「副首都」の看板に隠された都構想の三度目の強行――維新の副首都構想を問う

国政・政党

日本のためより維新のための大阪都構想

2026年7月15日、副首都法案が衆議院を通過した。自民・維新・チームみらいの賛成多数、立憲民主党は反対、国民民主党も反対に回った。維新肝煎りのこの法案のために国会の会期延長までもが取り沙汰され、実際に審議日程は窮屈を極めた。正直、私としても優先順位が違うのではないかと、憤りを感じている。しかし、この法案の中身を冷静に見れば見るほど、「これは本当に国家のための構想なのか」という疑問が膨らむ一方である。

今回は、維新の副首都構想の問題点を、国会審議で露呈した事実に基づいて厳しく検証したい。あわせて、テレビ番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」での維新側に偏った報道姿勢についても指摘しておく。

「大阪ありき」――国家戦略の皮をかぶった地元利益誘導

副首都構想の建前は、首都直下地震などの大災害時に東京の政治・経済機能を代替するバックアップ拠点の整備である。この理念自体に反対する人は少ないだろう。問題は、法案の設計が最初から「大阪ありき」で組み立てられていることだ。

国会審議では、野党から「副首都指定の要件がほぼ大阪にしか当てはまらない」との追及が相次いだ。名古屋・福岡・札幌も指定に意欲を示しているとはいえ、要件設定の実態を見れば、大阪を指定するための出来レースと言われても仕方がない。国家のバックアップ機能という国民全体の課題を、特定政党の地元への利益誘導の道具に変質させている――これが第一の問題である。

「生煮え」法案――設計図を見せずに契約を迫る手口

さらに深刻なのは、法案そのものの完成度の低さだ。時事通信が「生煮えあらわ」と報じた通り、この法案は基本方針を施行後1年以内に政府が策定するとしながら、その基本方針が決まる前に副首都の指定ができる建て付けになっている。「副首都とは何かを決める前に指定するのはおかしい」という国会での指摘は、まったくもって正論である。

財政面も白紙同然だ。維新は費用を明示していないが、過去の首都機能移転の試算を援用すれば4.0兆円〜7.5兆円、単年度の消費税収3%分に相当するという指摘がある。物価高で国民負担の軽減が最優先課題とされる中で、費用対効果の検証もないまま兆円単位の構想を推し進める。国会では「設計図を見せずに家の契約書にサインを求めるようなものだ」という例えまで飛び出した。これが「身を切る改革」を掲げる政党のやることだろうか。

最大の欺瞞――付則に忍ばせた「都構想の三度目の住民投票」

そして、この法案の本質を最も雄弁に物語るのが、付則に盛り込まれていた大都市法改正である。

大阪都構想は2015年、2020年と二度にわたり住民投票で否決された。大阪市民は二度も「ノー」を突きつけたのである。SNSでも「大阪都構想、三度漬け禁止」という言葉を散々目にした。ところが維新は、副首都法案の付則に、都構想の住民投票の対象を大阪市民から大阪府民全域に拡大できる規定を忍ばせた。市民だけでは否決されるから、投票の枠を府全体に広げて可決の可能性を高める――あまりに露骨な仕掛けである。

この手法には憲法学者から、大阪市の廃止を大阪市以外の住民が決めることは憲法92条(地方自治の本旨)に違反するとの指摘が出た。身内であるはずの自民党大阪府連会長・松川るい氏でさえ「副首都法案という別の法律の付則で変えるやり方はいかがなものか」と苦言を呈し、神戸新聞は社説で「維新の強引さが目に余る」と断じた。結局、高市首相が修正を要請し、府全域投票の付則は削除に追い込まれたが、削除されたから問題が消えたわけではない。二度否決された都構想を、国政の法案に紛れ込ませて三たび実現しようとした事実は消えない。維新は現に2027年春の三度目の住民投票を目指して法定協議を進めている。

住民投票の結果を尊重しない政党が、「民意」を語る資格があるのか。これこそが副首都構想をめぐる最大の欺瞞である。

「正義のミカタ」は誰のミカタか――偏向報道への疑問

この問題を語る上で、メディアの責任にも触れないわけにはいかない。

ABCテレビの「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」は、7月18日の放送で「国会会期延長スペシャル」と銘打ち、消費減税・副首都構想・大阪都構想を取り上げ、維新の吉村洋文代表を生出演させた。しかし放送を見た視聴者からは、「正義のミカタではなく”吉村のミカタ”だった」「同席した伊佐進一衆院議員にほとんど喋らせなかった」「コメンテーター陣も政権・維新寄りの発言に終始した」「BPOに報告する」といった厳しい声がSNS上に相次いだ。

副首都法案は、まさに国会で「大阪ありき」「生煮え」と集中砲火を浴びている渦中の法案である。その法案の提出者たる政党の代表を生出演させ、批判的な検証を欠いたまま構想のPRの場を提供するなら、それは報道番組ではなく広報番組だ。放送法が求める政治的公平性の観点からも、在阪メディアと維新の距離の近さは、かねて指摘されてきた構造的な問題である。二度の住民投票で示された民意よりも、スタジオの空気を優先するような報道が続くなら、視聴者はこの番組を「正義のミカタ」ならぬ「権力のミカタ」と呼ばざるを得ないだろう。

まとめ――災害対策を人質にした政治は許されない

首都機能のバックアップという課題は真剣に議論されるべきだ。だからこそ、その大義を利用して、二度否決された都構想を復活させ、費用も制度設計も曖昧なまま法案を押し通す維新の手法は、厳しく批判されなければならない。災害対策という誰も反対しにくい看板を掲げれば何でも通る、という前例を作ってはならない。

法案は参議院に送られたが、今国会での成立は見通せていない。参院では、衆院で積み残された論点――指定要件の恣意性、兆円単位の費用、都構想との切り分け――を徹底的に審議すべきである。そしてメディアには、政党の広報ではなく、権力の監視という本来の役割を果たすことを求めたい。

制度を確認する

副首都法案と大阪都構想の制度上の違いは、こちらの解説記事で整理しています。

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