結論から言えば、「震災0.5兆円」は国に0.5兆円を支払ってほしいという要望ではありません。兵庫県が阪神・淡路大震災後に県債管理基金を累計4,921億円活用し、その積立不足が現在の財政指標を押し上げている事情を、国に考慮してほしいという要望です。
国への提案は、借金の帳消しや4,921億円の一括補填を求める内容ではありません。公債費負担適正化計画の策定と今後の地方債発行の許可で、震災由来の負担をどう扱うかが争点です。
県は2026年8月27日、公債費負担適正化計画を策定し、斎藤元彦知事が総務省へ提出しました。2025年度決算の実質公債費比率は単年度21.8%、3か年平均19.2%です。国の配慮を待つ段階ではなく、県自身が投資抑制と基金の積み戻しを進める段階に入っています。兵庫県「公債費負担適正化計画の概要」
資料を追って感じたのは、0.5兆円という大きな数字より、「何を求め、何が未決定なのか」が見えにくいことです。
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先に数字を整理|0.5兆円と現在の残高は別
| 項目 | 県が示した数字 | 意味 |
|---|---|---|
| 震災関連県債の発行累計 | 1.3兆円 | 阪神・淡路大震災の復旧・復興事業などで発行 |
| 県債管理基金の活用累計 | 4,921億円 | 記事タイトルの「約0.5兆円」。国への要望額ではない |
| 基金の積立不足 | 概ね4,000億円 | 県の2026年8月計画案に記載 |
| 2024年度末の震災関連県債残高 | 1,478億円 | 4,921億円とは別の数字 |
| 2024年度の震災関連公債費 | 357億円 | 同年度に生じた返済負担 |
| 2026年度の震災関連県債残高見込み | 853億円 | 最新計画案の見通し |
| 2026年度の震災関連公債費見込み | 295億円 | 最新計画案の見通し |
| 2025年度の実質公債費比率 | 単年度21.8%、3か年平均19.2% | 監査委員の審査前の決算値 |
4,921億円は、過去に基金から活用した累計額です。現在残っている震災関連県債の額でも、国に新たに求めている金額でもありません。
「0.5兆円の配慮」で国に何を求めているのか
兵庫県の2027年度国予算への重点提案は、阪神・淡路大震災からの復旧・復興で「他府県にない財政負担」が生じたと説明しています。
県が国に求めたのは、次の3点です。
- 公債費負担適正化計画を扱う際に、震災由来の財政負担を考慮する
- 今後の起債許可で、兵庫県の特殊事情を考慮する
- 財政健全化と、防災・庁舎整備・高校の環境改善などの投資を両立できるよう配慮する
提案資料は、県債管理基金の積立不足に対する支援や、実質公債費比率へ反映する指標のあり方にも言及しています。
ただし、国に求める制度変更の形、支援額、実施時期までは決まっていません。2026年8月24日時点で、県の公開資料に国が具体的な措置を決定したとの記載はありません。
つまり、これは国への請求書ではなく、起債許可と財政指標の扱いをめぐる政策要望です。
斎藤知事は会見でどう説明したか
斎藤元彦知事は2026年7月15日の会見で、阪神・淡路大震災では、とくに復興事業を借金で実施してきたと説明しました。東日本大震災以降の国費措置との違いを自身の宮城県勤務時代の経験から語り、国に何らかの措置や勘案を求め続ける考えを示しています。
これは知事の会見での説明です。国の支援制度を時代ごとに比較した第三者検証の結論ではありません。
同じ会見で知事は、国の支援が来るかどうかにかかわらず、県の自助努力で実質公債費比率を25%、さらに18%未満へ下げる計画を作る必要があるとも述べました。
国への要望と県自身の改革は、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。
最新計画案で分かった兵庫県財政の位置
18%、25%、35%で何が変わるか
実質公債費比率は、自治体の標準的な収入に対し、借金返済がどれほど重いかを見る指標です。
- 18%以上: 地方債の発行に総務大臣の許可が必要。公債費負担適正化計画を策定する
- 25%以上: 早期健全化基準。議会の議決を伴う財政健全化計画が必要になる
- 35%以上: 財政再生基準
兵庫県の2025年度決算は、単年度21.8%、3か年平均19.2%です。3か年平均が18%を超え、起債許可団体へ移りました。決算値は監査委員による審査前で、今後変わる可能性があります。
自然体の試算では2031年度に25.1%
2026年8月18日の計画案は、現行の投資規模を続ける「自然体」の試算で、3か年平均の実質公債費比率が2031年度と2032年度に25.1%になると見込んでいます。早期健全化基準を超えるおそれがある数字です。
県債管理基金の積立不足に基づく加算額は、2026年度以降、比率を5.2~7.6ポイント程度押し上げると試算されています。
これは金利や成長率などの前提を置いた試算で、確定した将来値ではありません。だからこそ、前提と対策を同じ資料で追う必要があります。
県自身が挙げた悪化要因は4つ
