兵庫県への公文書公開請求に対し、秘書課職員の職・氏名などを非公開とした「公文書部分公開決定通知書」が注目を集めました。
私が2026年5月20日に公開した動画では、この通知書を「職員の悲鳴」という切り口で取り上げています。動画に映っている通知書は令和8年5月11日付です。
ただし、通知書に書かれた非公開理由と、そこから導く評価は分けて考える必要があります。今回の記事では、兵庫県の情報公開制度と審議会答申を確認し、通知書から何が読み取れ、何までは断定できないのかを整理します。
結論|非公開理由は個人情報だけではない
動画に映る通知書で、兵庫県が秘書課職員の職・氏名を非公開とした理由は、大きく二つあります。
- 県政をめぐる状況のなかで、秘書課業務に従事した職員の氏名は「通常他人に知られたくない」と認められる個人情報に当たる
- 氏名の公開によって職員の心理的負担が増し、職員を業務に従事させにくくなれば、秘書課業務の円滑な遂行を害するおそれがある
通知書は、前者の根拠として情報公開条例6条1号、後者の根拠として同条6号を挙げています。
つまり、県は単に「個人名だから隠した」と説明したのではありません。公開が職員の負担や業務遂行に影響する可能性まで、非公開理由に含めています。ここが今回の通知書で最も重要な点です。
問題になった公文書部分公開決定通知
動画に映る通知書によると、公開請求の対象には、秘書課で撮影された写真データの保存・共有に使うフォルダ、ファイルサーバー、クラウドストレージ、バックアップシステムなどに関する公文書が含まれていました。
そのうち、公開しない部分として示されたのは次の情報です。
- 秘書課職員の職・氏名
- サーバー名
- 係・グループ名
- 共有フォルダのパスのうち、班・担当名以外の部分
ここでは、職員を識別できる情報と、県庁の情報システムに関する情報が、別の理由で非公開にされています。
なお、今回確認できた原資料は元動画に映る通知書です。兵庫県公式サイトで同じ通知書の全文公開は確認できなかったため、本記事では映像で判読できる範囲と、県が公表している制度資料を基に検証しています。
情報公開条例6条1号と6号の違い
兵庫県は、公文書を原則公開としつつ、例外的に公開できない情報を定めています。県の公式案内では、6条1号に対応する個人情報を「個人のプライバシーを侵害するおそれのある情報」、6条6号に対応する事務事業執行情報を「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのあるもの」と説明しています。
この二つは守ろうとする対象が異なります。
- 6条1号は、個人の権利利益やプライバシーを守るための規定
- 6条6号は、行政事務の適正な遂行を守るための規定
今回の通知書は、職員本人の利益だけでなく、秘書課の業務を続けられる状態も保護の対象にしたことになります。
兵庫県の過去の審議会答申にも、職員に関する情報が公開されれば制度の利用や事務の遂行に支障が出るとして、1号と6号の両面から検討した例があります。一方で、6号の「支障」は抽象的な可能性だけでは足りません。別の答申では、支障は実質的なものであり、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要だと整理されています。
したがって、「負担があり得る」と書くだけで、すべての非公開判断が自動的に正当化されるわけではありません。どの業務に、どのような支障が生じるのかを具体的に説明できるかが重要です。
職員名は常に非公開になるのか
公務員の氏名だから常に公開、公務員個人の情報だから常に非公開、という単純なルールではありません。
公開の可否は、文書の内容、職員の役割、氏名が明らかになることで分かる事実、公開による公益、本人の権利利益、業務への具体的な支障などを踏まえて判断されます。
今回の通知書が特徴的なのは、単に職員名一般を非公開にしたのではなく、「文書問題をはじめとした県政の状況」と秘書課業務の特殊性を理由に挙げた点です。この書き方は、現在の県政をめぐる環境が公開判断に影響したことを、県自身が認めていると読めます。
一方で、通知書だけでは次の点は分かりません。
- 同種の請求でも同じ基準が使われているのか
- 秘書課以外の職員名にはどのような基準を適用しているのか
- 役職や決裁権限のある職員まで同じ扱いになるのか
- 職員の心理的負担をどのような事実から認定したのか
この部分は、今後の請求や審査請求で検証されるべき論点です。
サーバー名やフォルダパスを隠す理由
サーバー名、グループ名、共有フォルダの詳細なパスについては、職員のプライバシーとは別の問題です。
