一律10万円給付をもう一度|物価高の今、全国民への再給付が必要な理由

この記事の立場

政経プラスは、物価高で生活コストが上がっている現状では、全国民を対象にした現金の再給付が必要だと考えます。低所得世帯や子育て世帯に支援を絞る政策を否定するのではありません。その支援だけでは、基準のわずかに外側にいる人、自治体の案内を待つ人、物価高の負担を日々払っている人を取りこぼすからです。

2020年の「1人10万円」と、今の給付は同じではない

2020年の特別定額給付金は、基準日で住民基本台帳に記録されていた人に、1人10万円を給付する制度だった。所得や子どもの有無で線を引く仕組みではなかった。

その後の給付は、住民税非課税世帯、均等割のみ課税の世帯、子育て世帯などに対象が細分化されてきた。必要な人に厚く配る考え方には理由がある。ただ、家計の負担は「住民税が非課税かどうか」の境目で急に軽くなるわけではない。

たとえば、収入が少し増えて非課税ではなくなった世帯、子どもの年齢や世帯構成が条件から外れる世帯、自治体の申請期限を知らなかった世帯も、食料品、電気・ガス、家賃の負担を同じように受けている。

いま求められるのは、「対象外だった人は我慢する」制度ではない。まず全国民に届く再給付を行い、その上で低所得世帯、子育て世帯、障害や介護を抱える世帯へ追加支援を重ねる形だ。

給付金はどう変わってきたか

時期 主な制度 対象・金額の骨格
2020年 特別定額給付金 住民基本台帳に記録された人へ、1人10万円
2021年 子育て世帯への臨時特別給付 所得要件の下で、子ども1人10万円相当
2021年 住民税非課税世帯等への臨時特別給付 1世帯10万円
2022年 電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金 非課税世帯等へ1世帯5万円
2023〜2024年 物価高騰対応の低所得世帯支援 非課税世帯は3万円と7万円で計10万円。均等割のみ課税・新たに非課税になった世帯への10万円、子ども加算も実施
2024〜2025年 定額減税と調整給付・不足額給付 所得税3万円、住民税1万円の減税を基本に、引ききれない分を給付
2025〜2026年 物価高対応子育て応援手当など 子ども1人2万円。自治体では低所得世帯への現金、給食費、商品券、LPガス・灯油支援などに分かれる

この表が示すのは、全国民向けの現金給付から、条件ごとに分かれた制度へ移ってきたことだ。制度が増えるほど、読者は「自分が対象か」「申請が必要か」「いつまでか」を一つずつ確認しなければならなくなる。

政経プラスが追ってきた論点は、今も終わっていない

政経プラスチャンネルでは、2023年の7万円給付・均等割のみ課税世帯への10万円給付から、2024年の低所得世帯3万円・子ども加算まで、給付金の対象と時期を繰り返し扱ってきた。

そこで見えていた問題は、金額だけではない。今の制度にもそのまま残っている。

誰に届くのか

非課税世帯、均等割のみ課税世帯、低所得世帯、子育て世帯。似た言葉でも対象は一致しない。2023年には、非課税世帯への7万円と、均等割のみ課税世帯への10万円で、対象も給付時期も違った。制度を知らなければ、自分がどこに当てはまるのか分からない。

いつ届くのか

国が方針を示しても、実際に振り込むのは自治体だ。対象者の抽出、確認書の発送、申請の受付を経るため、同じ制度でも地域によって開始時期がずれる。生活費が足りない人にとって、「決まった」と「入金された」の差は大きい。

線引きの外に誰が残るのか

給付のたびに、非課税世帯のすぐ外側、均等割のみ課税のすぐ外側、子どもの年齢要件の外側にいる人が生まれる。政経プラスが繰り返し問うてきたのは、まさにここだ。

支援を絞るほど制度は複雑になり、対象外になった人の負担は見えにくくなる。だから全国民への再給付を土台にしなければならない。

過去動画から確認できる流れ

限定給付だけでは、生活負担の広がりに追いつかない

1. 線引きのすぐ外側にいる人を救えない

非課税世帯への給付は重要だ。しかし、課税されているからといって家計に余裕があるとは限らない。税や社会保険料を払い、住宅費や教育費を負担する現役世帯ほど、制度の境目で支援から外れやすい。

「低所得者だけでよい」という言い方は、物価高の負担を年収の一本線だけで見ようとしている。実際の家計には、世帯人数、地域の家賃、通勤費、介護、医療、子どもの進学費用が重なっている。

2. 自治体任せでは、支援の中身も届く時期もそろわない

国の重点支援地方交付金は、自治体が地域事情に応じて使える仕組みだ。だからこそ、現金、商品券、給食費、LPガス支援など、地域ごとに中身が違う。

工夫できる利点はある一方で、住む場所で受けられる支援が変わる。物価高という全国共通の問題への最初の対応まで、自治体ごとの予算編成や事務作業に委ねるべきではない。

3. 早く届くこと自体が支援になる

対象者を細かく判定するほど、税情報の確認、確認書の発送、申請、審査が必要になる。生活費が足りないとき、数か月後の案内を待てる人ばかりではない。

全国民への定額給付は、もちろん財源の議論を避けられない。それでも、危機時に素早く届く仕組みとしては強い。高所得者にも届く分は、後の税制で調整する議論ができる。最初から支援を狭くし、生活が苦しい人を制度の外に置く理由にはならない。

今、確認できる支援はある

全国民への現金再給付は、記事公開時点で実施が決まっている制度ではない。一方、次の制度や自治体事業は、世帯によって対象になる可能性がある。

  • 物価高対応子育て応援手当:対象児童1人につき2万円、1回限り。原則として児童手当の仕組みを通じて支給される。
  • 低所得世帯向け給付:1世帯3万円、子ども1人2万円とする事業が実施された。基準となる年度、申請期限、対象世帯は自治体の案内で確認が必要。
  • 定額減税の不足額給付:2024年の定額減税で、当初給付額に不足が出た人などが対象になりうる。転職、育児休業、扶養親族の増加などで税額や控除額が変わった人は特に確認したい。
  • 自治体独自の物価高対策:学校給食費、地域商品券、LPガス・灯油、ひとり親世帯への追加支援など。現金だけを探すと見落とす。

自治体サイトで見るべき言葉

自治体名を入れて、次の言葉で検索すると探しやすい。

  • `自治体名 物価高騰 給付金`
  • `自治体名 重点支援地方交付金`
  • `自治体名 3万円 給付金`
  • `自治体名 不足額給付`
  • `自治体名 子育て応援手当`

案内が届いても、口座変更、世帯状況の変更、申請が必要な区分では手続きが止まることがある。支給対象や期限は必ず自治体の公式ページで確認してほしい。

一律給付は「ばらまき」ではなく、生活を守る土台だ

全国民への再給付に反対する理由として、「本当に困っている人に絞るべきだ」という意見がある。困っている人へ厚く支援することには賛成する。

だが、絞ることと、全国民に何もしないことは同じではない。いま必要なのは、全国民への再給付を土台にして、生活が厳しい世帯には追加で厚く支える二段構えだ。

2020年に一律10万円を給付できた事実は、制度として不可能ではないことを示している。物価高で生活コストが上がり、対象者を選ぶ制度が増え続ける今こそ、もう一度、誰にでも届く支援へ戻るべきだ。

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