福岡県の婚活事業5231万円|契約手続きは適正、県は口頭指導

地方自治・議会

福岡県の婚活支援事業「ふくこい」をめぐり、受託者と同じ企業グループの結婚相談所から、相談者へ名刺、パンフレット、無料相談チケットが渡されていました。

2025年度の委託金額は5,231万8,200円です。

福岡県監査委員は、契約に関する財務会計上の手続きに違法・不当な点はないとして、住民監査請求を棄却しました。個人を特定できる情報の流出も認めていません。

しかし、監査結果は問題なしの一言では終わっていません。

資料の提供について、契約で禁じられた営業活動につながると疑われるおそれを否定できないと指摘しています。福岡県も受託者を口頭指導し、再発防止を求めていました。

契約解除が必要な重大な違反ではない。だからといって、公費で運営される相談窓口と同じ企業グループの有料サービスとの境界が曖昧でよいわけではありません。

「ふくこい」は福岡県が委託する婚活支援事業

「ふくこい」は、福岡県の「出会い・結婚応援事業」の通称です。未婚化・晩婚化への対策として、独身者へ出会いの機会を提供し、結婚を希望する人を支援する目的があります。

福岡県が2025年4月1日に株式会社アソウ・ヒューマニーセンターと締結した委託契約は、5,231万8,200円でした。

同社は2023年度事業の企画提案公募で選ばれました。福岡県は、事業内容や仕様に大きな変更がなかったことなどから、2024年度と2025年度も同社と特命随意契約を締結しています。

特命随意契約とは、競争入札によらず、特定の事業者と契約する方法です。県の公表資料には、同社が事業のノウハウを持ち、効果的・効率的な実施と目標達成を見込めることが理由として記載されています。

この契約自体について、監査委員は福岡県財務規則などに沿って適正に行われ、違法・不当な点は確認されなかったと判断しました。

相談者へ名刺・パンフレット・無料相談券を提供

住民監査請求で焦点になったのは、県の委託事業と、受託者と同じ企業グループの結婚相談所との接点です。

監査結果によると、相談者が「ふくこい」の個別相談を利用した際、受託者の職員が株式会社マリッジエージェントの職員に、パンフレットの受領を希望する人がいると伝えました。その後、マリッジエージェントの職員から相談者へ、名刺、パンフレット、無料相談チケットが渡されています。

資料が渡された経緯について、両者の説明は食い違っています。

監査請求人は、結婚相談所の職員から無料相談への勧誘を受けたと主張しました。受託者側は、相談者から紹介してほしいと繰り返し求められ、その要望に応じて資料を渡しただけであり、積極的な営業ではないと説明しています。

監査で確認されたのは、資料が実際に渡されたことです。勧誘の有無や、どちらから紹介を求めたのかについては、客観的な事実として確定されていません。

また、受託者が把握していた名字、電話番号、年齢情報は結婚相談所側へ伝えられておらず、個人を特定できる情報の流出は認められませんでした。同様の連絡がほかの相談者について行われていた事実も確認されていません。

福岡県は2回指導、監査も「疑われるおそれ」を指摘

福岡県は、名刺などの提供を不適切な行為と判断し、2025年2月3日に電話で、2月7日には対面で受託者の事務局長を指導しました。受託者側も2月4日、職員へ再発防止を周知しています。

委託業務仕様書には、県の委託事業と自社事業を明確に区分し、委託業務で得た個人情報などを自社事業の営業活動に利用しないことが定められていました。

監査委員は、資料提供に至る経緯について主張の食い違いを認めています。そのうえで、受託者の職員が相談者の希望を結婚相談所側へ伝え、名刺やパンフレットなどが渡された行為は、秘密保持の違反や禁止された営業活動につながると疑われるおそれがある行為だったことを否定できないとしました。

監査請求を棄却したという結論だけを読めば、この一文を落としてしまいます。

監査委員は、契約を見直すほど重大な違反ではなく、契約を継続した知事の判断も不当ではないと結論づけました。つまり、「契約解除に値する違法・不当な公金支出ではない」という判断と、「疑念を招く行為はあり、県が指導した」という事実が同時に示されています。

2026年度も同じ事業者、予算規模は4826万3000円

福岡県は2026年度、改めて企画提案公募を実施し、株式会社アソウ・ヒューマニーセンターを受託候補者に選定しました。

公募時に示された予算規模は4,826万3,000円です。県は、この金額は規模を示すもので、契約金額ではないと明記しています。2026年度の事業実施要綱にも、福岡県が同社へ委託して事業を行うことが記載されています。

委託の継続それ自体を、2025年度の監査結果だけで不適切とは言えません。

県が説明すべきなのは、指導をした事実だけではなく、その後どのように公的な相談と同じ企業グループの民間サービスを切り分けたのかです。相談者に誤解を与えない案内方法、資料提供のルール、職員への周知内容を示してこそ、再発防止を確認できます。

婚活支援には個人の交際や生活設計に関わる情報が集まります。相談者が県の事業だから安心して話した内容が、民間サービスの営業に使われるのではないか。その疑念を生まない運用は、契約の適法性とは別に県が引き受ける説明責任です。

よくある質問

福岡県の「ふくこい」とは何ですか

「ふくこい」は、福岡県が実施する「出会い・結婚応援事業」の通称です。独身者へ出会いの機会を提供し、結婚を希望する人を支援することなどを目的としています。

5,231万8,200円は何の金額ですか

福岡県が株式会社アソウ・ヒューマニーセンターと締結した、2025年度「出会い・結婚応援事業」の委託契約額です。2026年度の公募では予算規模4,826万3,000円が示されていますが、県は契約金額ではないと明記しています。

住民監査請求で違法と判断されたのですか

違法とは判断されていません。監査委員は、契約に関する財務会計上の手続きに違法・不当な点はなく、契約を見直すほど重大な違反にも当たらないとして請求を棄却しました。

問題がないのに、なぜ福岡県は口頭指導したのですか

同じ企業グループの結婚相談所から名刺、パンフレット、無料相談チケットが渡された行為が、委託事業と自社事業の区分を求める仕様書に抵触するおそれがあり、契約の趣旨に照らして不適切だと県が判断したためです。

まとめ

  • 2025年度「出会い・結婚応援事業」の委託契約額は5,231万8,200円
  • 相談者へ同じ企業グループの結婚相談所の名刺、パンフレット、無料相談チケットが渡された
  • 勧誘の有無や資料提供に至る経緯については、請求人と受託者側の説明が食い違っている
  • 監査委員は契約手続きに違法・不当な点はないとして、住民監査請求を棄却した
  • 福岡県は資料提供を不適切と判断して2回指導し、監査も営業活動を疑われるおそれを否定できないと指摘した
  • 2026年度も同社が受託候補者に選定され、事業実施要綱に委託先として記載された

公金を使った相談事業では、「契約を解除するほどではなかった」で説明を終わらせるべきではありません。

福岡県は、公的な婚活支援と同じ企業グループの民間サービスをどう切り分け、相談者の信頼を守るのか。指導後の具体的な運用を示すべきです。

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参考資料

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