動画に映る通知書は、これらを公にすると不正アクセスや情報漏えいの危険が生じ、情報セキュリティーの確保に支障を及ぼすおそれがあるとして、6条6号を根拠にしています。
この判断には一定の合理性があります。内部システムの名称や構成、保存先を特定できる情報は、攻撃者にとって手掛かりになり得るからです。
ただし、システム情報を隠すことと、そのシステムが適切に管理されているかを説明しないことは別です。アクセス権限の設定方法、操作記録の保存、持ち出し防止策、事故時の調査手順などは、具体的なサーバー名を伏せたままでも説明できます。
通知書から「県庁崩壊」まで断定できるか
元動画では、この通知書を兵庫県庁の深刻な内部状況を示すものとして論じました。今回、改めて資料を確認すると、より慎重な表現が必要です。
通知書から確認できるのは、県が職員名の公開による心理的負担と、秘書課業務への支障を非公開理由として正式に記載したことです。少なくとも、職員への影響を県が無視できないと判断したことは読み取れます。
しかし、通知書1枚だけで、職員全体が疲弊している、秘書課が機能不全に陥っている、県庁が崩壊しているとまでは証明できません。個々の職員の心理状態や組織全体の状況を判断するには、職員調査、人員配置、休職・退職の推移、時間外勤務、内部の安全配慮など、別の資料が必要です。
事実として言える範囲と、私の評価を分けるなら、次のようになります。
- 事実:県は職員名の公開が心理的負担を増し、業務遂行を害するおそれがあると通知書に記載した
- 評価:この表現は県庁内の緊張の強さをうかがわせる
- 未確認:実際にどの職員がどの程度の負担を受け、業務にどのような支障が生じているか
非公開決定に納得できないとき
兵庫県の公式案内によると、公開・部分公開・非公開の決定に不服がある場合、実施機関に審査請求ができます。原則として、実施機関は情報公開・個人情報保護審議会に諮問し、その答申を受けて裁決します。
県の記載例では、審査請求の期間は、決定があったことを知った日の翌日から3か月以内です。請求人は、非公開部分を特定したうえで、なぜ公開による支障が具体的ではないのか、部分的な公開で対応できないのか、公益上の必要性は何かを示すことになります。
令和7年度、兵庫県全体では公文書公開請求が6,475件あり、このうち2,261件が部分公開、1,865件が非公開でした。部分公開や非公開は珍しい処理ではありませんが、件数が多いから個々の判断が妥当だと決まるわけでもありません。非公開理由は案件ごとに検証する必要があります。
今後確認すべき4点
今回の通知書をめぐっては、次の4点を追う必要があります。
- 秘書課職員の氏名を非公開にする内部基準が文書化されているか
- 同種の公開請求で判断が一貫しているか
- 職や氏名をすべて隠す以外に、役職のみ公開するなどの方法を検討したか
- 審査請求が行われた場合、審議会が心理的負担と業務支障をどこまで具体的に認めるか
職員を守ることと、行政の説明責任を果たすことは、どちらか一方を捨てる関係ではありません。個人を攻撃から守りながら、誰がどの権限で何を決めたのかを検証できる仕組みが必要です。
まとめ
兵庫県が秘書課職員の職・氏名を非公開にした理由は、個人情報の保護だけではありません。氏名公開による心理的負担が増し、職員を業務に従事させにくくなれば、秘書課業務の円滑な遂行を害するおそれがあるという判断も示されています。
この記載は軽視できません。同時に、これだけで県庁全体の崩壊を断定することもできません。
重要なのは、職員をさらすことではなく、非公開の範囲と理由が必要最小限か、県が一貫した基準を示しているかを検証することです。今後、審査請求や追加資料によって、県の説明がどこまで具体化されるのかを追います。
映像と音声での解説はこちら
元動画をYouTubeで見る
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元動画
- 動画タイトル:『【兵庫県庁の悲鳴】CITIZEN兵庫さんが魂の告発!1枚の公文書に隠された、斎藤県政のドロドロすぎる内部崩壊』
- YouTube URL:https://www.youtube.com/watch?v=WpoMELfePiA
- 公開日:2026年5月20日
主な参照資料
- 兵庫県「情報公開制度の概要」
- 兵庫県「公文書の公開の手続(請求から公開の実施まで)」
- 兵庫県「公開決定等に対する審査請求」
- 兵庫県「情報公開制度の運用状況(令和7年度)」
- 兵庫県情報公開・個人情報保護審議会 答申第139号
- 兵庫県情報公開審査会 答申第75号


