「自主財源比率が高い市なら、お金に余裕があるの?」
自治体のお金の話で出てくるこの数字は、どう読めばよいのでしょうか。
自主財源比率は、地方税などの「自治体が自ら集めるお金」が、収入全体の何%を占めるかを表します。収入の成り立ちを見る数字であって、これ一つでお金の余裕や将来の安全性まで分かるわけではありません。

図1:比率の定義は土佐市「財政用語解説」を参照。収入と支出を分けて確認するための概念図です。
市や県も、学校や道路を維持したり、ごみを集めたりするためにお金を使います。「どう入ってきたか」と「何に、いくら必要か」は、分けて考えましょう。
財源の全体像は、自治体の財源とは?地方税・交付税・国庫支出金・地方債の基本で確認できます。
1.自主財源比率は「収入のうち何割か」
市や県などの自治体に、1年間に入ってくるお金を「歳入(さいにゅう)」といいます。その合計が歳入総額です。
歳入のうち、地方税、公共施設の使用料、手続きの手数料などは「自主財源」に分類されます。寄付金や、自治体の土地を売って得たお金も含みます。津島市「財政関係用語集(歳入)」
自主財源比率は、次の式で計算します。
自主財源比率=自主財源÷歳入総額×100
たとえば、収入全体が100億円で、そのうち自主財源が40億円なら、40÷100×100=40%です。「入ってきたお金の4割が自主財源だった」と読めば大丈夫です。計算式の出典:土佐市
一方、地方交付税や国からの補助金、地方債などは「依存財源」です。地方債は自治体の借入金なので、後で返済します。「依存財源=国からもらえるお金だけ」ではありません。東京都「都と市町村」、津島市「財政関係用語集(歳入)」
2.割合が上がっても、収入が増えたとは限らない
ここからは、仕組みを考えるための仮の例です。実在する自治体の実績ではありません。比較する会計の範囲も、前年と今年で同じとします。
ある市の自主財源は、前年も今年も40億円でした。一時的な国の補助金が終了し、ほかの条件は変わらず、依存財源だけが60億円から40億円に減ったとします。

図2:政経プラスが作成した仮定の計算例。金額の単位は億円。棒の長さは金額を表し、両年を同じ目盛りで比べています。
前年は40÷100×100=40%。今年は40÷80×100=50%です。自主財源は40億円のままなのに、割合は10ポイント上がりました。割る相手である「収入全体」が小さくなったからです。
これは「市の税収が増えた」証拠にはなりません。また、補助金の対象だった事業が終わり、支出も減っているかもしれません。この例だけで、財政が良くなったとも、悪くなったとも決められません。
反対に、国の補助金が一時的に増えると、自主財源が減っていなくても割合は下がりえます。比率の上がり下がりを見たら、まず「どのお金が、なぜ増減したのか」を確認します。
3.「自分で集めた」と「使い道が決まっていない」は別
自主財源という名前から、「市が好きに使えるお金」と思うかもしれません。しかし、財源には二つの分け方があります。
「自主財源・依存財源」は、お金をどう得るかの分類です。「一般財源・特定財源」は、使い道があらかじめ決まっているかの分類です。東京都「都と市町村」
代表例を並べると、違いが見えてきます。
| お金の例 | どう得るか | 使い道の分類 |
|---|---|---|
| 市民税 | 自主財源 | 一般財源 |
| 都市計画税 | 自主財源 | 特定財源 |
| 地方交付税 | 依存財源 | 一般財源 |
表1:代表例であり、すべての財源の一覧ではありません。分類は東京都主税局「税金一般」と東京都「都と市町村」を参照しています。
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業のために使う税です。自治体が集めても、使い道には決まりがあります。八街市「都市計画税の使途」
逆に、地方交付税は依存財源ですが、特定の事業だけに使う補助金とは違います。地域による財源の差を調整し、必要な行政サービスを支える仕組みです。三重県「地方交付税制度の概要」
なお、一般財源でも、法令や予算の手続きを無視して使えるわけではありません。使い道を決める仕組みは、自治体の予算は誰が決める?で解説しています。
4.「今年入ったお金」が、来年も入るとは限らない
自主財源には、積み立てたお金を取り崩して使う分も含まれます。自治体の積立金などを「基金(ききん)」といい、そこから会計に移すお金は「繰入金(くりいれきん)」です。繰入金には、別の会計から移すお金もあります。土佐市「財政用語解説」
貯金を引き出すと、手元で支払いに使えるお金は増えます。でも、その分だけ毎年の収入が増えたわけではありません。自治体全体が家計と同じ仕組みという意味ではなく、「貯えを使うこと」と「継続して入る収入」の違いを考えるたとえです。
同じように、市の土地を売った収入も、同じ土地を翌年また売って得ることはできません。
そこで、自主財源が増えたときは、地方税が増えたのか、土地を売ったのか、基金を取り崩したのかを分けて見ます。一時的な収入があること自体を悪いと決めず、使う目的と、その後に残る貯えも確認しましょう。
実質収支の黒字と基金残高の増減を分ける具体例は、黒字なのに基金が減る?実質収支と実質単年度収支の違いを図解で確認できます。
5.「財政力指数」とは何が違う?
