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ワンヘルス4,378億円は何の予算か。福岡県の248項目を公式資料で確認

福岡県のワンヘルス関連事業が5年間で4,378億円。

この数字を見て、何にそれほどのお金を使ったのかと思った方もいるでしょう。県と蔵内勇夫前県議会議長が推進してきた施策だけに、具体的な内訳を知りたいところです。

県が10月28日の行政改革審議会に提出し、29日時点で公開されている資料を確認すると、最大の項目は道路改良費の約1,913億円でした。全体の88.7%を占める「環境保護」には、道路や街路、漁場、森林、美術館の建設まで含まれています。

ただし、4,378億円は支出済みの総額ではありません。2022~2026年度の各年度の予算額を足した集計で、繰越分(前年度から翌年度へ持ち越す予算)も含まれています。

この記事では県の集計資料と248項目の一覧から、金額の意味と具体的な使途を確認します。予算(事業に使うため計上した額)と決算(年度内に実際に支出した額)に分け、国際連携や森林浴、モニュメントについても、資料が示す範囲を確かめます。

※確認日は2026年10月29日。本文のPDFページ番号は表紙を含むファイル上のページです。

出典:福岡県・第4回行政改革審議会資料の公開ページ、読売新聞オンラインのYahoo!ニュース配信記事(10月29日)

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4,378億円と「約59億円」は、何を数えた数字か

ワンヘルスは人と動物の健康、環境の健全性を一体として守ろうとする考え方です。県の行動計画には感染症対策だけでなく、農林水産業や環境、公園など幅広い事業が載っています。

今回、県は計画の掲載事業や、「ワンヘルス」という言葉を名称・目的に使う事業などを、予算事項(予算書上の事業のまとまり)ごとに調査しました。その結果が248項目、約4,378億円です。

ここで注意したいのは、資料に出てくる二つの「約59億円」です。

数字集計の対象
約4,378億円・248項目今回洗い出した全事業の2022~2026年度予算累計。従来事業や別の主目的を持つ事業も含む
58.6億円8月の審議会で示した、従来の「ワンヘルス関連予算」の5年間累計
59.2億円・64項目今回の全事業から、法令に基づく事業と2021年度以前からの継続事業を除いた額

58.6億円と59.2億円は、四捨五入すればどちらも約59億円ですが、同じ集計ではありません。

従来の58.6億円は、県が当初予算の説明などで「ワンヘルス関連予算」として整理してきたものです。県は、2024年度までは明確な基準がなく、2025年度から「人の命と健康を守ること」に直接関係する経費へ整理し直したと説明しています。

一方、今回の59.2億円は事業の開始時期と法令上の位置づけによる抽出です。「ワンヘルスだけを目的とする支出を正確に切り出した額」とは読めません。また、「法令に基づかない」は県の分類名であり、違法な事業という意味ではありません。逆に「法令に基づく」に分類された額のすべてが、法律で支出を義務づけられた経費とも限りません。

したがって、従来の約59億円がそのまま4,378億円へ増額された、という説明も正確ではありません。まず集計対象が広がっています。

出典:第4回審議会・本体PDF33~35ページ、第3回審議会・本体PDF14ページ

内訳の88.7%は「環境保護」。道路整備が大きい

県が示した7つの柱の内訳は次のとおりです。人獣共通感染症(人と動物の間でうつる感染症)と、薬剤耐性菌(抗菌薬が効きにくくなった細菌)の対策も、別々の柱に位置づけられています。

区分5年間の予算累計項目数
人獣共通感染症対策34.1億円22
薬剤耐性菌対策1.4億円10
環境保護3,883.8億円109
人と動物の共生社会づくり67.7億円19
健康づくり160.3億円13
環境と人と動物のより良い関係づくり18.5億円22
ワンヘルス実践の基盤整備212.1億円53
合計4,377.9億円248
2022〜2026年度のワンヘルス関連予算内訳。環境保護3,883.8億円、88.7%。支出済みの総額ではない。
県の集計値。2022~2026年度の予算累計で、支出済み総額とは異なります。正式な区分名は上表に記載しています。出典:福岡県・本体資料PDF34ページ

