家賃が払えないとき、住居確保給付金は使える?転居費用の対象と、なお残る負担

収入が減り、今の家賃を払い続けられない。より安い部屋へ移れば家計は持ち直せそうだが、引っ越し代や仲介手数料が出せない――。こうしたときに確認したいのが、住居確保給付金だ。

この制度には、離職や収入減で住まいを失うおそれがある人へ、一定期間の家賃相当額を支給する仕組みがある。2025年4月からは、家賃の低い住宅へ移ることで家計を改善できる人に対し、転居に要する費用を支給する仕組みも加わった。

ただし、これは誰でも家賃や引っ越し費用を全額受け取れる制度ではない。世帯の収入・資産、収入減の経緯、転居が家計改善に必要かどうかなどの条件があり、敷金、前家賃、家電購入費は原則として対象外だ。住まいを失ってからでは選択肢が狭くなる。家賃が重いと感じた段階で、まず地域の自立相談支援機関へ相談することが出発点になる。

住居確保給付金とは|家賃を支える制度と、転居費用を支える仕組み

住居確保給付金は、主たる生計維持者が離職・廃業から2年以内である場合、または本人の責任・都合によらず給与などを得る機会が離職・廃業と同程度まで減少した場合に、一定の要件を満たせば利用できる制度だ。

家賃支援では、市区町村ごとの上限額の範囲で実際の家賃を原則3か月間支給する。延長は2回までで、最長9か月間だ。給付金は、原則として自治体から大家や不動産仲介業者などへ直接支払われる。

これに加え、家計の改善のために家賃の低い住宅へ転居する必要がある人を対象に、転居費用を支給する仕組みが2025年4月から始まった。配偶者の死亡で世帯収入が減った人や、病気で離職して収入を増やすことが難しい人などが、国の案内で例示されている。

まず確認したい条件|「家賃が苦しい」だけでは決まらない

制度の利用には、収入が減った事情に加え、世帯収入や資産に関する条件がある。家賃支援について、厚生労働省の案内は次のような条件を示している。

確認する項目 主な内容
収入減の事情 離職・廃業から2年以内、または本人の責任・都合によらない就業機会の減少
世帯収入 直近月の世帯収入合計が、自治体の基準額と家賃上限額の合計以下
世帯の資産 預貯金合計が自治体の定める額以下。目安は基準額の6か月分で、上限は100万円
求職活動等 原則として自立相談支援機関との面接、ハローワークでの職業相談、求人応募などが必要
自営業者 求職申込みに代えて、事業再生のための活動が認められる場合がある

収入・資産の基準額や家賃上限は、市区町村や世帯人数で変わる。ネット上の一般例だけで判断せず、現在住んでいる市区町村の窓口で確認したい。

転居費用で支給対象になるもの、ならないもの

転居費用支援は、家賃を下げれば家計改善が見込める人の移動を後押しするものだ。国の自治体向け資料で示されている主な対象・対象外は次の通りである。

支給対象になり得る経費 原則として支給対象にならない経費
転居先への家財の運搬費用 敷金
転居先の初期費用(礼金、仲介手数料、家賃債務保証料、住宅保険料) 契約時に払う家賃(前家賃)
ハウスクリーニングなどの原状回復費用、鍵交換費用 家財、風呂釜、エアコンなどの購入費

礼金や仲介手数料が対象に含まれる一方、敷金や前家賃は残る。この違いは大きい。住み替えを考える人は、物件の家賃だけでなく、契約時に必要な全額を見積もり、どこまで制度で補えるかを相談段階で確認したい。

家賃支援と転居費用支援は、別の問題を扱う

今の住宅に住み続けることを前提に、当面の家賃を支えるのが家賃支援だ。一方、転居費用支援は、より低い家賃の住宅へ移ることによって家計を改善できる場合を想定している。

どちらが合うかは、家賃の滞納の有無だけでは決まらない。収入の回復見込み、現在の契約、子どもの通学や仕事への通いやすさ、保証人の有無、転居先の物件状況も影響する。窓口では「家賃をいくら下げられそうか」「転居後の生活費をどう見通すか」を一緒に整理することになる。

