斎藤元彦・兵庫県知事は、出張先で職員を叱責した理由を、20m歩いたことではなく、会場へ入るための段取りの不備だったと説明しています。
しかし、第三者調査委員会は、その段取り自体に合理的な理由があり、職員を指導する必要はなかったと判断しました。問われているのは、歩く距離だけではありません。施設のルール、事前の打ち合わせ、事情を聞かずに叱責した経緯です。
政経プラスが2026年10月26日に公開したショート動画の質疑を、2025年6月25日の県公式会見録と、同年3月に公表された調査報告書から確認します。
車を止める場所は事前に決まっていた
問題の出来事は、2023年11月28日、播磨町にある県立考古博物館で起きました。東播磨地域づくり懇話会の開会前のことです。
第三者委の報告書によると、博物館の玄関へ通じる歩行者用通路では、地下にある遺構・埋蔵物を保護するため、車両などの重量物の通行が禁じられていました。通路の入り口には、車が入れないよう車止めが置かれていました。
東播磨県民局は、知事の公用車を職員用駐車場に止め、職員が入口まで歩いて案内する計画を立てました。秘書課もこの計画を確認し、了承していたと報告書は認定しています。
つまり、車止めが残っていたことには施設上の理由があり、担当職員が行き当たりばったりで対応したという認定ではありません。
公用車は計画と違う場所へ進んだ
当日、出迎える職員2人が職員用駐車場を見ると、知事の公用車と同じ車種の車がすでに止まっていました。職員らは知事が到着したと思い、入口で様子を見ることにしました。
ところが、開会の2、3分前に到着した知事の公用車は、職員用駐車場へ向かわず、歩行者用通路の車止めの前で止まりました。
報告書は、知事が車から降り、なぜ車止めを置いたままにしているのかと職員を激しく叱責したと認定しました。職員が車止めを外して通路の端へ寄せると、知事はそれで車が通れると思っているのかと重ねて叱責したとしています。
知事は調査で、おおむね事実を認めたうえで、通行禁止とは知らされておらず、段取りについて注意・指導したもので適切だったと説明しました。委員会は、この説明も検討したうえで評価しています。
知事の説明と第三者委の判断はどこが違うか
2025年6月25日の会見で、知事は厳しく叱責したことは認めつつ、20m歩かされたことではなく、当日の動線の確保など「ロジ」ができていなかったためだと説明しました。ロジとは、移動経路や出迎えなどの段取りを指す行政の言い方です。
一方、第三者委は、そもそも注意・指導が必要だったのかを検討しています。
| 確認する点 | 第三者委報告書の認定・評価 |
|---|---|
| 車止めがあった理由 | 地下の埋蔵物を守るための車両通行禁止に合理的な理由があった |
| 事前の計画 | 職員用駐車場から歩いて案内する計画を秘書課も了承していた |
| 叱責の前の確認 | 知事は車止めの理由や職員の待機場所について事情を聞かなかった |
| 叱責の方法 | 重要な会議の直前に、大声で強い口調で叱責する方法は適切でないと判断した |
委員会は、知事が通行禁止を知らなかったという説明も踏まえています。そのうえで、注意が必要かどうかは事情を聞いて初めて判断できることで、確認せずに叱責を始めた以上、当時の知事の認識によって正当化されるものではないとしました。
「歩いたことが理由ではない」という説明だけでは、職員に不備があったことにはなりません。段取りが不適切だったという前提を、報告書は具体的な経緯から否定しているのです。
本人が「パワハラと思っていない」と話した点も検討している
報告書には、叱責を受けた職員が、自分自身はパワハラとは思っていないと述べたことも記されています。
委員会は、この供述を省いて認定したわけではありません。知事と職員の力関係、強い叱責を受けた職員の精神的な不安、その話が広まり他の職員も萎縮した影響を検討しました。
その結果、考古博物館での叱責は、指導する必要性がなく、方法も適切さを欠き、本人と他の職員の勤務環境を悪化させたとして、パワハラに当たると判断しています。
委員会の判断は、当事者がそう感じたかどうかだけに基づいていません。
会見で残った問い
6月25日の会見で、知事は第三者委のハラスメント認定を真摯に受け止めたいと答えました。一方、叱責は段取りの不備に対する注意だったという説明を続けています。
報告書との食い違いは具体的です。秘書課も了承していた計画の何が不適切だったのか。施設の事情を聞く前に叱責する必要があったのか。会議直前の強い叱責が適切だったという説明を、認定後にどう見直したのか。ここへの回答が必要です。
この記事で扱ったのは、2025年3月の第三者委報告書と同年6月25日の会見です。2026年10月の動画公開日と、発言・出来事の日付は異なります。
「20m」は問題を伝える際に使われてきた表現で、この記事で歩行距離を実測したものではありません。第三者委の調査結果は、裁判所の判決とは異なります。
出典
兵庫県「文書問題に関する第三者調査委員会」調査報告書の公表ページ(2025年3月19日)
調査報告書・第9章〜第12章(本文82〜83ページの事実認定、104〜106ページの評価。PDF内では2〜3ページ、24〜26ページ)
政経プラスのショート動画(2026年10月26日公開)
関連記事
兵庫県百条委員会報告書は何を認定した?告発文書7項目と公益通報対応
首長のパワハラ報告書を比較|横浜・兵庫・鹿角・大野城で違う調査と通報者保護
確認日:2026年10月28日。
原稿作成・出典照合補助:ChatGPT。最終編集・公開判断:カネさん(政経プラスチャンネル運営)。