この二つの対策より、はるかに大きいのが「環境保護」です。ただ、その中身を見れば、感染症対策の新規予算が急増したという話ではないと分かります。

以下は環境保護以外の区分も含め、額の大きい事業から選んだものです。都市公園施設費は「健康づくり」、鳥獣被害防止対策費は「人と動物の共生社会づくり」に属します。

事業5年間の予算累計資料に記載された使途
道路改良費〈No.125〉約1,913.46億円県が管理する一般国道・県道の新設、改築など
街路事業費〈No.141〉約428.88億円都市計画道路の整備。繰越分を含む
道路改築費〈No.126〉約334.59億円県管理道路の新設、改築など
道路交通安全施設整備費〈No.122〉約333.37億円歩道、交差点、自転車の通行空間、交通安全施設の整備
沿岸漁場整備開発事業〈No.33〉約143.23億円魚礁の設置、石や砂を入れる漁場整備、調査
都市公園施設費〈No.170〉約143.21億円県営都市公園の整備・管理。繰越分を含む
都市高速道路事業費〈No.127〉約82.91億円福岡・北九州都市高速への出資、貸付けなど
多面的機能支払事業費〈No.101〉約77.35億円農地、水路、農道などを地域で保全する活動への支援
活力ある高収益型園芸産地育成事業費〈No.107〉約72.68億円省エネルギー施設・技術の導入経費への助成
荒廃森林再生費〈No.113〉約69.61億円森林の機能を回復させるための間伐など
新福岡県立美術館建設費〈No.40〉約64.56億円美術館の建設工事。掲載額は2026年度予算のみ
農林水産物鳥獣被害防止対策費〈No.144〉約32.65億円侵入防止・捕獲への支援、一斉捕獲、人材育成

道路改良費だけで全体の約43.7%を占めます。しかも道路関係の複数項目には、予算や決算は事業全体の数値を載せたという注記があります。ワンヘルスとの関係がある部分だけを切り出した金額ではありません。

新県立美術館の建設費まで一覧に入っていることにも、集計の広さが表れています。この4,378億円を、ワンヘルスを始めたために新たに必要になった費用とみなすことはできません。

一方で、道路や美術館までワンヘルス関連として数えると、施策として何を追加し、どこに独自の予算を使ったのかが見えにくくなります。総額の大きさとともに、県が何をワンヘルスと位置づけてきたのかを確かめる必要があります。

※上表は参考資料その4の予算列を再集計したものです。都市公園施設費は繰越分を含めて約143.21億円となり、本体PDF35ページの例示額89.72億円とは集計範囲が異なります。各項目は全体の内訳であり、4,378億円へ追加する金額ではありません。

出典:第4回・本体PDF34ページ、参考資料その4・全事業一覧PDF1~7ページ

センター、国際連携、森林浴には何を計上したのか

道路などを含む集計だからといって、個別事業への疑問が解消するわけではありません。センター整備や啓発、国際連携の内容は、別に確認できます。

ワンヘルスセンターは、研究所の設計・建築だけではない

「保健環境研究所建設費」〈No.225〉には、基本設計・実施設計と建築工事が載っています。繰越分を含む5年間の予算累計は約131.66億円、2022~2025年度の決算累計は約50.22億円です。

ほかにも動物の感染症を扱う施設、屋外の学習・研究施設、通信設備などが別項目で計上されています。

項目一覧の予算累計主な内容
ワンヘルス実践に向けた動物保健衛生推進費〈No.196〉約9.34億円施設の業務・連携の検討、実施設計、新築・改修工事。掲載予算は2022~2025年度
動物保健衛生所整備費〈No.235〉約23.46億円新築・既存建物の改修。掲載予算は2026年度
屋外のワンヘルス体験学習・研究ゾーン整備費〈No.229〉約6.11億円屋外の体験学習・研究ゾーンの工事
ワンヘルス体験学習ゾーン整備費〈No.227〉約1.22億円基本構想・基本設計、実施設計、展示制作
ネットワークシステム基盤整備費〈No.226〉約1.00億円通信システムの整備、保守運用
ワンヘルスセンター研究力強化費〈No.228〉約3,078万円博士号取得支援、文献検索、データ分析を使う研究、外部有識者との連携など

