厳しく言います。
問題は、知事が地域を視察したことだけではありません。震度7を観測した熊本地震の発生から2日後、被災地で断水や道路被害が続いている時期に、兵庫県民が確認できる公式日程は「終日・地域視察・但馬地域」の一行だけでした。
その一方で、政経プラスチャンネルが取り上げた動画では、神鍋高原のアクティビティ、マウンテンバイク、観光誘客が明るい雰囲気で紹介されています。
公務だったというなら、目的、行程、成果、経費、災害対応との関係を説明すればいい。ところが、確認できる県の情報はあまりにも薄い。これでは、県民の不安に向き合うより、知事の見栄えのよい場面を先に届けたように見えます。
これは単なる「感じが悪い」という話ではありません。危機管理のトップが、いつ、何を優先し、県民に何を説明するのかという、県政の基本姿勢の問題です。
震度7の2日後に、県民へ示されたのは「地域視察」の一行
2026年7月28日16時27分、熊本県を中心とする地震が発生しました。国土交通省の第7報は、最大震度7、マグニチュード7.1(速報値)としています。
7月30日10時30分現在の同報告では、熊本県など5県24市町村で断水が発生し、約9万5200戸が断水中とされています。道路の通行止めや土砂災害の情報も続いていました。
つまり、7月30日は「もう災害は終わった」という日ではありません。被災地では、生活に直結する被害への対応が続いていた日です。
その日の兵庫県の知事日程に掲載されているのは、次の記載です。
終日 地域視察 但馬地域
これだけです。
神鍋高原のどこへ行ったのか。何時から何時までいたのか。誰と会ったのか。何を確認したのか。災害対応とどう両立させたのか。県民が知りたい情報は、ほとんど書かれていません。
「地域視察」と書けば公務の説明が終わるのでしょうか。危機対応が問われている時期に、これだけの一行で済ませる姿勢そのものが、県民への説明を軽く扱っていると言わざるを得ません。
県の公式説明より先に、外部動画の「爽やかさ」が届く異常さ
政経プラスチャンネルの対象動画では、神鍋高原の動画について、「アクティビティ」「マウンテンバイクの取組視察」「誘客の現状と課題」といった説明を取り上げています。
ここで確認しておきます。この動画が兵庫県の公式チャンネルによるものだと断定しているわけではありません。しかし、知事が登場する明るい観光・地域PRの映像が出回る一方で、県公式の日程には「地域視察」の一行しかない。この情報の逆転が問題なのです。
県民が先に見るのは、災害対応の説明ではなく、爽やかな高原、自転車、観光を連想させる映像です。県がその発信をどう位置づけるのか、なぜこのタイミングだったのかを説明しないなら、県政の広報は県民への説明ではなく、知事のイメージづくりに見えてしまいます。
知事の仕事は、映像の中で楽しそうに見えることではありません。県民に対して、何をしているのか、なぜ今それをするのか、どのような結果が出たのかを説明することです。そこを省いて、見栄えのよい場面だけが流通するなら、行政広報としては本末転倒です。
「観光振興だから公務」で逃げるな
神鍋高原の観光振興や地域誘客が県政の課題になること自体は否定しません。マウンテンバイクの取組を視察することも、目的と成果が明確なら公務になり得ます。
しかし、「観光振興だから公務です」と言うだけでは足りません。公務だというなら、少なくとも次を示すべきです。
- なぜ7月30日に視察したのか
- 神鍋高原のどの課題を確認したのか
- 誰と意見交換したのか
- 視察後にどの施策へつなげるのか
- 移動・会場などに公費はいくらかかったのか
- 熊本地震への兵庫県の対応と、日程上どう両立していたのか
これが示されないまま、映像だけを見せられれば、県民が「公務という名の広報ではないのか」と疑うのは当然です。
視察の正当性を説明する責任は、批判する側ではなく、視察を行った側にあります。説明しないまま「公務だった」とだけ言うのは、権力を持つ側の甘えです。
翌日に災害対策会議を開いたから、7月30日の問題が消えるわけではない
兵庫県の7月31日の日程には、「令和8年熊本地震関西広域連合災害対策支援本部会議」が記載されています。県の説明では、被災地への支援策を議論し、関西広域連合と兵庫県として総力を挙げて対応するとしています。
翌日に会議を開いたことは確認できます。しかし、それで前日の説明不足が帳消しになるわけではありません。
むしろ、翌日に災害対策を語るのであれば、なおさら7月30日の視察について説明すべきです。災害対応と但馬地域の視察をどう組み合わせたのか。被災地支援に必要な判断を遅らせていないのか。県民が確認できるように説明するのが、危機管理を担う知事の責任です。
「翌日は災害対策会議をしたから問題ない」という説明は、論点をずらしています。問われているのは、7月30日の公務の中身と、その発信の仕方です。
「遠足」は公式名称ではない。それでも批判される理由は残る
政経プラスチャンネルでは、この神鍋高原の映像を「遠足」と表現しました。これは動画側の評価であり、兵庫県の公式な公務名ではありません。
ただし、公式名称ではないから批判してはいけない、ということにはなりません。県民から見て、災害発生直後に明るいアクティビティ映像が出され、公式説明が一行しかないなら、「なぜ今それを見せるのか」と感じるのは自然です。
むしろ、県が本当に成果のある視察だったと考えるなら、「遠足」という批判に対して、映像の印象ではなく、行程と成果で反論できるはずです。何を見て、誰と話し、何を決めたのかを出せばいい。
それを出さずに、県民が映像の印象だけで判断する状況を放置している。ここに、説明責任の弱さがあります。
これは「センス」の問題ではなく、危機管理の問題だ
この件を「自転車に乗ったからけしからん」「笑顔だったから不謹慎だ」という話に矮小化してはいけません。
本当に厳しく問うべきなのは、災害発生直後の知事の時間と県政の発信が、県民にどう受け止められるかを考えた形跡が見えないことです。
被災地では断水が続いている。道路被害もある。その時期に、県の公式日程は「地域視察」の一行。そして外部動画では、爽やかな高原と自転車の場面が前面に出る。
この組み合わせを見て、県民が「自分たちの不安より、知事の広報映えが優先されているのではないか」と感じても無理はありません。危機管理のトップがその受け止めを想像できないなら、感覚が鈍いと言われても仕方がないでしょう。
これは、知事個人の趣味の問題ではありません。県政の優先順位を、県民にどう見せたのかという問題です。
県は最低限、これだけ説明すべきだ
現時点で公表資料から確認できない点は、明確です。
- 視察の正確な場所と時間
- 同行者と意見交換の相手
- 視察の目的と成果
- 県の観光施策への反映方法
- 交通費・会場費などの公費
- 熊本地震への支援業務との日程上の関係
- 動画の撮影・公開に県や知事側がどう関与したのか
この説明をしない限り、「地域視察」という言葉は、具体的な公務を説明する言葉ではなく、批判をかわすための便利なラベルに見えます。
まとめ:批判されているのは、視察ではなく「説明しない権力」だ
7月30日に斎藤知事の公式日程に「終日・地域視察・但馬地域」と記載されていたことは確認できます。翌31日に熊本地震の災害対策支援本部会議が行われたことも確認できます。
しかし、神鍋高原で何をしたのか、なぜその時期だったのか、どんな成果があったのか、いくら公費を使ったのか、熊本地震への対応とどう両立していたのかは、確認できる公式情報だけでは分かりません。
「遠足」は動画側の評価であり、公式名称ではありません。それでも、災害発生直後に、県民へ説明されない視察の映像だけが明るく流通したことは、厳しく批判されるべきです。
視察が本当に公務だったなら、知事と兵庫県は、映像の印象ではなく、行程・目的・成果・公費で説明してください。
それをしないまま、県民に「公務だったと理解しろ」と迫るのは、説明責任を果たす行政ではありません。批判されているのは、自転車そのものではない。説明を省き、県民の判断材料を渡さないまま、都合のよい映像だけを残す権力の姿勢です。
被災後に確認したい給付・貸付・減免や罹災証明書の手順は、給付金プラスの「災害時の給付金・支援制度を確認する」で整理しています。
参考資料
- 兵庫県:知事の行動予定(2026年7月30日)
- 兵庫県:知事の行動予定(2026年7月31日)
- 国土交通省:令和8年7月28日からの熊本県における地震について
- 国土交通省:第7報(2026年7月30日10時30分現在)PDF
- 政経プラスチャンネル:斎藤知事・熊本地震の混乱最中に堂々と神鍋高原を遠足し…
※この記事は2026年8月2日時点で確認できる公開資料をもとに作成しています。「遠足」は動画側の評価であり、兵庫県の公式名称ではありません。県が追加資料を公表した場合は更新します。

