告訴・不起訴・保釈とは?ニュースで混同しやすい3つの違いを整理

ニュースやSNSでは、「告訴した」「不起訴になった」「保釈が認められた」という言葉が、勝ち負けや有罪・無罪の印のように使われることがあります。

しかし、この三つは、決める人も、使われる時期も、意味も違います。

先に結論を示します。

用語 何を意味するか 主な判断・行為の主体
告訴 被害を受けた人などが、犯罪事実を捜査機関に申告し、犯人の処罰を求めること 被害者など
不起訴 検察官が、事件を刑事裁判にかけないと決めること 検察官
保釈 起訴後、勾留中の被告人を保証金などの条件付きで釈放すること 裁判所

最も大事なのは、告訴されたから有罪ではなく、不起訴だから必ず無実とも限らず、保釈されたから裁判が終わったわけでもないという点です。

さらに、「告訴→不起訴→保釈」という一つの順番でもありません。同じ事件が不起訴になれば、その事件では起訴後の制度である保釈は問題になりません。

この記事では、刑事手続のどの場面で使われる言葉なのかを、一つずつ整理します。

まずは刑事手続の流れを確認

刑事事件の一般的な流れを単純化すると、次のようになります。

被害の申告・告訴・告発
        ↓
       捜査
        ↓
   検察官へ送致・送付
        ↓
   起訴 または 不起訴
        ↓
   起訴された事件は裁判へ
        ↓
       判決
        ↓
       確定

逮捕や勾留が行われない事件もあり、すべての事件が同じ経路をたどるわけではありません。

保釈が問題になるのは、原則として、この流れのうち起訴された後です。

告訴とは「犯罪事実を申告し、処罰を求めること」

法務省は、告訴について、被害者が捜査機関に犯罪事実を申告して、犯人の処罰を求めることと説明しています。

ここで重要なのは、告訴は被害を訴える側の行為だということです。

「告訴状を提出した」という事実から分かるのは、告訴した人が犯罪被害を主張し、処罰を求めたことです。その時点で警察、検察、裁判所が犯罪の成立を認定したわけではありません。

被害届・告訴・告発の違い

用語 概要
被害届 被害に遭った事実を捜査機関に届け出る
告訴 被害者などが犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める
告発 被害者以外の人が犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める

名誉毀損罪など、起訴するために告訴が必要な「親告罪」もあります。一方、告訴がなければ捜査や起訴が一切できない犯罪ばかりではありません。

なお、「民事告訴」という言い方は正確ではありません。告訴は刑事手続の言葉です。損害賠償などを求める民事手続は、訴訟を提起する、提訴する、などと表現します。

「告訴された」から言えること、言えないこと

言えることは、告訴した側が処罰を求めていることです。

それだけでは、次のことまでは言えません。

  • 犯罪が成立した
  • 証拠が十分にそろった
  • 検察官が起訴すると決めた
  • 裁判所が有罪と判断した

記事や動画では、「告訴された人物」ではなく、より正確に「○○が告訴したと発表した」「告訴状を提出した」と、確認できた主体と行為を書く必要があります。

不起訴とは「刑事裁判にかけない処分」

警察などから送られた事件について、検察官は必要な捜査を行い、起訴するか、不起訴にするかを決めます。

不起訴は、その事件を刑事裁判にかけないという処分です。

ただし、不起訴の理由は一つではありません。法務省は、主な例として次のようなものを挙げています。

不起訴理由の例 意味
嫌疑不十分 犯罪を立証する証拠が不十分
起訴猶予 犯罪の嫌疑が認められても、性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状などを考慮し、起訴を必要としないと判断
心神喪失など 責任能力が認められないなど、訴追できない事情がある

このほかにも不起訴となる理由があります。

そのため、「不起訴になった」という発表だけを見て、理由を確認せずに「完全な無実が証明された」「犯罪はあったが見逃された」と決めつけることはできません。

不起訴は無罪判決ではない

無罪は、起訴された事件について裁判所が審理し、有罪と認められないと判断した判決です。

不起訴は、その前の段階で、検察官が裁判にかけないと決める処分です。裁判所による無罪判決とは異なります。

記事で不起訴を扱う場合は、少なくとも次の二点を分けます。

確認できたこと:検察官が不起訴処分とした
確認できないこと:不起訴理由は公表資料で確認できない

本人や代理人が「嫌疑が晴れた」と説明していても、それが検察官の公表した処分理由なのか、当事者の評価なのかを区別する必要があります。

保釈とは「起訴後の条件付き釈放」

保釈は、起訴された後、勾留されている被告人を、保証金の納付などを条件として釈放する制度です。

裁判所の案内では、保釈は起訴後であれば、公判が始まる前から判決が確定するまで請求できます。

つまり、保釈された人は、刑事裁判を受ける立場にあります。保釈によって起訴が取り消されたり、事件が終了したりするわけではありません。

保釈保証金は罰金ではない

保釈保証金は、被告人の出頭を確保するために裁判所が定めるものです。

被告人が逃亡したり、証拠を隠滅したり、保釈条件に違反したりした場合には、保釈が取り消され、保証金が没取されることがあります。

そのような事情がなければ、裁判の結果が有罪でも無罪でも、保証金は裁判終了後に返還されます。

したがって、「保証金を払ったから自由を買った」「保証金は刑罰の前払い」という理解は正確ではありません。

保釈の許可・却下と有罪・無罪は別

裁判所は、逃亡や証拠隠滅のおそれなどを考慮して保釈を判断します。

保釈が認められたから無罪に近いわけではありません。反対に、保釈が却下されたから有罪が確定したわけでもありません。

保釈の判断は、身柄を拘束したまま裁判を続けるかどうかの判断です。有罪・無罪を決める判決とは、目的が違います。

三つの用語を一枚で比較

比較項目 告訴 不起訴 保釈
段階 主に捜査の入口 捜査後の事件処理 起訴後
主体 被害者など 検察官 裁判所
対象となる人の呼び方 告訴の相手方 被疑者 被告人
有罪・無罪との関係 有罪を意味しない 無罪判決とは違う 裁判は続く
一言で言うと 処罰を求める申告 裁判にかけない処分 条件付きの身柄釈放

ニュースを見るときの5項目

刑事事件のニュースでは、強い見出しだけで判断せず、次の五点を確認します。

  1. 誰が行動・判断したのか
  2. 告訴、捜査、起訴、裁判、判決のどの段階か
  3. 判断理由は公式に公表されているか
  4. 当事者の説明と、警察・検察・裁判所の判断が混ざっていないか
  5. まだ決まっていないことは何か

「告訴状を提出」「不起訴処分」「保釈請求を却下」という三つの見出しは、どれも事件の最終結論とは限りません。

まとめ

  • 告訴は、被害者などが犯罪事実を申告し、処罰を求めること
  • 不起訴は、検察官が事件を刑事裁判にかけないと決めること
  • 保釈は、起訴後の被告人を条件付きで釈放すること
  • 告訴は有罪認定ではない
  • 不起訴は裁判所の無罪判決ではない
  • 保釈の許可・却下は、有罪・無罪の判断ではない

刑事ニュースを正確に読む第一歩は、感情的な勝ち負けではなく、「誰が、どの段階で、何を決めたのか」を確認することです。

参考資料

※本記事は日本の刑事手続を一般向けに整理したもので、個別事件についての法律相談や有罪・無罪の評価ではありません。

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