度目標は50.5
- 49.7は首長への信頼の点数ではない
- 県は調査を内部マネジメント用と位置付け、64項目の詳細を公表していない
- 県政改革方針には、組織別アクションプランや結果のフィードバックが盛り込まれた
- 今後は調査結果の推移と、採用・定着など人事面の結果を合わせて見る必要がある
エンゲージメント調査は、知事を支持するか反対するかを決める世論調査ではありません。県庁という組織が、職員の能力を引き出し、県民サービスへつなげられる状態かを確かめるための資料です。
だからこそ、都合のよい数字だけを切り取るのではなく、総合スコアと個別項目を分け、調査方法と推移を確認する必要があります。県が匿名性を守りながら概要を公開できるかも、組織改革への信頼を測る一つの指標になります。


