ひょうごフィールドパビリオンに成果はあった?|斎藤知事肝いり事業を検証

兵庫県政

結論から言えば、ひょうごフィールドパビリオンには成果がありました。体験者841人への調査では満足度96%、知識や教養が深まった人は93%です。地域の活動を掘り起こし、事業者同士の連携を生んだ点も評価できます。

ただし、兵庫県が示した「観光消費額700億円」を、この事業が新たに生んだ経済効果とは読めません。来訪者が増えたと答えたプログラムは34%、横ばいは50%。商用面で効果があったとの回答は24%でした。

斎藤元彦知事の肝いり事業を、成功か失敗かの二択で片付けると実態を見失います。成果が確認できた部分と、県の説明だけでは証明できない部分を分けて見ます。

資料を一つずつ並べると、評価は白黒ではありませんでした。

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先に結論|体験の質は高いが、幅広い誘客は未達

兵庫県が2026年2月に公表した検証報告書から、主な数字を抜き出します。

指標実績読み方
認定プログラム数検証時270件、2026年8月時点281件地域資源の発掘は進んだ
体験プログラムの満足度96%(841人)「非常に満足」76%、「やや満足」20%
知識・教養が深まった93%(841人)実際に参加した人の評価は高い
来訪者が前年同期より増えた34%横ばい50%、減少16%
参加してよかった事業者82%事業者側の総合評価は高い
取組に自信が持てた事業者67%目標80%に届かず、県評価はC
地域活性化に貢献できた事業者79%目標80%にわずかに届かず、県評価はB
商用面で効果があった事業者24%収益化は限定的
観光消費額約700億円(推計)フィールドパビリオンが生んだ純増額ではない

満足度だけを見れば、体験プログラムの質は高いと評価できます。参加した人に地域の産業、文化、自然を深く知ってもらう仕組みは機能しました。

誘客と収益を見ると、評価は下がります。来訪者が増えたのは約3分の1。県の報告書自身が「まだ幅広い誘客に結びついていない」「旅行会社等における商品化がまだ限定的」「収益化できるほどのコンテンツにはなり得ていない」と課題を認めています。

確認できた成果は三つある

1. 参加者の満足度は高かった

体験者841人のうち、76%が「非常に満足」、20%が「やや満足」と答えました。知識や教養が「非常に深まった」は66%、「やや深まった」は27%です。

この数字は軽く扱えません。地域の営みそのものを体験に変え、参加者へ届ける企画には実績がありました。

ただし、841人は実際に体験へたどり着いた人の評価です。広告を見た人のうち何人が予約し、現地を訪れ、再訪したかまでは示していません。満足度96%と誘客の広がりは別の指標です。

2. 埋もれていた地域活動を可視化した

県は想定していた50~100件を上回る270プログラムを認定しました。約4割は、それまで観光プログラムを実施していなかった事業者です。

報告書には、企業研修の依頼が増えた例、農業研修生の独立・定住につながった例、万博会場への出展を契機に社員の意欲が高まった例が載っています。すべてのプログラムに同じ効果があったわけではありませんが、小さな地域資源を事業化する入口になった事例は確認できます。

3. 事業者同士の連携が生まれた

淡路島内のネットワーク、播州織と丹波焼、日本酒などのコラボ、相互誘客や共同出展が進みました。補助金を各事業者へ配る方式ではなく、研修、発信、商談の機会を県が用意した点にも特徴があります。

ここまでは、県の評価に根拠があります。

「観光消費額700億円」は経済効果そのものではない

最も注意が必要なのが700億円です。

県は、2025年度4~9月の観光動態調査から、年間来場者1万人以上の施設のうちフィールドパビリオンに該当する施設を抽出し、次の式で試算しました。

フィールドパビリオン該当施設の入込客数 × 観光消費単価 = 約700億円

この計算には、フィールドパビリオンが始まる前から施設を訪れていた人も含まれます。事業がなかった場合の来訪者数との差を引いていません。県の広報や研修によって増えた消費だけを取り出した数字でもありません。

