同じ時期の内閣支持率なのに、ある社では40%、別の社では50%。数字を並べると、どちらを信じればいいのか迷います。
差が出るのは、回答した人が違うだけでなく、調査日、電話やネットといった回答方法、質問の言葉、集計時の補正などが異なるためです。数字の高低だけで、正しい調査と間違った調査を選ぶことはできません。
まず同じ社の前回調査と比べ、次に他社でも同じ方向へ動いているかを見る。その際に調査方法の変更がないかを確かめると、支持率のニュースを読み違えにくくなります。
資料確認日:2026年10月5日。本文中の支持率・人数・計算例は、読み方を説明するための架空の例です。現在の内閣支持率を示すものではありません。
社名と数字の横に、調査日と方法を置く
SNSで見かけた支持率の画像は、元記事を開いてから読みます。公表日が同じでも、実際に回答を集めた日が違うことがあるからです。
例えば、政策発表前の週末に調べた数字と、発表後の週末に調べた数字を比べても、その差を調査会社の違いだけでは説明できません。反対に、発表後に支持率が上がっていても、他の出来事や調査の揺れがあるため、その政策だけが原因だとは分かりません。
最初に確認するのは、次の五点です。
| 確認するもの | 記事で探す表記 |
|---|---|
| いつ調べたか | 調査実施日・期間 |
| 誰を対象にしたか | 全国の有権者、18歳以上など |
| どう選んだか | 電話番号の無作為抽出、登録者から抽出など |
| どう答えたか | 電話、郵送、ウェブなど |
| 何人が答えたか | 有効回答数、回答率の説明 |
調査を依頼して結果を報じる会社と、回答を集める実施会社が別の場合もあります。記事に「○○新聞の調査」とあっても、調査概要に書かれた実施主体まで見ると、同じデータを使った別記事を二つの独立した調査として数えずに済みます。
社会調査協会も、各社の支持率の差には、調査方法、質問、調査日、回答者の偏りなどが関係すると説明しています。社会調査NOW「内閣支持率などの数字が報道各社で異なるのはなぜですか?」
「電話かネットか」だけでは品質を決められない
電話調査では、無作為に作った電話番号へかけるRDD方式などが使われます。ただし、電話に出て最後まで答える人と、出ない人の間に、意見の傾向の違いがあれば、結果に偏りが残ることがあります。
ウェブで答える調査にも、対象者を選んで回答を依頼するもの、登録モニターから集めるもの、SNS上で誰でも参加できるものがあります。同じ「ネット調査」という名前でも、誰が参加できるかが違います。
したがって、「電話なら正確」「ネットなら若者の本音」と、回答する道具だけで結論を決めるのは早すぎます。見るべきなのは、調べたい集団からどう対象者を選び、どのような人が実際に答えたかです。
そこで使われるのが、集計時の重み付けです。例えば、回答者の年齢構成が想定する人口構成と違う場合に、集計への反映の大きさを調整します。抽出される確率の違いを調整する場合もあります。
重み付けをしたこと自体を改ざんと呼ぶことはできません。ただし、年齢や性別を合わせれば、政治への関心や回答しやすさの違いまで必ず解消するわけでもありません。「何に合わせて、何を調整したか」が分かる説明を探します。米国世論調査協会(AAPOR)の調査報道ガイド
同じ「支持する」でも、質問と選択肢が違う
支持率を比べるときは、質問文と回答の選択肢も並べます。
例えば、「支持する・支持しない」から選ぶ場合と、「強く支持する・ある程度支持する・あまり支持しない・全く支持しない」から選ぶ場合では、答える人が判断を表す方法が違います。後者の上二つを合計して支持率としていれば、その集計の定義も確認します。
「分からない」と答えた人へ、どちらかといえば支持するか、支持しないかを改めて尋ねることを「重ね聞き」といいます。これを行うかどうかで、曖昧な態度だった人の回答の振り分けが変わり得ます。
朝日新聞社の世論調査部へのインタビューでも、同社は重ね聞きをせず、行う社もあると説明しています。また、同じ電話調査でも、オペレーターが尋ねる方法と自動音声では条件が違います。実際の比較では、その回の調査概要を確認してください。朝日新聞社「世論調査の裏側・後編」
質問の順番も無関係ではありません。先に特定の政策や問題について考えてもらうと、その後の回答に影響する可能性があります。支持率の設問だけでなく、直前に示した説明や質問も確認対象です。AAPORの開示基準も、回答へ影響し得る先行する質問や説明の開示を求めています。