県は8月公表の説明で、保健環境研究所と家畜保健衛生所は築50年以上で、移転・建て替えが必要だったとしています。施設全体の見込みとしては保健環境研究所約163億円、動物保健衛生所約41億円を挙げていました。

この整備全期間の見込み額と、今回の5年間の予算累計は、期間も対象経費もそろっていません。単純に足したり、差をそのまま増額としたりはできません。

老朽施設の建て替えが必要だったという説明と、施設規模、立地、追加する機能、発注額が妥当だったかという検証はどちらも必要です。県の一覧からは研究所のほかに展示や屋外施設へ何を計上しているのかも確認できます。

出典:全事業一覧PDF8~9ページ、県の事業説明「ワンヘルスセンターの整備」

国際連携費約2.80億円は、全額が事務所家賃ではない

「ワンヘルス国際連携推進費」〈No.223〉は、予算累計2億7,991万円。2023~2025年度の決算累計は約1億9,415万円です。

資料には、次の三つの使途が記載されています。

  • ワンヘルス国際フォーラムの開催
  • アジア獣医師会連合(FAVA)ワンヘルス福岡オフィスへの活動支援
  • ワンヘルスの国際会議の福岡開催誘致

県はオフィス支援について、覚書に基づき、事務所の賃借料、電気使用料、清掃費を現物提供していると説明しています。現物提供(現金の代わりに場所やサービスなどを提供すること)の支援です。

ただし、この一覧ではそれぞれにいくら配分したかまでは分かりません。2.80億円をすべて家賃負担と説明するのは誤りです。家賃などの負担額を検証するには、国際連携費全体から、対象経費と年度、支出先を追う必要があります。

森林浴の事業は、謝金以外の経費も含む

「ワンヘルスの森魅力アップ推進費」〈No.238〉の2026年度予算は、3,458万8,000円です。

使途は森林浴の効能を調べるモニターツアー、ガイド用システム、効能を見える形で示すシステム、ヨガやアロマテラピーを取り入れたプログラムの充実です。参加者の謝金だけの予算ではありません。

県の説明では、ツアーは森林と都市の散策を比べ、血液検査・心理検査などを行う実証です。食事と就寝時間も統一し、2泊3日の拘束に対して謝金は3万3,000円と説明しています。

この目的を示すことと、事業費が妥当かを判断することは別です。参加人数、検証方法、委託費の内訳、得られた結果がどう公開されるのかまで確認したいところです。今回の一覧に2026年度の決算はなく、3,458万8,000円全額を使ったとは確認できません。

同じ森づくりでも、別項目の「受入環境整備費」〈No.237〉は予算累計約2.71億円です。こちらはトイレ、県産木材を使うビジターセンター、動物とのふれあいスペース、散策ルートの木橋などに充てる計画です。

啓発は、広告、教材、研修、イベントにも広がる

「ワンヘルス推進強化費」〈No.219〉は、予算累計7,454万9,000円、2023~2025年度の決算累計6,959万7,000円です。資料には説明役となる「ワンヘルスマスター」の育成、ワークショップ、カードゲーム、事業者交流会、啓発イベント、市町村への支援が載っています。

「大阪・関西万博におけるワンヘルスPR費」〈No.221〉は予算累計3,950万7,000円、2024~2025年度の決算累計3,922万3,000円で、シンポジウムの開催に使われています。

学校向けの教育費も、大学、私立学校、高校、特別支援学校などで項目が分かれています。花壇の整備や、海外就業体験での学習まで対象です。「啓発」という一語で済ませず、どの活動に、いくら計上・支出したかを見る必要があります。

出典:全事業一覧PDF8~10ページ、県の説明「オフィス支援」「森林浴モニターツアー」

モニュメント約3億円を、そのまま内訳へ足せない理由

私も8月20日に筑後広域公園を訪れ、ワンヘルスカーボンゲートの前から配信しました。想像していた規模との違いを口にする一方で、造形や話題性には面白さもあると話しています。

その場で感じたことは公費の使い方を確かめる出発点にはなります。ただ、夜間に訪れた一度の印象で、年間の利用や事業効果までは判断できません。今回は支出の資料まで確認します。

