情報確認日:2026年10月15日
ジニ係数の低下は、所得のばらつきが小さくなったことを示し、全員の所得増加を意味しません。再分配前か後か、世帯単位か人数を調整した値かによっても数字は変わります。所得の水準や暮らしを知るには、平均・中央値・世帯構成などを併せて確認します。
0に近いほど均等だが、所得の高さを測ってはいない
ジニ係数は、所得の分布がどれほど均等かを0から1で示します。全員の所得が等しい場合は0で、不均等が大きいほど1に近づきます。
厚生労働省の所得再分配調査では、世帯や世帯員を所得の低い順に並べ、累積人数の割合と累積所得の割合から求めます。所得が完全に均等な線と、実際の分布との隔たりを一つの数値にしたものです。調査報告書・本文5ページ
二つの世帯がそれぞれ100と300の所得を得ていたのに、次に50と50になったと仮定します。全員の所得は減っていますが、後の分布は均等なのでジニ係数は0です。仕組みを示す仮定で、実際の日本の所得変化ではありません。
反対に、すべての所得が同じ倍率で増えれば、所得の合計や平均は上がっても、割合で見た分布は変わりません。「格差が小さい」と「所得水準が高い」は別の情報です。
公的年金は「当初所得」に入っていない
所得再分配調査は、税と社会保障によって分布がどう変わるかを調べます。「当初所得」には給与、事業所得、財産所得、仕送りや企業年金などが入ります。一方、公的年金などの社会保障給付は含みません。
「再分配所得」は当初所得から税金と社会保険料を引き、社会保障給付を加えたものです。公的年金などの現金給付だけでなく、医療・介護・保育の現物給付も含まれます。厚労省の現行用語説明
年金中心に生活する高齢世帯では、当初所得だけを見ると所得が小さくなる場合があります。再分配前の係数の上昇を、それだけで現役労働者の賃金格差が拡大した証拠とはできません。世帯の年齢構成の変化も関わります。
また、再分配所得には医療サービスなどが入るため、その金額をそのまま銀行口座に入った手取り額とは呼びません。
令和5年調査の0.5855と0.3825は、別の所得
2025年12月23日に公表された令和5年調査では、世帯単位の当初所得のジニ係数は0.5855、再分配所得は0.3825でした。税と社会保障を反映した後の分布は、反映前より均等だったという比較です。
同じ資料の再分配による改善度は34.7%です。「(当初所得の係数-再分配所得の係数)÷当初所得の係数×100」で計算します。全世帯の所得が34.7%増えたという意味ではありません。厚労省の公表資料
| 令和5年調査の世帯単位 | ジニ係数 |
|---|---|
| 当初所得 | 0.5855 |
| 再分配所得 | 0.3825 |
調査名の令和5年は2023年です。所得や税、現金給付などは主に2022年1〜12月の状況を聞いています。公表年の2025年や、今回確認した2026年の所得分布と読み替えないようにします。介護の現物給付などは別の調査期間があるため、細部は報告書の調査事項で確認できます。
世帯単位と、等価所得の係数を混ぜない
同じ400万円でも、1人暮らしと4人家族では生活の条件が違います。一方、家賃や家電は共有できるため、4人なら必要額が単純に4倍になるわけでもありません。
この違いを調整するため、等価所得は世帯の所得を世帯人数の平方根で割ります。4人世帯で所得400万円なら、400÷2で200万円です。各人が実際に200万円を受け取ったという意味ではなく、比較のための調整値です。
令和5年調査の世帯員単位の等価再分配所得のジニ係数は0.3163でした。世帯単位の0.3825と並べ、低い方が別の年の改善結果だと読むことはできません。単位と所得の種類が違う値です。
ニュースから原表へ戻るときの確認点
まず、何年調査で、何年の所得を聞いたかを確認します。次に、当初所得・可処分所得・再分配所得の区別、世帯単位・世帯員単位の区別をそろえます。所得再分配調査の「税」の対象も、消費税まで機械的にすべて引いた額ではありません。
生活水準の変化を知りたい場合は、同じ定義の平均所得や所得階級別の分布、物価も見ます。高齢化などの構成変化を調べるなら、世帯主の年齢別や世帯類型別の結果が確認先になります。
この調査は標本調査なので、わずかな差を精密な順位へ変えることにも注意が必要です。少ない世帯の集計ほど幅を持って読み、厚労省の最新の結果・正誤情報を確認します。
用語や表の疑問は、厚労省の調査総務係へ、調査年・表番号・所得の種類を伝えて確認できます。係数が示す均等さと、金額が示す所得水準を組み合わせると、改善した点と残る家計負担を別々に読めます。
参照資料
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執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT

