YouTube動画を公開したあと、ブログ、note、X、ショートも作ろうとすると、同じ内容を何度も読み直すことになります。
動画を聞き直して概要欄を書く。もう一度聞いて記事を書く。ショート候補を探すために、さらに最初から再生する。
これでは、媒体を増やすほど作業が増えます。
そこで政経プラスでは、動画の文字起こしを一度修正し、「修正済みSRT」を後工程の共通データにします。
SRTは、字幕の文章と表示時刻を持つファイルです。誤字を直して動画へ載せるだけでなく、どの時刻に何を話したかを再利用できます。
固有名詞、数字、発言内容、時刻を一度確定すれば、YouTube概要欄、タイムスタンプ、ブログ、note、X、ショート候補を同じデータから作れます。
今回は、自動字幕や文字起こしを、公開と再利用に耐えるSRTへ直す八つの手順を解説します。
結論:SRTは字幕ファイルではなく、動画の「索引付き原稿」
SRTには、字幕ごとに三つの情報があります。
1
00:00:00,000 --> 00:00:02,090
こんにちは、カネさんです
- ブロック番号
- 開始時刻と終了時刻
- その時間に話している内容
文章だけの文字起こしと違い、SRTには時刻があります。
そのため、修正済みSRTから次のものを作れます。
| 成果物 | SRTから使う情報 |
|---|---|
| 動画字幕 | 発言内容、改行、表示時間 |
| タイムスタンプ | 話題が変わる時刻 |
| YouTube概要欄 | 動画全体の論点、固有名詞、数字 |
| ブログ・note | 発言の順序、引用候補、見出し候補 |
| X投稿 | 一つの論点が完結する箇所 |
| ショート | 開始時刻、終了時刻、発話量、結論のある区間 |
自動字幕をそのまま各媒体へ渡すと、同じ誤りがすべての成果物へ広がります。
逆に、SRTを先に直せば、一度の確認がすべての後工程に効きます。
自動字幕をそのまま使えない理由
音声認識の文章は、一見すると読めます。しかし、政治、行政、法律、統計を扱う動画では、小さな誤認識が記事の意味を変えます。
固有名詞が似た音へ変わる
人名、自治体名、会派名、法律名、委員会名は、一般的な単語より誤認識されやすい部分です。
人物名が一文字違うだけでも、検索、関連記事、タイトル、概要欄へ正しい情報を引き継げません。
小数点と単位が消える
例えば、音声の「55.4%」が、字幕では「55 4%」になることがあります。
人が見れば小数だと推測できますが、記事生成や数字の抽出では「55」と「4」に分かれる可能性があります。
万円、億円、パーセント、年、月、日、時給なども、数字と一体で確認します。
文の切れ目が変わる
一つの発言が不自然な場所で分割されると、前提と結論が別の字幕になります。
反対に、複数の論点が一ブロックに入ると、字幕が読みにくくなり、ショートの開始位置やタイムスタンプも選びにくくなります。
発言と引用が混ざる
動画では、記事や報告書を読み上げたあとに、話者が自分の意見を述べることがあります。
文字だけを並べると、引用した内容と話者の評価が一つの発言に見える場合があります。
SRT修正では、内容を事実認定するのではなく、どこまでが読み上げで、どこからが話者の見解か分かる切れ目を残します。
最初に三つのファイルを分ける
修正作業では、元のSRTを上書きしません。
動画名(自動字幕).srt
動画名(修正後).srt
動画名(確認メモ).md
自動字幕
取得時の状態を保存します。修正前後を比較し、音声認識の傾向を把握するための原本です。
修正後SRT
公開字幕と後工程に使うマスターデータです。記事、概要欄、ショート生成では、原則としてこちらを使います。
確認メモ
固有名詞や数字の根拠、音声を再確認した箇所、どうしても聞き取れなかった箇所を記録します。
確認済みの修正と、推測で直した候補を同じ扱いにしないためです。
SRTを修正する八つのステップ
