兵庫県の下水道管路調査|緊急度Iの意味と自治体の対応

兵庫県政

結論からいうと、「緊急度Ⅰ」は道路が今すぐ崩れるという発表ではありませんが、原則1年以内に速やかな対策が必要と判定された下水道管路です。「緊急度Ⅱ」も問題なしではなく、応急措置をしたうえで5年以内に対策する区分です。

兵庫県が管理する流域下水道では、調査対象41kmを優先実施箇所16kmと、それ以外の25kmに分けて調べました。県は両方の発表で「直ちに管路が破損する恐れのある箇所はなかった」と説明しています。ただし、緊急度Ⅰ・Ⅱと判定された区間の補修や更新は必要です。この記事では、国土交通省と兵庫県が公表した資料をもとに、調査対象、判定の意味、県と市町の役割、公表後に確認したい情報を整理します。内容は2026年8月11日時点です。

全国特別重点調査は八潮市の道路陥没を受けて始まった

きっかけは、2025年1月28日に埼玉県八潮市で起きた、下水道管路の破損を伴う道路陥没事故です。国土交通省は同年3月、地方公共団体に「下水道管路の全国特別重点調査」を要請しました。

対象は、原則として管径2m以上で、設置または改築から30年以上が経過した大口径管路です。そのうち、八潮市の事故現場と似た構造・地盤条件、腐食しやすい箇所、緊急輸送道路下で陥没履歴がある箇所などを「優先実施箇所」としました。

したがって、この調査は全国のすべての下水道管を一斉に点検したものではありません。対象外の細い管路や比較的新しい管路まで「安全が確認された」と受け取るのは誤りです。

全国では5,332kmが対象、748kmで対策が必要

国土交通省の2026年4月21日の公表によると、対象は535団体、計5,332kmです。2026年2月末までに5,121kmで潜行目視やテレビカメラによる目視調査を行い、4,692kmで緊急度の判定が完了しました。

  • 緊急度Ⅰの要対策延長:201km
  • 緊急度Ⅱの要対策延長:547km
  • 緊急度Ⅰ・Ⅱの合計:748km
  • 確認された地盤中の空洞:96か所

判定済み延長の約16%が要対策です。国は、確認された空洞96か所は公表時点ですべて対策済みとしています。一方、緊急度の判定未了や調査困難の区間も残っており、「96か所を処置したから全国調査が終了した」という意味ではありません。

緊急度Ⅰは原則1年以内、緊急度Ⅱは5年以内

国の調査結果資料は、対応期限を次のように示しています。

  • 緊急度Ⅰ:原則1年以内に速やかな対策を実施
  • 緊急度Ⅱ:応急措置を実施したうえで5年以内に対策を実施

緊急度Ⅱは「5年間、そのままでよい」という区分ではありません。応急措置と経過確認をしながら、更新や補修につなげることが前提です。反対に、緊急度Ⅰだからといって、すべての区間が直ちに陥没する、直ちに通行止めになるという意味でもありません。管路の状態、道路下の空洞、周辺地盤などを確認し、管理者が工法と安全措置を決めます。

目視調査と空洞調査は同じものではない

管路内の目視調査は、人が入る方法やテレビカメラ、ドローンなどで、腐食、破損、たるみなどを確認します。路面下の空洞調査は、路面からの探査や簡易な貫入試験などを使います。

全国値では目視調査が5,121km、空洞調査が1,326kmです。延長が違うのは、同じ調査を全区間に一律で行ったわけではないためです。発表を見るときは、「管の内部に異状があった区間」と「地盤中に空洞が確認された場所」を混同しないことが大切です。

兵庫県管理分は41kmを二段階で調査

兵庫県が管理する流域下水道の対象延長は41kmです。県は、優先実施箇所16kmを2025年8月までに調べ、残る25kmを2026年2月までに調べました。いずれも管路内をテレビカメラで調査しています。

「流域下水道」は、複数の市町にまたがる広域的な下水道です。兵庫県は猪名川、武庫川、加古川、揖保川の4流域6処理区で流域下水道事業を行っています。市町が管理する公共下水道とは管理主体が異なります。

優先実施箇所16kmの内訳はⅠが1km、Ⅱが11km

兵庫県の2025年9月17日の発表によると、優先実施箇所16kmの内訳は次のとおりでした。

  • 緊急度Ⅰ:1km
  • 緊急度Ⅱ:11km
  • 対策不要:4km

県は「直ちに管路が破損する恐れのある箇所はなかった」としたうえで、緊急度Ⅰから速やかに必要な措置を講じると説明しました。この「直ちに破損する恐れはない」と「補修が必要」は両立します。前者だけを切り取って、対策が不要だったと読むことはできません。

残る25kmも調査完了、ただし詳しい位置は公表資料で分からない

兵庫県は2026年4月21日、優先実施箇所以外の25kmについても調査結果を公表しました。この発表でも、直ちに管路が破損する恐れのある箇所はなかったとしています。緊急度Ⅰと判定された箇所から、補修などの措置を速やかに行う方針です。

