兵庫県は、特殊詐欺の被害を抑えるため、固定電話に取り付ける外付け自動録音装置を無償で配付しています。令和8年度は14,000台を配付する事業です。
この制度は、電話を使った特殊詐欺への入口を減らす政策として意味があります。一方で、機器を配った台数だけでは、被害を減らせたか、必要な世帯に届いたかは分かりません。制度の狙いと、政策として検証すべき点を整理します。
なぜ固定電話への対策なのか
兵庫県の公式説明では、特殊詐欺の約5割が固定電話へのアプローチから始まっています。電話着信時に警告アナウンスを流し、通話内容を録音する装置は、犯人に録音を知らせて電話を切らせる抑止効果を狙ったものです。
これは、被害が起きた後に補償する制度ではありません。電話の段階で接触を減らす、予防型の安全対策です。高齢者世帯など、固定電話を主な連絡手段として使う人に届けば、機器の配付には一定の意味があります。
7,000台から14,000台へ――拡大をどう見るか
兵庫県は過去にも外付け録音装置を配付し、令和8年度は配付規模を7,000台程度から14,000台へ拡大しました。県の説明では、過去の利用者調査で、約8割が不審な電話が減ったと回答したことなどが拡大の背景にあります。
ただし、これは利用者へのアンケート回答です。「不審な電話が減った」という実感は重要ですが、県全体の被害件数や被害額が装置によってどれだけ変わったかを直接示す数字ではありません。効果を語るときは、利用者の評価と犯罪統計を分けて扱う必要があります。
配付台数だけでは政策効果を測れない
予算を使った安全対策として検証するなら、少なくとも次の数字を公表すべきです。
- 配付した台数だけでなく、実際に設置された台数
- 設置後に継続して使われている割合
- 迷惑電話や特殊詐欺の相談件数の変化
- 装置を使った世帯と、使っていない世帯の被害状況の違い
- 固定電話を使わない世帯や、スマートフォン中心の詐欺への波及
「何台配ったか」は事業量の指標です。「被害をどれだけ減らしたか」「必要な人に届いたか」は成果の指標です。両者を混同しない公表が求められます。
固定電話対策だけでは足りない
外付け録音装置が対応するのは、基本的に固定電話への着信です。スマートフォンの投資詐欺、SNS型詐欺、メールやメッセージを使う詐欺まで防ぐものではありません。
特殊詐欺の手口が電話から別の通信手段へ移れば、固定電話対策だけでは取り残される人が出ます。県は、録音装置の利用状況だけでなく、詐欺の入口がどの通信手段へ移ったのかも確認する必要があります。
高齢者世帯への支援として確認したいこと
機器を配付する政策では、対象条件を設けるだけでなく、申請や設置の負担を誰が支えるかが重要です。機器が届いても、電話回線との適合、取り付け、家族への説明が分からなければ、実際の利用につながりません。
また、県の事業と市町独自の電話機補助が重なる場合、住民から見てどの制度を使えるのかが分かりにくくなります。県と市町が対象条件や窓口を分かりやすく示し、同じ世帯が制度の違いを何度も調べなくて済む案内が必要です。
対象者・申請・設置条件はkyuhu.jpへ
対象世帯、対象外になり得る条件、配付内容、申請期限、必要書類、申請方法、電話機の設置条件、申請先・問い合わせ先は、給付金プラスの兵庫県外付け録音装置案内にまとめています。
政経プラスでは制度の背景と効果検証を扱い、申請に必要な実務情報はkyuhu.jpで確認できるようにしています。
政経プラスの評価
既存事業の利用結果を踏まえて配付台数を拡大することは、検証と改善を伴う政策として評価できます。固定電話を入口にした詐欺が続く以上、予防機器を導入する選択肢を広げることも必要です。
一方で、台数の拡大を「被害防止の実績」と同じ意味で扱うことはできません。設置率、利用継続、被害額、通信手段別の被害状況を公表し、次の予算や対象の見直しにつなげることが、政策としての十分性を判断する条件になります。
出典・確認資料
記事種別:特殊詐欺対策の政策評価/確認日:2026年8月4日。制度の対象者・期限・申請手順はkyuhu.jpの実務記事に分けています。