1.番号とタイムコードの構造を確認する
文章を直す前に、SRTが正しい形になっているか確認します。
- ブロック番号が1から連番になっている
- 時刻が `時:分:秒,ミリ秒` の形式になっている
- 開始時刻が終了時刻より前になっている
- 前後のブロックで時刻が逆転していない
- 空の字幕がない
- 各ブロックの間に空行がある
文章が正しくても、タイムコードが壊れていれば字幕として読み込めず、ショート切り出しにも使えません。
最初に構造上の問題を直し、文章修正中は元の時刻を理由なく動かさないようにします。
2.確認が必要な固有名詞を先に一覧にする
字幕を最初から一文字ずつ直す前に、確認優先度の高い言葉を抽出します。
| 種類 | 確認例 |
|---|---|
| 人名 | 姓名、役職、敬称 |
| 組織 | 自治体、政党、会派、委員会、企業 |
| 制度 | 法律名、条例名、事業名、調査名 |
| 地名 | 都道府県、市区町村、施設名 |
| 日付 | 発表日、会見日、施行日、対象年度 |
| 数字 | 金額、割合、人数、件数、順位 |
AIには、SRTから固有名詞と数字の候補を抽出させられます。
ただし、正しい表記をAIの記憶だけで決めません。動画内の資料、概要欄、公式サイト、一次資料と照合します。
3.意味が変わる誤認識から直す
すべての表記を同じ優先度で直す必要はありません。
最初に、意味や事実関係を変える誤りを修正します。
修正前:全体の55 4%でした
修正後:全体の55.4%でした
修正前:政治倫理委員会は見送り
修正後:政治倫理審査会は見送り
修正前:増山まこと県議
修正後:増山誠県議
優先順位は、固有名詞、数字、否定、比較、日付、制度名です。
「した」と「しなかった」、「増えた」と「減った」、「以上」と「未満」の誤りは、記事の結論まで変えます。
4.数字を「値・単位・対象・時点」の四つで確認する
数字だけが合っていても、何の数字か分からなければ再利用できません。
値:55.4
単位:%
対象:生活が苦しいと回答した全世帯
時点:2025年調査
字幕にはすべてを毎回入れなくても、確認メモには残します。
記事へ変換するとき、前年の数字、別の世帯区分、異なる調査年度と混ざるのを防げます。
5.話し言葉を削りすぎず、読みやすく整える
「えー」「あのー」「そのー」など、意味を持たないフィラーは削れます。
一方、話者の批判、皮肉、ためらい、言い直しをすべて整えすぎると、実際の発言と別の文章になります。
SRT修正は、記事への書き換えではありません。
削ってよい候補:意味のないフィラー、同じ音の連続、明らかな認識重複
残す候補:結論を変える否定、強調、言い直し、発言者固有の評価
読みやすくすることと、話者の主張を穏当な別表現へ変えることを分けます。
6.一ブロックの改行を整える
政経プラスでは、字幕の読みやすさを確認する目安として、原則一行20文字程度、一ブロック最大二行にしています。
これは絶対的な規格ではなく、動画の文字サイズ、表示時間、話す速度によって調整する運用ルールです。
改行するときは、次のまとまりを分断しません。
- 人名と役職
- 数字と単位
- 主語と述語
- 否定する語と対象
- 制度の正式名称
避けたい改行:
生活が苦しい世帯は55.4
%でした
読みやすい改行:
生活が苦しい世帯は
全体の55.4%でした
短い字幕を大量に作りすぎると、表示が忙しくなり、後工程で発言をまとめ直す作業も増えます。
7.ブロックの統合・分割は時刻を見ながら行う
自動字幕では、一文が細かく分かれたり、長い発言が一ブロックへ入ったりします。
統合・分割するときは、文章だけでなく音声の開始・終了位置を確認します。
- 新しい論点が始まる場所
- 引用から話者の意見へ戻る場所
- 質問と回答が切り替わる場所
- ショートの冒頭にできる結論の始まり
元の開始時刻と終了時刻を、読みやすさ以外の理由で勝手に動かしません。
時刻を変えた箇所は、確認メモに残します。
8.聞き取れない箇所を推測で完成させない
固有名詞や数字を聞き取れない場合、前後の文からもっともらしい言葉を作らないようにします。
00:08:14付近 人名を再確認
00:12:37付近 金額の単位が不明
00:18:05付近 複数話者が重なり判別困難
公開までに確認できなければ、その字幕を短くする、該当箇所を使わない、動画音声を再確認するという判断をします。
AIには「不明」と出すことを許し、空欄を推測で埋めさせません。
修正済みSRTが後工程を速くする仕組み
タイムスタンプ
話題の変わるブロックの開始時刻を拾えば、動画を最初から聞き直さずにタイムスタンプ候補を作れます。
ただし、AIが作った時刻ではなく、SRTに実在する開始時刻だけを採用します。
YouTube概要欄
修正済みの人名、制度名、数字を使って動画の内容を整理できます。
自動字幕のまま概要欄を作ると、名前の誤字が検索語や出典欄へ広がります。
ブログとnote
SRTは動画内で何を話したかを確認する材料です。
動画内の意見を外部の事実とみなさず、一次資料と照合した情報を加えて記事へ再構成します。
文字起こしを段落に変えるだけでは、検索記事にはなりません。
ショート動画
政経プラスのショート生成では、SRTから発話量が多く、「重要」「問題」「結論」「しかし」などの語や数字を含む区間を候補として拾います。
修正済みSRTを渡せば、再度文字起こしをせず、字幕の焼き込みと開始位置の候補選定に同じデータを使えます。
固有名詞や数字を先に直しておくことで、切り出したショートにも誤りが引き継がれにくくなります。
AIに任せる作業と、人が確認する作業
| 工程 | AIに任せる | 人が確認する |
|---|---|---|
| 構造確認 | 番号、時刻形式、空字幕の検出 | 音声と時刻が合っているか |
| 候補抽出 | 人名、制度名、数字、否定語を一覧化 | 正式表記と根拠 |
| 文章修正 | 誤変換、重複、フィラーの候補 | 発言の意味が変わっていないか |
| 改行 | 文字数超過、二行超過を検出 | 読む速さと意味のまとまり |
| 再利用 | 見出し、タイムスタンプ、ショート候補 | 採用箇所と公開表現 |
AIは、全ブロックを同じ基準で点検する作業に向いています。
音声と字幕が一致しているか、人物名や数字が正しいか、話者の意味を変えていないかは人が確認します。
SRT修正を依頼するプロンプト
このSRTを、公開字幕と後工程の共通データにするため点検してください。
最初に、次を一覧にしてください。
1. 固有名詞の候補
2. 数字、日付、金額、割合
3. 否定、比較、増減を含む文
4. 聞き取り確認が必要な箇所
5. タイムコードの重複、逆転、欠落
6. 一行20文字程度・一ブロック2行を超える箇所
修正するときのルール:
- 元のタイムコードを理由なく変更しない
- 固有名詞と数字を推測で確定しない
- 話者の意見を外部の事実へ変えない
- 批判、皮肉、否定の意味を弱めない
- 不明な箇所は確認メモへ残す
- 修正前後の一覧を作る
- 最後にSRTの構造を再検証する
AIへ一度に完成版を作らせる前に、確認候補の一覧を受け取ることが重要です。
正しい表記を人が確定したあと、全体へ反映させます。
出力後の自動チェック
修正後は、目視だけで終わらせません。
| チェック | 確認内容 |
|---|---|
| ブロック数 | 修正前後で増減した理由が分かる |
| 番号 | 1から連番、重複なし |
| 時刻 | 逆転、重複、欠落がない |
| 最初と最後 | 動画の範囲と大きくずれていない |
| 空字幕 | 本文のないブロックがない |
| 行数 | 原則二行以内 |
| 文字数 | 長すぎる行を確認した |
| 文字コード | UTF-8で正常に読める |
| 固有名詞 | 正式表記と照合済み |
