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公民権はいつ停止されるのか――選挙権・被選挙権と連座制を公職選挙法で整理

公民権はいつ停止されるのか――選挙権・被選挙権と連座制を公職選挙法で整理|政経プラスチャンネル公式ブログ 法律・公益通報

選挙権(投票する権利)や被選挙権(候補者となり、議員や自治体の長などに就く資格)が制限される時期と期間は、犯罪の種類と刑、判決確定(裁判の結論が最終的に決まること)の有無、刑の執行が終わったかによって異なります。

選挙犯罪では、罰金刑(金銭の支払いを命じる刑)でも、原則5年間の制限が生じる場合があります。

投票できないのか。立候補できないのか。当選が無効になったのか。同じように見える言葉でも、法律上は別の制度です。

法律で制限されるのは、投票する権利や立候補する資格です。公職選挙法は、一定の刑事事件や選挙犯罪について、制限の期間と範囲を定めています。「公民権」(投票や立候補など、政治に参加する権利)を一つの資格として一括で剥奪する、という仕組みとは区別します。

さらに、候補者本人ではなく、選挙運動の責任者や秘書らが選挙犯罪を犯した場合に、候補者の当選を無効にし、一定期間の立候補を禁止する「連座制」(一定の関係者の選挙犯罪により、候補者の当選や立候補を制限する制度)もあります。これは、通常の「公民権停止」と同じものではありません。

本人の選挙権・被選挙権の制限と連座制を比較した図。本人の投票と立候補の資格は罪名、刑、適用条文で異なり、逮捕や起訴だけでは決まらない。連座制は一定の関係者の選挙犯罪を対象とし、当選無効と限定的な立候補禁止を生じさせるが、候補者の投票権を当然に失わせない。効力の時点は、関係者の刑の確定だけで即時と捉えず、選挙訴訟など法定手続きを確認する。
公職選挙法11・11条の2・252条と251条の2から251条の5に基づく整理。本人の選挙権・被選挙権の制限は、罪名・刑・適用条文などで異なります。連座制は、一定の関係者の選挙犯罪について、当選無効(その選挙の当選が効力を失うこと)や、公職(議員や自治体の長などの職)と区域を限った立候補禁止を生じさせる制度で、候補者の投票権を当然に失わせるものではありません。対象者と、免責(連座制の適用から外れること)の条件、刑が確定した時期と効力が生じる手続きを、それぞれ確認します。 出典:公職選挙法 第11条・第11条の2・第252条、第251条の2〜第251条の5(2026年9月30日確認)
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選挙権は投票する権利、被選挙権は立候補する資格

日本国憲法15条は、公務員を選び、また罷免(職を辞めさせること)することを国民固有の権利と定めています。公職選挙法では、主に次の二つに分けて規定されています。

用語意味
選挙権投票する権利
被選挙権公職の候補者となり、当選して公職に就く資格

国政選挙では、満18歳以上の日本国民が選挙権を持ちます。地方選挙では、年齢に加えて、原則としてその市町村に引き続き3か月以上住所があることなどの条件があります。

被選挙権は、衆議院議員・地方議会議員・市町村長が満25歳以上、参議院議員と都道府県知事が満30歳以上です。ただし、年齢や住所の条件を満たしていても、公職選挙法11条、11条の2、252条などにより、選挙権や被選挙権を有しない場合があります。

つまり、報道で使われる「公民権停止」は、法律上は「選挙権及び被選挙権を有しない」状態を指すことが多いものの、実際には条文ごとに期間と効果を確認する必要があります。

選挙権・被選挙権が制限される主な場面

1 拘禁刑(刑事施設に収容する刑)以上の刑を受け、刑の執行が終わっていない場合

公職選挙法11条1項2号は、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者について、選挙権と被選挙権を認めていません。

一方、同条1項3号は、拘禁刑以上の刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなるまでの者を対象としつつ、刑の執行猶予(一定期間、刑の執行を見合わせること)中の者を除外しています。一般の刑事事件では、執行猶予が付いたことだけで、この規定により選挙権を失うわけではありません。

ただし、選挙犯罪については別の規定があります。ここを一括して説明すると、誤解が生まれます。

2 公職にある間の収賄(職務に関して賄賂を受け取ることなど)で刑に処せられた場合

公職にある間に犯した刑法上の収賄罪などで刑に処せられた場合、公職選挙法11条1項4号が適用されます。

対象となる収賄等の罪では、刑の執行が終わった後や、執行を免除された後の5年間、投票と立候補の両方が制限されます。執行猶予中も両方が制限されます。

刑の執行終了または執行免除から5年を過ぎると、同法11条の2により、その後5年間は立候補だけが制限されます。この計10年間は、刑の執行が終わった日か、執行を免除された日から数えます。執行猶予の満了とは区別して読む必要があります。

3 選挙犯罪で罰金刑を受けた場合

公職選挙法252条1項は、同法16章に定める選挙犯罪のうち、条文で除外された一部を除き、罰金刑を受けた者について、原則として裁判が確定した日から5年間、選挙権と被選挙権を有しないと定めています。

罰金刑に執行猶予が付いた場合は、裁判確定から刑の執行を受けることがなくなるまでが対象です。選挙犯罪では罰金でも資格制限が生じるため、一般の犯罪の罰金刑とは分けて確認します。

4 選挙犯罪で拘禁刑を受けた場合

公職選挙法252条2項の対象となる選挙犯罪で拘禁刑となった場合、制限は裁判確定の日から始まります。刑の執行終了まで、または刑の時効(定められた期間が過ぎ、刑を執行できなくなること)による場合を除く執行免除までと、その後5年間が対象です。執行猶予など、刑の執行を受けることがなくなる場合は、裁判確定からその時までとなります。

買収(当選を得る目的などで、投票や選挙運動に金品などを使って働きかけること)等の221条〜223条の2の罪で刑に処せられた人が、さらに同じ範囲の罪で刑に処せられた場合は、同条3項により、1・2項の5年間が10年間になります。

同条4項では、裁判所が情状(犯行の事情や本人の状況など)により、刑の言渡しと同時に資格制限の扱いを宣告できます。

買収等の221条〜223条の2以外の対象犯罪で罰金刑となった場合は、制限を適用しない扱いか、期間の短縮が可能です。買収等の罰金刑、対象犯罪の拘禁刑、再び同じ範囲の犯罪で刑に処せられた場合の10年間の制限では、期間の短縮が対象になります。

拘禁刑の実刑(執行猶予を付けず、刑を実際に執行すること)では、刑の執行終了等の後の5年間(再び同じ範囲の犯罪で刑に処せられた場合は10年間)が短縮の対象です。執行猶予の場合は、猶予中の資格制限の期間を短縮できます。刑期や、実際に刑を執行している間の資格制限を短くする規定とは区別します。

判決主文(裁判の結論を示す部分)で、どの扱いが宣告されたかを確認します。

逮捕や起訴(検察官が刑事裁判を起こすこと)だけで「公民権停止」になるのか

原則として、逮捕されたことや捜査を受けていることだけで、直ちに選挙権・被選挙権が停止されるわけではありません。

公職選挙法11条や252条は、刑に処せられたこと、裁判が確定したこと、刑の執行中であることなどを基準にしています。したがって、ニュースを読むときは「逮捕」「起訴」「有罪判決」「判決確定」を区別する必要があります。

逮捕は身柄を確保する手続き、起訴は刑事裁判を始める手続きです。有罪が確定したか、選挙権や被選挙権にどの制限が生じるかは、その後の裁判と該当する条文で確認します。

連座制は、関係者の選挙犯罪で候補者の当選等を制限する制度

連座制は、候補者本人が選挙犯罪を犯したと確定していなくても、候補者と一定の関係にある者が、選挙運動に関する重大な犯罪で刑に処せられた場合に、候補者側に選挙制度上の制裁を及ぼす制度です。

