2026年9月5日更新
8月31日の会派内処分と、本人の異議を追記
TNCは、江藤秀之県議が8月31日、12月議会閉会までの会員資格停止処分を受けたと報じています。会派側は総会で発言せず動議に反対した点を挙げ、江藤県議は動議の提示が直前だったなどとして反論しました。 TNC報道
県議会の公式名簿には現在も県議として掲載されています。処分は会派内の会員資格に関するもので、県議の地位を失ったという意味ではありません。本人は会派にとどまる意向も示しています。 県議会公式プロフィール、TNC報道
会派内処分と党議拘束をめぐる問題は、江藤県議の処分と本人の反論を取り上げたYouTube動画でも整理しています。
江藤秀之・福岡県議会議員が注目されています。2026年8月、当時の蔵内勇夫議長への辞職勧告決議案をめぐり、採決を中止する動議に、採決に参加した自民党県議団の議員の中で唯一反対したためです。
この一件だけを見ると、「会派に従わなかった議員」という印象になるかもしれません。しかし、江藤県議は飯塚市・嘉穂郡選出で当選6回。20年以上にわたり県議会で活動し、第82代副議長も務めたベテランです。
これまでの経歴と議会で扱ってきたテーマをたどると、地域経済、まちづくり、教育、子どもの福祉、エネルギーと、県民生活に近い課題を継続して取り上げてきたことが分かります。今回の反対も、突然の反乱というより、議会が公開の場で判断することを重視した政治判断として見るべきではないでしょうか。
江藤秀之県議の基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 江藤秀之(えとう・ひでゆき) |
| 生年月日 | 1960年6月28日 |
| 選挙区 | 飯塚市・嘉穂郡 |
| 当選回数 | 6回 |
| 会派 | 自民党県議団 |
| 主な役職 | 第82代福岡県議会副議長 |
| 現在の所属 | 建築都市委員会、再生可能エネルギー等調査特別委員会 |
福岡県議会の公式プロフィールによると、江藤県議は1960年生まれです。2026年8月26日現在、建築都市委員会と再生可能エネルギー等調査特別委員会に所属しています。
学歴については、近畿大学産業理工学部同窓会の会長あいさつに「昭和58年建築学科卒」と記録されています。1983年に建築分野を卒業したことになります。
政界入り前の詳しい職歴をまとめた現行の公式プロフィールは確認できませんでした。一方、2011年の県議選時の新聞候補者紹介では、建設会社役員、飯塚青年会議所専務理事の経歴が紹介されていました。建築を学び、地域の企業や青年会議所で活動した経験は、その後のまちづくりや建築都市行政への関心にもつながっているとみられます。
2003年に初当選、2023年まで6回当選
福岡県の2020年秋号「県議会だより」には、江藤県議が2003年4月に県議会議員へ就任したことが記録されています。当時は飯塚市選挙区から自由民主党公認で立候補しました。その後も当選を重ね、現在は飯塚市・嘉穂郡選挙区選出の6期目です。
県議会議員として20年以上活動してきたこと自体、選挙区で継続的な支持を得てきた証しです。自治体の課題は、一つの任期だけでは解決できません。長期にわたり制度や地域の変化を見てきた経験は、県政を検証するうえでも大きな強みになります。
第82代福岡県議会副議長を約1年間務める
江藤県議は2020年6月24日、第82代福岡県議会副議長に選出され、2021年6月22日まで務めました。これは福岡県議会の歴代副議長一覧で確認できます。
副議長就任時には、県民の声を県政へ反映する責務に触れ、執行部との適切な緊張関係と連携を保ちながら県政課題に取り組む考えを示しました。県議会だより第36号には、新型コロナウイルス対策や人獣共通感染症への対応力強化を進める姿勢も記録されています。
議長を補佐し、議会運営を支えた経験があるからこそ、採決を行う意味や、各議員の判断を記録に残す重要性を理解しているはずです。2026年8月の採決中止動議への反対を考える際にも、この副議長経験は無視できません。
質問テーマは地域経済から教育、子どもの福祉まで
江藤県議が本会議で取り上げてきたテーマを見ると、地域の将来と子どもに関する課題が目立ちます。
- 2003年:飯塚アジアIT特区
- 2006年:国際交流、まちなか再生
- 2007年:県教育行政、子どもの体力問題
- 2008年:全国学力・学習状況調査と学力向上策
- 2013年:放課後児童クラブ
- 2022年:児童虐待
初当選直後には、飯塚地域の産業振興につながるIT特区を質問しました。その後は中心市街地の再生、教育行政、学力、放課後児童クラブ、児童虐待へとテーマを広げています。
