働きながら年金を受け取る人の在職老齢年金(賃金と年金の額に応じ、老齢厚生年金の一部または全部を止める仕組み)は、2026年4月から基準が変わりました。
私は2023年6月の動画で、年金の支給開始を遅らせる提案に対し、元気なうちに受け取れるのかという不安を取り上げました。働く人の年金も、制度の説明だけでなく、生活の中でいくら受け取れるのかまで確かめたいところです。
2026年度は、制度上の賃金と老齢厚生年金の基本月額を足して月65万円以下なら、この制度による支給停止はありません。給与だけで65万円を判定する計算ではなく、賞与も月額に換算して加えます。
老齢基礎年金(国民年金の老齢給付)は、この調整の対象外です。給与・賞与・年金のどの金額を見るかを、2026年10月29日時点の公式資料と試算で整理します。
2026年度は51万円から65万円へ
2025年度の基準は月51万円でしたが、2026年4月分から月65万円になりました。日本年金機構の改正案内で、実施済みの変更として確認できます。
以前の記事に出てくる「62万円」は、法律成立時に示された額です。厚生労働省の説明では、賃金の変動を反映した2026年度の額を65万円としています。65万円は毎年度改定され得る基準で、将来ずっと固定される金額ではありません。
今回変わったのは、働いている間の支給停止の基準です。上の動画で取り上げた受給開始年齢の引き上げとは別の話で、「65万円」は年金を受け取り始める年齢を変える数字ではありません。
65万円の判定に含める金額
足すのは、年金側の「基本月額」と、賃金側の「総報酬月額相当額(給与と賞与を制度上の月額に換算した額)」です。
| 項目 | 計算に使う金額 |
|---|---|
| 年金の基本月額 | 加給年金額を除く老齢厚生年金の報酬比例部分の年額÷12 |
| 賃金の月額換算 | その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額合計÷12 |
| 老齢基礎年金 | 65万円の判定に含めず、この制度では停止しない |
報酬比例部分とは、加入期間と報酬などに応じて決まる厚生年金の部分です。加給年金(配偶者などの条件に応じた上乗せ)は、65万円との比較に使う基本月額から外します。共済組合などの老齢厚生年金も受け取っている場合は、合算して判定します。
標準報酬月額(社会保険料の計算に使う、等級ごとの月額)は、その月の手取り額とも、額面給与そのものとも限りません。標準賞与額(賞与から1,000円未満を切り捨てるなどして算定する額)も、実際の振込額とは区別します。用語は標準報酬月額・標準賞与額の公式説明で確認できます。
賞与が出なかった月でも、その月以前1年間に対象の賞与があれば月額換算に入ります。月々の給与だけを見て「65万円以内」と判断すると、計算がずれる場合があります。
65万円を超えた場合の計算
合計が65万円を超えた場合は、原則として超えた分の半額が支給停止額になります。老齢厚生年金の報酬比例部分を超えて差し引くことはなく、その部分の支給額は最低0円です。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額−65万円)÷2
65万円を少し超えたことだけで、年金全体が直ちに全額停止になる計算ではありません。老齢基礎年金は引き続き、この制度による調整の対象外です。計算式と例外の詳しい説明は日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」にあります。
賞与を含めた2つの試算
次は、老齢厚生年金の基本月額が10万円、その月以前1年間の標準賞与額合計が60万円と仮定した例です。賞与の月額換算は、60万円÷12=5万円になります。
| 月額の内訳 | 例A | 例B |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 50万円 | 62万円 |
| 賞与の月額換算 | 5万円 | 5万円 |
| 年金の基本月額 | 10万円 | 10万円 |
| 判定に使う合計 | 65万円 | 77万円 |
| 支給停止額 | 0円 | 6万円 |
| 調整後の報酬比例部分 | 10万円 | 4万円 |
例Aは合計65万円なので支給停止なし。例Bは65万円を12万円超えるため、その半分の6万円が停止され、対象の厚生年金は月4万円になります。どちらも、老齢基礎年金はこの計算で減りません。
実際に働く時間を増やすかどうかは、税や社会保険料なども含めて考える必要があります。この表は手取り収入の比較でも、特定の働き方を勧める試算でもありません。
対象になる働き方と70歳以上の扱い
主な対象は、老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金保険に加入して働く60歳以上の人です。仕事をしている人すべてに、一律に同じ調整がかかるわけではありません。
70歳以上になると厚生年金の保険料負担はなくなりますが、適用事業所で働く70歳以上被用者などは、引き続き在職による調整の対象になり得ます。「70歳になれば必ず支給停止がなくなる」とは限りません。対象や報酬の扱いは日本年金機構の計算方法の「概要」を確認してください。
加給年金は判定の合計から外しますが、報酬比例部分が全額停止になる場合は、加給年金も停止になります。厚生年金基金に加入していた期間がある人などは、基本月額の取り方にも注意が必要です。
年金額と給与を確認する手順
- 年金額の通知で、基礎年金と厚生年金の報酬比例部分を分け、基本月額を確かめる。共済組合などからの受給も確認する。
- 勤務先で標準報酬月額と、その月以前1年間の標準賞与額合計を確認する。
- 合計が基準を超えるか試算し、不明な点は年金事務所で確認する。
年金の振込額には税や保険料の控除があるため、通帳の入金額だけから基本月額を出すのは避けてください。相談時は、年金額の通知と給与・賞与の資料をそろえると確認しやすくなります。
年金そのものの水準については氷河期世代の年金額を考える記事、毎年の年金改定と積立金の関係はGPIFの運用益と年金額の関係でも整理しています。在職老齢年金の調整と、年金全体の改定は別の仕組みです。
一次資料・確認先
確認日:2026年10月29日。本文の65万円と試算は2026年度の基準によります。将来の年度や個別の受給額は、日本年金機構の最新案内を確認してください。
執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT(モデル・推論レベルは記録なし)