ここでは公職選挙法251条の2・251条の3を中心に説明します。主な効果は次の二つです。

  1. その選挙における候補者の当選が無効になる
  2. その選挙に係る選挙区・区域で、同じ公職の候補者となることが5年間禁止される

251条の4には、元公務員等が一定の国政選挙で当選した場合に、指示・要請を受けた公務員等の選挙犯罪で当選無効となる別の規定もあります。指示には、当選人から直接受けた場合と、指示を受けた公務員等を介した場合があります。この規定には5年間の立候補禁止はありません。通常の公民権停止とも区別します。連座制だけで、候補者本人の投票権まで失わせる制度ではありません。別の事由がなければ、投票できる一方で、その選挙区・公職には立候補できないという状態があり得ます。

どのような人が連座制の対象になるのか

公職選挙法251条の2と251条の3は、対象者と必要な刑を分けて定めています。次の表は、役割や意思連絡の典型的な例です。親族・秘書の欄は候補者本人と意思を通じた例を示していますが、条文は総括主宰者(選挙運動全体の責任者)や地域主宰者(区域を分けた場合の地域ごとの責任者)と意思を通じた場合も対象にしています。

対象者の例条文上のポイント
選挙運動の総括主宰者陣営全体の選挙運動を取りまとめた者
出納責任者(選挙運動の収支を管理する人)選挙運動に関する収支を扱う者。一定額を支出した者を含む場合がある
地域における選挙運動の主宰者3以内に分けられた選挙区のうち、1または2地域の選挙運動を取りまとめた者。候補者または総括主宰者から定められたことが必要
親族父母、配偶者、子、兄弟姉妹で、候補者等と意思を通じて選挙運動をした者
秘書候補者等の政治活動を補佐し、候補者等と意思を通じて選挙運動をした者
組織的選挙運動管理者等(陣営の選挙運動を計画・管理する人など)選挙運動の計画・調整、指揮・監督などを担った者

対象となる犯罪は、買収・利害誘導(取引などの直接の利害関係を使って、投票や選挙運動を働きかけること)など、公職選挙法221条から223条の2までに定められた犯罪が中心です。出納責任者の選挙費用に関する犯罪については、247条が問題になる場合があります。

対象犯罪で必要となる刑も異なります。総括主宰者、出納責任者、地域主宰者は罰金を含む刑が対象です。親族・秘書と組織的選挙運動管理者等は、拘禁刑に処せられることが要件です。親族・秘書では、候補者等、総括主宰者または地域主宰者と意思を通じた選挙運動かどうかも確認します。

組織的選挙運動管理者等を対象とする251条の3では、候補者等が犯罪防止のため相当の注意を怠らなかった場合などに、連座制の適用を除く規定があります。「知らなかった」という説明に加え、実際にどのような管理・監督をしていたかが判断材料になります。

誘導・挑発などに関する免責には、候補者の当選や資格を失わせる目的で、対立候補側などと意思を通じたという条件があります。251条の2第4項で適用を除くのは、立候補禁止と衆議院比例代表の当選無効に関する部分です。通常の当該選挙の当選無効まで一括して免責する規定とは区別します。組織的管理者等を扱う251条の3第2項では、同条1項全体を適用から除く場合を定めています。実際の役割、意思連絡、罪名、刑、免責の条件を条文に沿って確認する必要があります。

本人の選挙犯罪による当選無効と、連座制は別の制度

候補者本人が選挙犯罪を犯して刑に処せられた場合は、公職選挙法251条により、その当選が無効になることがあります。

これは、候補者本人の選挙犯罪による当選無効です。候補者本人の犯罪ではなく、総括主宰者や出納責任者らの犯罪を理由に候補者の当選を無効にする連座制とは、条文も要件も違います。