| 数字 | 値、単位、対象、時点を確認済み |
タイムコードが正しくても、最後の字幕が動画途中で終わっていれば、取得漏れの可能性があります。
構造、内容、動画との範囲を分けて確認します。
よくある失敗
修正前SRTを上書きする
何を変えたか追えず、誤修正に気づいても戻せません。原本を残し、修正後は別ファイルにします。
全文を読みやすい記事文へ書き換える
字幕は実際の発言を示すものです。話者の口調や評価を別の文章へ変えると、動画と字幕が一致しなくなります。
誤字だけ直し、数字の意味を確認しない
「55.4%」と直しても、対象や年度が別なら記事では使えません。確認メモへ値、単位、対象、時点を残します。
タイムコードをAIに作り直させる
音声を確認していないAIが、文章量から時刻を再配置すると同期が崩れます。元の時刻を基本にします。
自動チェックの合格を完成と考える
番号と時刻が正しくても、人名や発言の意味が正しいとは限りません。構造チェックと内容確認は別です。
作業時間を測る
修正の効果は、SRTだけの作業時間ではなく、後工程を含めて測ります。
| 工程 | AI利用前 | AI利用後 |
|---|---|---|
| 固有名詞・数字の候補抽出 | __分 | __分 |
| 音声との照合 | __分 | __分 |
| 改行・フィラー修正 | __分 | __分 |
| 構造チェック | __分 | __分 |
| 概要欄・タイムスタンプ作成 | __分 | __分 |
| ショート候補確認 | __分 | __分 |
| 合計 | __分 | __分 |
SRT修正に時間がかかっても、概要欄、記事、ショートで聞き直しが減れば、仕事全体は速くなっています。
公開・再利用前のSRTチェックリスト
- [ ] 修正前SRTを別ファイルで保存した
- [ ] ブロック番号が1から連番になっている
- [ ] タイムコードの重複、逆転、欠落がない
- [ ] 空字幕がない
- [ ] 人名、組織名、制度名を公式表記と照合した
- [ ] 数字の値、単位、対象、時点を確認した
- [ ] 否定、比較、増減の意味を変えていない
- [ ] 引用と話者の意見の切れ目を確認した
- [ ] 意味のないフィラーだけを削除した
- [ ] 原則一行20文字程度、一ブロック二行以内を確認した
- [ ] 元のタイムコードを理由なく変更していない
- [ ] 聞き取れない箇所を推測で埋めていない
- [ ] 音声確認が必要な箇所をメモに残した
- [ ] UTF-8で正常に開ける
- [ ] 修正後SRTを後工程の共通データとして指定した
まとめ
- SRTは、字幕本文と時刻を持つ「索引付き原稿」
- 自動字幕の誤りを放置すると、概要欄、記事、ショートへ同じ誤りが広がる
- 修正前、修正後、確認メモの三つを分ける
- 固有名詞、数字、否定、比較、日付を優先して直す
- 数字は、値、単位、対象、時点の四つで確認する
- フィラーを削っても、話者の主張や口調を別の意味へ変えない
- タイムコードは元データを基本とし、構造と内容を別々に確認する
- 聞き取れない箇所は推測せず、確認メモへ残す
- 修正済みSRTからタイムスタンプ、概要欄、記事、ショートを作る
- 効率は字幕修正だけでなく、後工程を含む完成時間で測る
動画を一度公開して終わりにすると、次の媒体を作るたびに聞き直しが発生します。
先にSRTを直して共通データにすれば、一つの動画を何度も理解し直す必要がありません。
一度確認し、何度も使う。
これが、「ひとりAI編集部」で動画から複数コンテンツを作るための土台です。
第8回では、修正済みSRTから、検索型・問題提起型・比較型のタイトル案、実在する時刻だけを使ったタイムスタンプ、内容と根拠が伝わるYouTube概要欄を作る方法を解説しています。
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