辞職勧告決議案の採決を止める動議に賛成しなかった。その判断を理由に、会派の会員資格を12月議会の閉会まで停止する。江藤秀之・福岡県議会議員への今回の処分は、間違っていると考えます。処分が重すぎるだけでなく、議員が自分の判断で賛否を示すことを、会派の規律で抑え込む対応だからです。
会派側の説明を踏まえても、この処分には賛成できません。自民党県議団は撤回すべきです。
江藤秀之県議は、何に反対して処分されたのか
問題になったのは、辞職勧告決議案そのものへの反対ではありません。その採決を中止する動議への反対です。
2026年8月17日の福岡県議会臨時会では、当時の議長、藏内勇夫氏に議長職の辞職を求める決議案が提出されました。しかし、林泰輔・同県議が出した採決中止動議が可決され、決議案は採決されませんでした。TNCの報道では、採決に参加した自民党県議団の38人のうち、江藤県議だけが中止動議に賛成しませんでした。出典:TNC・FNN、8月18日
その江藤県議について、自民党県議団は8月31日、会派の会員資格を12月議会の閉会日まで停止すると発表したと報じられています。会派拘束とは、所属議員に同じ賛否行動を求めることです。県議団は、この拘束に従わなかったことを問題にしました。出典:共同通信、8月31日
今回報じられているのは、あくまで会派内部の資格停止です。県議としての失職や、県議会本会議への出席停止、自民党の党員資格停止と混同してはいけません。 まだ軽い処分に済ませたからという声も一部ではありますが、理由としては、個人的に通らないと思います。 ただし、江藤県議は会派の議員総会に出席できなくなるとされており、軽い注意で済ませた処分でもありません。出典:FBS福岡放送、8月31日
会派拘束をかけたこと自体も問われる
「会派拘束を破ったのだから処分は当然」という説明では、肝心な問題が抜け落ちます。何のために、どのような議案で統一行動を求めたのか、という問題です。
会派が政策をまとめ、所属議員に協力を求めることまで否定するつもりはありません。しかし今回は、県民生活に関わる政策を実現するための採決ではなく、議長の進退を問う決議案の採決を止めるための動議でした。
江藤県議の反対には、決議案について議会が判断する機会を残す意味がありました。採決を行えば、各議員は辞職勧告に賛成なのか、反対なのかを示すことになります。中止すれば、その判断自体が行われません。
もちろん、採決を中止すべきだという政治判断もあり得ます。しかし、そう判断する議員は、中止が必要な理由を説明すべきです。異なる判断をした議員を処分すれば、その説明に代わるわけではありません。
会派拘束をかけたという事実だけでは、拘束の内容も、違反に対する処分も正当化できません。
「総会で発言しなかった」なら、なぜ総会から外すのか
会派側の説明には、もう一つ看過できない点があります。
渡辺勝将・自民党県議団会長は、動議が提出された当日に3回開かれた議員総会で、江藤県議が発言しなかったことを理由として挙げています。除名を求める意見もあったものの、最終的には自身の判断で処分を決めたとも説明しています。出典:TNC・FNN、8月31日
事前に自分の考えを説明してほしかった、という不満は理解できます。共同で議会活動をする以上、意見を伝え合うことには意味があります。
それでも、事前の説明が足りなかったことと、その後数カ月にわたって総会への参加を禁じることは、釣り合っていません。
説明不足が問題なら、まず本人に理由を聞き、会派の場で議論すればよいはずです。「総会で意見を言わなかった」と責めながら、その総会に出席する機会を奪う。これで、会派内の意見交換が改善するのでしょうか。
除名より軽いという比較でも足りません。注意や説明の要請ではなぜ不十分なのか。なぜ12月議会の閉会までなのか。処分する側には、その重さに見合う理由を示す責任があります。報じられた説明からは、そこまでの不利益を与える必要性は読み取れません。
証言した議員への処分は、ほかの議員も萎縮させる
江藤県議が、正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑の証言者であることも、この処分を考えるうえで外せません。本人は幹部への現金支払いを証言し、名指しされた側には受領を否定している議員もいます。証言したことと、証言内容がすべて裏付けられたことは別です。出典:TNC・FNN、8月21日
だからこそ、江藤県議自身の説明も含め、資料や証言を検証しなければなりません。今回の反対行動を評価することは、江藤県議を無条件に擁護することではありません。
一方で、会派の多数と違う判断をした結果、内部の議論に参加できなくなる。その前例は、これから異論を述べようとする議員にも影響します。県民に説明できる判断かどうかより、会派から処分されないかどうかを優先させるおそれがあるからです。
今回の処分が告発への報復だったと、動機まで断定することはできません。しかし、異論を述べにくくする効果は別に問えます。疑惑の検証が必要な局面で、証言した議員を会派の話し合いから遠ざける対応は、信頼回復に逆行すると考えます。
必要なのは処分の撤回と、採決中止を選んだ理由の説明
私は、処分期間を少し短くすれば済む問題だとは考えていません。
江藤県議が行ったのは、採決中止動議に賛成しないという政治判断です。その判断について会派内で反論し、説明を求めることと、会派の議論から数カ月外すことの間には、大きな隔たりがあります。
会派規則の全文や処分手続きの全容を確認できていないため、ここで法的な無効や規則違反を断定することはしません。しかし、法的な結論が出ていなくても、処分の政治的な妥当性は問えます。報道で示された理由と不利益を比べれば、この処分は重すぎます。
自民党県議団が県民に説明すべきなのは、江藤県議が従わなかったことだけではありません。なぜ辞職勧告決議案を採決しない判断が必要だったのか。なぜ、その判断への賛成を所属議員に求めたのか。その説明が必要です。
会派の信頼は、異論を持つ議員を遠ざけることで取り戻せるものではありません。江藤県議への会員資格停止を撤回し、異なる意見を議論の場に戻すべきです。
今回の「会員資格停止」が県議の地位や本会議・委員会活動にどう影響するのかは、江藤秀之県議の「会員資格停止」で何が変わる?で制度上の違いを整理しています。
よくある質問
江藤県議は辞職勧告に反対したのですか?
今回の処分で問題にされたのは、辞職勧告決議案の「採決中止動議」への反対です。決議案そのものは採決されていません。この二つは区別する必要があります。
県議として活動できなくなる処分ですか?
報じられた処分は、自民党県議団という会派の会員資格停止です。県議としての資格を失う処分ではありません。ただし、会派の議員総会には出席できなくなるとされています。
会派の規律は必要ないという主張ですか?
いいえ。統一行動を求める目的と、従わなかった場合の処分の重さを問うています。会派の規律が必要でも、今回の資格停止が妥当だという結論には直結しません。
今回の問題は、採決中止への反対をどう評価するか、事前の説明不足に数カ月の参加禁止が釣り合うか、異論を出せる会派であるか、という三点です。私はいずれの点からも、この処分を支持できません。
福岡県議会の問題を引き続き追いたい方は、政経プラスチャンネルをご登録ください。資料を掘り下げた解説は、政経プラスのnoteでも公開しています。
関連記事:

