「違法ではない」で終わるのか|福岡県議会・海外視察の住民監査

地方自治・議会

福岡県議会の海外視察をめぐる住民監査請求について、福岡県監査委員は2026年3月24日、違法または不当な財務会計上の行為には当たらないとして請求を棄却しました。

これだけを読めば、「海外視察には何の問題もなかった」と受け取る人がいるかもしれません。

しかし、監査結果はそんな単純な内容ではありません。

監査委員は、3件の委託契約で適切な予定価格が設定されていなかったと認定しました。予算額を大きく下回る予定価格で随意契約を結び、その後に増額変更する手法について、透明性、公平性、競争性の面で問題があり、契約方法の是正が必要だと明記しています。

つまり、支出そのものは違法と認定されなかった。しかし、契約手続には直すべき問題があった。これが監査結果の正確な読み方です。

海外視察費23件、総額2億6,496万2,000円の一覧と内訳は、前の記事で整理しています。

福岡県議会の海外視察費は3年で2億6500万円|23件を検証

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住民は海外視察の何を問題にしたのか

住民監査請求とは、自治体による違法・不当な公金支出などがあると考えた住民が、監査委員に調査と是正を求める制度です。

今回の請求人は、2024年1月から2025年8月までに実施された海外視察15件について、公費負担額が合計約1億4,489万円に達すると指摘しました。

主な論点は、短期間に高額な視察費が支出されたこと、同じ議員が繰り返し参加している可能性、ビジネスクラスや高額な宿泊費、随意契約後の増額変更、参加者の選定理由、視察成果の報告などです。

請求人は、参加議員や宿泊先、業者選定、変更契約の理由、成果報告を検証し、必要な是正措置を講じるよう求めました。

疑問を投げかけること自体は当然です。公金を使う以上、誰が、何の目的で参加し、いくら使い、福岡県に何を持ち帰ったのかは、県民が確認できなければなりません。

15件すべてが監査されたわけではない

今回の結果で見落としてはいけないのが、請求対象とされた15件すべてについて、支出の妥当性が全面的に審査されたわけではないことです。

地方自治法上、住民監査請求は原則として対象となる財務会計行為から1年以内に行う必要があります。

監査委員は、15件のうち最初の8件について、請求時点ですべての公金支出から1年以上が経過していたと判断しました。9件目から11件目も、一部の費目が期間を超えていたため、その部分は監査対象外となりました。

監査委員が具体的に必要性や支出を確認した海外派遣は、ニューサウスウェールズ州、エジプト・カイロ、バンコク、ハワイ、ハノイ、韓国・慶尚南道、中国の7件です。

したがって、今回の棄却を「15件すべてについて問題がないと確認された」と説明するのは正確ではありません。期間内の支出について違法性・不当性が認められなかった部分と、期間制限によって審査されなかった部分を分けて読む必要があります。

監査が違法・不当と認めなかった理由

監査委員は、対象となった7件について、派遣目的と参加議員の選定は県議会会議規則に基づいて決定され、福岡県が進める国際交流やワンヘルス政策などの目的に沿っていると判断しました。

ビジネスクラスの利用についても、国家公務員等の旅費制度を準用し、知事部局との協議によって認められているとして、延べ26人への支給額は適切だったとしています。

宿泊費は、現地価格などから基準額を超える場合に人事課との事前協議を行っていました。7件中6件では議長または副議長だけが他の議員より高いグレードの部屋を利用していましたが、監査は要人との面会やセキュリティ確保の必要性を認めています。

随意契約についても、同様の業務実績を持つ業者から見積もりを取り、最低価格を提示した業者と契約していたため、手法自体は違法ではないと判断しました。変更契約についても、追加された業務と金額に不自然な点はなく、積算内容と変更額は妥当だったとしています。

