AIで一次資料を探す方法|実在しないURL・古い資料を避ける7ステップ

AI仕事術

AIへ「この制度の根拠資料を探して」と頼むと、数秒で資料名やURLが並びます。

しかし、その一覧をそのまま記事の出典にしてはいけません。

資料名はもっともらしいのに実在しない。URLを開くとページがない。古い制度の説明を、現在のルールとして紹介している。法案、成立した法律、施行済みの制度が混ざっている。

AI調査では、このような問題が起こります。

特に政治、行政、法律、統計を扱う記事では、「それらしい答え」より、「読者が自分で確認できる根拠」が重要です。

そこで政経プラスでは、AIに答えを決めてもらうのではなく、調査の入口を作ってもらいます。

AIには、必要な資料の種類、発行主体、検索語、確認項目の候補を出してもらう。資料の実在、日付、版、内容、採用可否は人が確認する。

今回は、AIと一次資料を探すときの手順を七つに分けて解説します。

結論:AIは「検索係」、人は「資料を採用する編集者」

AIは、調査テーマから関連制度を広げたり、検索語を作ったり、大量の資料から確認箇所を絞ったりする作業に向いています。

一方、次の判断は人が行います。

  • その資料は本当に存在するか
  • 誰が、いつ、何の目的で作ったか
  • 現在も有効な版か
  • 法案なのか、成立した法律なのか、すでに施行された制度なのか
  • 記事の根拠として十分か
調査したい疑問
      ↓
AIが資料の種類・発行主体・検索語を提案
      ↓
人が公式サイトで実在を確認
      ↓
日付・版・法的段階・本文を確認
      ↓
出典表へ記録し、記事に採用

AIが出したURLへ直接飛ぶことが調査ではありません。

誰が出しているはずの資料かを考え、公式サイトで確認するところからが調査です。

一次資料とは何か

一次資料とは、出来事や制度について、発表、決定、調査、記録を行った主体が公開している元の資料です。

例えば、次のようなものがあります。

テーマ一次資料の例
法律・制度法令本文、法案、要綱、附則、所管省庁の通知
国会議案審議経過、会議録、委員会資料、答弁書
自治体条例、予算書、会見録、議事録、調査報告書
統計調査票、集計表、調査方法、政府統計
選挙選挙管理委員会の発表、開票結果、選挙公報
企業決算資料、適時開示、有価証券報告書、公式発表
裁判・処分判決文、裁決書、処分を行った機関の公表資料

報道記事や解説記事は、全体像をつかむのに役立ちます。しかし、それだけでは条件や例外、資料の更新状況を確認できないことがあります。

報道を入口にして、記事内で紹介されている法令、統計、会見、報告書へ戻ることが重要です。

1.先に「何を確認したいか」を一文にする

調査を始める前に、疑問を一文にします。

「選挙SNS規制について調べる」だけでは広すぎます。次のように分けます。

  • 生成AI画像・映像は全面禁止されるのか
  • 誰に表示義務があるのか
  • 大規模SNS事業者に何が求められるのか
  • いつから適用されるのか
  • 記事公開時点で、法案、成立、公布、施行のどの段階か

疑問が曖昧なままAIへ聞くと、概要説明、報道、過去制度、将来予測が混ざった回答になりやすくなります。

調査のゴールは「詳しくなること」ではなく、記事で使う一つの文を確認できる状態にすることです。

2.AIにはURLではなく「資料の設計図」を出してもらう

最初の指示では、資料のURLを求めません。

代わりに、次の四つを出してもらいます。

  1. 必要な資料の種類
  2. 公開している可能性が高い機関
  3. 公式サイトで使う検索語
  4. 資料を開いたあと確認する項目

例えば、次のように指示します。

「選挙運動で使う生成AI画像の表示義務」を調査します。
必要な一次資料の種類、公開主体、検索語、確認項目を表にしてください。
URLは推測しないでください。実在を確認できない資料は「未確認」と書いてください。
法案、成立、公布、施行を区別してください。