県の8月資料はモニュメント設置費2.8億円という報道を紹介しています。また、県は2020年10月に基本提案書の作成へ着手し、命名の段階でワンヘルスの理念に合うとして名称へ取り入れたと説明しています。

ところが、今回の全事業一覧では、カーボンゲートを載せた「都市公園施設費」〈No.247〉の2022~2026年度の予算・決算欄はすべて「-」です。

別のNo.170には県営都市公園の整備・管理費が載っていますが、モニュメント分との対応はこの一覧だけでは分かりません。「-」を0円と読んだり、建設費約3億円を4,378億円へ加えたりすることはできません。

モニュメントの契約額、設計・工事・関連整備の範囲、年度ごとの支払い、今回の集計への反映を結ぶ資料が必要です。何億円だったかを確かめる際にも、同じ経費を二度数えない確認が欠かせません。

関連動画:8月20日の現地配信

出典:第3回・本体PDF15ページ、全事業一覧PDF7・10ページ、県の説明「カーボンゲートの設置」

実際に支払った額は。年度別に予算と決算を見る

県の一覧に掲載された予算・決算を年度ごとに足すと、次のようになります。

年度予算額の合計決算額の合計
2022年度約850.86億円約613.33億円
2023年度約921.93億円約667.07億円
2024年度約910.97億円約636.04億円
2025年度約891.84億円約633.04億円
2026年度約802.33億円記載なし

予算の5年間合計は約4,377.95億円となり、県の示す約4,378億円と一致します。決算の掲載がある2022~2025年度の合計は、約2,549.48億円です。

ただし、これもワンヘルスのために追加で支出した額ではありません。道路などの事業全体を含む、掲載された決算欄の合計です。

予算欄には繰越分もあります。年度ごとの予算を単純に足す集計では、同じ事業の持ち越しを重ねて数える場合があるため、4,378億円を正味の新規予算の総額とも読めません。重複を取り除いた総額は今回の資料だけでは確定できません。

財源別の内訳も一覧にはないため、県税だけの負担額は確定できません。

また、5年間の予算と4年間の決算を比べて、差額を「余ったお金」「使途不明金」と呼ぶこともできません。2026年度がまだ終わっていないうえ、繰越などの調整も必要だからです。

※この年度別表は参考資料その4の248項目を独自に再集計したものです。数値は本体資料の億円表示と照合して換算し、明示された繰越分も県の集計に合わせて含めています。「-」は加算していませんが、支出が0円だったと認定したものではありません。端数処理により表示額の合計に差が出ます。

出典:全事業一覧PDF、県の総額表示・本体PDF34ページ

検証では、費用だけでなく決定の経緯も見たい

県の資料は「法令に基づく事業」を約4,161.3億円、2021年度以前からの継続事業を約157.5億円、それらを除いた事業を約59.2億円と整理しています。

ただし、古い事業や法令に基づく事業なら、費用や手続きに疑問が生じないということではありません。県も、報道された事業や実施を見合わせた事業は、重点検証の対象へ必ず抽出する方針を示しています。64項目だけに検証対象を閉じる説明にはなっていません。

一方、本体資料PDF38ページには、政治的なプロセスは検証の対象外と記載されています。必要に応じて実施経緯を確認する場合がある、という留保は付いていますが、感染症学や獣医学などの観点からの有効性の判断にも踏み込まないとしています。

費用と進捗を調べる審議には意味があります。それでも、なぜその事業を選んだのか、誰が規模や場所を決めたのか、他の案と何を比較したのかという疑問は残ります。金額の一覧だけでは答えが出ません。

今回の資料で、4,378億円の大部分が道路などの既存行政分野を含む予算だと分かりました。同時に、センターの展示や屋外施設、国際連携、森林浴、啓発など、個別に確認すべき使途も見えてきました。

県には、事業ごとの予算、契約、支出、成果、決定の経緯がつながる説明を求めたいと思います。ワンヘルスという名称を外しても、県民に必要性と金額を説明できるのか。具体的な使い道から、その点を確かめていきます。

出典:第4回・本体PDF35~38ページ


主な一次資料:第4回行政改革審議会・本体、参考資料その4・248事項の全事業一覧、第3回・本体、県の施策説明

執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT。資料の整理・再集計・原稿作成をAIが補助。最終編集・公開判断はカネさん。

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