兵庫県のプレミアム付デジタル券「はばタンPay+」第5弾をめぐり、一般枠では本人確認書類を提出せず、自己申告した住所で申し込めることが問題になりました。
私が2026年4月22日に公開した動画では、複数の電話番号やスマートフォンを使った重複申込み、県外在住者による申込み、不正取得されたデジタル券の利用などの可能性を取り上げました。
その後、兵庫県は知事記者会見と申込結果の発表で、県内居住の確認方法、名寄せ、不正が判明した場合の対応を説明しています。この記事では、動画公開後に出た公式説明を加え、確認できた事実と、なお残る検証課題を分けて整理します。
結論|一般枠は公的証明書ではなく自己申告と名寄せで確認
第5弾の一般枠では、マイナンバーカードなどの本人確認書類は求められていませんでした。
一方で、何の確認もしていないわけではありません。県の説明をまとめると、次の仕組みで対象者を確認しています。
- 申込者が住所を登録する
- 兵庫県在住者であることを同意項目で確認する
- 氏名、住所、電話番号などを使って名寄せする
- 同一人物による重複申込みなどを当選対象から除く
- 虚偽申請や不正利用が判明した場合は無効にする
したがって、「本人確認なし」という表現は、「公的な本人確認書類の提出がない」という意味では正確です。しかし、登録情報による確認まで一切ない、という意味で使うと正確ではありません。
問題の中心は、本人確認の有無を二者択一で語ることではありません。自己申告と名寄せだけで、兵庫県在住者に限定した1人4口までの制度をどこまで実効的に守れるのかです。
第5弾は最大1万円のプレミアム
はばタンPay+第5弾の一般枠は、1口7,500円分を5,000円で販売する仕組みです。プレミアム率は50%で、1人4口まで購入できるため、2万円のチャージで3万円分を使えます。
兵庫県が公表した事業規模は次のとおりです。
- 発行予定額:279億3,000万円
- うちプレミアム分:93億1,000万円
- 申込者数:117万9,524人
- 購入上限:1人4口
- 対象者:兵庫県在住者
- 利用店舗:兵庫県内の参加店舗
申込者数は過去最多となり、県は申込者全員を希望口数どおり当選としました。ただし、公式発表には「同一人物による重複申込みなどは除く」と明記されています。
規模が大きく、最大1万円の公費による上乗せがあるからこそ、対象者と上限口数を守る仕組みが重要になります。
一般枠で求められなかった本人確認書類
2026年4月22日の知事記者会見で、関西テレビは、一般枠の申込みにマイナンバーカードなどの本人確認書類が必要かを質問しました。
齋藤知事は、一般枠ではこれまでもマイナンバーカードの添付などを求めていないと認めています。そのうえで、申込時に住所を入力し、県内在住者が対象であることを同意項目に明記しているため、適切に対応できているとの認識を示しました。
ここで区別すべきなのが一般枠と子育て応援枠です。
子育て応援枠では、対象となる子どもや妊婦の確認が必要なため、マイナンバーカード、こども医療費受給者証、母子手帳などの証明書類を使っていました。一般枠では、その確認工程を設けていません。
県は、一般枠について、支援を可能な限り早く届けること、利用者の利便性、確認にかかる事務コストを重視したと説明しています。つまり、厳格さだけを最大化した制度ではなく、速さや使いやすさとのバランスを取った制度設計です。
名寄せで何を見つけられるのか
県は、同一人物やなりすましへの対策として「名寄せのチェック」を挙げています。
名寄せは、氏名、住所、電話番号などの登録情報を照合し、同一人物とみられる申込みをまとめて確認する方法です。同じ電話番号や同じ住所で大量の申込みがあれば、重複の手掛かりになります。
しかし、申込情報の基礎となる住所が自己申告で、複数の有効な電話番号が使われた場合、どの条件で同一人物と判断するのかは簡単ではありません。
4月22日の会見では、まさにこの点が質問されました。異なる電話番号と住所を使った申込みを、名寄せだけでどう検知するのかと問われたのに対し、知事は、県内在住のチェック項目と名寄せによって適切に対応しているとの説明を繰り返しました。
県の4月23日の申込結果には、重複申込みなどを除外したことは書かれています。ただし、公表ページだけでは次の点を確認できません。
- 重複として除外した人数と件数
- 名寄せに使った項目と判定基準
- 複数の電話番号やメールアドレスを使った申込みの検知方法
- 県外在住者の申込みを発見した件数
- 誤って別人を重複と判定しないための確認手順
不正対策の詳細をすべて公開すれば、対策をすり抜ける手掛かりを与えるおそれがあります。それでも、検知実績や監査方法、除外件数など、制度の有効性を検証できる集計情報は示せるはずです。
「不正の可能性」と「不正の確認」は別
元動画では、県外在住者や複数端末を使った申込みが可能ではないかという問題を取り上げました。この疑問は、一般枠で公的証明書を求めず、住所を自己申告にしている以上、制度設計上の論点として残っています。
ただし、可能性があることと、実際に大規模な不正が起きたことは別です。
今回確認した公式資料では、同一人物による重複申込みなどを除外したことは示されていますが、県外在住者が取得した件数や、偽名による組織的な申込みが確認されたという発表は見つかりませんでした。
したがって、現時点で言えるのは次の範囲です。
