福岡県の2026年度一般会計当初予算は、過去最大の2兆3,000億円です。「過去最大」と聞くと県が自由に使えるお金が大幅に増えたように見えますが、予算の約半分は人件費、社会保障費、公債費などの義務的経費です。
県税収は増えています。その反面、県債の発行額も前年度から増加しました。県民が見るべきなのは総額の大きさだけではありません。収入の内訳、固定的な支出、重点事業、議会が何を審査したかを分けて確認する必要があります。
結論――2兆3,000億円すべてが新規政策に使えるわけではない
2026年度の一般会計当初予算は2兆3,000億2,702万8,000円。前年度当初予算より1,122億4,432万円、率にして5.1%増えました。
歳出のうち、人件費18.7%、社会保障費18.2%、公債費11.3%を合わせると48.2%です。県職員や教職員、警察官の人件費、医療・介護などの社会保障、過去の借金返済は簡単に削れません。過去最大予算でも、新たな政策に回せる範囲は総額より小さくなります。
出典:福岡県「令和8年度(2026年度)予算」/令和8年度当初予算の編成概要
福岡県の2026年度予算はいくら増えたのか
| 項目 | 2026年度 | 2025年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 一般会計当初予算 | 2兆3,000億円 | 2兆1,878億円 | 約1,122億円増 |
| 前年度比 | 105.1% | ― | 5.1%増 |
県は2025年度12月補正、2025年度2月補正、2026年度当初予算を合わせ、「16カ月予算」として切れ目なく事業を実施すると説明しています。年度をまたぐ複数の予算を一体で示す手法なので、2兆3,000億円に補正予算を単純加算して「単年度の当初予算」と表現しない注意が必要です。
歳入――県税8,308億円、県債1,687億円
| 主な収入 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 県税 | 8,308億円 | 36.1% |
| 地方消費税清算金 | 2,986億円 | 13.0% |
| 地方交付税 | 3,143億円 | 13.7% |
| 国庫支出金 | 2,172億円 | 9.4% |
| 県債 | 1,687億円 | 7.3% |
| 諸収入 | 2,370億円 | 10.3% |
県税は前年度から約319億円増えました。地方消費税清算金も約285億円増えています。自主財源の割合は63.2%で、県税など県が比較的自主的に確保できる収入が全体の6割を超えます。
注目すべきは県債です。2026年度の県債発行額は1,687億2,450万円で、前年度より147億6,190万円、9.6%増えました。県債は道路や施設など将来世代も利用する事業の費用を世代間で分担する役割があります。ただし、発行した県債は将来の公債費として返済しなければなりません。
歳出――社会保障と人件費で約8,484億円
| 主な使い道 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 人件費 | 4,291億円 | 18.7% |
| 社会保障費 | 4,193億円 | 18.2% |
| 公債費 | 2,600億円 | 11.3% |
| 公共事業費 | 2,224億円 | 9.7% |
| 災害復旧費 | 103億円 | 0.4% |
| 行政施策費 | 4,296億円 | 18.7% |
| 市町村交付金など | 5,030億円 | 21.9% |
行政施策費4,296億円が、子育て、産業振興、教育、防災などの政策を動かす主要な部分です。ただし、施策ごとに国庫支出金や基金、県債など財源が異なります。「事業費が大きい」ことと「県の一般財源負担が大きい」ことは同じではありません。
県の公表資料では、県民1人当たりの歳出額は45万4,211円、県税負担額は16万4,067円とされています。これは予算総額を人口で割った比較指標であり、県民一人ひとりに同額が給付される意味ではありません。
服部県政が掲げた4つの柱
服部誠太郎・福岡県知事は2026年度予算を「チャレンジと安心!豊かな未来へ『翔』け上がる福岡県」と位置づけ、次の4本柱を示しました。
- 人を育て、すべての人の活躍を応援する
- 産業を育て、県経済を強くする
- 人を惹きつける元気なまちをつくる
- 健全な環境と、安全・安心なくらしを守る
具体例として、県立学校の体育館や食堂などへの空調整備、農業の構造転換、先端モビリティ関連産業への支援、防災・減災などが挙げられています。知事の説明は2026年2月13日の定例記者会見で確認できます。
ワンヘルス予算は「区分」を見直した
服部知事は記者会見で、これまでのワンヘルス関連予算には、建物の老朽化対策など本来の目的が別にある事業まで含まれ、区分が曖昧だったとの認識を示しました。2026年度は、人の命と健康を守る事業と、ワンヘルスの理解促進事業を関連予算として整理したと説明しています。
区分の見直しは必要です。ただ、見せ方を変えるだけでは政策評価になりません。旧区分から外した事業、新たに含めた事業、事業ごとの予算と成果を対応表で公開する必要があります。ワンヘルスセンターの整備費と県債はこちらの記事で整理しています。
県議会は予算をどう審査したのか
2026年2月定例会では予算特別委員会が設置され、一般会計を含む当初予算議案が審査されました。議会広報によると、ワンヘルス、議会の海外活動、人口減少対策などが主な論点になりました。
一般会計予算は2026年3月24日に原案どおり可決されました。可決された事実だけでなく、各会派・議員がどの事業を質問し、執行条件や数値目標をどこまで詰めたかが重要です。
出典:福岡県議会「令和8年2月定例会の採決結果」/予算特別委員会の審査概要
今後確認すべき5つの数字
- 県税収の実績――当初見込みの8,308億円に届くか。
- 県債残高――新規発行だけでなく年度末残高がどう変わるか。
- 不用額と繰越額――予算を確保しても実行できなかった事業は何か。
- 行政施策の成果――参加人数ではなく、雇用・所得・利用率など結果を確認する。
- 補正予算――年度途中に何が追加・減額され、当初計画がどう変わったか。
政経プラスの見方
過去最大の予算は、行政の仕事が過去最大の成果を上げたことを意味しません。物価高、人件費、社会保障費の増加で、同じサービスを維持するだけでも必要額は膨らみます。
服部県政を評価する基準は、予算規模ではなく、県民生活の改善を数字で示せたかです。大型事業を始めた時点ではなく、決算と政策評価が公表された時点まで追う必要があります。
よくある質問
2兆3,000億円は福岡県のすべての会計を合わせた金額ですか
いいえ、一般会計の当初予算額です。国民健康保険などの特別会計、公営企業会計は別に編成されています。
県債はすべて悪い借金ですか
道路や公共施設など長期間利用する資産では、将来世代と負担を分ける機能があります。問題は、返済能力、事業効果、残高の管理です。
成立後の予算はどこで確認できますか
福岡県の予算ページ、県議会の採決結果、年度後半の補正予算、翌年度以降の決算資料で追えます。