この判断を踏まえ、監査委員は、対象となった公金支出には明らかに違法または不当といえるものはなく、請求人の主張には理由がないとして請求を棄却しました。

それでも監査が認めた3件の契約問題

請求を棄却した後、監査委員は「付言」として、県議会が改善すべき点を具体的に挙げています。

最も重いのが予定価格の設定です。

海外派遣の委託契約のうち3件では、過去の実績や見積もりを踏まえた予算上の積算があったにもかかわらず、予算額を大きく下回る予定価格を設定して随意契約を結び、その後に増額変更していました。

監査委員は、この予定価格の立て方について、契約の透明性、公平性、競争性を確保する上で問題があり、県民に不信感を抱かせかねない手法だと指摘しました。

さらに、変更契約の際に、見積金額の積算内容が残されていなかったことも確認されています。直ちに法令違反とはいえなくても、県民に金額の妥当性を説明するためには、数量や単価の内訳を記録として残すべきです。

監査委員は、随意契約で見積もりを取る業者を2社に絞るのではなく、必要な能力を持つできるだけ多くの業者から見積もりを取る努力も求めました。

請求は棄却された。それでも契約方法の是正が必要だと書かれた。この二つは矛盾しません。

支出を返還させるほどの違法・不当性は認定できなくても、公金の契約手続として不自然で、説明責任を果たせない部分は改善対象になります。

「違法ではない」と「問題がない」は同じではない

私は、監査で違法な支出が確認されなかったという結論は、そのまま受け止めるべきだと考えます。根拠もなく犯罪や不正を断定することはできません。

しかし、県議会がこの結果を「監査で問題なし」とだけ説明するなら、それは監査結果の半分しか伝えていません。

監査委員は、不自然な予定価格の設定が県民の不信感につながるとまで指摘しています。県議会自身も、今後は過去の実績や予算上の積算を基に詳細な仕様と予定価格を定め、原則5者以上を指名する競争入札へ変更すると説明しました。

契約方法を変えるのは、従来の手続を改める必要があると判断したからです。

問われているのは、違法か適法かだけではありません。なぜ当初から契約総額に近い予定価格を設定しなかったのか。なぜ変更額の詳しい積算を残さなかったのか。海外活動で何が福岡県に返ってきたのか。

監査請求の棄却は、これらの質問を消す免罪符にはなりません。

県議会は「違法ではなかった」で終わらせず、監査が求めた是正を実行し、契約と成果を県民が検証できる形で公開すべきです。

よくある質問

福岡県議会の海外視察は違法と認定されたのですか

いいえ。監査対象となった公金支出について、監査委員は違法または不当な財務会計上の行為には当たらないとして、住民監査請求を棄却しました。

海外視察15件すべてが問題なしと判断されたのですか

いいえ。最初の8件は、請求時点で公金支出から1年以上が経過していたため監査対象外となりました。9件目から11件目も一部の費目が対象外です。具体的な必要性や支出が確認された海外派遣は主に7件です。

福岡県議会はなぜ競争入札へ変更するのですか

監査委員が、適切な予定価格が設定されていなかった事例や、契約の透明性・競争性に関する問題を指摘したためです。県議会は今後、詳細な仕様と予定価格を定め、原則5者以上を指名する指名競争入札を行うとしています。

まとめ

  • 海外視察をめぐる住民監査請求は棄却された
  • 請求対象15件のすべてが全面的に監査されたわけではない
  • 監査対象となった7件では、派遣目的や旅費、変更金額の違法・不当性は認められなかった
  • 3件では適切な予定価格が設定されておらず、契約方法の是正が求められた
  • 県議会は原則5者以上による指名競争入札へ変更する方針を示した

「違法ではない」と「問題がない」は同じではありません。

監査結果を正確に読むなら、棄却という結論だけでなく、県議会に突きつけられた改善要求まで県民に伝える必要があります。

参考資料

福岡県議会や公金の使われ方を、一次資料と会見記録から検証しています。続きは政経プラスチャンネルでご覧ください。

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