被災した住宅を修理する前に、まず安全を確保し、被害写真を残し、市区町村へ相談してください。災害救助法の「住宅の応急修理」は、自治体が対象工事を業者へ依頼し、工事費を直接支払う制度です。この仕組みを現物給付(現金に代えて修理などを提供する支援)と呼びます。
すでに着工し、工事が終わっていても、業者への支払い前なら利用できる場合があります。修理前・修理中・修理後の写真等で、被害と工事内容を確認できることが必要です。先に代金を払うと利用できなくなるおそれがあるため、支払い前の相談が重要です。
当初の確認日は2026年8月11日です。10月25日に国の取扱要領と自治体の案内を照合しました。金額や申請期限、必要書類、対象地域は災害と自治体ごとに異なります。必ず被災した住宅がある市区町村の最新案内を確認してください。
住宅の応急修理は「生活できる状態」へ戻すための制度
災害救助法は、避難所の供与、炊き出し、医療などと並び、「被災した住宅の応急修理」を救助の一つに位置づけています。目的は、被災者が当面の日常生活を送れる最小限の状態へ、住宅を修理することです。
そのため、屋根、壁、床、出入口、給排水設備、電気設備、トイレなど、生活に欠かせない部分が中心となります。内装の美観を整える工事、家電製品の買い替え、災害前からの老朽化、必要性を超えた設備のグレードアップは、原則として対象になりません。
緊急の修理は被害拡大防止、応急修理は生活に必要な部分の復旧
災害救助法上の住宅修理には、役割と期間が異なる二つの仕組みがあります。
- 住家の被害の拡大を防止するための緊急の修理:雨漏りを防ぐブルーシート、ロープ、土のうなど、被害拡大を止めるための緊急措置です。2026年度の一般基準は1世帯あたり5万6,400円以内で、原則として災害発生日から10日以内の完了です。
- 日常生活に必要な最小限度の部分の修理:屋根、床、壁、窓、配管、配線、トイレなどを修理し、住み続けられる状態を確保する制度です。原則として災害発生日から3か月以内、国の災害対策本部が設置された災害では6か月以内の完了が基準です。
熊本市は、2026年7月28日の地震後、ブルーシートなどを使う「住家の緊急の修理」を案内しました。上限は5万6,400円です。この記事の8月11日時点の記録では、まず区役所へ連絡する運用でした。
今回確認した2026年10月25日更新の市案内は、住宅政策課への相談と電子申込みを示しています。緊急修理の完了期限は10月27日まで延長済みで、さらに11月27日まで延長する協議を国へ申し出た段階です。11月の延長を決定済みとはしていません。
この緊急修理は、生活に必要な部分を直す応急修理とは別の制度です。実施状況と相談先は、被災した自治体の最新案内で確認してください。
2026年度の上限額と主な対象世帯
内閣府の基準を反映した2026年度の自治体案内では、「日常生活に必要な最小限度の部分の修理」の上限額は、1世帯あたり次のとおりです。
- 大規模半壊・中規模半壊・半壊:75万7,000円以内
- 準半壊:36万7,000円以内
自治体が支払うのは、対象と認めた修理費で、上限の範囲内です。限度額を超える部分や対象外の工事は自己負担になります。上限額の現金を被災者へ給付する制度ではありません。
被害区分の判断には、原則として罹災証明書(自治体が災害による住宅などの被害程度を証明する書類)を使います。中規模半壊、半壊、準半壊では、修理費を自分で負担することが難しいという資力要件(修理費を自分で負担できるかの条件)もあります。大規模半壊では扱いが違うため、自治体の案内と申込書で確認してください。被害認定は「罹災証明書が支援につながる仕組みと自治体差」で整理しています。
「現物給付」とは自治体が業者へ直接支払うこと
住宅の応急修理では、一般に被災者が見積書などを自治体へ提出し、自治体が対象工事を確認したうえで修理業者へ依頼します。工事完了後、自治体が確認し、対象費用を業者へ直接支払います。被災者がいったん全額を立て替え、後で補助金として精算する仕組みではありません。
現物給付は、公費を生活に必要な修理へ使うための仕組みです。反面、制度を知る前に業者へ依頼して支払いまで終えた人は、利用が難しくなります。行政は、不正を防ぐ確認と、住民が急いで修理する事情の両方に対応する必要があります。
着工前に相談し、着工済みでも支払い前に申し込む
自治体は、災害による被害か、どの部分をどの工事で直すのか、費用が妥当かを確認しなければなりません。修理してからでは被害状況が見えなくなるため、修理前の写真、見積書、罹災証明書などが重要になります。
被害拡大を防ぐため、自治体の確認を待たずに修理を始める場合もあります。内閣府の災害救助事務取扱要領は、業者へ未払いで、写真等により内容を確認できる場合、事前契約・着工済み・工事完了後でも対象になり得ると示しています。
施工中の写真だけがない場合など、真にやむを得ないときは、修理業者の「証拠写真代替資料」で補える取扱いがあります。
業者が状況と工事内容を詳しく証明するもので、被災者や自治体による代筆は認められません。写真も状況説明もないまま認められる制度ではありません。被災者は、手元の写真と見積書を保存し、速やかに自治体へ申込みを相談してください。
対象工事と支払方法を最終的に確認するのは自治体です。着工前の相談を基本とし、着工済みの場合も、業者へ払う前に相談してください。