- 確認済み:一般枠では公的な本人確認書類を求めていない
- 確認済み:住所登録、在住確認の同意、名寄せを行っている
- 確認済み:県は重複申込みなどを当選対象から除外した
- 未公表:除外した件数と具体的な判定方法
- 未確認:県外在住者や偽名による大規模な不正取得の実態
制度の弱点を指摘する際にも、この線引きは崩すべきではありません。
マネーロンダリングと断定できる材料はない
元動画では、換金や資金移動に悪用される危険にも言及しました。しかし、今回確認できた資料だけで、はばタンPay+が実際にマネーロンダリングに使われたとは断定できません。
公式サイトでは、デジタル券を友人や家族に送ることはできず、現金との交換や第三者への転売・譲渡も禁止されています。切手、商品券、旅行券、乗車券など換金性の高い商品の購入も対象外です。
これらは不正換金のリスクを下げる仕組みです。一方、本人確認の精度や加盟店での異常取引の監視が十分かは別の検証が必要です。
このため、記事では「マネーロンダリングが起きた」とは書かず、「不正取得や換金を防ぐ設計が十分かを検証する必要がある」と表現するのが妥当です。
4月28日にも現行運用を維持
4月28日の知事記者会見では、本人確認をマイナンバーなどで厳格化する指示を出したかが改めて問われました。
齋藤知事は、住所登録で県内居住を確認し、同一人物やなりすましは名寄せでチェックしていると説明しました。不正利用が判明した場合は無効とし、悪質な場合には警察への相談も含めて対応するとしています。
そのうえで、県民生活の支援、地域経済の消費喚起、利用者の利便性、事務コストを踏まえ、現行の運用が最適との認識を示しました。少なくとも4月28日時点で、一般枠を公的証明書による本人確認へ切り替える方針は示されていません。
一方、県はこれまでの利用状況や他自治体の取組を分析し、次の実施につなげるとも述べています。今後の焦点は、現行方式が適切だという評価を、検知実績や費用対効果の数字で説明できるかです。
今後公表してほしい5つの数字
制度の利便性を保ちながら公平性を検証するには、個人情報や不正検知の詳細を明かさずに、次の集計を公表する方法があります。
- 重複申込みとして除外した件数
- 虚偽申請が判明し無効にした件数
- 利用開始後に停止したアカウント数
- 不正の通報件数と確認結果
- 本人確認を厳格化した場合の追加費用と日数
これらが示されれば、自己申告方式による利便性と、公費を公平に配分するための精度を比較できます。
「不正は見つかれば無効にする」という説明だけでは、見つける仕組みが有効かまでは分かりません。必要なのは、個々の利用者を疑うことではなく、制度全体を数字で検証できる状態です。
2026年7月時点の状況
兵庫県の公式ページは2026年7月1日に更新され、第5弾の利用期間を7月31日までと案内しています。申込みとチャージ期間はすでに終了しています。
公式ページでは、実在するアプリになりすまして別サイトへ誘導する事案への注意も呼びかけています。これは重複申込みとは別の問題ですが、約118万人が申し込む大規模なデジタル事業では、申込者の資格確認だけでなく、偽サイト、不正アクセス、個人情報保護まで含めた安全管理が必要だと分かります。
現時点では、第5弾の最終利用実績や、重複・不正申込みをまとめた検証結果は公式ページで確認できません。利用終了後に、申込数、除外数、利用率、不正対応、運営費を一体で公表するかを追う必要があります。
まとめ
はばタンPay+第5弾の一般枠では、マイナンバーカードなどの本人確認書類は求められていません。県は、住所の自己申告、県内在住への同意、登録情報の名寄せによって対象者と重複申込みを確認しています。
県は117万9,524人の申込みから同一人物による重複申込みなどを除外したと発表しました。しかし、除外件数や検知方法、県外在住者の申込みを確認した件数は公表ページからは分かりません。
私は、ただ「本人確認がないから危険だ」と煽るのではなく、速さと利便性を重視した現行方式が、1人4口、兵庫県在住者限定という条件をどこまで守れたのか、数字で検証すべきだと考えます。
不正があったと決めつける段階ではありません。同時に、自己申告と名寄せで十分だという県の評価も、結果の公表なしに検証済みとは言えません。第5弾の終了後、県がどこまで具体的な実績を示すのかを追います。
映像と音声での解説はこちら 元動画をYouTubeで見る
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元動画
- 動画タイトル:『【ザルofザル】はばタンPay+、不正可能問題を関テレ・MBS報じる!マネーロンダリングや不正取得にも使われかねない穴があるはばタンPayの仕組みに疑問の声!』
- YouTube URL:https://www.youtube.com/watch?v=Iow8cMOI1lQ
- 公開日:2026年4月22日
主な参照資料
- 兵庫県「はばタンPay+」第5弾
- 兵庫県「はばタンPay+」第5弾の申込結果及びチャージ手続きサポート
- 兵庫県「知事記者会見(2026年4月22日)」
- 兵庫県「知事記者会見(2026年4月28日)」
- はばタンPay+第5弾公式サイト「購入希望の皆さま」
- はばタンPay+第5弾公式サイト「よくあるご質問」
- 関西テレビ「本人確認不要の“大盤振る舞い”『はばタンPay+』県民以外も申し込める?」


