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病歴は同意なしでAI学習に使われる?2026年改正個人情報保護法を解説

AI学習と病歴情報・個人情報保護法 法律・公益通報

記事タイプ:制度解説・改正個人情報保護法と病歴のAI利用

改正個人情報保護法は、一定のAI開発を含む統計作成等だけに使う場合、条件付きで病歴などの取得・提供に本人同意を不要とする仕組みを設けます。事業者名や利用内容の公表、書面合意、目的外利用・再提供の制限などが条件です。

改正法は2026年7月10日に成立し、7月17日に令和8年法律第56号として公布されました。主要部分は公布から2年以内の政令で定める日に施行されます。この記事は7月22日時点の制度説明です。

政経プラスチャンネルは、法案が衆議院を通過した5月26日に、病歴などが同意なしでAI開発に使われる可能性を取り上げました。以下では、成立した法律の条件を説明します。

※動画は2026年5月26日公開です。この記事では、その後の法案成立・公布まで反映しています。動画タイトルの「筒抜け」は問題提起を表したもので、個人情報が無条件で提供されるという意味ではありません。

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同意不要の特例を使う目的と公表・合意の条件

今回の改正で押さえたい点は、次の5つです。

  • 改正法は2026年7月10日に成立し、7月17日に公布された
  • 一定のAI開発を含む「統計作成等」だけに利用する場合、個人データの第三者提供で本人同意を不要にできる
  • 公開されている病歴、信条、犯罪歴などの要配慮個人情報も、同じ目的と条件のもとで同意なく取得できる
  • 利用目的や事業者名などの公表、提供元と提供先の書面による合意、目的外利用と再提供の制限が予定されている
  • 原則的な施行日は「公布から2年以内」であり、具体的な対象範囲や公表事項は今後の政令、委員会規則、ガイドラインで決まる

7月22日時点では主要部分は施行前です。施行後、統計作成等だけへの利用について、本人同意を取らずに取得・提供できる経路が増えます。

病歴などのAI利用を16分02秒の動画で確認する

個人情報保護法改正とAIによる要配慮個人情報の利用を解説する動画

動画時間:16分02秒

病歴・犯罪歴・人種・信条などの要配慮個人情報について、同意が不要になる場面と、個人情報保護委員会の資料に書かれた条件を画面で確認します。動画は衆議院通過時点の内容で、成立後の更新点は記事本文で補っています。

YouTubeで16分02秒の解説を見る

動画公開後、法案は成立・公布された

元動画を公開した5月26日は、改正案が衆議院本会議で可決された日でした。

その後の経過は次のとおりです。

日付動き
2026年4月7日政府が法案を国会に提出
5月21日衆議院の特別委員会で可決
5月26日衆議院本会議で可決
7月8日参議院の特別委員会で可決
7月10日参議院本会議で可決・成立
7月17日令和8年法律第56号として公布

個人情報保護委員会の発表によると、改正法は一部を除き、公布日から2年以内の政令で定める日に施行されます。

7月22日時点で、具体的な施行日や、統計作成等の範囲・公表事項の細部は今後の検討事項でした。個人情報保護委員会は、政令、委員会規則、ガイドラインを検討すると説明しています。

病歴は「要配慮個人情報」として扱われている

現行の個人情報保護法では、病歴のほか、人種、信条、社会的身分、犯罪歴、犯罪被害の事実などを「要配慮個人情報」としています。

要配慮個人情報は、差別や偏見などにつながるおそれがあるため、慎重な取扱いが求められます。取得や第三者提供には、原則として本人同意が必要です。

一般の個人データで使われる「オプトアウト方式」は、本人の求めに応じて第三者提供を停止する仕組みです。要配慮個人情報をこの方式で提供することは認められていません。

個人情報保護委員会の資料に示されたオプトアウト等の条件は、動画の該当チャプターから確認できます。3分36秒から見る

現行法でも、本人、国・自治体、報道機関など、法令や委員会規則に定める者が公開した要配慮個人情報は、同意なく取得できる例外があります。

今回の改正では、こうした従来の制度に、統計作成等だけへの利用を条件とする特例が加わります。

本人同意が不要になる二つの場面

1. 事業者が持つ個人データを、統計作成等を行う第三者へ提供する場合

企業や団体が保有する個人データを、統計作成等だけに使う第三者へ提供する場面です。

現行法では、個人データの第三者提供には原則として本人同意が必要です。この原則は、提供が当初の利用目的の範囲内かどうかにかかわらず適用され、法令に基づく場合などの例外は別に定められています。

施行後は、統計作成等だけに使うことが担保されるなどの条件を満たせば、この特例により本人同意なしで提供できます。

提供元と提供先は、氏名・名称、作成する統計情報等の内容などを公表します。統計作成等だけを目的とする提供であることも、双方が書面で合意します。

提供先には、目的外利用や第三者提供を原則として禁じる規律が置かれます。

提供される段階では、個人を識別できるデータも対象になり得ます。事業者は、提供中の安全管理、利用目的の限定、再提供の制限を守る必要があります。

2. 既存の例外に当てはまらない、公開中の要配慮個人情報を取得する場合

二つ目は、ウェブサイトやSNSなどで現に公開されている要配慮個人情報を取得する場面です。

本人や報道機関などが公開した情報は、現行法の例外に該当する場合があります。それ以外の者が公開した病歴などを取得するには、公開されているかに加え、同意が必要かを確認します。

施行後の特例では、統計作成等だけに使い、取得する事業者名や作成内容などを公表することが条件です。従来の例外に当てはまらない公開中の要配慮個人情報も、同意なく取得できるようになります。

