政務活動費は何に使われている?福岡県議会・令和6年度の使途を比較

議員報酬の次に気になるのが、議員の活動に使われる「政務活動費」です。

ただし、政務活動費は議員個人の給与ではありません。調査研究、研修、広聴・広報、要請・陳情、会議など、議会活動に必要な経費に充てるための制度です。したがって、単純に「いくら受け取ったか」だけを見るのではなく、どの費目に、どの程度支出し、いくら残したのかを分けて確認する必要があります。

この記事では、福岡県議会が公開している令和6年度の収支報告書をもとに、会派別の使途を比較します。金額の多さだけで支出の適否を決めるのではなく、公開資料から確認できる事実と、追加調査が必要な点を分けて整理します。

結論:8会派の支出では「人件費」と「広聴・広報費」が大きい

福岡県議会の公式ページには、令和6年度の政務活動費収支報告書が会派別に掲載されています。9会派の報告書のうち、8会派は令和6年4月から令和7年3月までの1年間です。源友会は令和7年1月から3月の3カ月分だったため、年間の会派間比較からは外しました。

8会派の1年間の支出合計は、4億7,310万1,745円でした。費目別では、人件費が1億8,603万5,727円、広聴・広報費が1億579万5,797円です。2つを合わせると、全体の61.7%になります。

ここでいう「人件費」は、議員報酬そのものではなく、収支報告書上の政務活動費の費目としての人件費です。議員の給与と混同しないことが重要です。

支出区分 8会派合計 支出全体に占める割合
人件費 186,035,727円 39.3%
広聴・広報費 105,795,797円 22.4%
調査研究費 76,636,985円 16.2%
事務費 46,693,653円 9.9%
事務所費 44,285,915円 9.4%
資料購入費 6,006,453円 1.3%
研修費 2,803,026円 0.6%
会議費 2,014,547円 0.4%
資料作成費 1,750,640円 0.4%
要請・陳情等活動費 1,079,002円 0.2%
合計 473,101,745円 100.0%

この表から分かるのは、8会派の収支報告書に記載された費目別の合計です。人件費が大きいから直ちに不適切、広報費が少ないから活動が少ない、と判断できるものではありません。実際の内容を確認するには、備考欄、領収書、按分の考え方、成果物などを個別に見る必要があります。

会派別に見ると、使途の「最多項目」は違う

会派ごとの支出合計だけを並べると、所属議員の多い会派ほど金額が大きく見えます。そこで、支出の規模とともに、報告書上で最も大きかった費目、残余、報告期間を並べます。

会派 政務活動費収入 支出合計 残余 最も大きい費目
自由民主党福岡県議団 258,500,000円 250,234,386円 8,265,614円 人件費 112,302,170円
民主県政クラブ県議団 128,500,000円 128,690,122円 -190,122円 広聴・広報費 42,406,103円
公明党福岡県議団 60,000,000円 45,229,433円 14,770,567円 調査研究費 16,884,906円
新政会 30,000,000円 28,127,935円 1,872,065円 人件費 14,327,397円
日本維新の会福岡県議団 18,000,000円 11,583,299円 6,416,701円 人件費 5,887,493円
緑友会 6,000,000円 3,965,364円 2,034,636円 人件費 1,097,682円
桜和会 6,000,000円 3,327,703円 2,672,297円 広聴・広報費 2,173,210円
至誠会 6,000,000円 1,943,503円 4,056,497円 人件費 947,893円

この比較では、自由民主党福岡県議団の支出額が最も大きく、公明党福岡県議団や日本維新の会福岡県議団では残余が比較的大きくなっています。一方、民主県政クラブ県議団は、報告書上、支出合計が政務活動費収入を19万122円上回り、残余がマイナスになっています。

ただし、残余の大小だけで会派の活動量や支出の適否を評価することもできません。マイナスになった理由を含め、報告書に記載された収入・支出の範囲を超えて原因を断定することは避けるべきです。

なお、源友会の報告書は令和7年1月から3月の3カ月分で、収入150万円、支出146万5,717円、残余3万4,283円でした。年間報告の会派と同じ条件ではないため、8会派の年間合計には入れていません。

政務活動費は何に使えるのか

政務活動費は、地方自治法第100条に基づき、条例で定められた範囲の活動に使われます。福岡県議会の事務処理要領では、政務活動費は会派に交付され、会派や所属議員の調査研究その他の活動に要する経費に充てるものとされています。

福岡県議会の収支報告書で区分されている主な費目は、次のとおりです。

  • 調査研究費:県政に関する調査や資料収集など
  • 研修費:研修会・講座などへの参加
  • 広聴・広報費:広報紙、報告書、ホームページなど
  • 要請・陳情等活動費:要請や陳情などの活動
  • 会議費:会議の会場費や参加に伴う経費など
  • 資料作成費・資料購入費:資料の作成や書籍購入など
  • 事務所費・事務費・人件費:事務所、事務用品、事務員などに関する経費