最新計画案は、実質公債費比率が18%以上となった主な要因を次の4つに整理しています。
- 阪神・淡路大震災の復旧・復興に伴う県債返済と基金の積立不足
- 過去の高い投資水準に伴う元金・利子の負担
- 長期金利上昇による利子負担の増加
- 臨時財政対策債の償還差、つまり交付税措置額の超過分の縮小
震災は大きな要因です。しかし、県自身の計画も「震災だけが原因」とは説明していません。
地域整備事業と分収造林事業の債務処理で、2023年度から2031年度までに県債管理基金が累計1,214億円を一時的に立て替える点も、基金の積立不足に影響します。
338億円の不適切な借り換えは別の問題
斎藤知事は7月15日の会見で、用先債338億円の処理を修正したことで、実質公債費比率が0.8ポイント悪化したと説明しました。
この問題は阪神・淡路大震災の負担とは別です。県が総務省から地方財政法に抵触するおそれを指摘された借り換え処理であり、震災由来の基金不足と混ぜると、現在の財政悪化の原因が見えなくなります。
詳しくは「兵庫県の県債338億円問題とは|不適切な借り換えと財政への影響」で整理しています。
県の計画案は何をするのか
計画期間は2026年度から2035年度までの10年間です。第一段階では、2027年度から投資規模を現行より最低10%抑制し、県債管理基金の運用益を確保します。金利の動向によっては、特定目的基金から県債管理基金への積み替えも検討します。
2027年度に歳入・歳出全般の改革と基金の積み戻し方策を検討し、2028年度以降の第二段階で、実質公債費比率18%未満を目指す計画を改めて作る方針です。
2057年度に18%未満へ戻すには、現行から約25%の投資削減が必要だと県は試算しています。既存インフラの維持に支障が出かねないため、県は実施困難と判断しました。
ここが計画案の弱点です。県は基金の積み戻しが必要だと認めながら、「現時点で実施が担保できない」と記しています。第一段階は25%超えを回避する計画であり、18%未満へ戻る財源まで固まった完成形ではありません。
「国の配慮」があっても変わらないこと
国が何らかの配慮を決めても、次の点は変わりません。
- 4,921億円がそのまま県へ支払われると決まったわけではない
- 震災関連県債が自動的に帳消しになるわけではない
- 2026年度の震災関連県債残高見込みは853億円で、0.5兆円ではない
- 県は公債費負担適正化計画を実行し、起債許可を受ける必要がある
- 近年の投資判断や不適切な借り換えまで震災の責任にはできない
国の措置が具体化すれば、その効果を比率、基金残高、毎年度の公債費で検証する必要があります。現段階では、効果額を断定できません。
政経プラスの評価
国への要望は妥当です。阪神・淡路大震災の復旧・復興で兵庫県が負った特殊な財政負担を、現在の起債許可でどこまで考慮するかは、国が正面から検討すべき論点です。
しかし、「震災0.5兆円」という数字が、現在の財政悪化をすべて説明する免責材料になってはいけません。県の最新計画案は、震災、過去の投資水準、金利上昇、臨時財政対策債の償還差を別々の要因として挙げています。用先債338億円の修正も別件です。
斎藤県政には、自身の任期中の投資判断と過去からの負担を分けて示す責任があります。最低10%の投資抑制で、どの事業をいつ見直し、県民サービスに何が起きるのか。基金をいくら、どの財源から積み戻すのか。国の措置がない場合と、具体的な措置が決まった場合の二つの試算を公開すべきです。
国への要望は合理的です。県民への説明は、まだ完成していません。これが資料を確認したうえでの政経プラスの判断です。
よくある質問
「0.5兆円」は現在の震災関連県債残高ですか
違います。0.5兆円は県債管理基金の過去の活用累計です。震災関連県債の残高は2024年度末で1,478億円、2026年度見込みで853億円です。
国は兵庫県への支援を決めましたか
2026年8月24日時点で、県の公開資料に具体的な支援内容や金額が決まったとの記載はありません。県が国へ提案している段階です。
兵庫県は財政破綻したのですか
財政再生団体になったわけではありません。3か年平均の実質公債費比率が18%を超え、地方債発行に国の許可が必要な起債許可団体へ移りました。自然体の試算では25%超えの懸念があるため、計画案を作っています。
投資10%抑制で何が削られますか
計画案は投資規模を最低10%抑える方針を示しましたが、個別事業の見直し内容は固まっていません。2027年度の歳入・歳出改革で具体化される見通しです。
出典・確認先
- 兵庫県|2027年度国の予算編成等に対する提案
- 兵庫県|国への提案・重点版
- 兵庫県|2025年度決算の概要
- 兵庫県|公債費負担適正化計画(2026年8月27日提出)
- 兵庫県|知事記者会見(2026年7月15日)
関連: 兵庫県の県債338億円問題とは|不適切な借り換えと財政への影響
上位親記事: 兵庫県財政は「危機」なのか|338億円県債・金利上昇・基金問題を整理
記事種別:個別論点・国への財政要望/確認日:2026年8月24日。決算値、県の試算、知事発言、政経プラスの評価を区別して記載しています。AIは資料整理と構成補助に使用しました。


