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AIで週7時間浮いても、研究は進まない? Googleが示した「次のボトルネック」

AIで週7時間浮いても、研究は進まない? Googleが示した「次のボトルネック」|政経プラスチャンネル公式ブログ AI・デジタル

AI(人工知能)で文章や分析の時間が短くなっても、実験と検証が追い付かなければ研究全体は進まない。Googleらの共同調査は、その制約を示している。

Google、Google DeepMind、MIT FutureTechの共同調査では、研究者がAIの利用によって週7時間近くを節約していると報告した。一方で、検証しなければならないAIの出力や、まだ試せていない仮説(事実かどうか確かめるために立てる説明や予測)が積み上がっているという。

研究の前半が速くなると、実験・検証・臨床確認(患者などを対象に効果や安全性を確かめること)といった後半の作業に負担が集まる。AI導入の成果を測るには、短縮できた時間と、検証まで終わった研究の両方を見る必要がある。

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研究者の約半数がAIを毎日使うと回答

今回の調査は、三つのデータを組み合わせている。約1,500万件の匿名化されたGemini(Googleの生成AI)の利用データ、約2,600件の科学分野向けAIモデルの一覧、米国と英国の研究者637人への調査を組み合わせている。

調査対象となった研究者の約半数は、何らかのAIを毎日使っていると回答した。大規模言語モデル(大量の文章などで学習した生成AI)は、文章作成や文献調査、コード作成、データ分析など広い作業に使われる。一方、専門AIモデル(特定分野の予測や生成などに絞ったAI)は、病気の予測、分子設計、シミュレーション(条件を設定して現象を計算で再現すること)など、分野ごとの予測や生成に使われている。

AIが研究の一部を代替するというより、汎用モデルと専門モデルが役割を分けながら、研究者の作業範囲を広げているという構図だ。

週7時間近くの節約後も、未検証の仮説が増えている

研究者の約4分の3は、AIによる時間短縮を報告した。平均すると、節約できた時間は週7時間近い。節約した時間の多くは、さらに研究を進めるために使われているという。

この時間の節約は、研究者の自己申告に基づく数字だ。研究成果の増加を測るには、AIが生み出したアイデアや文章、分析結果を検証し、どれが成果につながったかを調べる必要がある。

共同調査では、調査に答えた研究者の41%が、まだ検証できていない仮説の滞留が増えていると回答した。4割を超える研究者は、主な制約が、計算や分析といった前半の作業から、実験、臨床確認、現場でのデータ収集へ移ったと答えている。

AIによって「考える」「書く」「計算する」工程が速くなっても、「実際に試す」「結果を確かめる」工程が同じ速さで進むとは限らない。研究全体の速度は、最も遅い工程に引っ張られる。

AIが増やすのは、成果だけでなく検証作業でもある

調査では、AIで時間を節約できた研究者の89%が、節約した時間の1割超をAIの出力確認に使っている。4分の1超を確認作業に使う研究者も46%いた。

研究で使うAIの出力は、正しさに加え、再現性(同じ条件で同じ結果を得られるか)、根拠、データの条件、既存研究との整合性も確認する必要がある。確認作業の時間には、こうした検証が含まれるため、AIの誤りの多さだけを示す数字としては扱えない。速く答えが出るほど、答えを受け入れてよいかを判断する作業が増えることもある。

AI導入の効果を「1人あたり何時間短縮できたか」だけで評価すると、確認作業の負担が見えにくい。ただし、週約6.9時間は、時間が増えた分も考慮した正味の短縮を尋ねた自己申告である。確認時間の割合をそのまま再度差し引いてよい数字ではない。

研究テーマが安全な方向に寄る可能性もある

調査には、もう一つ気になる数字がある。49%の研究者は、AIによって、基準や正解が見えやすい安全なテーマに取り組みやすくなったと回答した。一方、よりリスクの高い問いに挑みやすくなったと答えたのは28%だった。

この数字は、調査時点で研究者がどう感じていたかを示す。AIが研究を保守的にするという因果関係まで確認した結果ではない。AIが既存データや評価基準に強く依存する場合、測りやすく、失敗しにくいテーマが選ばれやすくなるという懸念は理解できる。

論文や報告書の数が増えても、未知の問題に取り組む研究が増えたとは限らない。AI時代の研究成果は、量だけでなく、どの程度新しい問いを検証できたかで見る必要がある。

AI導入後は、仮説の検証率や出力確認の時間も測る

今回の調査から、研究機関や企業が確認すべき指標として、少なくとも次のようなものが考えられる。

  • AIが生み出した仮説のうち、検証まで進んだ割合
  • AIの出力確認にかかった時間と、修正が必要だった割合
  • 実験・臨床確認・現場データ収集に移った案件数
  • 既存の安全なテーマと、未知のテーマへの投資割合

AIが文章や分析を速くしても、検証する人、実験する設備、現場でデータを取る仕組みが増えなければ、成果は途中で詰まる。研究全体を速く進めるには、AIのソフトウェアとともに、実験や検証を行う人員・設備への投資が必要だ。

研究者調査の対象は米国と英国、世界全体への適用には限界

今回の研究は、AIの影響を考えるうえで有用な材料だが、限界もある。

研究者への調査は米国と英国が対象で、世界の研究者全体を代表するものではない。Geminiの利用データでは企業利用が除外されている。科学分野向けAIモデルの一覧も、研究チームは、現時点で全体を代表するものとはみなせないと説明している。

また、GoogleとGoogle DeepMindが関わる調査であるため、独立した調査による再検証が必要だ。今回の数字は、AIが研究を変えつつある方向を示す初期スナップショット(ある時点で捉えた状況)であって、AIが研究成果を何%増やしたかを確定する測定ではない。

研究以外の仕事への影響を、調査と将来の見通しに分けて読む記事は、AIに奪われる仕事は何か――2027年までの7領域と雇用再編です。

実験と検証まで終えられる体制が、研究成果につながる

Googleらの調査では、週7時間近くの節約と同時に、未検証の仮説や確認作業の増加が報告された。研究の前半を速く進めた後に、実験と検証をどう進めるかが課題になっている。

AIを導入する研究機関や企業は、何が速くなり、どこで仕事が滞り、どの程度の出力を人間が確認しているかを測る必要がある。利用者数と作業時間の削減に、実験・検証が終わった案件数を加えると、未検証の仕事がどれだけ残るかも分かる。

AI時代の生産性を高めるには、短縮した作業の先にある検証まで終えられる体制が必要だ。

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