被災者が利用前に確認する五つの項目
- 支払い前に相談する:先に代金を払うと、自治体による現物給付へ切り替えられなくなる可能性があります。
- 被害を撮影する:災害による被害と対象工事を確認できるよう、住宅の全景と被害箇所を、角度を変えて残してください。
- 見積もりを分ける:応急修理と対象外のリフォームを区別し、工事箇所、内容、数量、単価ごとに記載してもらいます。
- 罹災証明書を申請する:被害区分の確認に必要です。発行待ちの間でも、相談できるか自治体へ尋ねてください。
- 自治体の期限を確認する:国の基準期間と合わせて、自治体が定めた申込期限と業者への発注期限を確認します。
借家の修繕は、原則として貸主が行います。貸主にも借主にも修理する資力がないなど、やむを得ない事情があれば対象になり得ます。自治体は貸主の資力を厳格に確認するため、借主は先に貸主と自治体へ相談し、必要書類を確かめてください。工事は、貸主と自治体に確認してから進めてください。
応急仮設住宅との併用にも条件がある
応急修理は、修理後にその住宅で暮らし続けることが前提です。仮設住宅との併用は、災害規模、住宅の損傷、修理期間などの条件によって判断されます。無条件の併用ではありません。
避難先を確保するために仮設住宅へ申し込む場合も、住宅の応急修理を希望していることを窓口で伝え、併用条件を確認してください。住まいの再建には、応急修理とは別に被災者生活再建支援金などの制度もあります。違いは「被災者生活再建支援金の仕組みと生活再建支援の届き方」で確認できます。
自治体が対応すべき、支払い先行・手続遅延・対象の分かりにくさ
1.制度を知る前に修理と支払いが終わる
雨漏りや壊れた窓を放置できない被災者ほど、すぐ業者へ依頼します。しかし現物給付を知らないまま支払いまで済ませると、制度からこぼれやすくなります。必要なのは長い制度説明より先に、「写真を撮る・支払わない・自治体へ連絡」の三点を、発災直後から繰り返し伝えることです。
2.罹災証明、見積もり、業者確保が連鎖して遅れる
大規模災害では、住家被害認定の調査、罹災証明書の発行、修理業者の確保が同時に滞ります。制度上の期限だけを示しても、被災者が必要な手続きを完了できなければ支援は届きません。罹災証明書の発行前でも相談記録を受け付ける、写真をオンラインで仮提出できる、協力業者の名簿を公開するといった入口の整備が必要です。
3.「対象になるか」が住民から見えない
同じ「修理」でも、対象となる部位、借家の扱い、仮設住宅との併用、資力要件は条件によって変わります。窓口ごとに説明が異なると、住民は申請を諦めます。自治体は対象・対象外の具体例、必要書類、標準的な処理日数、不服や再確認の相談先を一つのページにまとめるべきです。
自治体が発災当日から公表すべき情報
制度を実施する自治体には、少なくとも次の情報を早期に公表することが求められます。
- 災害救助法の適用地域と、実施する修理制度の名称
- 対象となる被害区分、住宅、工事箇所
- 上限額、申込期限、工事完了期限
- 申込みから業者への支払いまでの流れ
- 着工済み、支払い前、写真不足の場合の相談方法
- 罹災証明書が未発行の場合の仮受付
- 借家や応急仮設住宅との併用条件
- 電話、窓口、オンライン申請の連絡先
さらに、申込件数、発注件数、工事完了件数、申込みから発注までの日数を公表すれば、「制度がある」だけでなく「実際に届いているか」を検証できます。
被災した人が支払い前に行う四つのこと
- 身の安全を優先する:倒壊や感電のおそれがある住宅へ無理に入らず、危険箇所は消防や自治体へ相談します。
- 被害を撮影する:住宅の外観、各部屋、被害箇所を遠景と近景で撮り、修理中・修理後も記録します。
- 見積書を取り、まだ支払わない:工事箇所と金額が分かる明細を依頼し、制度の確認前に代金を支払わないよう業者へ伝えます。
- 市区町村へ連絡する:災害救助法の適用、実施中の修理制度、申込期限、罹災証明書が未発行の場合の扱いを確認します。
緊急に工事を始めざるを得ない場合も、証拠を残し、支払い前に相談してください。すでに支払った場合でも、別の住宅支援制度や保険が利用できる可能性があります。応急修理だけで判断せず、自治体の総合相談窓口や加入する損害保険会社へ確認することが大切です。
写真と見積書を保存し、業者への支払い前に相談する
被災者、自治体、業者の間で、対象工事と支払方法を共有することが制度利用の要点です。行政は、発災直後から、相談先と支払い前の注意を短く案内する必要があります。
自治体は、着工済みでも未払いなら相談できること、証明書の発行前に相談できるか、写真をどう提出するかを明示すべきです。急いで修理をする人にも、利用条件と次の手続が分かる案内が求められます。
主な公的資料
- e-Gov法令検索「災害救助法」
- e-Gov法令検索「災害救助法施行令」
- 内閣府「災害救助事務取扱要領」
- 茨城県「住宅の応急修理制度について」(今回の接続先はシステム障害の臨時ページで本文未確認)
- 福岡県「令和8年度 災害救助法による救助の程度、方法及び期間」
- 広島県「災害救助の手引き」(2026年5月、住宅の応急修理の該当頁)
- 熊本市「令和8年7月28日の地震に伴う住家の緊急の修理」