この段階で欲しいのは答えではなく、調査ルートです。

AIが資料名を間違えても、検索語と発行主体が分かれば、人が公式サイトから探し直せます。

3.発行主体の公式サイトから探す

資料を探すときは、まず「誰が決めたことか」を考えます。

  • 法律や法案なら、国会、e-Gov、所管省庁
  • 自治体の制度や予算なら、その自治体と議会
  • 政府統計なら、調査を行った省庁や政府統計
  • 企業の業績なら、その企業のIR・開示資料

検索エンジンを使う場合も、一般的な説明記事だけで終わらせず、公式サイトへ絞ります。

site:shugiin.go.jp 選挙 AI 画像 表示義務 法案要綱
site:soumu.go.jp 選挙 SNS 指針
site:lg.jp 調査報告書 会見録

検索結果の上位にあることは、資料の正しさを保証しません。

ドメイン、ページの発行主体、資料名を見て、公式資料かどうかを確認します。

4.URLを開き、実在と公開主体を確認する

AIが示したURLは、必ず実際に開きます。

確認するのは、ページが表示されるかだけではありません。

  • サイトの運営主体は誰か
  • 資料の正式名称は何か
  • 本文、概要、参考資料のどれか
  • PDFへのリンクは同じ機関のものか
  • 検索結果の説明文と、実際のページ内容が一致しているか

似た名称の民間サイトや、古い資料を転載したページが表示されることもあります。

記事の出典として使うURLは、読者が開いたときに「誰が出した、何の資料か」が分かるページを優先します。

5.日付・版・法的な段階を確認する

資料が実在しても、現在の記事に使えるとは限りません。

必ず次を確認します。

確認項目見るポイント
公開日いつ公開された資料か
更新日公開後に内容が変更されていないか
対象期間何年、何月、どの時点の制度や統計か
概要版、確定版、修正版のどれか
法的段階検討、法案、可決、成立、公布、施行のどこか
適用日いつ以後の出来事に適用されるか

特に法律記事では、「国会を通過した」と「施行されている」は別です。

施行日が将来なら、現在の行為に新制度がすでに適用されるような書き方はできません。

実例:法案要綱と審議経過は、役割が違う

選挙SNS規制を調べたときは、衆議院の二つの資料を使いました。

法案要綱で確認したこと

法案要綱では、制度の内容を確認しました。

  • 一定の生成AI画像・映像に表示を求めること
  • 選挙に関してインターネット等を利用する者の責務
  • 大規模事業者に悪影響を軽減する措置を求めること
  • 施行期日と適用区分

議案審議経過で確認したこと

議案審議経過情報では、法案が国会のどの段階にあるかを確認しました。

  • 衆議院、参議院での審議結果
  • 審議が終了した日
  • 公布年月日と法律番号の記載状況

要綱だけを読めば、制度の内容は分かります。しかし、記事公開時点で公布済みかどうかは、別の資料で確認する必要があります。

一つのページですべてを確認しようとしないことが大切です。

6.AIの要約と元資料を一文ずつ照合する

一次資料を見つけたら、AIに要約させて終わりではありません。

記事で使う文ごとに、根拠になる箇所を確認します。

記事に書く文
「実写と誤認されるおそれがある一定のAI画像・映像には、AI利用の表示が求められる」

確認する項目
- 対象となる画像・映像
- 除外される軽微な改変
- 対象となる活動と期間
- 誰が表示するのか
- 端末画面にどう表示するのか

AIの要約では、「一定の場合」という条件が落ち、「AI画像には表示義務がある」と広く書かれる可能性があります。

短くするほど、対象、例外、期間が消えやすくなります。記事の結論に使う箇所ほど、元資料へ戻ります。

7.採用した資料を出典表へ記録する

確認済みの資料は、その場で記録します。

後で検索し直すと、似たページや更新後の資料と混ざるからです。

項目記録内容
記事テーマ何の記事に使うか
確認した文記事のどの記述を支えるか
資料名正式名称
発行主体国会、省庁、自治体、企業など
公開・更新日確認できた日付
URL実際に開いたページ
確認箇所条文、ページ、表、見出し
法的段階・版法案、成立、公布、施行、修正版など
最終確認日最後に開いた日