したがって、報道では次のように書き分ける必要があります。

  • 候補者本人が有罪となり、当選が無効になった
  • 陣営の責任者が有罪となり、連座制により候補者の当選が無効になった
  • 選挙犯罪で有罪となり、本人の選挙権・被選挙権が停止された
  • 当選無効とは別に、議員が辞職した、または職を失った

これらは同時に起きる場合もありますが、同じ意味ではありません。

連座制の効果は、いつ発生するのか

連座制は、関係者が逮捕された時点で候補者の当選が自動的に消える制度ではありません。

関係者の刑が確定した後の手続きは、誰が訴訟を起こすかで分かれます。公職選挙法251条の5は、次のように効果が生じる時期を定めています。

  • 候補者側が裁判所に確認を求める場合(210条1項):通知を受けた候補者側は、検察官を相手に裁判を起こせます。候補者側が敗れた判決や、形式上の不備などで訴状(裁判を起こすための書面)を受け付けないとした命令が確定した時に効果が生じます。裁判を起こせる期間が過ぎた時や、訴えを取り下げた時にも効果が生じます。
  • 検察官側が起こす裁判(210条2項・211条):検察官側の訴えを認めた判決が確定した時に効果が生じます。

裁判を起こせる期間の経過や訴えの取下げが効力発生につながるのは、210条1項の候補者側の訴訟です。検察官側の訴訟と一列の流れにせず、適用される手続きを分けて読む必要があります。

つまり、関係者の有罪判決と、候補者側の当選無効・立候補禁止の効果が生じる時期は、必ずしも同じではありません。この違いは、現職議員の地位や失職時期を確認する際に重要です。

ニュースで確認したい5つのポイント

ニュースやSNSの説明を読むときに確認したいのは、次の五点です。

1 投票できなくなったのか、立候補できなくなったのか

「公民権停止」と書かれていても、選挙権と被選挙権の両方なのか、被選挙権だけの制限なのかを確認します。

2 罪名は何か

一般の刑事事件、収賄、公職選挙法違反、政治資金規正法違反では、適用条文と効果が違います。「違反した」という一言だけでは判断できません。

3 誰の犯罪なのか

候補者本人なのか、総括主宰者、出納責任者、親族、秘書、組織的選挙運動管理者等なのかで、本人への効果が変わります。

4 刑は確定しているのか

逮捕、起訴、有罪判決、判決確定は別の段階です。公民権停止や連座制の効果については、刑の確定日や判決主文が重要になります。

5 対象となる選挙・区域はどこか

連座制の5年間の立候補禁止は、原則として当該選挙に係る選挙区・区域と、同じ公職が対象です。全国のすべての選挙に一律で立候補できなくなる、と説明するのは正確ではありません。

制限される権利・期間・区域を、それぞれ確認する

公民権に関する制度は、民主主義の根幹に関わる一方、条文上の効果は細かく分かれています。

  • 選挙権は、投票する権利
  • 被選挙権は、立候補する資格
  • 選挙犯罪では、罰金でも一定期間の制限が生じ得る
  • 収賄などでは、選挙権の制限が終わった後も、被選挙権だけ制限が残る場合がある
  • 連座制は、候補者本人の投票権を当然に奪う制度ではなく、当選無効と一定期間の立候補禁止が中心
  • 逮捕や起訴だけで、有罪確定や公民権停止と決めつけることはできない

政治家の不正を検証するときも、何が確定し、何がまだ決まっていないかを確認する必要があります。「公民権を剥奪された」という報道だけでは、どの権利が、いつまで制限されたのか分かりません。選挙権、被選挙権、当選無効、連座制による立候補禁止のどれなのか。条文と判決を読んで確かめる必要があります。

確認した一次資料

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※本稿は、2026年10月25日に取得した現行法令に基づく一般的な制度解説です。個別の事件については、判決主文、選挙の種類、関係者の立場、選挙訴訟の手続を確認する必要があります。

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