委員会の資料は、ウェブサイトからデータを集める「ウェブスクレイピング」も想定しています。

闘病経験を同じ患者の参考にしてほしいと公開する人と、その情報をAI開発用データとして集める事業者では、想定する利用目的が異なる場合があります。投稿者は、公開した情報がどの目的にも再利用されてよいと考えているとは限りません。

事業者が法定条件を満たしても、本人が利用に納得するかは別です。このずれは、改正後も残る大きな論点です。

対象となるAI開発は、個人との対応関係を排除する統計作成等

個人情報保護委員会の資料は、特定の個人との対応関係が排除された統計情報等の作成を想定し、そこに「統計作成等であると整理できるAI開発等」を含めています。

この特例では、統計作成等という利用目的を守る必要があります。病歴や信条から特定個人を評価し、その人への広告、採用、融資、保険契約の判断に直接使う利用は、この目的を外れます。

公開中の要配慮個人情報を特例で取得した事業者は、提供目的の公表や書面合意などの条件を満たせば、統計作成等を行う第三者へ提供できます。

この特例で提供を受けた側は、同じ特例を使って再提供できません。取得者・提供先には目的外利用と第三者提供を原則として禁じる規律があり、法令に基づく場合などの例外は別に定められています。

AIの学習過程で、どの処理をすれば特定個人との対応関係を排除できるかは、技術面でも検討が必要です。

衆議院の附帯決議は、他の情報との照合による個人の再識別を防ぐ措置、安全管理、委託先の監督を政府に求めています。法律本文とは別に、国会が運用上のリスクについて示した要求です。

本人が利用を把握できるか|公表だけで情報が届くか

元動画の「AIに個人情報が筒抜け」という表現は、法制度をそのまま説明する言葉としては強すぎます。

改正法には、次の歯止めがあります。

  • 統計作成等だけに利用する
  • 事業者名や作成内容などを公表する
  • 第三者提供では、提供元と提供先が書面で合意する
  • 目的外利用と再提供を原則として禁止し、法律で定めた例外を設ける
  • 特定個人との対応関係を排除する
  • 安全管理や委託先の監督を求める

本人同意を不要とする特例では、本人が提供の可否を一件ずつ判断する機会がなくなります。公表情報を本人が探す必要があるため、自分のデータ利用に気づけるかが問題になります。

個人情報が無条件でAIに筒抜けになるわけではない。しかし、一定のAI開発を含む統計作成等では、本人同意なしで病歴などを取得・提供できる範囲が広がる。

違反への罰則・課徴金と、本人の保護も強化する

改正法は、違反への制裁と、一部の本人の権利も強化します。

課徴金は、権利利益侵害を伴う重大な違反など、法律で定める条件に該当し、財産上の利益を得た場合を対象とする仕組みです。あらゆる違法な取扱いに一律に課す制度とは区別します。

個人情報データベースの不正提供などの法定刑も引き上げられ、詐欺などによる個人情報の不正取得には新たな罰則が設けられます。

顔認証に使う顔特徴データなどの「特定生体個人情報」は、違法な取扱いがなくても本人が利用停止等を請求できる範囲が広がります。

16歳未満の子どもの個人情報には、法定代理人への通知や同意取得などの規定も整備されます。

課徴金は、違反が起きた後の制裁です。事故を防ぐには、事業者の安全管理と監督を別に検証する必要があります。

AI開発の範囲・公表方法・監督の基準をどう決めるか

施行までの委員会規則とガイドラインで、制度の具体的な使い方が決まります。

特に、次の5点を確認する必要があります。

  1. どのAI開発が「統計作成等」に含まれるのか
  2. 病歴などを提供・取得する事業者が、何をどこで公表するのか
  3. 本人が自分の情報利用を見つけ、問い合わせる方法が用意されるのか
  4. 元データから個人を再識別できないようにする技術・管理基準は何か
  5. 委託先や国外事業者を含む監督を、誰がどこまで行うのか

本人が利用状況を容易に確認できるか、違反を監視できるかは、具体的なルールに左右されます。

公開範囲を決め、事業者の案内と相談先を確認する

7月22日時点では、改正法の主要部分は施行前で、同意なしのAI利用を一括拒否する全国共通の画面も確認できませんでした。

情報を公開する人やサービスを使う人は、次の三つを確認できます。

  • 病歴などを公開する際、現行法の下でも一定の場合は同意なく取得され得ることを理解した上で公開範囲を決める
  • 利用するサービス、病院、保険会社などのプライバシーポリシーや第三者提供の案内を確認する
  • 不審な取得・提供が疑われる場合は、事業者の個人情報窓口や個人情報保護委員会の相談窓口に確認する

病気の経験を発信し、患者同士が情報を共有することには大きな意味があります。本人の想定と違う利用が行われたときに、その事実を知り、問い合わせ、是正を求められる仕組みが必要です。

施行までに、本人へ利用情報が届く仕組みを求める

  • 元動画公開時は衆議院通過段階だったが、改正法は2026年7月10日に成立し、7月17日に公布された
  • 統計作成等だけに利用する場合、個人データの第三者提供と、既存の例外に当てはまらない公開中の要配慮個人情報の取得で本人同意を不要にできる経路が設けられる
  • 統計作成等には、一定のAI開発も含まれる
  • 全カルテが無条件でAIへ渡る制度ではなく、公表、書面合意、目的外利用・再提供の制限などの条件がある
  • 原則施行は公布から2年以内。具体的な対象範囲や公表方法は今後の規則・ガイドラインで決まる

元動画の衆議院通過時点から、法律は成立・公布へ進みました。今後は、施行までに作られる規則と、その運用を検証する段階です。

政経プラスは、AI開発を進める際も、本人が誰にどの情報を何のために使われるかを容易に確認できる仕組みが必要だと考えます。公表ページを置くだけで情報が届くのか、漏えい防止の基準が実効性を持つかを追い続けます。

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