AIには、開いた資料の内容をこの表へ整形してもらえます。

ただし、実在確認をしていない候補と、確認済みの資料を同じ表に入れないことが重要です。

「候補」と「採用」を分ける調査表

調査中は、資料を三つの状態に分けます。

状態意味記事での扱い
候補AIや検索結果が示しただけまだ使わない
確認中実在は確認したが、日付や内容を照合中下書きに留める
採用発行主体、版、内容を確認済み出典として使用できる

「URLがあるから採用」ではありません。

確認が終わるまで状態を分ければ、未確認の資料が公開原稿へ紛れ込むのを防げます。

AIが作ったURLで起きやすい失敗

実在しないページを示す

実在する機関名と、もっともらしいページ名を組み合わせ、存在しないURLを出すことがあります。

トップページを出典にする

省庁や自治体のトップページは実在しても、記事の記述を直接確認できません。根拠となる個別資料へリンクします。

古いPDFを最新版として扱う

検索結果や他サイトから古いPDFへ到達し、改正前の制度を現在のルールとして要約することがあります。

報道と公式資料を混同する

報道記事の説明を、官公庁が発表した内容のようにまとめる場合があります。誰の説明かを分けます。

資料名が同じ別年度を混ぜる

毎年公表される統計、予算、報告書は、名称がほぼ同じです。年度と対象期間を確認します。

公開前の一次資料チェックリスト

  • [ ] URLを実際に開いた
  • [ ] 発行主体を確認した
  • [ ] 資料の正式名称を記録した
  • [ ] 公開日・更新日・対象期間を確認した
  • [ ] 最新版、確定版、修正版のどれか確認した
  • [ ] 法案・成立・公布・施行を区別した
  • [ ] 記事の文と根拠箇所を一文ずつ照合した
  • [ ] 条件、例外、対象者、適用日を落としていない
  • [ ] 報道、当事者説明、公式資料を区別した
  • [ ] 最終確認日を記録した

チェックできない項目がある資料は、記事の根拠として断定的に使いません。

調査時間を測るときの注意

AIを使うと、候補を集める時間は短くなります。

しかし、候補が多すぎると、実在確認と照合に時間がかかります。

測るときは、次の時間を分けます。

工程時間
疑問と確認項目を決める__分
AIで検索語・資料候補を作る__分
公式資料を探す__分
日付・版・本文を確認する__分
出典表へ記録する__分
合計__分

AIの回答が出るまでの時間ではなく、記事に使える根拠がそろうまでの時間で比較します。

まとめ

  • AIには答えではなく、資料の種類、発行主体、検索語、確認項目を提案させる
  • 調査を始める前に、確認したい疑問を一文にする
  • 資料は発行主体の公式サイトから探す
  • AIが示したURLを必ず開き、実在と公開主体を確認する
  • 公開日、更新日、版、対象期間、法的段階を確認する
  • AIの要約と元資料を、記事で使う一文ごとに照合する
  • 未確認の「候補」と、確認済みの「採用資料」を分ける
  • 調査の成果は、URLの数ではなく、読者が確認できる根拠がそろったかで測る

AIを使えば、調査の入口は速く作れます。

しかし、資料が本当に存在し、現在の記事の根拠として使えるかを決めるのは人です。

AIは検索係、人は資料を採用する編集者。

この分担を守ることで、速さと信頼性を両立できます。

第5回では、AIの要約で条件や例外が落ちる理由と、元資料との照合方法を解説しています。

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