県が設定した550億円のKPIは、2021年度の該当施設の観光消費額を498億円と試算し、事業の展開で10%増やす考えから置かれました。2025年度の700億円が550億円を上回ったことは事実です。しかし、入込客数と消費単価は物価、宿泊単価、観光需要、万博本体など複数の要因で動きます。

報告書も、2025年4~9月は兵庫県全体の旅行者数が減る中で、宿泊単価の上昇により旅行消費額が増えたと記しています。700億円を「フィールドパビリオンが生んだ新規の経済効果」と言い換えることはできません。

700億円と670億円は別の数字

同じ報告書には、兵庫県の万博関連事業全体の経済波及効果を670億円とする別の推計もあります。こちらは3年間の関連事業予算と観光客の増加数・消費単価を最終需要額に置き、産業連関分析で算出した生産誘発額です。

700億円はフィールドパビリオン該当施設の観光消費額、670億円は万博関連事業全体の経済波及効果です。対象も計算方法も違います。数字の大きさだけを比べてはいけません。

事業費は3年間で6.63億円、万博関連全体は45.61億円

県のアクションプランに記載された予算額は次の通りです。

年度フィールドパビリオンの展開万博関連事業全体
2023年度2.21億円9.46億円
2024年度2.66億円18.57億円
2025年度1.76億円17.58億円
3年間合計6.63億円45.61億円

これはアクションプランに計上された事業費で、最終的な決算額とは限りません。予算の切り分けが難しい事業や再掲分は表に含まれていないとの注記もあります。

2026年度も事業は続きます。県の当初予算案では、フィールドパビリオン推進費に1億5,435万円を計上。プロモーション、専門家派遣、子ども体験ツアー、フェスティバル2026などを実施します。

700億円を6.63億円で割って「費用対効果は100倍以上」と評価することはできません。700億円は事業が生んだ純増分ではないからです。費用対効果を測るには、事業がなかった場合と比べた追加来訪者、追加消費、参加事業者の売上増を出す必要があります。

検証資料には二つの弱点がある

概要版と全体版で調査母数が一致しない

県の概要版は、来訪者の増減や事業者評価の母数を「152」と記載しています。全体版では、同じ図が「157」です。

5件の差が集計条件の違いなのか、作成時点の違いなのか、単純な表記ミスなのか。報告書内に説明は見当たりません。割合が同じでも、政策評価の基礎となる母数はそろえるべきです。

企画に関与した委員会が検証にも関わった

検証に意見を出した企画委員会は、県の万博関連事業の枠組みに助言や提案をしてきた組織です。県のアクションプランにも、企画委員会が各事業の企画立案を行い、万博閉幕後は検証を実施すると記されています。

アンケートやヒアリングを使ったことは評価できます。それでも、事業の企画に関与した組織による検証を、独立した第三者評価と呼ぶのは難しい構造です。

2026年3月18日の会見で、この点を記者に問われた斎藤知事は、企画委員会で議論を重ねた対応は適切だと答えました。独立した外部評価を追加する考えは示していません。

斎藤知事の「2万冊」は来訪実績ではない

2026年7月15日の会見で、斎藤知事は「EXPO LEGACY HYOGOスタンプラリー」のスタンプ帳が約2万冊配布されたと聞いていると述べました。続けて、2万冊が配布されるなら2万人が県内を周遊し、経済活性化につながるとの期待を示しています。

ここで確認できる事実は配布冊数です。2万冊は、利用を始めた2万人でも、県内を周遊した2万人でもありません。

  • 同じ人が複数冊を受け取っていないか
  • 配布後に一度でもスタンプが押された冊数はいくつか
  • 何施設を回った人が何人いたか
  • 全114カ所や五国の条件を達成した人は何人か
  • 周遊による宿泊、飲食、交通の追加消費はいくらか

