大野城市の第三者調査(利害関係のない外部の専門家による調査)は、副市長ら幹部職員の行為をパワハラ(職場での優位性を背景に、業務の範囲を超えて働く環境を害する言動)と認定しました。市長は、組織の責任として給与減額と制度改革の方針を示しました。幹部の個別の責任と、市長が示した対応を説明します。
この記事は、福岡県大野城市のハラスメント事案に関する第三者調査を読み解きます。誰が調べ、何が認定され、処分・辞任・市長の政治責任がどう分かれたのかを、大野城市の公式資料と公表された報告書で確認します。
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大野城市の第三者調査は何を調べたのか
大野城市は2024年10月24日に第三者調査委員を委嘱し、2025年3月31日付で報告書を受領しました。報告書は、副市長ら幹部職員に加え、議員の行為に関する匿名投稿も調査しています。議員の行為は、パワハラに該当するとまでは認めていません。
公表版には、関係者の特定を避けるためのマスキング(個人の特定などを避けるため一部を隠す処理)があります。公式ページは、関係者の特定や誹謗中傷をしないよう注意を呼びかけています。公表資料で確認できない個人名や事実関係を、記事上で推測することはしません。
| 確認項目 | 大野城市で確認できる内容 |
|---|---|
| 調査委員会 | 2024年10月に第三者調査委員会を設置 |
| 報告書 | 2025年3月31日付で受領し、公表版を掲載 |
| 調査対象 | 副市長ら部長級・課長級の幹部職員に加え、議員の行為に関する匿名投稿も調査 |
| 公表後に確認する範囲 | 認定、個別の処分、辞任、市長の対応、制度改革 |
幹部職員のパワハラ認定と、市長が示した組織の責任
大野城市の第三者調査で直接認定されたと公表されたのは、市長本人の言動ではなく、副市長ら幹部の行為です。公表版の認定部分を読むと、副市長による3事案、部長級職員による一連の行為、課長級職員による行為の計5事案と整理できます。市長本人の行為を認定した件数ではありません。市の公式対応ページでも、副市長の一部言動がパワーハラスメントに当たると認定されたことが記載されています。
市長が表明した組織への責任と、パワハラを認定された職員の個別処分は、それぞれの判断です。
副市長の認定と、4月24日に発表された対応
市の公式対応では、副市長について、会議での大声や資料を机に叩きつける行為など、一部言動がパワーハラスメントに当たると認定されたことを副市長自身が認めています。
2025年4月24日の市の発表は、認定対象者ごとの対応を示しています。副市長は結果責任を果たすとして、4月30日付で辞任すると表明しました。既に退職した部長級職員は、地方公務員法上の処分対象外と説明されています。課長級職員は当時調査中で、市の審査規則に基づいて処分の程度を審議する方針でした。
市長は給与20%減額と、相談・調査の制度改革を表明
市長は同じ4月24日の発表で、任期満了まで自身の給与を20%減額する条例を議会に上程(議会の審議にかけること)したいと表明しました。市は、人事部門から独立した「(仮称)コンプライアンス推進室」(法令や規則を守るための体制を担う部署)、相談窓口・対策委員会の強化、全職員研修、ハラスメント防止条例の制定も方針として示しました。ここでは、発表当時の方針を記載しています。
給与減額と制度改革は、市長が組織のトップとして示した政治的・道義的責任への対応です。その後の根絶条例の制定は、以下で説明します。給与減額の実施や制度の運用は、方針の発表とは別に確認する必要があります。
認定・懲戒処分・辞任・給与減額は、それぞれ別の判断
第三者報告書の「パワハラ認定」は、調査委員会が事実と評価を示すものです。それを受けた懲戒処分(職務上の義務違反などに対する行政上の処分)は、地方公務員法や自治体の規則に基づく別の手続きになります。副市長の辞任や市長の給与減額は、政治的・道義的責任の取り方です。刑事責任の有無は、さらに別の問題です。
報告書の認定理由、処分の根拠と結果、公職者の説明、成立した制度を、それぞれの資料で確認する必要があります。
大野城市:2026年3月19日に根絶条例を制定
大野城市が2025年4月24日に示した方針の発表後、大野城市ハラスメント根絶条例が、2026年3月19日付の条例第1号として制定され、公布の日に施行されました。4条は何人に対してもハラスメントを禁じ、6条は相談等を申し出たことを理由とする不利益な取扱いを禁じています。
条例は、市長と市議会議員の責務を8条、市職員の責務を9条に分けています。ただし、この条例本文だけでは、独立した調査委員会や、市長本人が対象の場合の権限の代理といった手順までは確認できません。具体的な窓口・調査の運用、課長級職員の最終処分、市長の給与減額の実施状況は、今回読んだ資料では未確認です。
制度改革で確認すべき点
制度の実効性を判断する資料は、対象者の範囲、相談と調査の経路、証言者を守る規程、処分と再発防止策の公表です。
- 市長や副市長を含む対象範囲が、条例や規程に明記されているか
- 調査対象者の人事権(職員の任用や異動などを決める権限)から距離を置いた相談・調査経路があるか
- 相談者や証言者への不利益取扱い(相談や証言などを理由に不利に扱うこと)を防げるか
- 認定後の処分と、市長の政治責任を分けて公表できるか
- 研修や対策委員会が、再発防止の実務として動いているか
政経プラスの評価――職員が相談・証言できる仕組みを残すべきだ
政経プラスは、職員が異論を言い、安心して相談できる環境を求めます。調査結果を説明する仕組みと、示した制度改革を実際に運用することが必要です。
シリーズで読む
4自治体の調査主体・認定・通報者保護の違いは親記事で比較しています。自治体別・制度別に確認したい場合は、役割ごとの記事をご覧ください。
- 首長のパワハラ報告書を比較|横浜・兵庫・鹿角・大野城で違う調査と通報者保護
- 横浜市長のパワハラ問題、第三者報告書を読む|7事項の認定と制度の弱点
- 横浜市と鹿角市の市長パワハラ報告書を比較|認定件数より「条例と通報窓口」を見る
- 首長のパワハラが認定されても辞職しない?不信任・リコールの仕組み
参考資料・一次資料
- 大野城市ハラスメント事案に関する第三者調査委員会の調査報告書の提出について
- 大野城市ハラスメント事案に関する第三者調査委員会調査報告書(公表版・PDF)
- 大野城市「ハラスメント事案に関する市の対応について」
- 大野城市「大野城市ハラスメント事案に関する第三者調査委員会の設置について」