これらは派手な政局テーマではありません。地域の雇用、学校、子育て、子どもの安全という、住民の暮らしに直結する課題です。長い議員活動の中で、社会の変化に合わせながら質問分野を広げてきた点は、肯定的に評価してよいと思います。
質問項目は福岡県議会の一般質問表で確認できます。2003年6月定例会、2006年2月定例会、2007年6月定例会、2007年9月定例会、2008年2月定例会、2013年2月定例会、2022年9月定例会です。
建築と再生可能エネルギーの分野でも活動
現在は、建築都市委員会と再生可能エネルギー等調査特別委員会の委員です。建築都市委員会は、住宅、都市計画、建築行政などを扱います。再生可能エネルギー等調査特別委員会は、洋上風力、グリーン水素、脱炭素、電力の安定供給、水資源、環境と土地利用などを調査します。
県議会だより2023年8月号によると、2023年度には再生可能エネルギー等調査特別委員会の委員長を務めました。建築を学んだ経歴を持つ議員が、都市政策とエネルギー政策の両方に関わってきたことには、一貫性があります。
再生可能エネルギーは、導入量を増やせば済む問題ではありません。安定供給、地域との調整、環境保全、土地利用を同時に考える必要があります。技術と地域の双方を知る議員の役割が大きい分野です。
会派で唯一、採決中止動議に賛成しなかった
2026年8月17日の福岡県議会臨時会では、蔵内勇夫・当時の議長に対する辞職勧告決議案が提出されました。しかし、採決中止動議が可決されたため、決議案そのものは採決されませんでした。
TNC・FNNの報道によると、採決に参加した自民党県議団の38人のうち、中止動議に賛成しなかったのは江藤県議だけでした。
ここで大切なのは、江藤県議が辞職勧告決議案に賛成したと断定することではありません。決議案そのものは採決されていないからです。確認できるのは、採決を行わないという動議に賛成しなかったことです。
それでも、会派の統一行動が求められる中で、一人だけ異なる判断を示すのは簡単ではありません。副議長まで経験したベテランが、会派内の立場より、議会として判断する機会を残すことを選んだ。この行動は、議会政治にとって大きな意味を持つと考えます。
金銭授受疑惑の証言にも向き合う必要がある
江藤県議は、正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑について、自身が現金を支払ったと証言した議員でもあります。名指しされた側には受領を否定している議員がおり、証言内容の全てが公的に確定したわけではありません。
そのため、江藤県議を肯定的に評価することと、証言を無条件に事実認定することは分ける必要があります。本人が具体的な説明を続け、第三者調査や公開の議会手続きで検証できる資料を示していくことが大切です。
一方、長く自民党県議団に所属し、副議長も経験した人物が、組織にとって不都合になり得る問題を公に語ったことは重い事実です。声を上げた議員の証言を検証し、議会の仕組みを改める材料にすることが、県民の信頼回復につながります。
江藤秀之県議をどう評価するか
江藤県議の経歴から見えるのは、次のような姿です。
- 飯塚市・嘉穂郡で6回当選した地域密着型のベテラン
- 第82代副議長として議会運営を担った経験者
- 地域経済、まちづくり、教育、子どもの福祉を継続して扱ってきた議員
- 建築とエネルギー政策に実務的な関心を持つ議員
- 会派の多数と異なっても、公開の採決を残そうとした議員
政治家を一つの行動だけで全面的に評価することはできません。それでも、会派の意向と自分の判断がぶつかった場面で、異論を示したことは明確に評価できます。
経験を積んだ議員ほど、組織内の立場や人間関係を優先して沈黙する誘惑は強いはずです。江藤県議は、その場面で反対の意思を示しました。議会には、多数派をまとめる力と同時に、必要なときに「違う」と言える力が必要です。
今後は、これまで培ってきた議会経験を生かし、金銭授受疑惑の解明と議会の信頼回復に向けて、さらに具体的な説明と資料の提示を続けてほしいと思います。異論を表に出した今回の判断が、福岡県議会をより開かれた場に変える一歩になることを期待します。
江藤県議への会員資格停止については、「江藤秀之県議への資格停止は重すぎる」で詳しく論じています。福岡県議会の問題を引き続き追いたい方は、政経プラスチャンネルもご覧ください。
「会員資格停止」で実際に何が制限されるのかは、「会員資格停止」で何が変わる?議員資格・表決権との違いで整理しています。