なお、「分からない・答えない」の割合も見てください。支持が減ったとき、その分がすべて不支持に移ったとは限りません。態度を決めていない回答が増えた可能性もあります。
前回比は同じ社で見る。ただし小幅な変化は急いで意味づけしない
次の架空例では、A社とB社の支持率そのものには差があります。
| 調査 | 前回→今回 | 変化 |
|---|---|---|
| A社 | 35%→39% | +4ポイント |
| B社 | 44%→46% | +2ポイント |
ここで比較したいのは、今回のA社39%とB社46%の差だけではありません。同じ社の中ではどちらも上向きの数値だった、という共通点があります。
ただし、これだけで「国民の支持が確実に増えた」とまでは断言できません。同じ方法を続けているか、回答数は十分か、数回の調査でも傾向が続くかを合わせて見ます。
一部の人に尋ねて全体を推定する以上、偶然選ばれた回答者の違いによる揺れがあります。単純無作為抽出で1,000人、割合が50%付近と仮定した場合、95%信頼水準の標本誤差の目安は約±3.1ポイントです。これは計算上の例で、すべての調査へそのまま適用できる幅ではありません。
実際の誤差は調査設計や重み付けで変わり、回答しない人の偏り、質問による影響などは、この標本誤差だけでは表せません。また、前回と今回の差には両方の調査の不確実さが関係するため、一回分の誤差の幅をそのまま「上昇・下落の判定線」にはできません。AAPOR「Polling Accuracy」
40%から42%への変化は「2ポイント上昇」です。「2%上昇」と書くと意味が曖昧になるので、支持率の差はポイントで読むと整理しやすくなります。
SNSアンケートの10万人と、世論調査の1,000人は何が違う?
人数が多い結果を見ると、少人数の調査より説得力があるように感じます。しかし、母数の大きさと、国民全体を代表しているかは別です。
例えば、ある政治家の支持者が多く集まるアカウントでアンケートを行えば、回答が多数集まっても、そのアカウントを見て参加した人の回答です。反対する人が参加を呼びかければ、参加者の構成も変わります。
こうした結果は、参加者の反応を知る材料にはなります。けれども、「10万人も答えたから、全国の支持率より正しい」とは分かりません。人数が増えても、参加する人の偏りが自動的に消えるわけではないからです。
ウェブで答えたという理由だけで、この種の自由参加アンケートと、対象者を選んで依頼する調査を同一視することもできません。AAPORは、対象者を選ぶ確率が分かる調査と、任意参加などによる調査を区別し、後者へ通常の標本誤差を安易に付けることを戒めています。AAPOR「政治世論調査の標本抽出方法」
スマホ調査で話題になった「回答できたこと」と「集計されたこと」の違いは、当チャンネルの検証記事で扱っています。SNS上の反応の広がりを調べる場合は、政治SNSの拡散を検証する5つの指標も参考になります。
最新の数字を見るときは、元記事をこの順番で読む
支持率のニュースを開いたら、まず調査日と対象者を確認します。次に、質問文、回答方法、有効回答数、補正の説明へ進みます。
そのうえで、同じ社の前回から何ポイント変わったか、方法に変更がなかったかを見ます。他社の結果は、数字が違うことだけを問題にせず、実施時期をそろえて、変化の方向に共通点があるかを確かめます。
複数社の数字を平均した値にも、どの調査を入れたか、何日前までを対象にしたかという条件があります。平均すれば自動的に「本当の支持率」になるわけではありません。
最後に、内閣支持率は、その時点で内閣を支持するかという問いへの回答です。政党支持率、比例代表の投票先、個別政策への賛否とは、尋ねているものが違います。支持率が高いからすべての政策が支持されているとも、次の選挙の得票率が同じになるとも読めません。
数字に違和感があったときに調べたいのは、「誰が得をする数字か」より先に、誰に、いつ、どう聞いた数字かです。そこが公表されていなければ、分からない条件を分からないまま残す。支持率の検証は、その一歩から始まります。
執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT



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