情報確認日:2026年10月15日
日銀が供給するお金と、家計・企業が持つ預金は、範囲の違う統計です。マネタリーベースは流通現金と日銀当座預金の合計、マネーストックは一般法人・個人・地方公共団体などが保有する現金や預金等を集計します。日銀当座預金が増えた額を、そのまま家庭の銀行口座へ配られた額とは読めません。どちらが増えたというニュースなのか、保有者と内訳を先に確認してください。
マネタリーベースには、金融機関が持つ日銀当座預金が入る
日銀のマネタリーベースの解説は、次の式で定義しています。
マネタリーベース=日本銀行券発行高+貨幣流通高+日銀当座預金
流通現金は紙幣と硬貨、日銀当座預金は金融機関などが日本銀行に持つ当座預金です。一般の人が銀行に開く普通預金と、預け先も保有する主体も違います。
また、ここでの流通現金には金融機関が保有する分も入ります。「市中へ供給」と紹介されていても、全額が家計や企業の手元にあるという意味ではありません。
マネーストックは、家計だけでなく企業や地方公共団体も対象
日銀の説明では、金融機関・中央政府を除いた通貨保有主体が持つ現金や預金等の残高を集計します。個人の預金総額だけの統計でも、国が使える財源の総額でもありません。
2026年3月版の公式FAQ・問21は、マネタリーベースに入る日銀当座預金と金融機関の保有現金が、マネーストックには入らないと説明しています。
| 比べる点 | マネタリーベース | マネーストック |
|---|---|---|
| 供給する主体 | 日本銀行 | 日本銀行を含む金融部門 |
| 数える保有者 | 金融機関も含む | 一般法人・個人・地方公共団体など |
| 日銀当座預金 | 含む | 含まない |
| 金融機関の保有現金 | 含む | 含まない |
二つの金額を足すと「世の中のお金の総額」が分かる、という表ではありません。範囲が重なる部分と違う部分があるためです。
M1・M2・M3は、単に預金の大きさの順位ではない
マネーストックにはM1、M2、M3、広義流動性という四つの指標があります。公式FAQ・問2と問12に、金融商品の範囲と発行主体の区分があります。
M1は現金通貨と普通預金・当座預金などの預金通貨です。M3は、これに定期預金などの準通貨や譲渡性預金、CDを加えた指標です。CDは銀行等が発行する金融商品の名前で、音楽の媒体とは関係ありません。
M2とM3は対象となる金融商品の種類は同様ですが、預け先の範囲が違います。例えば、M2ではゆうちょ銀行の預金を含まず、全預金取扱機関を対象にするM3では含みます。「M2なら普通預金だけ」と覚えると、表の意味を取り違えます。
広義流動性には、M3のほか、投資信託や国債なども入ります。預金を解約して投資信託へ移すような商品間の移動は、M3と広義流動性で見え方が変わる理由になります。
お金の残高が増えても、すぐ同じ割合で消費されるとは限らない
公式FAQ・問18は、マネーストックと経済・物価の関係を説明しています。残高は取引だけでなく、いざという時の備えや、対象に含まれる金融商品への預け替えにも影響されます。短期には、実体経済や物価と異なる動きもあります。
このため「お金が何%増えたので物価も同じ月に何%上がる」「残高が増えたので全員の生活費が増えた」という計算にはなりません。誰が保有し、何に使い、商品やサービスの供給がどう動いたかは別の情報が必要です。
問19では、日銀はマネーストックを判断材料の一つとして用いる一方、金融政策の目標や金融調節の操作対象としているわけではないとも説明しています。
月の平均残高と、月末一日の残高を合わせない
日銀の公表資料には「平残」と「末残」があります。平残は月中の平均残高、末残は月末時点の残高です。月の途中で大きく動けば、同じ月でも数字は違います。
マネーストックは月次統計です。公式FAQ・問4では、平残速報は通常翌月第7営業日、3月・9月分は第9営業日と案内しています。確報や、その後の基礎資料に基づく遡及訂正もあります。
過去と比較する読者は、指標名、対象月、平残・末残、原計数・季節調整済み、速報・確報を同じ条件にそろえてください。古い速報と最新の訂正値を無説明で並べると、増減の読み方がずれます。
ニュースの数字は、日銀の表名と内訳へ戻る
「通貨量が増えた」という見出しを見たら、日銀公式サイトの統計から「マネタリーベース」か「マネーストック」を開きます。マネーストックなら、M1・M2・M3・広義流動性のどれかを特定します。
次に、合計だけでなく現金・預金等の内訳と、公表日・対象月を確認します。M3の預金通貨・準通貨・CDには一般法人と個人の内訳も公表されますが、すべての指標に同じ主体別内訳があるわけではありません。
定義や系列の疑問は日銀の調査統計局へ、表名、対象月、指標、欄の名称を添えて問い合わせます。自分の預金や銀行の入出金に関する照会は、その銀行が窓口です。全国の通貨残高と本人の口座残高を、目的に合う資料で確かめてください。
参照資料
あわせて読みたい記事
執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT

