斎藤県政5年間の財政管理を検証する――用先債490億円問題を「前知事の責任」で終わらせてよいのか

兵庫県の「用先債」490億円問題をめぐり 斎藤元彦知事は前知事時代の処理を検証する部会を設けました 前知事の判断と責任を検証すること自体は必要です

しかし 問うべきなのは過去の誰かに責任を押しつけて終わることではありません 斎藤知事が就任して約5年が過ぎた現在 県の財政状況を誰がどのように把握し どの時点で県民に説明し どのような対策を選んできたのかも同じ基準で検証されなければなりません

まず公式資料から確認する

兵庫県の2026年7月15日知事記者会見記録では 用地取得のために発行した地方債490億円のうち 338億円について 土地売却収入を返済に回さず借り換えた処理が地方財政法に抵触するおそれがあると説明されています 県の財政課は 6月23日以降の取材を契機に疑義を認識し 7月6日までに総務省から見解を受け 同日中に知事へ報告したと説明しました

同じ会見では 用先債の修正によって実質公債費比率が0.8ポイント悪化したとの説明も出ています ただし 県の資料を読むと 用先債の影響がなくなる令和13年度以降も 長期金利を3%と置いた場合の実質公債費比率は25.0% 令和14年度は25.2%とされています ここから分かるのは 用先債の検証が重要である一方 財政悪化の全体を用先債だけで説明することはできないということです

兵庫県が公表した令和8年度当初予算案の説明では 令和7年度決算の実質公債費比率は21.7% 3か年平均は19%となり 起債許可団体へ移行する見込みとされています また 金利上昇の影響などにより 令和10年度までの収支不足額は従前の160億円から530億円へ拡大する見込みと説明されています

用先債だけに還元できない

兵庫県の財政には 阪神・淡路大震災関連の県債残高や金利上昇 高水準の投資事業など複数の要因があります したがって 実質公債費比率の上昇をすべて斎藤知事個人の判断だけに帰すことはできません

それでも 現職の知事には 在任期間中の情報把握と内部統制 事業の優先順位付け 県民への説明という別の責任があります 斎藤知事自身も記者会見で 実質公債費比率の低減に向けた計画策定と歳入歳出改革は自分自身の責務だと述べています その言葉を採るなら 前知事の時代だけを検証対象にするのでは不十分です

斎藤知事に問うべき5つの論点

  1. 総務省の指摘や用先債の問題を 県のどの部署がいつ把握し 知事にどのような経路で報告したのか
  2. 2021年の知事就任以降 財政課や幹部会議で 県債の借り換えと償還の状況をどのように点検していたのか
  3. 前知事時代について外部検証を行うなら 斎藤県政の約5年間の把握と対応も独立した形で検証するのか
  4. 実質公債費比率の試算で 金利や県債の償還条件をどのように設定し どの程度の幅を県民に示してきたのか
  5. 25%超のリスクを避けるための歳入歳出改革について 削減対象 効果 見通し 実施時期をいつ公表するのか

「前知事の責任」で終わらせない

前知事時代の処理に問題があるなら 事実関係と法的評価を検証する必要があります しかし その検証を盾にして 現職の知事が自分の在任期間における管理責任から逃れることはできません

「2026年7月に初めて知った」という説明だけでは 県民が知りたい経緯は分かりません いつ誰が知り どの資料を見て どんな判断をし 県民への説明がなぜその時期になったのか 時系列と文書を示す必要があります

問われているのは 前知事を呼ぶかどうかだけではありません 斎藤知事自身が約5年間の財政管理をどこまで検証対象に含めるのかです 前知事を追及するなら まず自分の5年間を説明する その最低限の原則を曖昧にしてはなりません

関連資料

※本稿は兵庫県が公表した資料と記者会見記録をもとにした論点整理と分析です 個別の法的責任や違法性については 今後の検証や審査の結果を確認する必要があります

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