2026年8月24日に県の公開ページを確認した範囲では、105カ所のフィールドパビリオン、9カ所の万博レガシー施設、16カ所の重ね捺しスタンプの案内はありますが、実利用者数、訪問件数、達成率、消費額は公表されていません。

配布は入口です。成果はその先にあります。

万博後も281件へ拡大|続けるなら年度ごとの検証を

フィールドパビリオンは万博閉幕で終わっていません。県は2026年8月に8件を追加認定し、合計281件としました。8月4日には新しいコーディネート会議を開き、フェスティバル2026、専門アドバイザー派遣、ブランドづくりなどを進めています。

会議では、5年後、10年後のビジョンが必要だとの意見や、自立・自走できているプログラムと、そうでないプログラムを分けて支援すべきだとの意見が出ました。県の全体報告書も、270件は「玉石混交」の状態で、完成度や意欲にばらつきがあると認めています。

認定数を増やすだけでは、県の支援が薄まります。継続するなら、毎年度、地域別・プログラム別の成果を公開し、支援を続ける対象、統合する対象、認定を終える対象を判断する仕組みが必要です。

政経プラスの評価

ひょうごフィールドパビリオンには成果がありました。体験者の満足度、地域活動の発掘、事業者同士のネットワークは、県の資料から確認できます。事業そのものを「成果ゼロ」と切り捨てるのは正確ではありません。

成功と総括できるだけの証拠は、まだそろっていません。幅広い誘客は実現せず、商用面で効果があったとの回答は24%。700億円は事業による追加消費ではなく、該当施設全体の推計です。検証の母数も資料間で一致せず、評価主体の独立性にも弱さがあります。

斎藤知事は7月15日の会見で、万博関連事業の予算額を問われ「手元に資料はない」と答え、その後、スタンプ帳2万冊を2万人の周遊へ結び付けて説明しました。肝いり事業の説明としては足りません。

知事が説明すべきなのは、配った数や認定した数ではなく、6.63億円の予算で何人の追加来訪を生み、地域の売上をいくら増やし、どのプログラムが自走できるようになったかです。2026年度の1億5,435万円についても、年度末に同じ物差しで答える責任があります。

県は、各プログラムの予約者数、実参加者数、前年同月比、売上・雇用、再訪率、県の支援額を公開すべきです。スタンプラリーは配布冊数ではなく、実利用数、訪問施設数、達成数、追加消費額で測る。概要版と全体版の母数の違いも訂正する。次回は企画に関与していない外部者の検証を加えるべきです。

成果はあります。成功を証明する説明は、まだありません。これが一次資料を確認したうえでの政経プラスの判断です。

よくある質問

フィールドパビリオンに成果はなかったのですか

成果はあります。体験者841人の満足度は96%で、知識や教養が深まったとの回答は93%でした。地域活動の発掘や事業者同士の連携も確認できます。幅広い誘客と収益化は限定的です。

700億円はフィールドパビリオンの経済効果ですか

フィールドパビリオン該当施設の入込客数に観光消費単価を掛けた推計です。事業がなかった場合との差を引いた純増額ではないため、この事業が新たに生んだ経済効果とは断定できません。

事業費はいくらですか

県のアクションプランでは、2023~2025年度のフィールドパビリオンの展開に合計6.63億円を計上しています。万博関連事業全体は3年間で45.61億円です。いずれも予算額で、決算額とは限りません。

スタンプ帳2万冊は2万人の来訪を意味しますか

意味しません。配布冊数は利用者数、訪問者数、周遊人数と同じではありません。実利用冊数、押印数、達成数を確認する必要があります。

万博後も事業は続いていますか

続いています。2026年8月時点で認定プログラムは281件です。2026年度当初予算案にも推進費1億5,435万円が計上されています。

出典・確認先

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記事種別:県政・事業検証/確認日:2026年8月24日。予算額、県の推計、知事発言、政経プラスの評価を区別して記載しています。AIは資料整理と構成補助に使用しました。

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