制度を利用するか迷っている段階でも相談してよい。契約や支払いを先に進めると、必要な確認が後手に回るおそれがあるため、転居を決める前に自立相談支援機関へ連絡するのが安全だ。

自営業・フリーランス、外国籍の人も相談対象になり得る

住居確保給付金は、雇用契約で働く人だけの制度ではない。厚生労働省のQ&Aは、自営業者など雇用契約によらない就業形態の人も対象になり得るとしている。自営業者は、必ずしも廃業・転職を前提にせず、事業再生に向けた活動で要件を満たす場合がある。

外国籍の人も対象になる可能性がある。学生は一般には主たる生計維持者に該当しないため基本的に対象外と考えられるが、例外的な扱いがあり得るため、事情を窓口へ伝える必要がある。

店舗兼住宅を借りて自営業をしている場合は、契約書などで店舗部分と住居部分が分かれていれば、住居部分が対象になる場合がある。法人名義で借りている場合などは対象外となるため、契約名義も確認したい。

相談前に用意するとよいもの

最初の相談時点で、書類がすべてそろっている必要はない。それでも、次の情報があれば窓口で状況を説明しやすい。

  • 賃貸借契約書、現在の家賃・管理費・駐車場代が分かる資料
  • 給与明細、報酬明細、通帳、失業給付や年金など定期的な収入が分かる書類
  • 預貯金の状況が分かる通帳など
  • 離職票、解雇通知、シフト減少前後の表、請負契約のキャンセルが分かる資料など、収入が減った事情を示すもの
  • 転居を考えている場合は、候補物件の家賃と初期費用が分かる見積もり

国の提出書類チェックリストには、収入減の事情を示す資料がなければ申立書を提出する扱いも示されている。書類が足りないことを理由に相談を先延ばしにせず、何があるかを伝えて必要な資料を確認したい。

政経プラスの評価|住まいを失う前に届く支援でなければならない

家賃が払えなくなってから、転居費用、保証人、仕事、子どもの学校を同時に考えるのは難しい。家賃の低い住宅へ移る費用を支える仕組みを加えたことは前進だ。しかし、敷金や前家賃、家電購入費が残れば、最も資金に余裕のない世帯ほど転居を断念しやすい。

支援を「家賃を払えなくなった人への最後の窓口」にせず、家計が崩れる前に使える制度として知らせる必要がある。自治体には、家賃滞納の督促、福祉窓口、学校、医療機関、労働相談など、生活の困難が表れやすい場所から自立相談支援機関へつなぐ導線を太くしてほしい。

制度を知っている人だけが、住まいを守れる社会にしてはいけない。どこへ相談すればよいかを一度で示し、対象外となる費用も含めて次の手段を一緒に考える支援が必要だ。

相談するときの確認項目

  1. 収入が減った時期と理由。
  2. 世帯全体の収入・預貯金・家賃。
  3. 今の住まいに住み続ける場合と、より安い住宅へ移る場合の家計見通し。
  4. 転居する場合の初期費用を、対象になり得る費用と対象外の費用に分けた見積もり。
  5. 現在住んでいる市区町村の自立相談支援機関の連絡先。

まとめ

住居確保給付金は、離職や収入減で住まいを失うおそれがある人のための制度だ。家賃支援に加えて、家計改善のために低い家賃の住宅へ移る人には、一定の転居費用支援もある。

ただし、収入・資産・求職活動などの要件があり、敷金や前家賃は原則対象外となる。だからこそ、家賃が払えなくなってからではなく、「この家賃を続けられるか不安だ」と思った時点で相談することが大切になる。住まいを失わないための支援は、早く届いてこそ意味を持つ。

確認資料

※本記事は2026年7月26日時点の厚生労働省公表資料に基づく。支給額、収入・資産の基準、必要書類、転居費用の取扱いは自治体や個別事情で異なるため、契約や支払いの前に自立相談支援機関で確認したい。

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