一方、公開された県資料は集計中心で、緊急度Ⅰ・Ⅱの具体的な路線、マンホール区間、地上の住所、個別工事の開始日を一覧では示していません。安全上の配慮が必要な情報はありますが、住民が進捗を追うには、少なくとも処理区ごとの要対策延長、措置の種類、完了時期を追加公表する余地があります。

市町管理分は県管理分と分けて確認する

県内の下水道をすべて兵庫県が管理しているわけではありません。県は流域下水道を管理し、市町はそれぞれの公共下水道を管理します。道路管理者も国、県、市町、高速道路会社などに分かれるため、下水道の管理者と道路の管理者が一致しない場合があります。

斎藤知事は2026年4月22日の記者会見で、神戸市を除く市町管理分について緊急度Ⅰが約19.3kmあると説明し、県と市町で連携して対応する考えを示しました。これは知事会見での説明です。市町ごとの正確な区間、工事予定、通行規制は、それぞれの自治体が出す資料で確認する必要があります。

「緊急度Ⅰがある自治体」と「陥没が迫る場所」は同じではない

国の資料には、緊急度Ⅰの管路を持つ地方公共団体が掲載されています。しかし、自治体名が載っていることだけで、その市内の道路全体が危険だとは言えません。また、対象外の管路で事故が起きないことを保証する資料でもありません。

必要なのは、不安を広げる自治体名の列挙ではなく、管理者がどの区間をどう監視し、いつ補修・更新したかという進捗です。集計値、個別区間、安全措置を分けて読む必要があります。

対策費と財源は今後の検証項目

国土交通省は、未了区間の調査・判定と、要対策箇所の更新を速やかに行うよう自治体へ要請し、技術面と財政面で支援する方針です。斎藤知事も会見で、国の財源を積極的に活用したいと述べています。

ただし、今回確認した公表資料だけでは、兵庫県管理分の補修・更新に必要な総額、年度別の県負担、国費の割合、下水道使用料への影響は分かりません。財源を評価するときは、調査費と工事費を分け、当初予算・補正予算・国の交付金を対応させて見る必要があります。予算資料の読み方は「兵庫県財政を検証するための見方」で整理しています。

住民が確認したい4つの進捗

  1. 緊急度Ⅰのうち、応急措置・補修・更新が完了した延長
  2. 未完了区間の工事予定と通行規制
  3. 緊急度Ⅱで行った応急措置と、5年以内の更新計画
  4. 工事費、国費、県・市町負担の内訳

県や市町の公表だけで分からない場合は、工事契約、設計書、進捗管理資料などが情報公開請求の対象になる可能性があります。請求の基本は「情報公開請求とは?」で解説しています。

道路の穴や陥没を見つけたときは#9910

道路の穴ぼこ、路肩の崩壊、陥没などの異状を見つけた場合、国土交通省の道路緊急ダイヤル「#9910」が24時間、無料で受け付けています。通報時は、道路名、進行方向、周辺施設など、場所を特定できる情報が役立ちます。運転中に操作せず、安全な場所から連絡してください。

事故や人命に関わる緊急事態は110番です。#9910への通報は、必ず補修が行われることを保証する制度ではありませんが、道路管理者が異状を把握する入口になります。

政経プラスの評価:公表は「判定」から「完了」へ進めるべき

全国共通の基準で大口径管路を調べ、緊急度Ⅰ・Ⅱを分けたことには意味があります。兵庫県が「直ちに破損する恐れはない」と説明したことも、不必要な不安を抑える情報です。

ただし、行政評価は調査結果を発表した時点で終わりません。緊急度Ⅰの1年、緊急度Ⅱの5年という期限に対して、どこまで応急措置・補修・更新が進んだかを毎年追える形にする必要があります。場所を詳細に出せない場合でも、管理主体別・処理区別の延長、工事件数、完了率、費用は公表できます。

「調査済み」を「安全確認済み」と言い換えず、「要対策」を「直ちに陥没」とも言い換えない。その中間にある補修計画と進捗こそ、住民と議会が確認すべき情報です。

まとめ

全国特別重点調査で、緊急度Ⅰは原則1年以内、緊急度Ⅱは応急措置後5年以内に対策する区分です。全国では判定済み4,692kmのうち748kmが要対策でした。

兵庫県管理分は計41kmです。先行調査した16kmでは緊急度Ⅰが1km、Ⅱが11km、対策不要が4kmでした。残る25kmも調査済みで、県はいずれも直ちに破損する恐れのある箇所はなかったと説明しています。しかし、要対策区間の補修・更新はこれからも追う必要があります。

次の確認点は、管理主体別の工事予定、完了率、費用と財源です。道路の異状を見つけた場合は、危険な場所に近づかず、#9910または緊急時は110番へ連絡してください。

主な確認先

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