議員の数を減らせば、歳費などの支出は抑えられる。その理屈は分かる。しかし、国会議員の仕事を経費だけで評価し、代表の数を減らすことを改革の成果にしてしまってよいのか。
日本維新の会が進める衆議院の議員定数削減には、この疑問がつきまとう。私は、削減する数字を誇る前に、何を失うのかを説明してほしいと思う。とりわけ、地方の声を国政に届ける力をどう保つのかという説明が足りない。
「全体の1割」は、比例では約4分の1
共同通信の10月7日付報道によると、維新の藤田文武共同代表は、比例代表を45議席減らす法案の今国会での成立を目指す考えを改めて示した。
現在の衆議院は、小選挙区289議席、比例代表176議席の計465議席だ。提出された法案は、比例を131議席に減らし、合計420議席にする仕組みを含む。
45議席は、衆議院全体では約9.7%。ところが、比例代表だけで見れば約25.6%になる。「1割削減」という響きより、比例の枠に与える影響はずっと大きい。
10月8日時点で、この法案は未成立だ。法案には選挙制度について協議する枠組みがあり、公布後1年以内に所定の制度改革法が成立しなかった場合、比例を45議席減らす規定を置いている。
削減後のブロック別定数は、別の法律で定める。削減は、その法律の施行後、初めて公示される総選挙から適用される仕組みだ。
地方の声を細くする代償を示せ
比例代表は、小選挙区とは別に政党へ投じられた票に応じて、議席を配分する。小選挙区で勝てなかった政党の支持も国会に反映する役割がある。その枠を約4分の1も縮めれば、国会に届く意見の幅が狭まる懸念は当然ある。
鳥取と島根は中国ブロック、福井は北陸信越ブロックに属する。県ごとに独立した比例の議席があるわけではなく、今回の法案だけで各県の議席が何人減ると決まっているわけでもない。
それでも、人口の少ない地域が抱える交通、医療、産業などの問題を、国会で誰が取り上げるのかは重大だ。比例の議席も地域の課題を国政へ運ぶ入口の一つである。その入口を狭める以上、地方の声を拾う力をどう維持するのか、具体的な説明が必要になる。
大阪を強い地盤とする維新からすれば、島根や鳥取、福井はどうでもいいのか。私は、そんな嫌味を言いたくなる。
これは維新がそう公言したという話ではない。削減の数字を前面に出す一方、地方の代表や少数意見をどう守るのかが見えないから、そう受け取られても仕方がないという批判である。
「身を切る改革」で政治家の質は上がったのか
維新は「身を切る改革」を看板にし、議員の待遇や定数を削ることを掲げてきた。だが、削ることを繰り返してきた党で、政治家としての自律や法令順守は、どれほど徹底されたのだろうか。
今年1月、東京維新の会は、元所属の地方議員1人について、党本部が社会保険を悪用した「国保逃れの脱法行為」と認定し、除名したと発表した。
また、兵庫維新の会は8月、門隆志県議について、必要な手続が行われていないレンタカー事業などを党の調査で確認し、7月26日付で除名したと公表した。議員辞職も勧告している。
党が調査し、処分したことは事実だ。そのうえで私は、「身を切る改革」をこれほど誇る党で、こうした問題が続くことに納得がいかない。
報酬を削ったことが不祥事の原因だと示す資料はない。しかし、政治家としての質まで削っていないか、と皮肉を言いたくなる状況ではある。削減の実績を並べても、法令順守や倫理の問題が残れば、改革の看板への信頼は上がらない。
削るべきものを取り違えていないか
議席を減らすことで節約できる費用と、減らすことで失われる代表や監視の力。その両方を示してこそ、定数削減を議論できる。
維新は、まず党内の不祥事を減らすことに、議席削減と同じ熱量を向けるべきだ。国民の代表を減らす数字ばかりが先に立ち、地方の声への配慮が後に回るなら、私はこの改革を支持できない。
「身を切る改革」で切られるのが、自分たちの無駄なのか、それとも国会へ届く地方の声なのか。そこを曖昧にしたまま、45議席削減を改革の勲章にしてほしくない。
出典・確認資料:
共同通信・10月7日の藤田共同代表の発言(ライブドアニュース掲載)
衆議院・議員定数削減等に関する法案本文(第221回国会・衆法28号)