同じ「人件費」や「広聴・広報費」でも、実際の支出内容は会派によって異なります。今回の集計は、費目の中身を一件ずつ判定したものではなく、各収支報告書に記載された区分を合算したものです。

福岡市議会と比べるときは、交付方式に注意

次の比較対象としては、福岡市議会の政務活動費も候補になります。ただし、県議会と市議会の数字をそのまま横に並べるのは危険です。

福岡市議会の説明によると、福岡市では、会派に所属する議員1人あたり月35万円を会派に交付する方式のほか、会派分として月9万円、所属議員個人分として月26万円を交付する方式があります。無所属議員には月26万円が交付されます。

そのため、福岡市議会の令和6年度資料では、会派交付の収支報告書だけでなく、所属議員ごとの報告書や無所属議員の報告書も確認する必要があります。令和6年度の公開ページでも、会派別・議員別の資料が分けて掲載されています。

県議会と市議会を比較するなら、次の条件をそろえる必要があります。

  1. 同じ年度、同じ報告期間にする
  2. 会派交付と議員個人交付を合算するか、別々にするかを決める
  3. 収入、支出、残余を同じ定義で集計する
  4. 会派の人数や在籍期間を確認する
  5. 費目の名称が違う場合は、無理に一つの区分へまとめない

この数字から、次に何を調べるべきか

今回の比較で見えたのは、政務活動費の「大きな流れ」です。次の調査では、金額の多い費目から、具体的な支出内容に降りていく必要があります。

特に確認したいのは、次の4点です。

  • 人件費:どのような業務を誰が担当し、どのような基準で按分・計上されているか
  • 広聴・広報費:広報紙、報告書、ホームページなどの作成部数・回数・単価
  • 調査研究費:委託調査、交通費、宿泊費などの目的と成果
  • 事務所費・事務費:政務活動とそれ以外の利用をどのように区分しているか

これらは、費目別の合計だけでは分かりません。県議会が公開している収支報告書と、制度上閲覧できる証拠書類・運用基準を突き合わせ、支出の目的、金額、成果物を一件ずつ確認する企画に発展させることができます。

よくある質問

Q1. 政務活動費は議員の給与ですか?

いいえ。議員報酬とは別の制度で、議員の調査研究その他の活動に必要な経費に充てるための費用です。給与や議員報酬にそのまま加算するのではなく、収支と使途を分けて見ます。

Q2. 支出額が多い会派は、政務活動費を無駄に使っているのですか?

支出額だけでは判断できません。会派の人数、報告期間、活動内容、広報の部数、事務員の配置などが違うためです。適否を判断するには、収支報告書の備考欄や領収書などの確認が必要です。

Q3. 残余が多い会派の方が優れているのですか?

残余は、交付された政務活動費から支出合計を引いた残額です。残余の大小だけで活動の質や支出の妥当性を評価することはできません。

Q4. 福岡市議会の政務活動費も同じ表に入れられますか?

制度上の交付方式と報告書の構成が異なるため、準備なしに合算することはできません。会派交付、議員個人交付、無所属議員分をどう扱うかを決めてから比較する必要があります。

Q5. なぜ最新年度の令和7年度ではなく、令和6年度を比較したのですか?

今回の原稿では、令和6年4月から令和7年3月までの報告期間がそろう会派を横並びにすることを優先しました。福岡県議会の公式ページには令和7年度の報告書も掲載されていますが、会派の構成や報告期間が変わるため、最新年度は別の集計として確認します。令和6年度の数字を、令和7年度の最新状況として扱っているわけではありません。

Q6. なぜ9会派ではなく、8会派の合計なのですか?

令和6年度の報告書は9会派分ありますが、源友会は令和7年1月から3月の3カ月分でした。1年分の会派と3カ月分を同じ合計に入れると比較条件がそろわないため、年間集計から外し、個別の数字だけを別に示しました。

まとめ

福岡県議会の令和6年度収支報告書を、1年間の報告がそろう8会派で集計すると、支出合計は4億7,310万1,745円でした。費目別では、人件費が39.3%、広聴・広報費が22.4%、調査研究費が16.2%です。

ただし、これは政務活動費の使途を費目単位で集計した結果です。支出の適否や活動の成果まで判断するには、会派の規模、報告期間、備考欄、領収書、按分、成果物を個別に確認しなければなりません。

議員のお金を比較するときは、議員報酬、政務活動費、費用弁償などを一つの「給与」にまとめないことが大切です。制度と数字を分けて見ることで、何が確認でき、何がまだ分からないのかが見えてきます。

政経プラスでは、公開資料をもとに、議員のお金と政治の制度を整理します。

出典・参照資料

※集計は、福岡県議会が公開する令和6年度の収支報告書から、令和6年4月から令和7年3月までの8会派を合算したものです。源友会は令和7年1月から3月の報告のため、年間合計から除外しました。金額の単純合算であり、領収書の個別審査や支出の適法性・妥当性の判定ではありません。

参照日:2026年9月19日

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