似た名前に「財政力指数」があります。こちらは、標準的な行政サービスに必要なお金を、税収などでどのくらいまかなえるかを見る指標です。
一定の方法で計算した収入の額を「基準財政収入額」、必要なお金の額を「基準財政需要額」といいます。財政力指数は、前者を後者で割った値の、通常は過去3年間の平均です。新潟県「県内市町村の財政力指数」
自主財源比率は、歳入全体の「内訳」を見る数字です。財政力指数は、共通の計算方法による「収入と必要額の関係」を見ます。実際に入った全収入を、実際の全支出で割ったものではありません。みよし市「財政力指数」
数字を全部覚える必要はありません。まず、自分のまちの資料で次の三つを確かめてみてください。
- 収入の中身:地方税、国などからのお金、基金の取り崩しはどう変わったか。
- 必要な支払い:毎年のサービスや借入金の返済に、どのくらい使っているか。
- 将来への備え:基金の残高や、これから返す借入金はどうなっているか。
比べるときは、同じ年度、同じ会計の範囲にそろえます。収入・支出の計画である「予算」と、実績をまとめた「決算」も混ぜません。人口や、学校・道路の維持に必要な費用も違うので、全国順位だけで優劣を決めないようにします。
資料を開くところから始めたい方は、決算カード・財政状況資料集の読み方をご覧ください。
よくある質問
自主財源比率は高いほうがよいのですか?
安定して入る地方税などが多ければ、自治体の財政を支える力になります。ただし、比率が上がった理由が一時的な土地売却や、ほかの収入の減少かもしれません。「高いほど必ず安心」とは言えません。
自主財源比率が低い自治体は、努力不足ですか?
それだけでは判断できません。人口や産業、税収の得やすさは地域によって違います。地方交付税などが担う調整の役割も踏まえ、収入と支出の内容を確認します。
40%から50%は「10%増」ですか?
二つの割合の差は「10ポイント上昇」と書きます。この例では、もとの40%に対しては25%の増加に当たるため、「10%増」と混同しないようにします。なお、自主財源の金額は増えていません。
まとめ:割合の次に、お金の中身を見る
- 自主財源比率は、収入全体に占める自主財源の割合です。
- 収入全体が小さくなるだけでも、この比率は上がります。
- 自主財源であっても、使い道に決まりがあるお金を含みます。
- 財政の様子を知るには、継続する収入、支出、貯え、返済も確認します。
「何%か」を読んだら、「何が変わったのか」へ進む。それだけで、自治体のお金の説明を読み違えにくくなります。
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制度・出典確認日:2026年9月4日。本稿は一般的な制度解説です。計算例は仮定であり、特定自治体の財政状態を評価するものではありません。
図解:政経プラス(AI生成画像を確認して使用)
制作:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT(gpt-5.6-sol/推論レベル:xhigh)
AIは構成、図解、一次資料の確認を補助し、最終的な編集・公開判断はカネさんが行います。

